2 / 17
1巻
1-2
しおりを挟む
ここぞとばかりに、カイルアイネンが騎士のアピールをしてきた。騎士は相変わらず無表情ながら、彼の言う通り、こちらを見る青い目の中には心配そうな色が見える。
優愛は、カイルアイネンの言葉は本当なのだろうなと感じた。
(それにどの道、私はこの人を頼ることしかできないんだし)
ここが異世界ならば、優愛の常識は通じない。日本にいた頃のように、近くの交番に駆け込み住所と名前を告げて保護してもらうことはできないのだ。
(ミュールも私を助けてくれそうな存在のところへ直接トリップさせるって言っていたし、それがこの人なら申し出を受けて一緒に行くのが正解なのよね? それに、さっそく聖霊にも会えて、会話もできたわ)
そう思った優愛は、首を縦に振る。
「わかりました。お世話になります」
当然、彼女の言葉は騎士には通じなかった。
しかし、態度から自分の提案が受け入れられたのがわかったのだろう、騎士はなんとなく嬉しそうな様子になる。――まあ、無表情は変わらないので、あくまで〝嬉しそう〟という優愛の印象でしかないが。
「×〇◇□――ラルド・ロベリーグ・スティブ」
聞き取れない早口の後、ゆっくりした発音で「ラルド・ロベリーグ・スティブ」と言った騎士が、大きな手を優愛に向かって差し出した。
「ラルド……何?」
首を傾げる優愛に、カイルアイネンが説明してくれる。
『名前だ。ラルド・ロベリーグ・スティブっていうのは、こいつの名前だよ。手に掴まれって言っている。あと、お前の名前も聞いているぞ』
どうやら騎士――ラルドは、優愛に名乗ってくれたらしい。
優愛は慌てて彼の手を取った。手伝ってもらって地面に座り込んでいた体勢から立ち上がり、反対の手で自分の胸を指さす。
「優愛です。増倉優愛。私の名前です!」
しっかり名乗った。――なのに。
「ユア? ……デス・マスク……ラ・ユーア?」
「へ? ……い、いや、その! ……もうっ! ユアでいいです。……ユ・ア!」
(デス・マスクって何? いくらなんでも縁起が悪すぎるわ!)
そう思った優愛は、自分を「ユア」と名前で呼んでもらおうと提案する。
「ユア?」
コクコクと頷いた。
『へぇ~? ユアか、いい名だな。俺はさっきも言ったが〝名剣カイルアイネン〟だ!』
その言葉が聞こえると同時に、優愛の目の前でポン! と黒い煙が立ち上る。煙が消えた後には、身長十センチ、三頭身くらいの可愛いフィギュアみたいな人が現れた。
長い黒髪をポニーテールにしていて、ラルドと同じ服装、小さな剣を腰に差している。紺に金色のまじったラピスラズリのような大きな目が、優愛を見上げていた。
「え? ひょっとして、カイルアイネンさんですか?」
こんな不思議な存在は、彼以外にいないだろう。ミュールは、【聖霊の加護】があれば聖霊を見ることができるとも言っていた。
『おうっ! そうだ。本体は剣だが、まあ分身みたいなもんかな。昔は、もっとでかい姿にもなれたんだが、最近はこの大きさが精一杯だ。カイルさんって気安く呼んでくれていいぜ』
カイルアイネンは、楽しそうに話しかけてくる。
優愛はプルプル震えた。
「もうっ! そんな分身を出せるなら、どうしてもっと早く出してくれなかったんですか⁉」
そうしたら、あんなにラルドの下半身を凝視しないですんだのに!
『あ、いや? もうずいぶん分身を使っていなかったからな。出せることを忘れていた』
頭をかきかき、カイルアイネンはテヘッと可愛く笑う。
(か、可愛すぎて怒れない‼)
優愛は心の中で悶絶した。
こうして、互いに名乗り合った二人――正確には、二人と一本の剣は歩き出す。
これが、異世界トリップした優愛と、ソージェイア王国王都騎士団第五隊長ラルド・ロベリーグ・スティブ、そして彼の持つ名剣の聖霊、カイルアイネンとの邂逅だった。
その後、ラルドは優愛を連れて街道に戻った。
二人が出会った場所は街道沿いの野原で、優愛はそこに倒れていたのだ。
戻る途中に大きな木があって、そこにラルドの馬が繋がれている。大きく立派で賢そうな馬だ。
ラルドは、たまたま通りかかり優愛を見つけたのだという。
『運がよかったな』
カイルアイネンは、しみじみとそう言った。
今は早朝で人通りはないが、もうしばらくすると街道を種々雑多な人々が通るという。通行人の中には、気性の荒い無法者や奴隷を扱うあくどい商人もいるそうで、そんな輩に見つかった単身の女性がどんな目に遭うかは、聞くまでもないことだ。
もちろん、優愛の幸運は偶然ではなく神の采配なので、彼女がそんな目に遭うことはないだろうが、それでもラルドに助けられた事実は変わらない。
これだけでも感謝してもしきれないくらいお世話になっている優愛なのだが、さらに彼の手を借りることになった。
馬は一頭、人間は二人。このため、ラルドは当初優愛を馬に乗せ、自分は轡を持って徒歩で馬を引こうとしたのだが、彼女が一人では馬に乗れないことが判明したのだ。
(だって、牧場のポニーくらいしか乗ったことがないんだもの! こんなに大きな馬なんて近寄ったこともないわ)
言葉の通じぬ優愛は、心の中で必死に言い訳する。
地球の馬と異世界の馬が同じかどうかはわからないが、優愛の心境的にはこちらの馬がものすごく大きく見えた。なんとか乗せてもらった馬上は想像を遥かに超えて高く、鞍に座ったとたん怖くなったのだ。
優愛は顔を強張らせ、首をブンブンと横に振る。
「無理無理! 絶対無理です‼」
日本語が通じないラルドにも、その意思は間違いなく伝わった。
結果、優愛は馬上でラルドの前に座り体を支えてもらう形で二人乗りをすることになる。
(それだけでも、ものすごく恥ずかしくて申し訳なかったのに……私ったら、馬を走らせてから一時間も経たないうちに疲れで手綱に掴まっていられなくて落馬しかけたんだもの……ラルドさんがいなかったら、きっと大ケガしていたわ)
言葉も話せず馬にも乗れない優愛。しかも彼女は、何もない野原に一人で行き倒れていた。
それをどんな風に解釈したのかわからないが、ラルドはものすごく親切だ。
表情は変わらず無表情ながら、即座に馬を止め、優愛を抱き下ろす。そして彼女を片手で抱いたまま、脱いだ自分のマントを地面に敷いて、その上にそっと横たわらせてくれたのだ。
その後、慣れた様子でお湯を沸かしてお茶を淹れ、さらに、携帯食らしい固い乾パンや干し肉を食べ易いようにちぎっては、温めたスープに浸して渡してくれる。
――それは、まるで雛を世話する親鳥のごとき過保護っぷり。
(なんていうか、間違いなく男の人なのに〝おかん〟みたいよね?)
申し訳ないなと思いつつも、優愛はそう感じてしまった。
(カイルさんの言う通り、ラルドさんは本当に面倒見のいい優しい人なんだわ。顔は、ちょっと怖いけど)
その怖いも、決して顔が厳つくて〝怖い〟のではなく、整いすぎて畏怖する類の〝怖い〟だ。
ラルドは、表情が表に出て優しく笑えるようにさえなれば、世にいうスパダリと呼んでも遜色ない人物なのかもしれなかった。
そんな優しい人物に助けられた幸運に、優愛は心から感謝する。
ゆっくり休憩した後で、優愛は再び馬上の人となった。
今度は落ちないように気をつける彼女に、カイルアイネンが話しかけてくる。聖霊がコミュニケーション好きだというのは本当で、カイルアイネンは話し好きで聞き上手。彼との会話は途切れることがない。
『へぇ~? 神さまのミスで、こことは違う世界からやってきたんだって? そりゃあまたスゴイ経験したもんだな。二百年生きている俺だって、まだ神さまなんかと会ったことはないぜ』
これまでの事情を聞いたカイルアイネンは、しきりに感心した。腕を組み、体の割に大きな頭を頷かせる。
『そうか、それでユアは馬に乗ったことがないんだな? 尻は痛くないか?』
地球での生活をポツリポツリと話して聞かせる優愛に、カイルアイネンはそう聞いてきた。
ちなみに、彼女がカイルアイネンに話しかけるときは、声を出さず口の中で囁くくらいにとどめていた。そうでなければ、優愛は始終独り言を呟く怪しい女性とラルドに思われてしまうからだ。
聖霊は声ではなく思念を聞き取るのだそうで、どんなに小さな声でも問題ないという。
「痛くなんてありません!」
しかし、尻が痛いかと聞かれた優愛は、恥ずかしさのあまり大声を出してしまった。
「〇〇×□△?」
すぐさま、ラルドが声をかけてくる。
優愛を自分の前に座らせたラルドの頭は、まさしく彼女の頭上にあるため、声が上から降ってくる形だ。
『ラルドが心配しているぜ。疲れたようなら休憩するって言っている』
ちなみに、カイルアイネンの分身体は、優愛の目の前で馬のたてがみにしがみついていた。ポニーテールに結んだ黒髪が、まさしく馬の尻尾みたいにはねている。
カイルアイネンに、ラルドが言っていることを教えてもらった優愛は、慌てて首を横に振った。先ほどの休憩から、まだ一時間くらいしか経っていない。
「大丈夫です! さっきも休憩したばかりなのに、そんなに休んでもらったら申し訳ないです!」
カイルアイネン曰く、ラルドは地方での用務を終えて王都に帰還する途中で、それほど急ぐ旅ではないそうだ。しかし、用務での旅ということは、つまりは出張。出張中にそう何度も休憩を取るのは、ダメだろう。
首を捻って後ろを振り向き、優愛はラルドの顔を見上げ必死に大丈夫だと訴える。
「△△△〇、×××〇――」
『遠慮するなって言っている。もう少し進んだら休憩するってよ』
しかし、言葉は通じず、結局そう言われた彼女は申し訳なさに深くうつむいた。
(こんなに休んでばかりじゃ、行程が遅れちゃうわ)
彼女の心配など気にした風もなく、少し進んだ先で休憩できる空き地を見つけたラルドは、サッと馬を降り、再び軽々と優愛を抱き下ろす。マントを脱いで下に敷くと、今度は上着まで脱いで畳んだ上に座らせてくれた。
(絶対、お尻が痛いのに気がついているわよね?)
優愛の頬が火を噴きそうなほど熱くなる。
「◇〇〇△×◇×□?」
『またお茶でいいか、それとも体をリラックスさせてくれる薬草茶にしようかって聞いているぜ』
カイルアイネンの声が聞こえて顔を上げれば、確かにラルドは缶を両手に持っていた。ラベルを優愛に見せて首を傾げているので、どちらがいいかと聞いているのは間違いない。
(まさか私にカイルさんの声が聞こえるなんて、ラルドさんにはわからないでしょうしね)
聖霊の声は、ラルドには聞こえない。
『右手に持っているのが普通のお茶で、左手が薬草茶だな』
説明してもらった優愛は、考えてから左手の薬草茶のほうを指さした。
一つ頷いたラルドは、お湯を沸かして薬草茶を淹れはじめる。
「本当に優しい人なんですね」
優愛がそっと呟くと、カイルが即座に反応した。
『おうおう! そうだろう。子供時代のラルドは、傷ついた小動物や小鳥なんかを保護してはよく世話していたんだ。兄貴が死んでスティブ家を継ぐ立場になったりしなければ、家を出て薬師になりたいと言っていたこともあるんだぜ!』
小さな体で精一杯胸を反らし、カイルアイネンは自慢げに話す。だけど次にはガックリと頭を下げ悲しげな口調になった。
『本当にそうさせてやれたらよかったんだがな。スティブ家は、俺という名剣を代々受け継ぐ武の名門なんだ。その後継となったこいつには騎士以外の道はなく、しかも剣の才能があった。二十七歳の若さで騎士団の第五隊長にまでなっているのがその証拠だ』
ラルドの夢を叶えさせてやれなかったと、落ち込むカイルアイネン。
「カイルさんも、優しい聖霊なんですね」
思ったままの呟きに、カイルアイネンは照れて赤くなった顔を上げた。
『いやぁ。ま、まぁな。俺は二百年以上生きた剣だし、気遣いができて包容力があるのは当然さ! ユアも、遠慮なく俺を頼ってくれていいぜ!』
茶化しながらも、優愛に『頼れ』と言ってくれるのは、間違いなく優しさだ。
「ありがとうございます」
『お、おう! いやぁ、そう改まって礼を言われると、なんだか照れるな。……そうだ! 異世界から来て何も知らないだろうユアに、優しいカイルさんが、いろいろ教えてやろう!』
照れ隠しなのか、カイルアイネンは勢いよくそう言った。
聖霊とたくさん話すのは、ミュールから頼まれたことでもある。だから優愛はためらいなく頷く。
すると小さな聖霊は、意気揚々とこの世界について話しはじめた。
――まず、この世界はタサムと呼ばれている。
ここは、タサムで一番大きな大陸アラコアの西に位置するソージェイアという国だという。
ソージェイアは王政で、今の王はリビェナ女王。二十九歳の王太子を筆頭に三人の王子がいて、王女はいない。
国の西側は海。他は北から順番にアベスカ、バラーン、ネスヴァド、スモロ、ズレクという五つの国に囲まれている。
アベスカ、バラーン、ネスヴァドとは仲がよいが、スモロ、ズレクとは冷戦状態等々、立て板に水のごとく、カイルアイネンは説明する。
小さな手足を一生懸命動かして力説する姿は、とてつもなく可愛らしい。
『まあ、冷戦状態で、今は面と向かって戦争しているわけではないんだがな。十年前には、スモロと大きな戦をして、うちが勝っている。向こうが吹っ掛けてきた戦だったから、賠償として領土をかなり削ってやったんだ。それをスモロは逆恨みしてやがるのさ。スモロとズレクは昔からの友好国で、ズレクはスモロの肩を持っている』
「向こうが吹っ掛けてきた?」
戦争を仕掛けてくるなんて大事だ。いったい何があったのだろう?
気になって聞いてみると、カイルアイネンは大きなため息をついた。
『ああ。スモロの王女がうちの王太子に一目惚れしたのさ。ところが王女は一人っ子の跡取り王女。スモロ王は、娘を嫁がせるわけにはいかないんで王太子に婿に来いと言い出した』
「……王太子さまが婿ですか?」
それは、いくらなんでも難しいのではないか?
『ああ、三人も王子がいるのだから構わないだろうって言い分だ。バカも休み休み言えってんだよな。勝手に向こうで熱を上げといて、はいそれではと王太子を婿に出せるはずがないだろう? スモロとの婚姻自体もうちの国にとってそんなに旨味のある話じゃない。丁重に断ったのに逆切れして宣戦布告してきやがったのさ』
当時の王太子は十九歳。見目麗しく優秀で、しかもそれを鼻にかけることもないという好青年。国民の人気も高い完璧な王子さまだった。
それに比べスモロの王女は、この件からもわかるように、わがままで身勝手。自重をせずに好き放題で、外見も性格も最低なのだと言う。
――顔の美醜に文句をつけるつもりはありません。しかし、多少でも見目好くしようとする努力を怠り、あげく不摂生な生活で体を動かすこともままならないほど太った女性を妻にしたいと思うほど、私は世を儚んでおりません。
王太子のこの断りの言葉が、宣戦布告の引き金だったそうだ。
それを聞いた優愛は、ポカンとする。
「え? ちょっと待ってください! 王太子さまは誰からも好かれる好青年なんですよね?」
国民の人気も高い完璧な王子さまが言ったにしては、その言葉は容赦がなさすぎるのではないか?
(たとえ本当のことだとしても、言葉にトゲがあるわよね?)
『ん? ああ。俺も聖霊仲間からの又聞きだから、王太子がホントにそう言ったかどうかはわからない。もうちょっとオブラートにくるんだ言い方だったのかもしれないが……なんせ俺たちは思念をやりとりしているからなぁ』
つまり言い方はどうあれ、トゲがあったのは間違いないということだ。
顔を引きつらせる優愛には気づかず、カイルアイネンは話を続ける。
『どんな言い方だったにしろ、公式な記録は残ってないし、真相は知りようがないさ。……そもそも、王女がフラれたから開戦っていうのは史実としてよろしくないっていうんで、別にもっともらしい理由がつけられているはずだ。……まったく人間ってのは、変なところで見栄を張って、面倒くさいよな?』
そう言ってカイルアイネンは、ガハハと笑う。
優愛はパチパチと瞬きをした。
(えっと? ……ってことは、今教えてもらった話は、公式には伝わっていない裏話なの?)
そんな話を、聞いてもいいのだろうか?
『そうそう。面倒くさいと言えば、今のリビェナ女王も結構面倒くさい過去を持っているんだぜ。実は女王は第二子でな、本来なら先に生まれた兄貴が国王になるはずだった。ところが、こいつがとんでもないボンクラで、とてもじゃないけど玉座に座らせられる玉じゃない。……だから女王は秘密裏に子供ができない呪いを兄貴にかけたのさ。うちの王国は長子相続が原則で、王位に就くためには最低でも一人は子を生していなければならないからな。後継を残せぬ者に王になる資格はないんだ』
……優愛の背中を、嫌な汗が流れ落ちる。
「カイル、さん……そのお話は、皆さん――当然、ラルドさんも、知っておられるお話ですよね?」
恐る恐る聞いてみた。
『ああ? バカ言うなよ。秘密裏だって言っただろう? こんなヤバい秘密を知っている人間は、女王と、兄の王子に呪いをかけた張本人――女王の夫の魔法長官だけに決まっている。他に知る奴がいたら、そいつはとうの昔に首と胴体がおさらばしているさ』
ガハハと、カイルアイネンは笑い続ける。
優愛は……とても笑えなかった。
「だったら! どうしてそんな危険な〝秘密〟を話すんですか⁉ 私は、まだ自分の胴体とおさらばしたくありません!」
思わず首を守るように手をあて、小声だが強い口調で抗議する。
『は? いやだって、ユアは人間と話せないじゃないか? 秘密を知ったって平気だろう?』
「今は話せなくても、そのうち習って話せるようになる予定です! そのとき、うっかり話したらどうするんですか⁉」
カイルアイネンは、たっぷり三十秒ほど黙り込んだ。話し好きな聖霊としては、大変珍しいことである。そして――
『……いや、まあ、大丈夫さ。口を滑らせなければいいだけだ』
無責任極まりない返答だった。
ジトッと睨むと、カイルアイネンは焦って小さな手足を振り回す。
『だ、だってだな! こんな風に話せる相手は、俺たちにとって貴重なんだよ! 聖霊はそんなに多くない。そりゃぁ、王宮に行けば、俺並みに古びて意識を持つ〝モノ〟も多少はいるから会話もできるが、普通は滅多に出会えないんだ。現にこの旅の間中、俺はずっと独り言状態だった。久しぶりに会った話し相手に、口が軽くなるのは仕方ないことだろう?』
「そのおかげで私が殺されてしまったら、仕方ないではすみません!」
思わず大きな声で、優愛はカイルアイネンを叱りつけた。
「ユア⁉ 〇◇△?」
とたん、薬草茶のカップを片手にラルドが飛んでくる。
名前を呼ばれて心配そうに見つめられ、慌てて優愛は頭を横に振った。
「あ、大丈夫です。別にどこか痛いとか、そういうわけじゃありません!」
カイルアイネンに通訳してもらわなくても、ラルドが優愛を気づかっていることはよくわかる。
「×〇◇……ユア、〇△〇×〇?」
彼女の様子を確認して、なんともないとわかったのだろう。安堵した様子で息を吐き出したラルドが薬草茶の入ったカップを差し出してきた。
「ありがとうございます」
相変わらず無表情のラルドだが、慣れてきたのか、優愛は彼の感情を少し読めるようになっていた。
「顔は怖いけど、視線を合わせるために屈んでくれるところとか、ゆっくり手を動かしてくれるところとか、わかりやすい優しさがたくさんありますよね?」
『そうそう! そうなんだよ! いやぁ、やっぱりユアは見る目のあるいい奴だな! さすが、【聖霊の加護】を持っているだけある! うんうん、大したもんだ!』
間髪容れず、カイルアイネンに褒められる。
「そんなに褒めても、さっきのことは誤魔化されませんよ! いくら話相手ができて嬉しいからって、私の命が危うくなる話までしないでください!」
優愛がきっぱりと言うと、カイルアイネンは『わかった』と力なく答える。
小さな聖霊ががっくりと肩を落とせば、ラルドの腰に佩いた剣もなんとなくダラリとぶら下がって元気がないように見えた。
『これからは気をつけるよ。……そうだ! お詫びにとっておきのゴシップを教えよう! 宰相のテイリング侯爵の秘密なんだが――』
「そんな話は聞きたくありません‼ そう言ったでしょう⁉」
勢いよく話しはじめたカイルアイネンの言葉を、優愛は焦って遮る。
「〇××ユア⁉」
ラルドが、また心配して駆け寄ってきた。
どうやら聖霊と会話するだけという〝簡単〟なはずの善行は、かなり大変なことのようだ。
そしてこの後も、こんなやりとりが延々と繰り返されたのは、言うまでもない。
ちっとも懲りない名剣カイルアイネンなのだった。
その日は、もう少し馬を走らせて、見えてきた町に泊まることになった。
今までは整地された道と野原、せいぜい耕作された畑くらいしか見ていなかった優愛にとっては、はじめて見る異世界の町である。
石畳の道にレンガの家が並ぶ景色は、まるでヨーロッパの片田舎のよう。町へ入る前から少しずつすれ違うようになった人々の服装も、中世ヨーロッパを舞台にした映画の登場人物みたいだ。(うわぁ! すごくステキだわ)
優愛の気分は高揚した。
「○△○×……○○」
馬から降りて歩きながらキョロキョロと周囲を見回していると、ラルドが話しかけてくる。
「……え?」
彼を見上げた優愛は、ちょっとびっくりした。無表情が標準装備の騎士の口角が、ほんの少し上がっているように見える。
(ひょっとして、私、笑われていたの?)
先刻から小さな子供さながらに興味津々な態度をとっていた。笑われたのだとしても仕方ないふるまいである。
そう自覚したとたん、優愛の頬はカッと熱くなった。
しかし恐る恐る見上げたラルドの視線は優しくて、馬鹿にしている感じはない。
『宿に入る前に兵士の駐屯所にちょっと顔を出すって、ラルドは言っているぜ。ユアを保護したことを伝えて、身元がわかる情報がないか聞いてみるってさ。……そんなことしたって、異世界から来たユアの身元がわかるはずないんだが、ラルドは知りようがないからな』
そんな優愛の恥じらいには気づかなかったのだろう。ラルドの肩の上に座るカイルアイネンは、いつも通りの調子で、ラルドの言葉の意味を教えてくれた。
カイルアイネンの通訳はとても便利だが、同時に不便なこともある。
(カイルさんの言葉って、私には日本語にしか聞こえないんだもの)
つまり優愛は、カイルアイネンにはこちらの言葉を教えてもらえないのだ。ラルドの発音を聞き、それがどんな意味かをカイルアイネンに確認することはできるのだが、こちらから話すことはできない。
現状、自分の事情をラルドに説明する術は、どこにもなかった。
(まあ、私が異世界から来ましたなんて、言葉が通じても信じてもらえそうにないんだけど)
結果、ラルドには無駄骨を折らせることになる。
申し訳ないなと思っているとそれが顔に出たのだろう、ラルドは気にするなと言わんばかりに優愛の頭をポンポンと労るように撫でた。
(本当に優しい人なんだわ)
一見すれば、ラルドは無表情で冷たい雰囲気だ。しかし、その実態は本物の〝おかん〟なのだと、あらためて確信する。
「○○×◇――」
『あ、あと、ユアさえよかったら鑑定装置も使ってみないかって、ラルドは言っているぜ』
「鑑定?」
優愛は、カイルアイネンの言葉は本当なのだろうなと感じた。
(それにどの道、私はこの人を頼ることしかできないんだし)
ここが異世界ならば、優愛の常識は通じない。日本にいた頃のように、近くの交番に駆け込み住所と名前を告げて保護してもらうことはできないのだ。
(ミュールも私を助けてくれそうな存在のところへ直接トリップさせるって言っていたし、それがこの人なら申し出を受けて一緒に行くのが正解なのよね? それに、さっそく聖霊にも会えて、会話もできたわ)
そう思った優愛は、首を縦に振る。
「わかりました。お世話になります」
当然、彼女の言葉は騎士には通じなかった。
しかし、態度から自分の提案が受け入れられたのがわかったのだろう、騎士はなんとなく嬉しそうな様子になる。――まあ、無表情は変わらないので、あくまで〝嬉しそう〟という優愛の印象でしかないが。
「×〇◇□――ラルド・ロベリーグ・スティブ」
聞き取れない早口の後、ゆっくりした発音で「ラルド・ロベリーグ・スティブ」と言った騎士が、大きな手を優愛に向かって差し出した。
「ラルド……何?」
首を傾げる優愛に、カイルアイネンが説明してくれる。
『名前だ。ラルド・ロベリーグ・スティブっていうのは、こいつの名前だよ。手に掴まれって言っている。あと、お前の名前も聞いているぞ』
どうやら騎士――ラルドは、優愛に名乗ってくれたらしい。
優愛は慌てて彼の手を取った。手伝ってもらって地面に座り込んでいた体勢から立ち上がり、反対の手で自分の胸を指さす。
「優愛です。増倉優愛。私の名前です!」
しっかり名乗った。――なのに。
「ユア? ……デス・マスク……ラ・ユーア?」
「へ? ……い、いや、その! ……もうっ! ユアでいいです。……ユ・ア!」
(デス・マスクって何? いくらなんでも縁起が悪すぎるわ!)
そう思った優愛は、自分を「ユア」と名前で呼んでもらおうと提案する。
「ユア?」
コクコクと頷いた。
『へぇ~? ユアか、いい名だな。俺はさっきも言ったが〝名剣カイルアイネン〟だ!』
その言葉が聞こえると同時に、優愛の目の前でポン! と黒い煙が立ち上る。煙が消えた後には、身長十センチ、三頭身くらいの可愛いフィギュアみたいな人が現れた。
長い黒髪をポニーテールにしていて、ラルドと同じ服装、小さな剣を腰に差している。紺に金色のまじったラピスラズリのような大きな目が、優愛を見上げていた。
「え? ひょっとして、カイルアイネンさんですか?」
こんな不思議な存在は、彼以外にいないだろう。ミュールは、【聖霊の加護】があれば聖霊を見ることができるとも言っていた。
『おうっ! そうだ。本体は剣だが、まあ分身みたいなもんかな。昔は、もっとでかい姿にもなれたんだが、最近はこの大きさが精一杯だ。カイルさんって気安く呼んでくれていいぜ』
カイルアイネンは、楽しそうに話しかけてくる。
優愛はプルプル震えた。
「もうっ! そんな分身を出せるなら、どうしてもっと早く出してくれなかったんですか⁉」
そうしたら、あんなにラルドの下半身を凝視しないですんだのに!
『あ、いや? もうずいぶん分身を使っていなかったからな。出せることを忘れていた』
頭をかきかき、カイルアイネンはテヘッと可愛く笑う。
(か、可愛すぎて怒れない‼)
優愛は心の中で悶絶した。
こうして、互いに名乗り合った二人――正確には、二人と一本の剣は歩き出す。
これが、異世界トリップした優愛と、ソージェイア王国王都騎士団第五隊長ラルド・ロベリーグ・スティブ、そして彼の持つ名剣の聖霊、カイルアイネンとの邂逅だった。
その後、ラルドは優愛を連れて街道に戻った。
二人が出会った場所は街道沿いの野原で、優愛はそこに倒れていたのだ。
戻る途中に大きな木があって、そこにラルドの馬が繋がれている。大きく立派で賢そうな馬だ。
ラルドは、たまたま通りかかり優愛を見つけたのだという。
『運がよかったな』
カイルアイネンは、しみじみとそう言った。
今は早朝で人通りはないが、もうしばらくすると街道を種々雑多な人々が通るという。通行人の中には、気性の荒い無法者や奴隷を扱うあくどい商人もいるそうで、そんな輩に見つかった単身の女性がどんな目に遭うかは、聞くまでもないことだ。
もちろん、優愛の幸運は偶然ではなく神の采配なので、彼女がそんな目に遭うことはないだろうが、それでもラルドに助けられた事実は変わらない。
これだけでも感謝してもしきれないくらいお世話になっている優愛なのだが、さらに彼の手を借りることになった。
馬は一頭、人間は二人。このため、ラルドは当初優愛を馬に乗せ、自分は轡を持って徒歩で馬を引こうとしたのだが、彼女が一人では馬に乗れないことが判明したのだ。
(だって、牧場のポニーくらいしか乗ったことがないんだもの! こんなに大きな馬なんて近寄ったこともないわ)
言葉の通じぬ優愛は、心の中で必死に言い訳する。
地球の馬と異世界の馬が同じかどうかはわからないが、優愛の心境的にはこちらの馬がものすごく大きく見えた。なんとか乗せてもらった馬上は想像を遥かに超えて高く、鞍に座ったとたん怖くなったのだ。
優愛は顔を強張らせ、首をブンブンと横に振る。
「無理無理! 絶対無理です‼」
日本語が通じないラルドにも、その意思は間違いなく伝わった。
結果、優愛は馬上でラルドの前に座り体を支えてもらう形で二人乗りをすることになる。
(それだけでも、ものすごく恥ずかしくて申し訳なかったのに……私ったら、馬を走らせてから一時間も経たないうちに疲れで手綱に掴まっていられなくて落馬しかけたんだもの……ラルドさんがいなかったら、きっと大ケガしていたわ)
言葉も話せず馬にも乗れない優愛。しかも彼女は、何もない野原に一人で行き倒れていた。
それをどんな風に解釈したのかわからないが、ラルドはものすごく親切だ。
表情は変わらず無表情ながら、即座に馬を止め、優愛を抱き下ろす。そして彼女を片手で抱いたまま、脱いだ自分のマントを地面に敷いて、その上にそっと横たわらせてくれたのだ。
その後、慣れた様子でお湯を沸かしてお茶を淹れ、さらに、携帯食らしい固い乾パンや干し肉を食べ易いようにちぎっては、温めたスープに浸して渡してくれる。
――それは、まるで雛を世話する親鳥のごとき過保護っぷり。
(なんていうか、間違いなく男の人なのに〝おかん〟みたいよね?)
申し訳ないなと思いつつも、優愛はそう感じてしまった。
(カイルさんの言う通り、ラルドさんは本当に面倒見のいい優しい人なんだわ。顔は、ちょっと怖いけど)
その怖いも、決して顔が厳つくて〝怖い〟のではなく、整いすぎて畏怖する類の〝怖い〟だ。
ラルドは、表情が表に出て優しく笑えるようにさえなれば、世にいうスパダリと呼んでも遜色ない人物なのかもしれなかった。
そんな優しい人物に助けられた幸運に、優愛は心から感謝する。
ゆっくり休憩した後で、優愛は再び馬上の人となった。
今度は落ちないように気をつける彼女に、カイルアイネンが話しかけてくる。聖霊がコミュニケーション好きだというのは本当で、カイルアイネンは話し好きで聞き上手。彼との会話は途切れることがない。
『へぇ~? 神さまのミスで、こことは違う世界からやってきたんだって? そりゃあまたスゴイ経験したもんだな。二百年生きている俺だって、まだ神さまなんかと会ったことはないぜ』
これまでの事情を聞いたカイルアイネンは、しきりに感心した。腕を組み、体の割に大きな頭を頷かせる。
『そうか、それでユアは馬に乗ったことがないんだな? 尻は痛くないか?』
地球での生活をポツリポツリと話して聞かせる優愛に、カイルアイネンはそう聞いてきた。
ちなみに、彼女がカイルアイネンに話しかけるときは、声を出さず口の中で囁くくらいにとどめていた。そうでなければ、優愛は始終独り言を呟く怪しい女性とラルドに思われてしまうからだ。
聖霊は声ではなく思念を聞き取るのだそうで、どんなに小さな声でも問題ないという。
「痛くなんてありません!」
しかし、尻が痛いかと聞かれた優愛は、恥ずかしさのあまり大声を出してしまった。
「〇〇×□△?」
すぐさま、ラルドが声をかけてくる。
優愛を自分の前に座らせたラルドの頭は、まさしく彼女の頭上にあるため、声が上から降ってくる形だ。
『ラルドが心配しているぜ。疲れたようなら休憩するって言っている』
ちなみに、カイルアイネンの分身体は、優愛の目の前で馬のたてがみにしがみついていた。ポニーテールに結んだ黒髪が、まさしく馬の尻尾みたいにはねている。
カイルアイネンに、ラルドが言っていることを教えてもらった優愛は、慌てて首を横に振った。先ほどの休憩から、まだ一時間くらいしか経っていない。
「大丈夫です! さっきも休憩したばかりなのに、そんなに休んでもらったら申し訳ないです!」
カイルアイネン曰く、ラルドは地方での用務を終えて王都に帰還する途中で、それほど急ぐ旅ではないそうだ。しかし、用務での旅ということは、つまりは出張。出張中にそう何度も休憩を取るのは、ダメだろう。
首を捻って後ろを振り向き、優愛はラルドの顔を見上げ必死に大丈夫だと訴える。
「△△△〇、×××〇――」
『遠慮するなって言っている。もう少し進んだら休憩するってよ』
しかし、言葉は通じず、結局そう言われた彼女は申し訳なさに深くうつむいた。
(こんなに休んでばかりじゃ、行程が遅れちゃうわ)
彼女の心配など気にした風もなく、少し進んだ先で休憩できる空き地を見つけたラルドは、サッと馬を降り、再び軽々と優愛を抱き下ろす。マントを脱いで下に敷くと、今度は上着まで脱いで畳んだ上に座らせてくれた。
(絶対、お尻が痛いのに気がついているわよね?)
優愛の頬が火を噴きそうなほど熱くなる。
「◇〇〇△×◇×□?」
『またお茶でいいか、それとも体をリラックスさせてくれる薬草茶にしようかって聞いているぜ』
カイルアイネンの声が聞こえて顔を上げれば、確かにラルドは缶を両手に持っていた。ラベルを優愛に見せて首を傾げているので、どちらがいいかと聞いているのは間違いない。
(まさか私にカイルさんの声が聞こえるなんて、ラルドさんにはわからないでしょうしね)
聖霊の声は、ラルドには聞こえない。
『右手に持っているのが普通のお茶で、左手が薬草茶だな』
説明してもらった優愛は、考えてから左手の薬草茶のほうを指さした。
一つ頷いたラルドは、お湯を沸かして薬草茶を淹れはじめる。
「本当に優しい人なんですね」
優愛がそっと呟くと、カイルが即座に反応した。
『おうおう! そうだろう。子供時代のラルドは、傷ついた小動物や小鳥なんかを保護してはよく世話していたんだ。兄貴が死んでスティブ家を継ぐ立場になったりしなければ、家を出て薬師になりたいと言っていたこともあるんだぜ!』
小さな体で精一杯胸を反らし、カイルアイネンは自慢げに話す。だけど次にはガックリと頭を下げ悲しげな口調になった。
『本当にそうさせてやれたらよかったんだがな。スティブ家は、俺という名剣を代々受け継ぐ武の名門なんだ。その後継となったこいつには騎士以外の道はなく、しかも剣の才能があった。二十七歳の若さで騎士団の第五隊長にまでなっているのがその証拠だ』
ラルドの夢を叶えさせてやれなかったと、落ち込むカイルアイネン。
「カイルさんも、優しい聖霊なんですね」
思ったままの呟きに、カイルアイネンは照れて赤くなった顔を上げた。
『いやぁ。ま、まぁな。俺は二百年以上生きた剣だし、気遣いができて包容力があるのは当然さ! ユアも、遠慮なく俺を頼ってくれていいぜ!』
茶化しながらも、優愛に『頼れ』と言ってくれるのは、間違いなく優しさだ。
「ありがとうございます」
『お、おう! いやぁ、そう改まって礼を言われると、なんだか照れるな。……そうだ! 異世界から来て何も知らないだろうユアに、優しいカイルさんが、いろいろ教えてやろう!』
照れ隠しなのか、カイルアイネンは勢いよくそう言った。
聖霊とたくさん話すのは、ミュールから頼まれたことでもある。だから優愛はためらいなく頷く。
すると小さな聖霊は、意気揚々とこの世界について話しはじめた。
――まず、この世界はタサムと呼ばれている。
ここは、タサムで一番大きな大陸アラコアの西に位置するソージェイアという国だという。
ソージェイアは王政で、今の王はリビェナ女王。二十九歳の王太子を筆頭に三人の王子がいて、王女はいない。
国の西側は海。他は北から順番にアベスカ、バラーン、ネスヴァド、スモロ、ズレクという五つの国に囲まれている。
アベスカ、バラーン、ネスヴァドとは仲がよいが、スモロ、ズレクとは冷戦状態等々、立て板に水のごとく、カイルアイネンは説明する。
小さな手足を一生懸命動かして力説する姿は、とてつもなく可愛らしい。
『まあ、冷戦状態で、今は面と向かって戦争しているわけではないんだがな。十年前には、スモロと大きな戦をして、うちが勝っている。向こうが吹っ掛けてきた戦だったから、賠償として領土をかなり削ってやったんだ。それをスモロは逆恨みしてやがるのさ。スモロとズレクは昔からの友好国で、ズレクはスモロの肩を持っている』
「向こうが吹っ掛けてきた?」
戦争を仕掛けてくるなんて大事だ。いったい何があったのだろう?
気になって聞いてみると、カイルアイネンは大きなため息をついた。
『ああ。スモロの王女がうちの王太子に一目惚れしたのさ。ところが王女は一人っ子の跡取り王女。スモロ王は、娘を嫁がせるわけにはいかないんで王太子に婿に来いと言い出した』
「……王太子さまが婿ですか?」
それは、いくらなんでも難しいのではないか?
『ああ、三人も王子がいるのだから構わないだろうって言い分だ。バカも休み休み言えってんだよな。勝手に向こうで熱を上げといて、はいそれではと王太子を婿に出せるはずがないだろう? スモロとの婚姻自体もうちの国にとってそんなに旨味のある話じゃない。丁重に断ったのに逆切れして宣戦布告してきやがったのさ』
当時の王太子は十九歳。見目麗しく優秀で、しかもそれを鼻にかけることもないという好青年。国民の人気も高い完璧な王子さまだった。
それに比べスモロの王女は、この件からもわかるように、わがままで身勝手。自重をせずに好き放題で、外見も性格も最低なのだと言う。
――顔の美醜に文句をつけるつもりはありません。しかし、多少でも見目好くしようとする努力を怠り、あげく不摂生な生活で体を動かすこともままならないほど太った女性を妻にしたいと思うほど、私は世を儚んでおりません。
王太子のこの断りの言葉が、宣戦布告の引き金だったそうだ。
それを聞いた優愛は、ポカンとする。
「え? ちょっと待ってください! 王太子さまは誰からも好かれる好青年なんですよね?」
国民の人気も高い完璧な王子さまが言ったにしては、その言葉は容赦がなさすぎるのではないか?
(たとえ本当のことだとしても、言葉にトゲがあるわよね?)
『ん? ああ。俺も聖霊仲間からの又聞きだから、王太子がホントにそう言ったかどうかはわからない。もうちょっとオブラートにくるんだ言い方だったのかもしれないが……なんせ俺たちは思念をやりとりしているからなぁ』
つまり言い方はどうあれ、トゲがあったのは間違いないということだ。
顔を引きつらせる優愛には気づかず、カイルアイネンは話を続ける。
『どんな言い方だったにしろ、公式な記録は残ってないし、真相は知りようがないさ。……そもそも、王女がフラれたから開戦っていうのは史実としてよろしくないっていうんで、別にもっともらしい理由がつけられているはずだ。……まったく人間ってのは、変なところで見栄を張って、面倒くさいよな?』
そう言ってカイルアイネンは、ガハハと笑う。
優愛はパチパチと瞬きをした。
(えっと? ……ってことは、今教えてもらった話は、公式には伝わっていない裏話なの?)
そんな話を、聞いてもいいのだろうか?
『そうそう。面倒くさいと言えば、今のリビェナ女王も結構面倒くさい過去を持っているんだぜ。実は女王は第二子でな、本来なら先に生まれた兄貴が国王になるはずだった。ところが、こいつがとんでもないボンクラで、とてもじゃないけど玉座に座らせられる玉じゃない。……だから女王は秘密裏に子供ができない呪いを兄貴にかけたのさ。うちの王国は長子相続が原則で、王位に就くためには最低でも一人は子を生していなければならないからな。後継を残せぬ者に王になる資格はないんだ』
……優愛の背中を、嫌な汗が流れ落ちる。
「カイル、さん……そのお話は、皆さん――当然、ラルドさんも、知っておられるお話ですよね?」
恐る恐る聞いてみた。
『ああ? バカ言うなよ。秘密裏だって言っただろう? こんなヤバい秘密を知っている人間は、女王と、兄の王子に呪いをかけた張本人――女王の夫の魔法長官だけに決まっている。他に知る奴がいたら、そいつはとうの昔に首と胴体がおさらばしているさ』
ガハハと、カイルアイネンは笑い続ける。
優愛は……とても笑えなかった。
「だったら! どうしてそんな危険な〝秘密〟を話すんですか⁉ 私は、まだ自分の胴体とおさらばしたくありません!」
思わず首を守るように手をあて、小声だが強い口調で抗議する。
『は? いやだって、ユアは人間と話せないじゃないか? 秘密を知ったって平気だろう?』
「今は話せなくても、そのうち習って話せるようになる予定です! そのとき、うっかり話したらどうするんですか⁉」
カイルアイネンは、たっぷり三十秒ほど黙り込んだ。話し好きな聖霊としては、大変珍しいことである。そして――
『……いや、まあ、大丈夫さ。口を滑らせなければいいだけだ』
無責任極まりない返答だった。
ジトッと睨むと、カイルアイネンは焦って小さな手足を振り回す。
『だ、だってだな! こんな風に話せる相手は、俺たちにとって貴重なんだよ! 聖霊はそんなに多くない。そりゃぁ、王宮に行けば、俺並みに古びて意識を持つ〝モノ〟も多少はいるから会話もできるが、普通は滅多に出会えないんだ。現にこの旅の間中、俺はずっと独り言状態だった。久しぶりに会った話し相手に、口が軽くなるのは仕方ないことだろう?』
「そのおかげで私が殺されてしまったら、仕方ないではすみません!」
思わず大きな声で、優愛はカイルアイネンを叱りつけた。
「ユア⁉ 〇◇△?」
とたん、薬草茶のカップを片手にラルドが飛んでくる。
名前を呼ばれて心配そうに見つめられ、慌てて優愛は頭を横に振った。
「あ、大丈夫です。別にどこか痛いとか、そういうわけじゃありません!」
カイルアイネンに通訳してもらわなくても、ラルドが優愛を気づかっていることはよくわかる。
「×〇◇……ユア、〇△〇×〇?」
彼女の様子を確認して、なんともないとわかったのだろう。安堵した様子で息を吐き出したラルドが薬草茶の入ったカップを差し出してきた。
「ありがとうございます」
相変わらず無表情のラルドだが、慣れてきたのか、優愛は彼の感情を少し読めるようになっていた。
「顔は怖いけど、視線を合わせるために屈んでくれるところとか、ゆっくり手を動かしてくれるところとか、わかりやすい優しさがたくさんありますよね?」
『そうそう! そうなんだよ! いやぁ、やっぱりユアは見る目のあるいい奴だな! さすが、【聖霊の加護】を持っているだけある! うんうん、大したもんだ!』
間髪容れず、カイルアイネンに褒められる。
「そんなに褒めても、さっきのことは誤魔化されませんよ! いくら話相手ができて嬉しいからって、私の命が危うくなる話までしないでください!」
優愛がきっぱりと言うと、カイルアイネンは『わかった』と力なく答える。
小さな聖霊ががっくりと肩を落とせば、ラルドの腰に佩いた剣もなんとなくダラリとぶら下がって元気がないように見えた。
『これからは気をつけるよ。……そうだ! お詫びにとっておきのゴシップを教えよう! 宰相のテイリング侯爵の秘密なんだが――』
「そんな話は聞きたくありません‼ そう言ったでしょう⁉」
勢いよく話しはじめたカイルアイネンの言葉を、優愛は焦って遮る。
「〇××ユア⁉」
ラルドが、また心配して駆け寄ってきた。
どうやら聖霊と会話するだけという〝簡単〟なはずの善行は、かなり大変なことのようだ。
そしてこの後も、こんなやりとりが延々と繰り返されたのは、言うまでもない。
ちっとも懲りない名剣カイルアイネンなのだった。
その日は、もう少し馬を走らせて、見えてきた町に泊まることになった。
今までは整地された道と野原、せいぜい耕作された畑くらいしか見ていなかった優愛にとっては、はじめて見る異世界の町である。
石畳の道にレンガの家が並ぶ景色は、まるでヨーロッパの片田舎のよう。町へ入る前から少しずつすれ違うようになった人々の服装も、中世ヨーロッパを舞台にした映画の登場人物みたいだ。(うわぁ! すごくステキだわ)
優愛の気分は高揚した。
「○△○×……○○」
馬から降りて歩きながらキョロキョロと周囲を見回していると、ラルドが話しかけてくる。
「……え?」
彼を見上げた優愛は、ちょっとびっくりした。無表情が標準装備の騎士の口角が、ほんの少し上がっているように見える。
(ひょっとして、私、笑われていたの?)
先刻から小さな子供さながらに興味津々な態度をとっていた。笑われたのだとしても仕方ないふるまいである。
そう自覚したとたん、優愛の頬はカッと熱くなった。
しかし恐る恐る見上げたラルドの視線は優しくて、馬鹿にしている感じはない。
『宿に入る前に兵士の駐屯所にちょっと顔を出すって、ラルドは言っているぜ。ユアを保護したことを伝えて、身元がわかる情報がないか聞いてみるってさ。……そんなことしたって、異世界から来たユアの身元がわかるはずないんだが、ラルドは知りようがないからな』
そんな優愛の恥じらいには気づかなかったのだろう。ラルドの肩の上に座るカイルアイネンは、いつも通りの調子で、ラルドの言葉の意味を教えてくれた。
カイルアイネンの通訳はとても便利だが、同時に不便なこともある。
(カイルさんの言葉って、私には日本語にしか聞こえないんだもの)
つまり優愛は、カイルアイネンにはこちらの言葉を教えてもらえないのだ。ラルドの発音を聞き、それがどんな意味かをカイルアイネンに確認することはできるのだが、こちらから話すことはできない。
現状、自分の事情をラルドに説明する術は、どこにもなかった。
(まあ、私が異世界から来ましたなんて、言葉が通じても信じてもらえそうにないんだけど)
結果、ラルドには無駄骨を折らせることになる。
申し訳ないなと思っているとそれが顔に出たのだろう、ラルドは気にするなと言わんばかりに優愛の頭をポンポンと労るように撫でた。
(本当に優しい人なんだわ)
一見すれば、ラルドは無表情で冷たい雰囲気だ。しかし、その実態は本物の〝おかん〟なのだと、あらためて確信する。
「○○×◇――」
『あ、あと、ユアさえよかったら鑑定装置も使ってみないかって、ラルドは言っているぜ』
「鑑定?」
21
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
