愛されない王女は世界を壊す

夢花音

文字の大きさ
23 / 30
2章凍てつく断罪----慈悲の導き

3話 地下の断罪と慈悲の鍵 - 魔道具の秘密

しおりを挟む
薄暗いが、整えられた石の階段を、セレナは這うようにして階段を下りていく。
一歩進むたびに、鉄槌で頭を打たれたような衝撃が脳髄をえぐり、手すりにすがらなければ立っていられなかった。

(私は逃げない。たとえあなたが私の全てを責めようとも……)

頭の中に、声がまた響いた。

『赦しとは甘えだ。過去の罪に蓋をする行為に過ぎぬ』

「……違う。私は……過去から目を逸らさない。あなたをも、見据えて立つ……!」

苦しさで言葉は途切れ、視界がにじむ。吐き気とともに膝が崩れそうになりながらも、セレナは必死に足を運んだ。

氷のような魔力が彼女の全身に絡みつき、体の芯までじわじわと蝕んでいき、セレナの手足の感覚が徐々に失われていく。それでも彼女は歩みを止めなかった。視線を足元に落とし、ただ前へ。

やがて階段の先に、石の広間が広がった。
その中央に、静寂を吸い込むようにぽつんと台座が立ち、黒鉄のバングルがそこにあった。

「……あれが、魔道具のバングル……」

最後の一歩を踏み出し手を伸ばしたとき、頭を冷たい刃が突き抜けるような激しい痛みが襲った。がくりと膝をつき、石床に手をついてうずくまる。

『お前に赦しを求める資格が本当にあるのか?』

「……ある。私は……責任を……受け止めると決めた。断罪の精霊。あなたにすら否定できない、これは私自身の意志よ!」

ふらつく身体をなんとか起こし、震える手でバングルに触れる。
その瞬間、バングルが淡く光り、ヒンヤリとした金属がぴたりと彼女の腕に吸い付いた。

――ズン、と胸の奥に重い音が鳴る。
空気が揺れ、魔力の奔流がセレナの身体に染み込んできた。熱く流れる確かな力。

 まるで心臓が新たな脈動を始めるかのように、バングルが脈打つ。広がっていく温かさで強張っていた身体が次第に和らいぎ、今までの痛みがスーッと引いていく。

断罪の精霊の響きが、無機質な声にに変わった。

『私は……見誤ったかもしれぬ、人の子よ』

「私はもう逃げない。あなたと共に、先へ進む。その力を、破壊ではなく選択のために使う」

その言葉に呼応するように、断罪の精霊の気配が彼女の中へ沈んでいく。
バングルが魔力を受け止め、制御し、精霊の力はかすかに静まった。
それでもなお、その力は彼女の中に確かに存在し続けている。

セレナは、小さく息を吐いた。

「……次は、慈悲の精霊。私はきっと、見つける」

静かに、石室の扉を開けた柔らかい風がセレナの頬をなでる。

 断罪と慈悲。二つがそろってこそ、罪は真に裁かれ、赦される。
セレナはそう信じ、また一歩を踏み出した。

持ち出した古書によると赦しの女神を祀っている教会があるとか。セレナは、その教会のこそ慈悲の精霊の居場所ではないかと考えた。

 
 


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

近すぎて見えない物

あんど もあ
ファンタジー
エルリック王子と一夜を共にした男爵令嬢。エルリックの婚約者シルビアが、優しく彼女に言った一言とは。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

処理中です...