鋼鉄少女王 タイタンメイデン

鳳たかし

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第五話

猛烈!ニュートゥ立つ! その5

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 アンジェラがホムラに差し込んだ棒状の機械ロッドの端を掴み、引き抜こうとした時、ホムラの様子が一変した。
球形の体の中央に亀裂が走り、そこから紐のように細い手首が無数に飛び出してアンジェラの腕に絡みつく。

「ナント!?」

無数の機械の腕は虫のように蠢くと、ホムラの体をアンジェラの腕にがっちりと固定する。
掴んで引きはがそうとしても、力いっぱい腕を振ってもビクともしない。
地面に叩きつけても、ただアスファルトが砕け飛び散るのみでホムラの体には傷ひとつ付かない。
続いてホムラのメンテナンスランプが激しく点滅し始め、その体から『仰げば尊し』のメロディーが流れ出す。
そのメロディーに合わせてホムラが声を発すると、さらにその声を追うようにして複数の機械音声も流れで、
ホムラの言葉の後に続く。

「一生懸命戦った運動会!」

「「「やったことないけど!」」」

「楽しかった修学旅行!」

「「「行ったことないけど!」」」

「ホムラこと汎用球形ドローン3825は今日……」

「「「自爆します!!」」」

驚愕するアンジェラの目に、ホムラの体の表面に浮き上がった光る文字が飛び込んでくる。

「自爆!?」

光の文字は、どうやら爆発までの時間を告げるカウントダウンなのだろう。
それは刻一刻と、小刻みに形を変えていった。

「コンナ場所デ!?」

アンジェラが慌てて周囲を見回すと、間の悪いことにラブホテルの駐車場から一台の自動車がゆっくりと出てきた。

「オーマイガー……」

道路の真ん中に立つアンジェラに、車の運転席に座った男が軽くクラクションを鳴らす。
アンジェラは困った顔で車に軽く手を振り、一瞬体を屈めたかと思うと、
次の瞬間、アスファルトを砕きながら高速で空高くへと飛び上がった。

「え!?い、今の何!?お相撲さん!?」

車の助手席に座った女がダッシュボードに身を乗り出し、
フロントガラス越しに空を仰ぎ、アンジェラを目で追う。

「え!?え!?金髪!?外国人力士!?いや、忍者!?何なの!?あれ!?」

「ま、まさか、幽霊とかじゃねーよな!?」

今、目の前で起こったことが信じられず、混乱状態に陥った車内のカップルをよそに
アンジェラはさらにホテルの壁を蹴り、反動による加速を利用してホテルの屋上に躍り出た。

「間ニ会ッテ、チョーダイ!!」

屋上に出た後もその勢いは止まらず、屋上の縁を一蹴りし、さらに上空高くへと飛び上がるアンジェラ。
ホテル屋上のタイルが一部砕けて破片が周囲に降り注いだ。

空高く風を切り、眼下にホテルを見下ろしながらアンジェラは呟く。

「コノ程度ノ高サデハ……足リナイデスヨ!」

これでは逆に被害が拡大するだけになってしまう、そう思ったアンジェラは意を決し、
表情を険しく一変させ、腕にへばりついたホムラを自らの体で包み込むように抱きしめた。
そしてついに、ホムラ体表上のカウントがゼロになろうとした時─

「サヨナラ!!」

ホムラが叫ぶと、次の瞬間その体が光り輝き、凄まじい轟音を立てて爆発した。

爆音が轟き、衝撃波が周囲の建物のガラスを割っていく。
ラブホテルの一室で行為に及んでいたカップルも轟音で部屋が揺れ、窓ガラスが割れたことに驚き、
大きなベッドの上で激しく動かしていた腰の動きを止めた。

「キャー!!」

「うわっ!?な、なんだぁ!?」

女の上に覆いかぶさっていた男が慌てて体を放そうとした時、天井を突き破り、何か大きな塊が落ちてきた。
衝撃が再度部屋を揺らし、濛々たる粉塵が巻き上がる。

「うわぁ!?」

「キャー!?」

驚いた男は思わず女に抱きつく。
女もまた男に、腕だけでなく足まで使ってきつく抱きついた。
その様は、まるで母親にしがみつく子コアラのよう。

おびえて抱き合った男と女が見ていると、粉塵の中に人影が蠢いた。
巻き上がった粉塵がおさまっていき、徐々にその人影の姿が明らかになっていくと、
そこに現れたのは輝く銀色の体をした肥満体の女性の姿。
そう、部屋に落ちてきた塊とは、今や金属質のアーマーで全身を覆われたアンジェラ・マキシム・パワーその人。
アンジェラは爆発の直前に分体の能力を使い、皮膚を金属化し、
さらに一部を強固な装甲と化して全体の強度を上げると、
ホムラを抱え込むことにより周囲に被害が広がるのを最小限に抑えながら、
尚且つ、自身のその身をも守ったのである。
銀色に輝く勇壮なその姿を、仮に『メタル・アンジェラ』と呼ぼう。

「ア痛ァ~~~」

メタル・アンジェラが体をゆすりながら自身の体のダメージを確認する。
分厚い脂肪も、衝撃を吸収し、和らげる効果があったのだろう、
金属の装甲や皮膚に多少焦げ跡が残ったものの、目立った外傷はなかった。

「ン?」

ベッドの上で抱き合った男女が呆然と見ている事に気付いたメタル・アンジェラは
二人に向かって頭を軽く下げながら言った。

「アラララ、オ二人フタリサン、交尾ノ真ッ最中デシタノネ?コレハ失礼シマシ~タ。
 スグニ立チ去リマスカラ、ドウゾ、続ケテクダサイナ」

そう言った後、メタル・アンジェラはドアに向かって歩いていくと、
当たり前のようにドアを開け、部屋を出る。

「デハデハ、サヨナラ~」

ドアが閉まる直前、メタル・アンジェラは部屋をのぞき込むと、
申し訳なさげに手を振り、ゆっくりとドアを締めた。

「な、なんだったの?今の?」

「宇宙人……かな?多分」


男が最後にぽつりと呟くと、気が抜けた二人は同時に、
へなへなと脱力しながら、仲良くベッドに倒れこむのだった。

アンジェラがホテルから出てくると、道路には爆発音に驚き、飛び出してきていた数人の人間がいた。
そこに突然現れたメタル・アンジェラの、金属のアーマーに包まれた異様な姿を見て、
何人かの人間が驚きの声を上げる。

「なんだ!?あれ!?」

「なんかの撮影?」

集まってきた野次馬の一人がメタル・アンジェラを指さし、隣にいた連れの男に声をかけた。

「おい!見ろよあれ!怪人の着ぐるみ着たやつがいるぞ!」

「じゃあ、これってやっぱ『SENTAI戦隊・センタイジャー』かなんかの撮影って事か?」

SENTAI戦隊・センタイジャーとは何か?それは只今絶賛放送中の人気特撮番組のことである。
そのSENTAI戦隊・センタイジャーのゲリラ撮影となれば、若者が騒ぎ立てるのは無理もないことであった。

男達はスマホを取り出し、カメラのレンズをメタル・アンジェラに向ける。

「ノー!一般人ノ撮影ハNGデスヨー!」

メタル・アンジェラは一声上げると、素早い動きで向けられたレンズを巧妙にかわす。
だが、さらにほかの野次馬達も次々とスマホを構え始めた。

「イヤ~ン!モウ!マイッチャウ!」

多少目撃されても適当に誤魔化せばいいと考えていたが、さすがにこれ以上人が集まると面倒だ。
そう考えたメタル・アンジェラは、集まる周囲の好機の目を素早い動きで翻弄すると、
続々と人が集まり始めたその場をすぐさま離れようとる。

「サヨナラー!」

一声叫びながら、猛ダッシュで駆け抜けていくメタル・アンジェラ。

「え!?……と、特撮??」

特撮映画のように常軌を逸したスピードでその場を離れていくメタル・アンジェラを、
野次馬達は、あっけにとられた表情で、ただ茫然と見続けるのであった。



 常人を超えた素早さで、あっという間に人気のないマンションの工事現場までやってきたメタル・アンジェラは、周囲を見回して人の気配がないのを確認する。
そして慎重に中庭にあたる場所まで歩いていくと、胸元から何かを取り出した。

「マァ、何ラカノ対策ハトッテイルヨネ、普通」

メタル・アンジェラが取り出したもの、それはホムラに差し込んだロッドの一片。
元より指でつまめるほど小さいものであったが、今は半分以上が欠けて、さらに小さくなっている。

「作リ変エルコトハ出来ナカッタケド、必要ナモノハ大体手ニイレタカラ、イッカ……」

小さなロッドの一片を指ではじくメタル・アンジェラ。

「サ~テ、ホムラチャン。アナタハ、今際ノ際ニ、イッタイ何ヲヤッテイタノカシラ?」

軽い金属音を立てて震えるロッドをメタル・アンジェラが操作すると、空中に次々と映像が投影される。

「フムフム……成程、SNSで連絡トナ?……フ~ン、朝日台、ネェ?」

それらを確認した後、
メタル・アンジェラが呟くと背後の空間に光のモザイクが解ける様に広がり、後に巨大な金属の足が現れた。
緩やかに艶めかしいラインを湛えるそれは勿論、光学迷彩を解いたタイタンメイデンの足である。

「ナラバ、ワタシモ、追ウトシマスカ!」

その言葉に呼応した巨大なタイタンメイデンの手が大地に下ろされると、
太い指がメタル・アンジェラをやさしく包み込んでいった。





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