氷の人形と呼ばれた令嬢が、内なる炎の言葉で真実を語る

夢花音

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崩壊と新たな道

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 夜会の翌朝、社交界は未曽有の騒ぎに包まれていた。  
 グレンデル家とバルトン家の令息令嬢が、家名と誇りを失い、社交界から追放されたという噂は、瞬く間に貴族たちの間を駆け巡った。

 レオンは家督相続権を剥奪され、遠縁の田舎領地に幽閉同然に送られた。かつて彼が軽蔑していた「退屈な田舎暮らし」が、今や唯一の居場所となった。  
 クラリスもまた、バルトン家の名誉を守るため、家族によって国外の厳しいと言われている修道院へと送られた。彼女の名は、もはや社交界で語られることはない。

 エリスは、静かに日々を過ごしていた。  
 夜会での一件以来、彼女のもとには多くの手紙や訪問が寄せられた。  
 かつては「冷たい人形」と陰口を叩いていた令嬢たちも、今は敬意と憧れの眼差しを向けている。  
 エリスの静けさの内に秘められた強さと誇りは、社交界の新たな規範となりつつあった。

 ある日、エリスは母と庭園を歩いていた。  
 春の花々が咲き誇る中、母がふと立ち止まる。

「エリス、お前はよく耐え、よく戦いましたね。母は、あなたを誇りに思います」

 エリスは微笑み、静かに答える。

「私は、ただ自分にできることをしただけです。静かでいることも、言葉を選ぶことも、私の誇りですから」

 母は優しくエリスの手を握った。

「これからは、自分の幸せのために生きなさい。あなたには、その資格があります」

 エリスは空を見上げた。  
 雲一つない青空が広がっている。  
 これまでの人生で感じたことのない、自由と希望の気配が胸に満ちていく。

 その日から、エリスは自分のための人生を歩み始めた。  
 静かであることを恐れず、誇り高く、そして時には自分の想いを言葉にすることも覚えながら。  
 彼女の新たな物語が、ゆっくりと、しかし確かに始まろうとしていた。
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