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レヴェント編

167.性格が悪いのは生まれつき

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 空を舞う六本のロングソード、二本を投擲。
 シドは真っ直ぐ飛来するロングソードを容易に躱し、接近――二本の剣は地面に突き刺さる。
 右手で二本、剣を掴む。
 踏み込むと同時、接近するシドに再び投擲。さっきと違い高速回転する剣、シドは刀で二本とも叩き落とす。その瞬間には、俺がシドを間合いに入れる。
 背後に舞う二本の剣を両手でそれぞれ握る。
 右手に剣を掴んだタイミングでそのまま剣を振り上げ、斬撃を放つ。
 シドは左下から接近する剣を刀で受け止める。やはり基本的なフィジカルはコイツの方が圧倒的に上、暴威の使用でギリギリ俺が反応できるというレベル。
 全能力が俺を軽く超えてる。
 ま、想定内だけどッ――!
 左手に握った剣を空いた脇腹目掛けて振り上げる。
 ――が。放った斬撃は剣の刀身をシドの左手で掴まれて止まる。
 ニタリと笑みが染みついた顔がこちらへ向く。どうやら、この程度の攻撃は通用しないと言いたいらしい。ま、確かに速度も威力も、アンタからしたらゴミも同然か。
 握り砕かれる剣。
 でも、そのニヤケ面は――気に食わねぇ、っな!
 瞬間――
 グッと右脚に力を籠め地面を蹴り砕き、跳ね上げる。
 跳ね上がった右足はシドの顎に直撃し、シドの体を少し浮き上がらせる。
 だが――手応えがない。
 風船でも蹴っているみたいに軽い。
 チッ……あまいか。
 シドは俺が蹴り上げると同時、バク転して蹴りの威力を上に逸らした。
 グルッと異様な速度で回転したシドは、即座に地面に着地して斬撃を放つ体勢を取る。だが、俺は距離と取らず、そのまま体を前に出して頭をぶつける。
 頭部と頭部がぶつかり合うほどの超至近距離。
 「アンタの斬撃は脅威だが、ここまで近づかれたら……振れないよな?」
 「カカ、そうだな」
 シドの斬撃の手が止まり、距離を取ろうとする。
 だが、俺は距離を取らせまいとグイグイ前に出る。
 コイツの斬撃は変幻自在だが、剣術という括りの中である以上、近距離と中距離に強くとも、超至近距離では強みが死ぬ。
 この間合いなら――こっちが有利。
 剣を捨て、右手の掌を開ける。
 左腕でシドの腕を離しながら、どてっぱらを空ける。黒ローブの隙間から、空いた腹が見える。
 腰を回転させ、両脚で強く地面を踏み込む。ググッとシドの空いた懐へ、深く深く踏み込むと同時、左肩を押し込み距離を詰める。
 超至近距離、ほとんど体が密着した状態を作る。
 それでいて体の回転により、右手はシドの身体から遠く離れた位置にある。
 「天月流――つづみ
 両脚の踏み込み、一気に跳ね上げる。
 全身の回転エネルギーを解放し力を練り上げる。
 蓄積された力の全てを右手に回し、掌底を放つ。超至近距離でありながら、最大最高威力の掌底をシドのみぞおちに叩き込む。
 パンッと乾いた音が響いた。
 「かハッ――」
 シドの体が掌底の衝撃で後方に下がる。
 同時、異空間収納エア・ボックスから三本のロングソードを取り出し投擲。剣は回転しながらシドに迫る。
 飛来する剣を弾くシドだが、次の瞬間には異空間収納から大剣の柄を握っていた俺の斬撃が放たれる。巨大な剣が振り下ろされる。
 奴はギリギリで大剣を防ぐ。
 が、即座に俺は大剣から手を離し、空いた懐に再び突っ込む。
 「もう一本、行っておこうか?」
 「カカ、容赦がねぇな」
 「鼓――」
 ダメ押しの一発。突っ込むと同時に捻った体を勢いよく回し、再び強烈な掌底を叩き込む。
 グッとみぞおちを抉って叩き込まれる鼓。シドは再び後方に弾かれた。そしてそんな彼に向って俺は、異空間収納から取り出したを軽く投げた。
 シドは飛来する物体を刀で弾くと、パリンッという音と共に物体は砕け散った。
 無色透明の液体を浴びることになるシドは不思議そうに液体の観察する。
 「これは……」
 「俺からのプレゼント」
 嫌な笑みを浮かべてそう言うと、シドはカカと小さく笑った。
 「油か……?」
 「その通りでございますe x a c t l y。って、ま、正確には少し違うんだけど……ま、何にせよ、やったね。今日はよく冷える夜だ。丁度いい暖が取れるぞ」
 「鬼畜めが……」
 「アハハ……、よく言われる」
 笑いを零してそういうと、俺は声を上げた。
 「宮登っ!……できるか?」
 視線はシドに向けたまま、俺は後方にいた宮登にそう言った。
 やっぱり着火役は必要だよな?
 「フッ……ああ、やってやるよ」
 「OKOK。さ、やろうぜ?」
 ニタニタと笑みを浮かべる。
 背後で魔法が展開されているのが分かる。
 疾駆――
 正直、長期戦はしたくない。コイツは何が起きてもおかしくない、長引けば不利になるのは俺、第一俺は長期戦を戦えるような体じゃない。
 鼓のダメージが少しでも抜けない内に決め切る。
 もうアイツが俺を超至近距離の間合いに入れてくれるとは思えない。なら、ここで――殺し切る。
 俺の真上で火球が飛んでいく。
 宮登の魔法は正確にシドへ向かって飛んで行った。シドは火球を躱しながら、接近する。
 流石の奴も火だるまになるのは嫌なのか、宮登の魔法を余裕を持って回避している。
 なら――俺が前に出る。
 着火させる方法何も、魔法だけじゃないんでね。
 「……因みにさ」
 接近すると同時、そっと俺がそう口にする。
 「高速の剣と刀が触れると、何が出ると思う?」
 「?」
 シドは一瞬言葉の意味が理解できずにいたが、少ししてその言葉の意味を理解する。
 「!?」
 「正解は――、でした」
 ニタァと笑みを浮かべると同時、ガキンッと剣と刀が触れた瞬間に火花が散った。
 散った火花はシド黒ローブを燃やし、即座にシドを火だるまにした。
 「ゔぁ――――!?」
 呻くような声で暴れ出すシド。
 そんな彼を見てニコッと笑みを浮かべて行った。
 「因みに、その油は普通の油じゃないから、火を近づけない方がいいぞ? すぐに燃え出して取り返しのつかない事になるからさ。特に……火花とかは近づけない方がいい。ああ、静電気も良くないぞ、から」
 火だるまになって暴れるシドに向ってそう説明する。
 「――が、ガソリンかっ!」
 「お、宮登君大正解――!」
 少し遠くにいた宮登が答えを叫び、俺は悪魔染みた笑みを浮かべる。
 結奈さんはドン引きした顔していた。
 他の人達、現地の方々はガソリンがどういう物なのか分かっておらず、頭に?を浮かべていた。
 「なんでそんなもん持ってんだよ!」
 「そ、そうですよ! ガソリンて持ち運び禁止じゃないですかー!」
 「え……――な・い・しょ。おーけーい?」
 二人がマジかコイツという顔を見せる。俺は燃えるシドを右脚で蹴っ飛ばした。
 火だるまはゴロゴロと地面に転がった。
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