神様探しの放課後

堀口光

文字の大きさ
7 / 35
第2話 現る

2-2

しおりを挟む
 教室には、予想通りまだほとんどの生徒が来ておらず、所々に数人が座っているだけだった。知った顔はない。僕が扉を開けると、その全員がこちらを向いて、すぐに視線を逸らす。居心地が悪いったらありゃしない。あまり気にしないことにして、端っこの自分の席へと急ぐ。

 鞄から筆箱を取り出して机の中に放り込むと、もうやることがなくなってしまった。クラスを見渡してみると、どいつもこいつも黙って席に座っていて、まるで葬式のような静けさが漂う。思わず出そうになった溜息を飲み込んで、頬杖をついて窓の外を眺めた。

 高校生になって、仲の良かった友人とも離れ離れになって、誰もが振り出しに立たされる。賽を振ろうとしないのは、まだ二日目だからか、それとも、全員が僕のような考えを持っているからなのか。つまり、他人との関わりなど面倒くさいという考え。

 他人が聞けば、自分から他人に関わる勇気のない奴の女々しい言い訳だと思われるかもしれない。別に、それでもいい。多分事実だし、それこそ、どうせそんな奴らと関わりを持つことなどないのだから。

 ふと下らないことを考えてしまっている自分に気づいて、思わずため息を吐く。いつからだろう、事あるごとにこんなことを考えてしまうようになってしまったのは。いくら暇だからって、こんなどうしょうもないことを考えていても仕方がない。これじゃあ本当にただの言い訳でしかないな。

 思考を中断しようとしたところで、今まで保たれていたクラスの静寂が突然破られた。大きな音を立てて扉が勢い良く開き、元気な声が教室に響き渡る。

「おっはよーございまーす!」 

 全員が唖然とした顔でそちらを見た。僕の時と違い、目を見開いて凝視している。声の主が誰かはもちろんわかっていたけど、僕も同じような表情で彼女の方を向いた。

「あー、優君じゃん! 相変わらず早いなあ」

 そんな周りの様子にはまったく動じずに、僕を指差してそう大きな声で言った彼女は、スキップでもするかのように軽い足取りでこちらに近づいて、机の真横に立った。鞄を肩から提げて、楽しそうな表情を浮かべている。

 今のところ、僕に積極的に関わってこようとしてくるのはこの如月だけだ。こいつだけは、僕の思いや態度に関係なく、ずかずかと僕の領域に入ってくる。そんな如月に対してどのような感情を抱いているのかが、実は未だに僕には判断がついていない。諦め、と言えば話は簡単であるが、どうもそれだけではない気がする。

 もしかして僕は、如月に対して――

「どうしたの、優君? 怖い顔しちゃってさあ。ほら、笑って笑って!」

 如月の声で、僕は現実に戻された。はっとして横を見ると、如月がにっこりと笑いながら両手でよくわからないジェスチャーを作っている。どうやら、笑え、というアピールらしい。

 僕は肩を竦めて、それまでの思考を全て意識の外へ追いやった。あまりにも馬鹿らしい自分の考えに、激しく嫌気がさしたからである。何朝からわけわからない感慨に耽ってんだ、僕は。これなら、円周率でも覚えていた方がまだ有意義だ。

 とりあえず如月の言うとおり笑おうとした僕だったが、不意にさっきの下駄箱の手紙のことを思い出した。そういえば、こいつが犯人有力候補だったな。ポケットから手紙を取り出し、彼女に突きつける。

 だが、如月の反応は実に予想外だった。

「あー! それ、優君も貰ってたの? こりゃびっくりだぁ!」
「……え? これやったのって、お前じゃないのか?」
「ぶー、違うよー。私も、さっき下駄箱で見つけたの」

 頬を膨らませて首を振る如月。冗談ではなく、本当に否定しているように見える。

 僕は目を丸くして、首を傾げた。すっかりこいつの仕業だとばかり思っていたもんだから、彼女がこれほどまでに否定するなんてまったく考えていなかった。

「だいたいこれ、優君のも下駄箱に入ってたんでしょ? 今来た私が、いつどうやって優君の下駄箱に入れられるっていうのさ」

 呆れるような口調な如月の言葉に、僕は思わず頷く。そうだ、昨日下駄箱を覗いた時は入ってなかったし、そのあと如月と一緒に帰ったから、こいつには入れるチャンスはなかったはずだ。

 そりゃ、僕と別れてから学校に戻って来たり、実は僕より先に学校に来てて、どこかに隠れていたっていう方法もあるわけだけど、そこまでしてこの手紙をわざわざ下駄箱に入れる理由があるのか、という疑問に行きつく。

「じゃあ、他の誰かがやったってことになるのか?」
「私か優君がやったんじゃないなら、それしかないんじゃないかな」

 指を一本立てて、如月は愉快そうに言う。この微妙に不可解な状況を、どこか楽しんでいるような様子だ。

 僕はもう一度その手紙を読んだ。真っ白な紙の真ん中付近に文字は綺麗に羅列していて、一見パソコンか何かで書かれていると思ったが、よく見るとそれはボールペンのようなものだと分かる。いや、遠目から見れば、とても手書きとは思えないだろう。あまりに整い過ぎている。確かに、如月にはこんな丁寧さは無理かもしれない。

 ……ってことは、本当に僕たち以外の誰かがわざわざこんな手紙を書いて下駄箱に入れたってことか? おいおい、それはないだろう。どんだけ暇人なんだよ、そいつ。それに、まだ二日目だ。目立つ如月はまだわかるにしろ、何で僕にまで送る必要がある?

 そこまで考えて、ふと手紙の『六人』という部分が気になった。六人ということは、僕と如月を含めてだろうから、この手紙をあと四人が受け取っていることになる。そして、その中に『神様』とやらが――

「如月さんっ!」

 いきなり勢いよく扉が開け放たれたのと同時に教室中に声が響き渡ったので、僕は驚いてそちらに目をやった。

 見ると、長髪で眼鏡をかけた一見生徒会長、もとい秋谷樹里が、見るからに怒ったような表情でそこに立っている。教室を見渡した彼女は、こちらに標準を合わせると、肩を怒らせて歩いてきて、如月の目の前に立った。

「あなた、これは一体どういうつもりなのか説明していただけますか? 私に対する挑戦状と受け取ってもよろしいんですね?」

 そう早口で捲し立てながら、一枚の紙を如月の顔に突きつける。どこかで見たような真っ白な紙に、綺麗に書かれている文字……これって、もしかして……。

「もしかして、あなたもこのクラスの委員長を狙っているんですか? それで、私にこんな嫌がらせを? ええ、別にそっちがそのつもりなら、構いません、受けて立ちましょう。でも、そんなものでつかみ取った勝利が果たして真の勝利と言えるのか――」
「にゃはは! その手紙、樹里ちゃんのところにも入ってたんだー!」
「……はい?」

 拍子抜けしたような秋谷の声。如月は満面の笑みを受かべてポケットから何かを取り出し、秋谷の前で広げる。見ると、秋谷のそれとまったく同じ内容の手紙だった。

「……これ、あなたが入れたんじゃなかったんですか?」

 如月が元気よく頷くと、秋谷は目をぱちくりとさせて、固まってしまった。どうやら、こいつも如月がやったものだとばかり信じ込んでいたらしい。まあ、昨日の如月の予測不能な行動を目にしての今日だから、その気持ちも分からなくはないと言える。

 秋谷はしばらく手紙を食い入るように見ていたが、不意に顔を上げ、目を細めて如月の顔をじっと見つめだした。その目には、どこかまだ疑念の気持ちが表れている。これ以上疑わせておくのも何なので、この辺で如月を少し弁護しておくことにした。

「まあまあ、落ち着けって。こいつ、昨日はずっと僕と一緒に行動してたから、下駄箱にそんなの入れてる時間なんてなかったよ」

 僕の言葉に、秋谷が眼鏡を光らせてこちらを向く。その目つきだけで、部外者は黙っていろという威圧感がひしひしと伝わってきた。

「朝来てから入れれば済む話です」
「いや、それは僕も考えたけどさ。実は、僕のところにもその手紙入ってたんだよ。で、如月は僕より遅く来たわけだから、こいつには無理なんじゃないかな」

 僕は手紙を見せながらそう話すが、秋谷はますます目を細めただけで、訝しげな眼差しは消えていない。そりゃそうだろう。動機さえ考えなければ、さっき僕が思いついたようなやり方でどうとでも出来るわけだから、こんなの明確なアリバイにはならないはずだ。

 秋谷がさらに何か言い返そうとした時だった。

「おい如月てめえ! これどういうことだ!」

 またも教室の入り口で大きな声が響いた。クラス中の全員が、うんざりとした顔でそちらを見る。そこには、小学生並みの風貌を持った少女――尾坂美奈が、秋谷と同じように怒ったような表情で立っていた。

 彼女はつかつかとこちらに歩み寄り、眉間にしわを寄せる秋谷を無視して、如月の正面で何かを突き出した。一枚の紙。それが何なのかは、もう大体想像がつく。

「一体何のつもりなんだよこれは! オレを舐めるのもいい加減に――」

 そこまで言いかけて、何かに気づいたように僕ら三人を見まわした。目を細めて、それぞれが手にしている紙に注目している。なぜこいつらまで持っているんだという顔だ。

「……あれ? これって、お前の仕業じゃないのか?」

 僕と秋谷に続く、三度目の同じリアクションだった。如月はまたもや元気に頷く。尾坂は腕を組み、下を向いて何かを考え始めた。多分、こいつもまだ疑っているのだろう。正直、もう如月がやったってことにしておいた方が早いんじゃないか、という思いを捨て去り、溜息を吐いて二度目の弁護をすることにする。

「えっと、こいつはだな――」
「あれー、みんなも持ってるんだー」

 突然横からそんなおっとりとした声が聞こえたので、僕は跳ねあがるほど驚いた。はっとしてそちらを見ると、綺麗な金髪の千条麗華が、にっこりとした笑顔でそこにいた。

「せ、千条、いつからそこに……?」
「うーん、ついさっき」

 まったく気がつかなかったのは、彼女の持つのんびりさ故なのだろうか。秋谷と尾坂も、目を丸くして彼女を凝視している。

「それより、この手紙って、由乃ちゃんが書いたの?」

 彼女は手に持った紙をひらひらさせた。もちろん、あの手紙だろう。千条までもがこいつに疑惑を持ち、文句を言いに来たのか。

「とっても面白そう! 私、頑張りたいな」

 思わず椅子からずっこけそうになった。慌てて立ち上がり、千条の顔を覗き込む。相変わらずの優雅な笑顔。そこには、疑念などまったく感じられず、明日の遠足を楽しみにする子どものように目を輝かせていた。

「だよねー、楽しそうだよね! 私も頑張りたい!」
「え? これ書いたのって、由乃ちゃんじゃないの?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、一緒に頑張ろうね、由乃ちゃん」 

 待て、何か間違ってないか。そんな突っ込みを入れる暇もなく、何やら二人だけの世界に入り始めたので、呆れ過ぎて溜息さえ出なかった。隣では、秋谷と尾坂がぽかんと口を開けてその様子を眺めている。どうやら、こいつらはこちら側の人間のようだ。少し安心。

 と、こんな馬鹿なことを考えている場合ではない。これで、いつの間にか五人だ。僕の机の周りを取り囲むように四人が立っているので、他のクラスメートからはどんな風に思われているのだろうか、というのもこの際気にしないことにする。

 それより、手紙には六人と書いてあるから、あと一人他にこの手紙を受け取った奴がいることに――

「あ、あの……」

 消え入りそうなほど小さな声だったので、最初はそこにいた人物に気がつかなかった。ふと視線をずらすと、秋谷の後ろに、顔を真っ赤にして下を向いている少女の姿があった。昨日泣かせてしまった、渡瀬莉子だ。

 四人がそちらを一斉に向くと、彼女は怯えたようにびくっと肩を震わせ、おそるおそる顔を上げた。

「わ、私のところにも、こ、これが入っていました……」

 びくびくしながら、手に持ったそれを見せる。封筒だった。おそらく、全員が持っているものと同じ。

 みんなが言葉を失う。

 数秒の沈黙を破ったのは、尾坂だった。

「――これで、六人ってわけか」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...