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竜殺し編・焔喰らう竜
17.生きる、死ぬ
しおりを挟むふと――映像が流れる。
記憶の中に在った少年の顔が、鮮明に映った。
どうしてだろうか?
わからないわからない。
でも、それは分かる必要のないこと、死に逝く者が何を考えようと結末は変わらない。
でも――疑問が心を染めた。
余分を抱いて死ぬか、余分を捨てて死ぬか、どちらも最悪だ。
結末は酷く辛くて、そこに至るまでもいつも孤独だった
誰にも理解されなくて、誰にも必要とされなくて、残ってしまった意味を見いだせず、事実を知ることには後戻りできない所に来ていた。
〝理由〟のため生きていたのに、その理由、役目を果たした後のことを考えて絶望した。
考えないように、考えないように、ひたすら機械のように指示されたことを黙々と繰り返す。フリーカーのことを機械的で虫のようだと言ったが、それは自身の方だったのかもしれない。
身も心も、虫の様。思考は機械的、明日に意味を見いだせずに今を生きていた。
かつて――救いをくれた人がいた。
無意味な人生に意味を、明日を生きる理由をくれた。
『〝生きる〟のは自分のためだ……自分がしたいと思うことにその人生を懸ける。難しいけど、生きている者は誰しも与えられた当然の権利だ。お前、少し無理をし過ぎだ、もう少し肩の力抜いて生きろ』
私は――
昔、生きることは使命を果たすことだと思っていた。理由があって、その理由のためだけに生きる。それが果たされれば生きることに意味なんて無くて、それ以外は全部余分だと思っていた。
でも、あの人は言った。
人は自分のために生きている。使命を果たすことも重要だ……でも、それ以上に自分の人生を謳歌する、それが生きることで一番大切なんだと思う。
これは走馬灯なのだろう。無意味に昔のことを思い出して、無意味に大切な自身の芯を見せられている。
でも――死ぬ前くらいはいいのかもしれない。
自分らしくないこと、でも、そんな自分がいることを知るのもまた、〝生きる〟ことなんだと思う。なら、せめて最後の最後まで、そんな風に生きていてもいいのかもしれない。
ああ、でも……
でも――そんな風に思ってしまうから、より一層……死にたくないと思ってしまう。
狼型フリーカーの大きな顎が寸前に迫る。
肉を引き裂き、命を喰らおうとするその一撃が胸を貫こうとした。その時――
「クレア―――ッ!」
「!」
自身の名を叫ぶ者がいた。
その方へ顔を向けると、そこにはこの場に絶対いない筈の人間がすぐそこにいた。
「叢、真?」
彼女はそっと、その名を口にした。
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