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エピローグ
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懸念が無くなれば、俺の答えなんて考えるまでもなく決まっている。
あの奇跡のような異世界トリップから帰ってきてから、ずっと――――そう、もうずっと、俺は、もう一度ロダに行きたいと考えていたのだから。
行って、アディやみんなに会いたかった。
そして、叶う事ならば、そのままあの世界で生きていきたいと願う。
人間と獣人と有鱗種の暮らす、不思議な、でも、みんなが熱いあの世界で――――
ヴィヴォは、しわくちゃな顔をますますしわくちゃにして笑った。
「やれ、良かった。これでわしも心置きなく大往生できますじゃ。ご安心くだされユウさま、わしが責任をもって安全確実にユウさまを我らの世界にお連れしましょう。――――そうじゃ! ユウさま、サービスに我らの世界へお渡り後の姿を、ユウさまのお好きなものに変えてさしあげますぞ。どんな種族がお好みですじゃ?」
「へっ?」
俺はびっくりして言葉を失った。
(種族ってどういうことだ?)
「どんな姿もお好みのままですじゃ。さあ、どれになされますかの?」
「どれって……別にそんな」
あんまりびっくりした俺は、ついそう答えてしまった。
どれでも良いって意味じゃない。
そんな必要ないっていう意味でそう言ったんだ!
なのに、俺のその言葉を聞いたヴィヴォは嬉しそうに笑みを深くする。
俺の背中には、何故か悪寒が走った。
「ユウさまは遠慮深いお方じゃのう。――――わかりました。では、ユウさまのお姿は、我らの世界で一番ユウさまのお出でを願っている者に合わせたモノにするといたしましょう。生きとし生ける者にとって、一番の幸せは自分を一番恋うてくれる者と両想いになって添い遂げる事ですじゃ。我らのために異世界に渡るユウさまには誰よりも幸せになってもらわねばなりませんからのぉ」
ヴィヴォの笑みは、今まで見たどんな笑みよりもイイものだった。
「へ? ――――合わせるって」
「つまり、ユウさまはあちらでユウさまを一番待ち望んでいる者と結ばれる姿に変わるのですじゃ。――――例えば、それがフィフィであれば、ユウさまは獣人の男になるという事です」
「獣人! ……俺が?」
「そう。フィフィであればですがの。リーファさまであれば、人間の男のままになりますかの」
……俺は、言われた内容をじっくりゆっくり考えてみた。
(――――俺を、一番待ち望んでいる者に合わせた姿に?)
そして、その相手と両想いになって向こうの世界で添い遂げろとヴィヴォは言っているのだろうか?
(え? それって何か俺の常識と違いはしないか?)
普通は自分が一番好きな相手と両想いになるのが幸せの定番だろう?
異世界だから考え方が違うのだろうか?
俺は真剣に考え始めたのだが――――
(……って! ちょっと待て!)
俺は、重大な言葉を見落としていたことに気がついた。
獣人だの人間だのはともかく、どうしてそこに男って断りが付くんだ!?
ヴィヴォは、ニタァと笑った。
「ちなみに、わしがこの話をした時点での神殿関係者の予測の一番人気は、ユウさまは人間となってロダの王妃となるでしたじゃ。対抗馬が獣人族の長の番となるで、大穴は、有鱗種となり産卵記録を塗り替えるでしたな」
「なっ、なっ、なっ――――」
俺は、口をパクパクと開けては閉じた。
(有鱗種って、卵生だったのかっ? ――――って、違う! 何だ、王妃って!?)
王妃というからには、その性別は……
俺は顔を真っ青にして、首をブルブルと横に振った。
ヴィヴォは尚も嬉しそうに言葉を続ける。
「わしの個人的なお薦めルートは、“王妃となったユウ様を諦めきれずに獣人族の長がさらい――――そのため人間と獣人族の間に争いが起こり――――その争いの中で人間の王と獣人の長を同時に庇った王妃が倒れ――――愛しい者の死によって、ようやく戦いの愚かさに気づいた王と獣人の長が永遠の平和を誓う!” という、愛と感動の一大スペクタクル、ヒューマン、ハッピーエンド物語ですじゃ。……ああ。想像しただけで、感動の涙がこみ上げてきますじゃ。死んでしまってこの先を自分の目で見られぬ事が口惜しい!」
……ヴィヴォは、本当に涙ぐんでいた。
ちょっと、待て!
その話のどこがハッピーエンドなんだ?
っていうか、俺死んじゃっているよね?
女になったあげく、死んでしまう物語なんて、怖すぎるだろう!?
俺は慌てて力一杯断ろうとした。
「ヴィヴォ、俺は別にこのままで――――」
「ご遠慮なさいますな。全てこのヴィヴォに、ドン! と任せておきなされ」
(――――任せられるかぁっ!!)
俺の心からの叫びが声になる前に――――急に目の前がクラクラと霞みはじめた。
以前たった一度だけ経験した立ちくらみに焦る俺の手が、誰かにガシッ! と掴まれる。
『ユウ!!』
懐かしい、滅多にないような魅惑的なバリトンボイスが聞こえた。
胸がドクリと鳴って……ジンと、痺れる。
急激に引っ張り上げられて、釣り上げられる魚の気分を味わう。
(――――俺はどうなってしまうんだぁっ!?)
懐かしいあの世界に俺が帰るまで――――あと、もう少し。
めちゃくちゃに焦りながらも、俺の胸はドキドキと高鳴っていた。
ハッピーエンド?
(絶対、違うだろうっ!!)
俺の人生2度目の、そして最後の異世界トリップがはじまった――――
――――――――――――
これにて、本当に完結です。
ハッピーエンドタグの詐称でない事を祈っています。
あの奇跡のような異世界トリップから帰ってきてから、ずっと――――そう、もうずっと、俺は、もう一度ロダに行きたいと考えていたのだから。
行って、アディやみんなに会いたかった。
そして、叶う事ならば、そのままあの世界で生きていきたいと願う。
人間と獣人と有鱗種の暮らす、不思議な、でも、みんなが熱いあの世界で――――
ヴィヴォは、しわくちゃな顔をますますしわくちゃにして笑った。
「やれ、良かった。これでわしも心置きなく大往生できますじゃ。ご安心くだされユウさま、わしが責任をもって安全確実にユウさまを我らの世界にお連れしましょう。――――そうじゃ! ユウさま、サービスに我らの世界へお渡り後の姿を、ユウさまのお好きなものに変えてさしあげますぞ。どんな種族がお好みですじゃ?」
「へっ?」
俺はびっくりして言葉を失った。
(種族ってどういうことだ?)
「どんな姿もお好みのままですじゃ。さあ、どれになされますかの?」
「どれって……別にそんな」
あんまりびっくりした俺は、ついそう答えてしまった。
どれでも良いって意味じゃない。
そんな必要ないっていう意味でそう言ったんだ!
なのに、俺のその言葉を聞いたヴィヴォは嬉しそうに笑みを深くする。
俺の背中には、何故か悪寒が走った。
「ユウさまは遠慮深いお方じゃのう。――――わかりました。では、ユウさまのお姿は、我らの世界で一番ユウさまのお出でを願っている者に合わせたモノにするといたしましょう。生きとし生ける者にとって、一番の幸せは自分を一番恋うてくれる者と両想いになって添い遂げる事ですじゃ。我らのために異世界に渡るユウさまには誰よりも幸せになってもらわねばなりませんからのぉ」
ヴィヴォの笑みは、今まで見たどんな笑みよりもイイものだった。
「へ? ――――合わせるって」
「つまり、ユウさまはあちらでユウさまを一番待ち望んでいる者と結ばれる姿に変わるのですじゃ。――――例えば、それがフィフィであれば、ユウさまは獣人の男になるという事です」
「獣人! ……俺が?」
「そう。フィフィであればですがの。リーファさまであれば、人間の男のままになりますかの」
……俺は、言われた内容をじっくりゆっくり考えてみた。
(――――俺を、一番待ち望んでいる者に合わせた姿に?)
そして、その相手と両想いになって向こうの世界で添い遂げろとヴィヴォは言っているのだろうか?
(え? それって何か俺の常識と違いはしないか?)
普通は自分が一番好きな相手と両想いになるのが幸せの定番だろう?
異世界だから考え方が違うのだろうか?
俺は真剣に考え始めたのだが――――
(……って! ちょっと待て!)
俺は、重大な言葉を見落としていたことに気がついた。
獣人だの人間だのはともかく、どうしてそこに男って断りが付くんだ!?
ヴィヴォは、ニタァと笑った。
「ちなみに、わしがこの話をした時点での神殿関係者の予測の一番人気は、ユウさまは人間となってロダの王妃となるでしたじゃ。対抗馬が獣人族の長の番となるで、大穴は、有鱗種となり産卵記録を塗り替えるでしたな」
「なっ、なっ、なっ――――」
俺は、口をパクパクと開けては閉じた。
(有鱗種って、卵生だったのかっ? ――――って、違う! 何だ、王妃って!?)
王妃というからには、その性別は……
俺は顔を真っ青にして、首をブルブルと横に振った。
ヴィヴォは尚も嬉しそうに言葉を続ける。
「わしの個人的なお薦めルートは、“王妃となったユウ様を諦めきれずに獣人族の長がさらい――――そのため人間と獣人族の間に争いが起こり――――その争いの中で人間の王と獣人の長を同時に庇った王妃が倒れ――――愛しい者の死によって、ようやく戦いの愚かさに気づいた王と獣人の長が永遠の平和を誓う!” という、愛と感動の一大スペクタクル、ヒューマン、ハッピーエンド物語ですじゃ。……ああ。想像しただけで、感動の涙がこみ上げてきますじゃ。死んでしまってこの先を自分の目で見られぬ事が口惜しい!」
……ヴィヴォは、本当に涙ぐんでいた。
ちょっと、待て!
その話のどこがハッピーエンドなんだ?
っていうか、俺死んじゃっているよね?
女になったあげく、死んでしまう物語なんて、怖すぎるだろう!?
俺は慌てて力一杯断ろうとした。
「ヴィヴォ、俺は別にこのままで――――」
「ご遠慮なさいますな。全てこのヴィヴォに、ドン! と任せておきなされ」
(――――任せられるかぁっ!!)
俺の心からの叫びが声になる前に――――急に目の前がクラクラと霞みはじめた。
以前たった一度だけ経験した立ちくらみに焦る俺の手が、誰かにガシッ! と掴まれる。
『ユウ!!』
懐かしい、滅多にないような魅惑的なバリトンボイスが聞こえた。
胸がドクリと鳴って……ジンと、痺れる。
急激に引っ張り上げられて、釣り上げられる魚の気分を味わう。
(――――俺はどうなってしまうんだぁっ!?)
懐かしいあの世界に俺が帰るまで――――あと、もう少し。
めちゃくちゃに焦りながらも、俺の胸はドキドキと高鳴っていた。
ハッピーエンド?
(絶対、違うだろうっ!!)
俺の人生2度目の、そして最後の異世界トリップがはじまった――――
――――――――――――
これにて、本当に完結です。
ハッピーエンドタグの詐称でない事を祈っています。
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