月の砂漠に銀の雨《二人の騎士と異世界の神子》

伊藤クロエ

文字の大きさ
144 / 161
後日談やおまけなど

後日談 神武官・ダルガートの幸福(終)★(サイード・ダルガート)

「ん……ありがとう……」

 興奮に上気した顔で答えるカイの頭を支え、ダルガートが口づける。深く舌を入れて彼の弱い上顎や上の歯の裏側をなぞると弱弱しい手つきでダルガートにしがみついてきた。

「……ダルガートのも、ちょうだい」

 そう言って屈みこむカイの髪を撫でて梳く。サイードが傍らに腰を下ろして首筋に唇を押し当てながら、おかしそうに呟いた。

「カイは酔うとずいぶんと大胆になるのだな」
「これでは我らのいない場所で酒は呑ませられぬ」
「確かに」

 おのれの股間に深々と顔を埋め、赤い舌を絡ませては先走りを舐め取るカイを見ていると、その小さな頭を両手で押さえ込み欲望の赴くままに喉奥を突いて溢れるほど男の情欲を注ぎ込みたい衝動に駆られそうになる。だがダルガートはわずかに目を細めてその劣情を飲み下した。

 サイードに後ろへ指を挿れられてカイが背中をくねらせる。たっぷりと香油をまとった指で中を丹念にこすられて情欲を煽られたのか、ダルガートの剛直を咥え込むカイの舌や喉の動きがますます貪欲さを増した。
 カイも早く中を満たされたいだろう。ダルガートが視線を上げるとサイードが頷いて自らの男根をゆっくりとカイの後腔に沈ませていった。

「っ、ん…………っ、っふ、……ぐっ」

 何か考えがあるのか、ゆるやかに奥を突きながらもサイードはカイの前に触れようとはしない。カイのペニスはかわいそうなほど赤く勃起しながらだらだらと先走りを零して揺れている。

――――今のサイードさんは、少し意地が悪い。

 以前、ダウレシュで再会した時に三人で交わりながら、カイがすねたようにそう呟いたことがあった。確かに今のサイードはカイに散々甘やかな愛撫や責めを与えながらも妙に焦らしている風なところがある。

 かつてサイードは家族全員を一度になくすという経験を経て、愛する者を失ったり傷つけたりすることをひどく恐れていた。だからこそカイに対しても海より深い愛情と忍耐とで包み込むように愛していた。
 だが家族が無事である今世で育ち身に沁みついた記憶や性格は、かつての記憶が蘇った今でも消えはせず、以前よりも慎重さが減って大胆さが増したのだろうか。

「サイード殿は、今生ではいささか変わられたところがおありのようだ」

 そうダルガートが言うと、サイードは少し考えてから笑みを浮かべる。

「ああ、そうかもしれん」

 そう答えて後ろからカイの腹を抱え、その背に身を屈めて一層深く突き挿れた。ビクン! と身をこわばらせたカイのうなじに軽く歯を立てながらサイードが囁く。

「平和で豊かなこの世界にあって、俺はもっと欲深い男になったと思う」

 恐らく結腸を抜かれてくぷくぷとそこを浅く突かれているのだろう。伏せたカイの耳が真っ赤に染まり、喉奥がビクビクと痙攣している。この分ではカイ自身がもたないだろう。
 ダルガートは「よろしいか?」と尋ねてから彼の望み通り口内に精を放った。そして呑み込み切れずにカイの口からこぼれる精液を拭うと、そのまま崩れ落ちそうになるカイの身体を支えてやった。すると心得たようにサイードが激しく突き始める。

「ああ……っ、はあっ!ん……っ、ひゃうっ、あ、あうぅん……っ!」

 たちまちカイの口からなまめかしい声がひっきりなしに漏れだした。

「ぁ、あっ……! まって、お願い……、そこ、だめ……、だめ……っ」
「駄目じゃないだろう? 大丈夫だ」
「あ、あっ、や、やだぁ……っ、あ、は、……ひぅんッ」

 結局、カイは一度も前に触れられることなく達してしまった。しかもその絶頂は長く、全身真っ赤に染めてビクビクと痙攣している彼の顎をすくいダルガートは口づける。そしてサイードに抜かれてぐったりとしているカイを膝に向かい合わせに座らせ、再び硬さを取り戻していたものを濡れた孔に押し当てた。

「ま、まって、ほんとに、あ、あぅ……っ」

 ダルガートはカイの抵抗をたやすく押さえ込み、とろとろに蕩けたソコにゆっくりと咥え込ませていく。

「あ、うぅ……ぅんッ……あ、はァ……」

 その顔も声も気持ちよさそうに潤んでいるのを確認してから、ゆっくり少しずつ一番奥まで自らを収めた。

「ダル、ダル、ガート」
「……落ち着くまで、このまま待ちまする」
「…………っぁ、……ん……――――」

 完全に自分に身を預けたカイの呼吸が戻り始めた頃、優しく奥を捏ねるように揺さぶるとカイが甘えたような声を漏らしてしがみつく。そして今度はサイードが後ろから手を回し、健気に勃ち上がりダルガートの腹に擦り付けては涙を零すようにとろとろと精液を滴らせているカイのペニスを撫でたりさすったりしてやった。

「ん……っ、サイー、さ……んっ、だめ、さわっちゃ、だめぇ……っ」

 たまらず泣き出したカイに交互にキスをして、何度も繰り返す小さな絶頂に声も出なくなったところでダルガートはたっぷりと奥に欲を吐き出した。

 やがて気絶するように眠ってしまったカイの全身を拭いてやりながら、その温かい身体を離し難くて部屋で一番大きな寝台に三人折り重なるように横たわる。
 そして明け方目を覚ますと、ちょうどダルガートの腹のところに頭があったらしいカイが夢うつつのような顔をして、まるで赤子が母親の胸を求めるようにダルガートのものを口に含んで舐めていた。

「悪戯がお好きですな」
「ん……っふ…………んっ」

 顔を上げれば、小さく身体を曲げたカイの背中を撫でながらサイードがゆるやかな動きで中を突いているのが見える。
 なんとも爛れた、けれどこの上なく甘い目覚めだと思いながら、再び三人は長い時間をかけて互いの肌を貪りあった。







「実は二人に話したいことがある」

 サイードがそう言ったのは、すっかり日も昇ったというのに怠惰に寝そべりながら互いに乾燥した手足に香油を塗り込んだり水を飲ませあったりしていた時だった。

「仔産みの季節が終わったら旅に出ないか。三人で」
「仔産み?」
「馬や羊たちの仔が生まれる時期のことだ。さすがにその頃は人手が足りずに一族総出になる忙しさだからな」

 そう言ってサイードが微笑む。

「行先はどこでもいい。アル・ハダールでも、まだ一度も行ったことのない西の海でも」
「で、でもいいんですか? サイードさん、家の方は……」

 と言ってカイが口ごもる。
 この三人の中で一番誰かに頼りにされ、身動きが取りづらいのは一族の跡取りであるサイードだ。するとサイードが答えた。

「一年だけ猶予を貰った。その後ダウレシュに戻り、跡を継ぐ。それまではカイとダルガートと共に旅ができる」

 跡を継ぐ。その言葉にカイが一瞬青褪めた。ダルガートには、カイの心中に過った恐れや心配が手に取るようにわかった。だがそれはサイードも同じだったようで、すぐにカイを安心させるように笑みを浮かべて言った。

「俺はもう父や叔父たちに、生涯妻を娶るつもりはないと言ってある」
「え……えっ!? ほんとに!?」

 驚いたカイががばっと身を起こす。

「でも、お、奥さんがいないと、跡取りが必要なんじゃ……」
「ダウレシュの地を継ぐのは弟か、もしくは叔父の子であってもいい。俺より後の生まれで最も信頼できると一族が認めた者になるだろう。幸い父も叔父もまだそう年ではないからな」

 その言葉にカイはしばし呆然としていたが、ハッと我に返って尋ねた。

「そ、それはすごく嬉しい。嬉しいんだけど、それで大丈夫なの……?」
「カイの国ではどうかわからぬが、どこの一族にも一人は変わり者や偏屈者がいるものだ。それに南の氏族に生涯独身で跡を甥に譲った長もいたと聞いている」
「そうなんだ……」

 ようやく理解できたのか、カイの顔にじわじわと笑みが広がる。するとサイードが寝台に座り直して今度はダルガートに向き直った。

「もう少し込み入った話をするが、俺が引き継ぐのは正確にはダウレシュよりも西の土地になる」
「というとエイレケとの国境あたりですかな」
「その通りだ。俺の母の叔母が嫁いだ氏族の土地だが、最近相次いで男たちが病や怪我で亡くなり、唯一残った男子はまだ五つの幼さだ。今は女たちと年寄りで馬と羊の面倒を見ているらしい」

 それを聞いてなんとなく話が読めたダルガートは口を開く。

「ここ数年エイレケでは麦もトウキビも不作が続いているようで、神殿にも度々エイレケからの流民や商人たちの揉め事について報告が届いている。エイレケとの国境に近い土地を手薄にしておけば、よからぬ輩がいつ侵入してくるかわかりませぬな」
「だからその幼子が成長するまで、俺が後見としてその土地を引き受けることになったのだ」
「なるほど。ならばかえってサイード殿が独り身である方が相手にとって都合が良いというわけか」
「ああ。すでに跡を継ぐものはいるのだからな」

 ぽかんと口を開けて話を聞いていたカイもきちんとその中身を理解したらしい。ようやく納得のいった顔をして肩の力を抜いた。それを見てサイードが笑って目を閃かせた。

「そこでだ。カイとダルガートもイシュカルの地に来ないか?」
「イシュカル?」
「ああ、俺が引き受ける土地の名だ。その地での俺の役目は馬や羊を育て、エイレケやその他から来るかもしれない盗人たちから土地と家畜を守り、幼い跡取り子に狩りや剣を教えることにある。だが一つ問題があってな」

 サイードはカイとダルガートを見てため息をつく。

「かつての記憶が戻って以来槍や剣の鍛錬をしているのだが、どうにも相手に困っている」

 そう言って眉をしかめたサイードにカイが小さく吹き出した。

「そりゃあ草原に住む遊牧民たちの中に、かつてのアル・ハダール第一の槍と対等に渡り合える人がいるわけないですよね」
「そういうことだ。だが片腕となった今は余計に鍛錬をし、強くならねば」
「そこで私の出番というわけですかな」

 ダルガートが冗談めかして言うとサイードがくったくなく笑う。

「その通りだ。このあいだダウレシュで会った時も思ったが、ダーヒルの神武官たちはたいそう厳しい鍛錬を行っているようだな。以前よりも円月刀シャムシールの腕が上がったのではないか?」
「どうだか」
「ダルガートが共にいてくれれば鍛錬の相手には事欠かぬ。それに共にイシュカルを守ってくれればこんなに心強いことはない」

 サイードはそう言うと、今度はカイを見た。

「それに、俺はできればカイと同じ場所で暮らしたい。共に朝日を迎え、共に夕陽を送りたいのだ」
「サイードさん」

 カイの顔が赤く染まり、目に涙が滲む。だがそれを慌てたように拭ってカイが笑った。

「僕も三人一緒にいたいです。正直どこに住んだって、サイードさんとダルガートがいればそれだけでいいんだから」
「ああ、きっと楽しく暮らせると思う」

 そう微笑みあう二人を眺めながら、ダルガートはかつて想像もしたことのなかったような未来が目の前に現れたことに密かに感嘆する。

 思えば今の世も前の世も、ダルガートは家族というものには縁薄かった。かつての生では親の顔など覚えておらず、今の世界でもごく幼い頃に死に別れた。
 たとえどんな道を歩もうが、最後に死ぬ時は誰でも一人だと疑いもしなかった。

「ねぇ、ダルガート。西の草原で馬や羊の世話をしながら生きていくのもいいよね。どう?」

 ダルガートは少し考えてから答える。

「――サイード殿との狩りは楽しゅうござったな」
「でしょ?」

 パッと顔を輝かせたカイを見て、やはり彼こそが己の唯一の喜びファラーハであり幸福であったのだとダルガートは知ったのだった。



おわり

--------------------------------------

【お知らせ】

このたび『月の砂漠に銀の雨《二人の騎士と異世界の神子》』を書籍化して頂けることになりました。
これも全部完結まで応援して下さった皆さんのおかげです。ありがとうございました。

それに伴い、書籍化部分が4/20正午をめどに引き下げとなります。
引き下げ部分は冒頭から『53 太陽と月と砂の大地【本編完結】』までとなります。

書籍化に当たり新しいエピソードなども加筆しました。
詳しくは近況ボードをご覧ください。

今まで読んで下さって本当にありがとうございました。

(今後も短いおまけ話やサイード視点の後日談などを続けてここに上げていく予定なので、良かったらブクマやしおりなどは残しておいていただけると嬉しいです)
感想 399

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

悪役令息を引き継いだら、愛が重めの婚約者が付いてきました

ぽんちゃん
BL
 双子が忌み嫌われる国で生まれたアデル・グランデは、辺鄙な田舎でひっそりと暮らしていた。  そして、双子の兄――アダムは、格上の公爵子息と婚約中。  この婚約が白紙になれば、公爵家と共同事業を始めたグランデ侯爵家はおしまいである。  だが、アダムは自身のメイドと愛を育んでいた。  そこでアダムから、人生を入れ替えないかと持ちかけられることに。  両親にも会いたいアデルは、アダム・グランデとして生きていくことを決めた。  しかし、約束の日に会ったアダムは、体はバキバキに鍛えており、肌はこんがりと日に焼けていた。  幼少期は瓜二つだったが、ベッドで生活していた色白で病弱なアデルとは、あまり似ていなかったのだ。  そのため、化粧でなんとか誤魔化したアデルは、アダムになりきり、両親のために王都へ向かった。  アダムとして平和に暮らしたいアデルだが、婚約者のヴィンセントは塩対応。  初めてのデート(アデルにとって)では、いきなり店前に置き去りにされてしまい――!?  同性婚が可能な世界です。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。  ※ 感想欄はネタバレを含みますので、お気をつけください‼︎(><)

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。