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1章
6話
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「異世界への転送準備、最終確認完了。」
静かな電子音が室内に響く。
壁一面を覆うホログラムモニターに、無数の数値と魔術式が並んでいた。
ナミの手が淡々と操作パネルを滑る。美月はその背中を見つめながら、胸の奥にひとつの決意を押し込めた。
「本当に、ひとりで行くのね」
ナミが振り返る。その声に微かな震えが混じっていた。魔法陣の解析に間違いは無い。それでも美月を一人で送り出すのは不安があった。これから飛ぶ異世界はどんな世界かわからない。危険が伴うことは確かなのだ。
ナミは苦しげに眉を寄せて
「私しか転送装置を制御できない。不測の事態に備えるため、私はここに残るしかないの。……必ず帰ってきて」
美月は頷いた。
床の上には、すでに準備が整っている。
タイムマシーンバイク。異空間収納ユニットに格納されたシステムボックス。
その中には、武器・医療・生活すべての装備が収められていた。そして、魔法陣の幾何パターンを読み取り、書き換えるための科学式転写ユニット。これは渉たち3人を連れて元の地球に転移する為にナミが開発して物だ。異世界の魔法陣を書き換える事が出来る。
対ドラゴン級電圧を誇るレーザー銃とスタンガン。緊急治療用の医療カプセル。十年分の携帯食料と、発電・水分生成機能を備えた小型ログハウス。どんな世界であっても、生き延びるための最低限の装備は揃っている。
「タイムマシーンバイク、起動――」
美月が呟くと、金属のフレームが淡く光り、低い振動音が空気を震わせた。
異世界への座標は、解析された召喚魔法陣の“補完結果”によって割り出されている。
あの欠けた紋様が導いた行き先。渉が消えた“その瞬間”と“その世界”。
ナミがそっと指を伸ばし、美月の耳たぶに銀色のピアスをつけた。
この時代のピアスは、穴を開ける必要がない便利なタイプだ。
「これは生命感知よ。美月なら大丈夫だろうけど、未知の世界だから命の危険もあるかもしれない。このピアスは、美月が生命の危機に陥ったとき、強制的にこの世界へ転送を戻すことができるの。だけど美月だけなのよ。並の人間の身体だと耐えられないから。美月でもギリギリ……」
「そんな貴重なものを‥でもわたし一人では……」
「それでも、生きていれば、最悪次の機会もあるわ。だから!ひとりで行かせてごめんなさいね」
ナミが申し訳なさそうに微笑み、起動スイッチに触れる。
空間がわずかに歪み、天井の照明が白く滲んだ。
「転送ゲート展開、カウント開始――」
光が強くなり、風が逆巻く。
美月は最後にナミを見た。
「必ず、渉たちを連れて戻ってくるわ」
次の瞬間、閃光が全てを包み込む。
空気が弾け、視界が白く反転した。
タイムマシーンバイクは、音もなく時空の彼方へと消えた。
残されたナミは静かに息を吐き、モニターの光に照らされながら呟く。
「……お願い。時間も、空間も、彼女を拒まないで」
静かな電子音が室内に響く。
壁一面を覆うホログラムモニターに、無数の数値と魔術式が並んでいた。
ナミの手が淡々と操作パネルを滑る。美月はその背中を見つめながら、胸の奥にひとつの決意を押し込めた。
「本当に、ひとりで行くのね」
ナミが振り返る。その声に微かな震えが混じっていた。魔法陣の解析に間違いは無い。それでも美月を一人で送り出すのは不安があった。これから飛ぶ異世界はどんな世界かわからない。危険が伴うことは確かなのだ。
ナミは苦しげに眉を寄せて
「私しか転送装置を制御できない。不測の事態に備えるため、私はここに残るしかないの。……必ず帰ってきて」
美月は頷いた。
床の上には、すでに準備が整っている。
タイムマシーンバイク。異空間収納ユニットに格納されたシステムボックス。
その中には、武器・医療・生活すべての装備が収められていた。そして、魔法陣の幾何パターンを読み取り、書き換えるための科学式転写ユニット。これは渉たち3人を連れて元の地球に転移する為にナミが開発して物だ。異世界の魔法陣を書き換える事が出来る。
対ドラゴン級電圧を誇るレーザー銃とスタンガン。緊急治療用の医療カプセル。十年分の携帯食料と、発電・水分生成機能を備えた小型ログハウス。どんな世界であっても、生き延びるための最低限の装備は揃っている。
「タイムマシーンバイク、起動――」
美月が呟くと、金属のフレームが淡く光り、低い振動音が空気を震わせた。
異世界への座標は、解析された召喚魔法陣の“補完結果”によって割り出されている。
あの欠けた紋様が導いた行き先。渉が消えた“その瞬間”と“その世界”。
ナミがそっと指を伸ばし、美月の耳たぶに銀色のピアスをつけた。
この時代のピアスは、穴を開ける必要がない便利なタイプだ。
「これは生命感知よ。美月なら大丈夫だろうけど、未知の世界だから命の危険もあるかもしれない。このピアスは、美月が生命の危機に陥ったとき、強制的にこの世界へ転送を戻すことができるの。だけど美月だけなのよ。並の人間の身体だと耐えられないから。美月でもギリギリ……」
「そんな貴重なものを‥でもわたし一人では……」
「それでも、生きていれば、最悪次の機会もあるわ。だから!ひとりで行かせてごめんなさいね」
ナミが申し訳なさそうに微笑み、起動スイッチに触れる。
空間がわずかに歪み、天井の照明が白く滲んだ。
「転送ゲート展開、カウント開始――」
光が強くなり、風が逆巻く。
美月は最後にナミを見た。
「必ず、渉たちを連れて戻ってくるわ」
次の瞬間、閃光が全てを包み込む。
空気が弾け、視界が白く反転した。
タイムマシーンバイクは、音もなく時空の彼方へと消えた。
残されたナミは静かに息を吐き、モニターの光に照らされながら呟く。
「……お願い。時間も、空間も、彼女を拒まないで」
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