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第1章 魔王ラグナル(脱力中)
ぴかぴかのもふもふ
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「ショコラ」
ラグナルに名前を呼ばれた。
「顔を上げて」
おそるおそる顔を上げれば、ちっとも怒っていない、ラグナルの顔があった。
「間違ってないから、大丈夫」
「!」
手紙をショコラに返す。
それから手袋を取ると、ショコラの頬に手を当てた。
滲んでいた涙を親指で拭う。
「泣かなくていいよ」
「あ……」
その暖かい手に、ショコラは少し安心した。
青色の瞳に見つめられると、なんだか思考が鈍くなってくる。
なんて綺麗な顔をしているのだろうか。
「ラグナル様……」
リリィが、ほうけたように、ラグナルを見た。
「リリィ、いいんだ」
リリィは一瞬、何かを言いたそうな顔をしたが、ゴクリと言葉を飲み込んだ。
それから、心配そうにショコラを見る。
不安そうなショコラを見て、何か気持ちが変わったらしい。
リリィは柔らかな声で言った。
「……とにかく、お風呂に入って、おやすみしましょうか」
「そうですな。ショコラ様は大変お疲れのようです」
「無事についたなら、もうなんでもいいですわ」
不安げな顔をするショコラの腰を、リリィが優しく抱いた。
もう先ほどの戸惑いはなくなっているようだった。
「さあ、行きましょうか。うちのお風呂は気持ちいいんですよ~」
ショコラがオロオロしているうちに、話は終わってしまった。
こうしてショコラは、お風呂に入れてもらうことになったのだった。
◆
(本当に、あの手紙には召使のことが書いてあったのかなぁ)
椅子に座って、丁寧に髪を拭いてもらいながら、ショコラはそんなことを考えていた。
いいと何度も遠慮していたのに、リリィはダメですと、まるでショコラを子供であるかのように世話をする。
先ほども、ショコラが初めて湯船というものに浸かり、こんなに気持ちいいのかと感動していると、肩にちゃぷちゃぷと湯をかけてくれたのだ。
(どうしてこんなによくしてくれるんだろう……それに、ショコラ様、なんて……もしかして、魔界ではみんなに様、をつけるの?)
いろいろ考えているうちに、なんだか眠くなってきた。
先ほども湯船で寝てしまいそうになり、リリィに起こされたのだ。
ここにいる人たちはいい人ばかりで、きっと緊張が解けてしまったのだろう。
ショコラがウトウトとしていると、いきなり耳元ですごい音が聞こえてきた。
ブォオオオオン!
「うひゃあ!?」
ショコラは驚いて文字通り飛び上がってしまった。
パニックになるショコラだったが、すぐに音はとまった。
「ごめんなさい! ドライヤー、初めてでしたか?」
リリィが心配そうに、ショコラの顔を覗き込んだ。
その手には、ショコラの見たことのない不思議な道具が握られている。
「そ、それは一体……?」
「人間界では、魔道具なんてありませんものね。ごめんなさい、失念していましたわ」
そう言って、リリィはその道具の正体を教えてくれた。
「これは魔道具。魔道具って、ご存知ですか?」
「……えっと、確か、魔力を動力源にして動かす道具、ですよね?」
ショコラはたどたどしく答えた。
人間の世界にいる人間は、基本的に魔力を持っていない。だからこういう道具もないのだ。ショコラは魔界に来て初めて魔法をみたし、魔道具の存在を知ったのだった。
そして実際、『車』と呼ばれる乗り物に乗って、ショコラはここまで送ってもらったのだ。
先ほど、浴室で使った『シャワー』というものも、その類のものなのだろう。
「これはドライヤーといって、熱い風を起こして、髪の毛の水分を飛ばして早く乾かしてくれる便利な道具ですわ。この間ネットで買ったんです」
「どらいやー……ねっと……」
聞きなれない言葉に、ショコラの耳がひょこひょこ動く。
「本当にショコラ様は、魔界に慣れていらっしゃらないのですね」
リリィはぽつりと呟いた。
「ご、ごめんなさい」
ショコラが慌てて謝ると、首を横に振る。
「いいえ、いいえ。せめているのではございません。これから、驚くこともたくさんあると思いますが、一緒に勉強していきましょうね」
リリィは母性溢れる顔で、そういった。
ショコラは嬉しくなって、こくこくと頷く。
「あの、リリィ様は……」
「まあ! 様だなんて! リリィでいいんですよ!」
「でも、私のことはショコラ『様』って……」
「あー……そうでしたね」
リリィは少し考えるそぶりをした。
「では、こうしましょうか。ショコラさん、と呼ぶので、私のことはリリィさん、と読んでくださいな」
「リリィ、さん?」
ショコラがそう言うと、リリィは嬉しそうに微笑んだ。
「はい。ショコラさん。それでは髪を乾かしますね」
「お、お願いします」
再びあの大きな音が鳴る。
ショコラは人間よりもずっと耳がいい。
だから余計に大きく感じたのだろう。
リリィの言った通り、髪としっぽはあっという間に乾いてしまった。今まで濡れたまま気持ち悪い時間を過ごしていたので、これは快適だと思った。
「しっぽもブラッシングしましょうね」
そういって、リリィはショコラの髪としっぽを丁寧に梳ってくれた。
それがあまりにも気持ちよくて、幸せで、ショコラはまたウトウトしてしまったのだった。
それからショコラのために用意された部屋に連れて行ってもらったのだが、あまりにも眠たすぎて早く寝てしまったため、その晩の記憶はほとんどない。
美味しいものを食べて、柔らかなベッドで眠ったのは、何年ぶりだろうかとショコラは寝る間際にぼんやりと思った。
◆
ショコラの眠る部屋。
ベッドサイドにはオレンジ色の暗いランプが置いてあって、部屋を薄く照らしていた。
そこにそっと訪れたのは、すらりとしたいで立ちの、背の高い男。
サラサラとした黒髪に、切れ長の青い瞳を持つその青年は、ずいぶんと整った顔立ちをしていた。
青年はベッドサイドの小棚においてある手紙を手にとって、ぐっすりと眠るショコラを見る。
「これ、ラブレターだったんだけど」
しばらく考えてから、青年は呟いた。
「まあいっか」
青年はベッドのそばに跪いて、眠るショコラの頭を優しく撫でた。ショコラはひょこひょこと耳を動かしたものの、気持ちよさそうに眠り続けたのだった。
ラグナルに名前を呼ばれた。
「顔を上げて」
おそるおそる顔を上げれば、ちっとも怒っていない、ラグナルの顔があった。
「間違ってないから、大丈夫」
「!」
手紙をショコラに返す。
それから手袋を取ると、ショコラの頬に手を当てた。
滲んでいた涙を親指で拭う。
「泣かなくていいよ」
「あ……」
その暖かい手に、ショコラは少し安心した。
青色の瞳に見つめられると、なんだか思考が鈍くなってくる。
なんて綺麗な顔をしているのだろうか。
「ラグナル様……」
リリィが、ほうけたように、ラグナルを見た。
「リリィ、いいんだ」
リリィは一瞬、何かを言いたそうな顔をしたが、ゴクリと言葉を飲み込んだ。
それから、心配そうにショコラを見る。
不安そうなショコラを見て、何か気持ちが変わったらしい。
リリィは柔らかな声で言った。
「……とにかく、お風呂に入って、おやすみしましょうか」
「そうですな。ショコラ様は大変お疲れのようです」
「無事についたなら、もうなんでもいいですわ」
不安げな顔をするショコラの腰を、リリィが優しく抱いた。
もう先ほどの戸惑いはなくなっているようだった。
「さあ、行きましょうか。うちのお風呂は気持ちいいんですよ~」
ショコラがオロオロしているうちに、話は終わってしまった。
こうしてショコラは、お風呂に入れてもらうことになったのだった。
◆
(本当に、あの手紙には召使のことが書いてあったのかなぁ)
椅子に座って、丁寧に髪を拭いてもらいながら、ショコラはそんなことを考えていた。
いいと何度も遠慮していたのに、リリィはダメですと、まるでショコラを子供であるかのように世話をする。
先ほども、ショコラが初めて湯船というものに浸かり、こんなに気持ちいいのかと感動していると、肩にちゃぷちゃぷと湯をかけてくれたのだ。
(どうしてこんなによくしてくれるんだろう……それに、ショコラ様、なんて……もしかして、魔界ではみんなに様、をつけるの?)
いろいろ考えているうちに、なんだか眠くなってきた。
先ほども湯船で寝てしまいそうになり、リリィに起こされたのだ。
ここにいる人たちはいい人ばかりで、きっと緊張が解けてしまったのだろう。
ショコラがウトウトとしていると、いきなり耳元ですごい音が聞こえてきた。
ブォオオオオン!
「うひゃあ!?」
ショコラは驚いて文字通り飛び上がってしまった。
パニックになるショコラだったが、すぐに音はとまった。
「ごめんなさい! ドライヤー、初めてでしたか?」
リリィが心配そうに、ショコラの顔を覗き込んだ。
その手には、ショコラの見たことのない不思議な道具が握られている。
「そ、それは一体……?」
「人間界では、魔道具なんてありませんものね。ごめんなさい、失念していましたわ」
そう言って、リリィはその道具の正体を教えてくれた。
「これは魔道具。魔道具って、ご存知ですか?」
「……えっと、確か、魔力を動力源にして動かす道具、ですよね?」
ショコラはたどたどしく答えた。
人間の世界にいる人間は、基本的に魔力を持っていない。だからこういう道具もないのだ。ショコラは魔界に来て初めて魔法をみたし、魔道具の存在を知ったのだった。
そして実際、『車』と呼ばれる乗り物に乗って、ショコラはここまで送ってもらったのだ。
先ほど、浴室で使った『シャワー』というものも、その類のものなのだろう。
「これはドライヤーといって、熱い風を起こして、髪の毛の水分を飛ばして早く乾かしてくれる便利な道具ですわ。この間ネットで買ったんです」
「どらいやー……ねっと……」
聞きなれない言葉に、ショコラの耳がひょこひょこ動く。
「本当にショコラ様は、魔界に慣れていらっしゃらないのですね」
リリィはぽつりと呟いた。
「ご、ごめんなさい」
ショコラが慌てて謝ると、首を横に振る。
「いいえ、いいえ。せめているのではございません。これから、驚くこともたくさんあると思いますが、一緒に勉強していきましょうね」
リリィは母性溢れる顔で、そういった。
ショコラは嬉しくなって、こくこくと頷く。
「あの、リリィ様は……」
「まあ! 様だなんて! リリィでいいんですよ!」
「でも、私のことはショコラ『様』って……」
「あー……そうでしたね」
リリィは少し考えるそぶりをした。
「では、こうしましょうか。ショコラさん、と呼ぶので、私のことはリリィさん、と読んでくださいな」
「リリィ、さん?」
ショコラがそう言うと、リリィは嬉しそうに微笑んだ。
「はい。ショコラさん。それでは髪を乾かしますね」
「お、お願いします」
再びあの大きな音が鳴る。
ショコラは人間よりもずっと耳がいい。
だから余計に大きく感じたのだろう。
リリィの言った通り、髪としっぽはあっという間に乾いてしまった。今まで濡れたまま気持ち悪い時間を過ごしていたので、これは快適だと思った。
「しっぽもブラッシングしましょうね」
そういって、リリィはショコラの髪としっぽを丁寧に梳ってくれた。
それがあまりにも気持ちよくて、幸せで、ショコラはまたウトウトしてしまったのだった。
それからショコラのために用意された部屋に連れて行ってもらったのだが、あまりにも眠たすぎて早く寝てしまったため、その晩の記憶はほとんどない。
美味しいものを食べて、柔らかなベッドで眠ったのは、何年ぶりだろうかとショコラは寝る間際にぼんやりと思った。
◆
ショコラの眠る部屋。
ベッドサイドにはオレンジ色の暗いランプが置いてあって、部屋を薄く照らしていた。
そこにそっと訪れたのは、すらりとしたいで立ちの、背の高い男。
サラサラとした黒髪に、切れ長の青い瞳を持つその青年は、ずいぶんと整った顔立ちをしていた。
青年はベッドサイドの小棚においてある手紙を手にとって、ぐっすりと眠るショコラを見る。
「これ、ラブレターだったんだけど」
しばらく考えてから、青年は呟いた。
「まあいっか」
青年はベッドのそばに跪いて、眠るショコラの頭を優しく撫でた。ショコラはひょこひょこと耳を動かしたものの、気持ちよさそうに眠り続けたのだった。
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