鋼鉄少女王 タイタンメイデン

鳳たかし

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第二話

第二話 パラダイム・シフト その7

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決意と共にガミオンの腹の装甲板がスライドし、ダインの指を切断する。
指を失ったダインは力の入れどころを失い、勢い余って背中から倒れこんだ。

「うおっ?!お、おのれ!」

そのスキを逃さずガミオンは立ち上がり、ダインを蹴り飛ばして自身も後ろに飛び退く。

「うぬ!?まだ、動けるか!メガミオン!」

立ち上がるダインに駆け寄りながら、タオが叫ぶ。

「ニュートゥ!奴はあの力を使うつもりだぞ!」

「あわてるな、タオ!ダイン!備えろ!」

「承知!」

ニュートゥの警告に答えたダインが力強く踏み込み、腕を前にかざして力を込めると体に配された発光器官が輝き唸る。
それに続き、タオとニュートゥも同じように体中のエネルギー・ラインを発光させダインの横につく。
対してガミオンはタケシと同調した時の記憶から新形態を呼び覚まし、自身の身体上に再生を開始した。
瞬く間に装甲が蠢き、組み替えられていく。
─少女の体型から成熟した女性の体へ─
だが、身体の再構成がある程度進んだ時、ガミオンは突如、タケシと同調した時とは違う違和感を感じた。

 「なンだ?か、体が……」

ガミオンの変形が、ある程度まで進むと突如として逆転を始める。

「変ワらなイ?!タケシの力が再生デきない?!」

顔を見合わすダイン、ニュートゥ、タオの三人。

「ガミオンの動きが止まったぞ」

「どうしたことだ?何らかのトラブルか?それとも奴の作戦か?」

ニュートゥが目を光らせ観察すると
ガミオンは特定の変形シークエンスを繰り返し、体を変形させようとしているが、
それを最後まで遂行出来ないでいるようだ。

「いや、どうやらトラブルのようだ。メガミオンは今、あの力を使うことが出来ないらしい」

「あの頭部の負傷では当然じゃぁねえの?」

とタオが言う。

「本当にそうか?」

だが、ニュートゥの観察力はタオの意見に容易に同意する事を拒んだ。

「あ?」

「まあいい、すぐに分かることだ。
 ダイン!タオ!メガミオンを取り押さえろ!私がこの場で奴を解体する!」

言うが早いかガミオンへと走り寄ったニュートゥの肩や背中の装甲の隙間から光るチューブを思わせる触手が数本伸びガミオンの体に絡みつき引きずり倒す。

すかさずダインとタオも倒れているガミオンへと駆け寄り、腕を取りガッチリと押さえ込み体を固定する。
絡みついたニュートゥの触手からは、さらに指のような突起が生え出てガミオンの体をまさぐる。
もがくガミオン。

「おっと、動くんじゃねえぞ、抵抗すれば苦痛が長引くだけだ」

とタオに言われてもおとなしく従うガミオンではない。
力を振り絞り腕を振りほどこうとする。

「うおっ?コイツ、チビのくせになんてパワーなんだ!」

体を揺さぶられながらタオが叫ぶ。
それを見ていたダインは腕に力を込めガミオンの腕を限界までねじり上げた。

「そら!」

砕け、ねじ切れた左手首がはじけ飛ぶ。

「ぐわぁぁぁぁぁ!!」

絶叫するガミオンの体から一瞬力が抜けたことを見逃さずダインは自身の体をガミオンの背中側にすべり込ませると、
腕と足を絡めガミオンの肢体をガッチリと固定する。
大柄なダインのホールドに締め上げられたガミオンは、なすすべもなく仰向けに体を晒すしかなかった。

「よし、足を開かせろ」

ニュートゥの言葉にダインは絡めた足を使い、器用にガミオンの足を開かせる。
開いた足のあいだに体を滑り込ませたニュートゥは触手を使い、ガミオンの下腹部をまさぐり始める。

「くっ、や、ヤメロ……!」

声を漏らすガミオン。
ニュートゥは構わず、さらに触手を這わせる。
繊細な触手が淡く輝き、ガミオンの体の中をスキャンする。

 やはり、腹の中に何かを抱えている。しかし、この腹を守る強固な装甲……
 中のものを破壊せずに取り出すには、かなり時間がかかるだろう……

装甲板を下腹部に集中させて抵抗するガミオンを見下ろしながらニュートゥが問いかけた。

「最後に聞いておく、戦士メガミオンよ。
 おとなしく腹の中のものを渡せ。そうすれば命だけは助けてやる」

いくら技師のニュートゥとはいえタイタンメイデンの戦士の解体は容易ではない。
生成機を無傷で取り出すとなればなおさらだ。
時間のかかる処置よりも短時間で事を終わらせられれば、との問いかけであったが、
ガミオンの答えは意外なものであった。

「ほ、本当か?」

おそらく否定されるだろうとの戯れに近い提案だったが、
うまく乗ってくれたことにニュートゥは一瞬キョトンとした後、タオと目を合わせるとニヤリとほくそ笑んだ。

「もちろんだとも。なあ?タオ、ダイン?」

「ああ!もちろんサ!」

タオはすぐに返事を返したがダインは無言のまま不満げな表情を隠さない。
ダインにしてみれば自分が誇りをかけて戦った相手が命乞いにも近い醜態を晒したことに不満だったのだ。

「ダイン!」

ニュートゥが叱責するとダインは渋々と同意する。

「約束しよう」

そして、ガミオンはついにニュートゥの提案をうける。

「わかっタ、その提案ウけよう。『腹の中の物』ヲ渡すかラ離してくれ」

「ダイン、メガミオンを離せ」

ニュートゥの指示に渋々と従い、ホールドを解いたダインが用心しながら傍らに付く。
自由になったガミオンはゆっくりと状態を起こし、前かがみになると腹部に手を置く。
腹部装甲が複雑に蠢き開き始め、漏れ出した淡い光が周囲をうっすらと照らし出す。
腹の内部に手を入れたガミオンはゆっくりと何かを取り出した。
それをよく見ようとしたニュートゥが無防備に覗き込んだ時、

「さあ!受け取れ!!」

叫びと共にガミオンがニュートゥ達に腹の中にあった物を投げつける。

「「「!?」」」

ダインは難なくそれを手で受け止め、タオは避ける。
だが、間近で受けたニュートゥはそれを左目に喰らってしまう。

「グワッ?!」

その瞬間を逃さず、ガミオンが踏み込み、怯むニュートゥの触手を掴むと力任せに引きちぎった。

「ギャアアアアア!!」

苦痛の悲鳴を上げ倒れるニュートゥ。
その勢いのままニュートゥを蹴り飛ばし、飛び退いたガミオンが宇宙船の残骸の上に着地する。

「ニュートゥ!!」

タオがニュートゥに駆け寄り、助け起こす。
ニュートゥの左目にはガミオンが投げつけた物が深々と突き刺さっていた。

ニュートゥは、戦士のガミオン、闘士のダインに対し、技師と呼ばれるタイタンメイデンである。
約15メートルの体に高度なセンサーや繊細な作業を可能とする触手を多く持ち、
その呼び名の通りに身につけた様々な技術により仲間を治療したり、新たな装備を制作するタイタンメイデンの技術者。
だがその反面、戦闘力に乏しく、
感度の高い神経系を持つ肉体は突然の痛みに対し敏感に反応してしまうのだった。

ダインが受け止めた物を確認し、驚きの声を上げる。

「こ、これは!!」

ガミオンが投げつけた物、それはタイタンメイデンの指。
先程、ガミオンの腹部装甲で切断されたダインの四本の指であった。
タオが叫ぶ。

「メガミオン!テメー騙しやがったな!」

「騙す?失敬な、戦士の誇りにかけて嘘は言っていない!『腹の中の物を渡す』約束は今果たした!」

言いながらガミオンは引きちぎったニュートゥの触手を自分の破壊された手首の基部に押し付けると、細かい光が走り、触手はガミオンの腕に癒着し始める。

なおも憤慨するタオ。
すると、突然ダインが大声で笑い出した。

「ハハハハハ!コイツはいい、確かに嘘は言っていない!
 確かに我らは『お前の腹の中にあった物』を受け取った!ハハハハハ!」

自らの指を手のひらで弄ぶダイン。

「うまく立ち回ったな!メガミオン!!だがな!これでお前は助かる最後の機会を失った!そして!」

二十メートルを超すダインの体に力がみなぎる。

「今度こそ!完全に決着をつけてやる!」

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