23 / 101
第2章 ショコラと愉快な仲間達
どんぐりころころ
しおりを挟む
不意に部屋のドアがノックされた。
ショコラは慌てて立ち上がると、ドアを開ける。
「どうぞ!」
「……こんにちは」
ラグナルだった。
「ご、ご主人様! こんにちは! どうかされましたか? お困りごとですか!?」
ショコラはしっぽを振った。
先程までの暗い思考が、少し落ち着く。もしかしたら、何か仕事をくれるかもしれないそうすれば、何か役に立つことができる。
「……何もないけど」
ショコラはがくっとなった。
(じゃあなんで部屋に来たんですか~!)
ショコラがしょんぼりすると、ラグナルが首をかしげた。
「一緒にいてもいい? 僕、暇なんだけど」
「!」
ショコラは途端に、耳をぴーんと立てた。
「も、もちろんですご主人様!」
しっぽがゆらゆらと揺れる。
「足は? 痛くないの?」
「はい。もう大丈夫です!」
足を伸ばして、ピンピンしていることをアピールする。
けれどラグナルは首を振って、いきなりショコラを横抱きにした。
「うわ!」
「歩いちゃだめ」
そのまま、先ほどまで座っていた椅子に、降ろされた。
「今日は大人しくしてて」
「……リリィさんにも言われました。でもショコラは元気です……」
「休みの日でしょ? だったら好きなこと、すればいい」
ショコラは困ってしまった。
好きなことをするって、なんだろう?
「今日は何をしていたの?」
何も言わないショコラに、ラグナルが尋ねた。
「えーっと……どんぐりを見てました……」
そんなことをしている暇があるなら、働けと言われるかと思ったけれど、ラグナルはふうん、と言っただけだった。
ラグナルは向かいの椅子に座ると、じいっとどんぐりを見つめた。
「これ、ヤマトに似てる」
ラグナルは細長いどんぐりを指差して、言った。
「こっちはシュロ。この双子、ミルとメル」
「! ご主人様もそう思いますか?」
「なんか似てる」
ショコラは嬉しくなって、うんうんと頷いた。
「ショコラも同じことを思っていました! やっぱりそっくりです」
「この薄い色は君」
「じゃあこっちのころんとしたのは、ご主人様ですね」
しっぽをパタパタと振りながら、ショコラはつぶやいた。
「顔でもかいたら、楽しそうですね」
「あ」
ラグナルが何かを思い出したように、ポケットを探った。
すると中から、細長い黒色のペンが出てきた。
それはショコラが見たことのないタイプの太いペンだった。
「あの、これは……?」
「マジックペン。ツルツルしたものにも、書けるよ」
「えっ、そうなんですか?」
「うん」
きゅぽ、とショコラはペンのキャップを開ける。
ちょっと独特な匂いがしたけれど、ラグナルが「ショコラ」のどんぐりに顔を描くと、たしかにくっきりと発色した。
「す、すごいです! こすっても落ちません!」
「油性だからね」
ツルツルしたものにかけるのは、「油性マジックペン」というらしい。
「ショコラは、こんなにふにゃふにゃした顔をしていますか?」
ふにゃふにゃと笑うショコラのどんぐりを光に当てて、ショコラは眉を寄せた。絶妙な顔だった。
「君、笑ったらふにゃっとした顔してるよ」
「……」
「すごくかわいい」
そんなことを真顔で言われて、ショコラはぎょっとしてしまった。
「か、かわいい……?」
「うん」
頬が赤くなる。
(……本当に、そう思ってるのかな)
シュロもリリィも、ショコラにかわいいかわいいと言ってくれる。
けれどそれは、本心から出た言葉なのだろうか。
今までそんなことを言われたことがなかったショコラには、その言葉をうまく信じることができなかった。
(ここの人たちは、みんな優しいから……)
ショコラはきゅぽ、とキャップを取ると、どんぐりにきゅ、きゅ、と顔を描いていった。
「これがリリィさんで、こっちがシュロさん……」
顔を描いたどんぐりをコロコロところがす。
「はい、ご主人様」
そう言って、ショコラは眠そうな目のどんぐりを作った。
「……僕って、こんな顔?」
「はい。こんな顔です」
「ふうん。そうなんだ」
ラグナルはそのどんぐりを指でつまむと、光に透かして見せた。
その顔がどんぐりとそっくりで、ショコラは吹き出してしまった。
くすくす笑っていると、ラグナルがきょと、と首を傾げる。
「なに?」
「い、いいえ、なんでも」
失礼かと思って、ショコラはぶんぶんと首を振る。
ラグナルははてなマークを浮かべていたけれど、全部のどんぐりを机に並べて、ころころと弄っていた。
楽しかった。
いつもと同じように、ラグナルと過ごす時間が。
「好きな事、していいんだよ」
どんぐりを眺めていると、ラグナルがそう言った。
「誰も怒らないよ。君が危険な事をしない限りは」
そう言って、ラグナルはショコラを見つめた。
ショコラはゆるゆると振っていたしっぽを止めて、つぶやくように言った。
「……でも、やりたいことが、わからないです」
今、こうしてラグナルと一緒にいるのは楽しい。
けれどこれは、ラグナルが与えてくれた楽しさだとショコラは思った。
「そう? 君にはたくさんありそうだけど」
ショコラはちらちらとラグナルを見ながら、つぶやいた。
「……ご、ご主人様と一緒にいると、楽しいです」
ラグナルは目を瞬かせたのち、優しげに笑った。
「そっか」
ショコラはなんだか恥ずかしくなって、ぽっと頬を赤くした。
「じゃあ、これからショコラの好きなこと、一緒に見つけよう」
「好きなこと……」
「うん。楽しくて、わくわくするようなこと。きっとたくさんあるよ」
「ほ、本当ですか?」
「本当だよ」
珍しく、ラグナルがいたずらっぽく笑った。
「さっそくだけど、楽しいこと、しに行こう」
「……へ?」
ショコラがキョトンとしている間に、ラグナルは立ち上がると、またショコラを横抱きにした。
「ちょ、ご主人様……?」
突然のことに、ショコラはついていけない。
ラグナルは構わず、ショコラを抱いて部屋を出た。
ショコラは慌てて立ち上がると、ドアを開ける。
「どうぞ!」
「……こんにちは」
ラグナルだった。
「ご、ご主人様! こんにちは! どうかされましたか? お困りごとですか!?」
ショコラはしっぽを振った。
先程までの暗い思考が、少し落ち着く。もしかしたら、何か仕事をくれるかもしれないそうすれば、何か役に立つことができる。
「……何もないけど」
ショコラはがくっとなった。
(じゃあなんで部屋に来たんですか~!)
ショコラがしょんぼりすると、ラグナルが首をかしげた。
「一緒にいてもいい? 僕、暇なんだけど」
「!」
ショコラは途端に、耳をぴーんと立てた。
「も、もちろんですご主人様!」
しっぽがゆらゆらと揺れる。
「足は? 痛くないの?」
「はい。もう大丈夫です!」
足を伸ばして、ピンピンしていることをアピールする。
けれどラグナルは首を振って、いきなりショコラを横抱きにした。
「うわ!」
「歩いちゃだめ」
そのまま、先ほどまで座っていた椅子に、降ろされた。
「今日は大人しくしてて」
「……リリィさんにも言われました。でもショコラは元気です……」
「休みの日でしょ? だったら好きなこと、すればいい」
ショコラは困ってしまった。
好きなことをするって、なんだろう?
「今日は何をしていたの?」
何も言わないショコラに、ラグナルが尋ねた。
「えーっと……どんぐりを見てました……」
そんなことをしている暇があるなら、働けと言われるかと思ったけれど、ラグナルはふうん、と言っただけだった。
ラグナルは向かいの椅子に座ると、じいっとどんぐりを見つめた。
「これ、ヤマトに似てる」
ラグナルは細長いどんぐりを指差して、言った。
「こっちはシュロ。この双子、ミルとメル」
「! ご主人様もそう思いますか?」
「なんか似てる」
ショコラは嬉しくなって、うんうんと頷いた。
「ショコラも同じことを思っていました! やっぱりそっくりです」
「この薄い色は君」
「じゃあこっちのころんとしたのは、ご主人様ですね」
しっぽをパタパタと振りながら、ショコラはつぶやいた。
「顔でもかいたら、楽しそうですね」
「あ」
ラグナルが何かを思い出したように、ポケットを探った。
すると中から、細長い黒色のペンが出てきた。
それはショコラが見たことのないタイプの太いペンだった。
「あの、これは……?」
「マジックペン。ツルツルしたものにも、書けるよ」
「えっ、そうなんですか?」
「うん」
きゅぽ、とショコラはペンのキャップを開ける。
ちょっと独特な匂いがしたけれど、ラグナルが「ショコラ」のどんぐりに顔を描くと、たしかにくっきりと発色した。
「す、すごいです! こすっても落ちません!」
「油性だからね」
ツルツルしたものにかけるのは、「油性マジックペン」というらしい。
「ショコラは、こんなにふにゃふにゃした顔をしていますか?」
ふにゃふにゃと笑うショコラのどんぐりを光に当てて、ショコラは眉を寄せた。絶妙な顔だった。
「君、笑ったらふにゃっとした顔してるよ」
「……」
「すごくかわいい」
そんなことを真顔で言われて、ショコラはぎょっとしてしまった。
「か、かわいい……?」
「うん」
頬が赤くなる。
(……本当に、そう思ってるのかな)
シュロもリリィも、ショコラにかわいいかわいいと言ってくれる。
けれどそれは、本心から出た言葉なのだろうか。
今までそんなことを言われたことがなかったショコラには、その言葉をうまく信じることができなかった。
(ここの人たちは、みんな優しいから……)
ショコラはきゅぽ、とキャップを取ると、どんぐりにきゅ、きゅ、と顔を描いていった。
「これがリリィさんで、こっちがシュロさん……」
顔を描いたどんぐりをコロコロところがす。
「はい、ご主人様」
そう言って、ショコラは眠そうな目のどんぐりを作った。
「……僕って、こんな顔?」
「はい。こんな顔です」
「ふうん。そうなんだ」
ラグナルはそのどんぐりを指でつまむと、光に透かして見せた。
その顔がどんぐりとそっくりで、ショコラは吹き出してしまった。
くすくす笑っていると、ラグナルがきょと、と首を傾げる。
「なに?」
「い、いいえ、なんでも」
失礼かと思って、ショコラはぶんぶんと首を振る。
ラグナルははてなマークを浮かべていたけれど、全部のどんぐりを机に並べて、ころころと弄っていた。
楽しかった。
いつもと同じように、ラグナルと過ごす時間が。
「好きな事、していいんだよ」
どんぐりを眺めていると、ラグナルがそう言った。
「誰も怒らないよ。君が危険な事をしない限りは」
そう言って、ラグナルはショコラを見つめた。
ショコラはゆるゆると振っていたしっぽを止めて、つぶやくように言った。
「……でも、やりたいことが、わからないです」
今、こうしてラグナルと一緒にいるのは楽しい。
けれどこれは、ラグナルが与えてくれた楽しさだとショコラは思った。
「そう? 君にはたくさんありそうだけど」
ショコラはちらちらとラグナルを見ながら、つぶやいた。
「……ご、ご主人様と一緒にいると、楽しいです」
ラグナルは目を瞬かせたのち、優しげに笑った。
「そっか」
ショコラはなんだか恥ずかしくなって、ぽっと頬を赤くした。
「じゃあ、これからショコラの好きなこと、一緒に見つけよう」
「好きなこと……」
「うん。楽しくて、わくわくするようなこと。きっとたくさんあるよ」
「ほ、本当ですか?」
「本当だよ」
珍しく、ラグナルがいたずらっぽく笑った。
「さっそくだけど、楽しいこと、しに行こう」
「……へ?」
ショコラがキョトンとしている間に、ラグナルは立ち上がると、またショコラを横抱きにした。
「ちょ、ご主人様……?」
突然のことに、ショコラはついていけない。
ラグナルは構わず、ショコラを抱いて部屋を出た。
0
あなたにおすすめの小説
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
婚約破棄された没落寸前の公爵令嬢ですが、なぜか隣国の最強皇帝陛下に溺愛されて、辺境領地で幸せなスローライフを始めることになりました
六角
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、王立アカデミーの卒業パーティーで、長年の婚約者であった王太子から突然の婚約破棄を突きつけられる。
「アリアンナ! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」
彼の腕には、可憐な男爵令嬢が寄り添っていた。
アリアンナにありもしない罪を着せ、嘲笑う元婚約者と取り巻きたち。
時を同じくして、実家の公爵家にも謀反の嫌疑がかけられ、栄華を誇った家は没落寸前の危機に陥ってしまう。
すべてを失い、絶望の淵に立たされたアリアンナ。
そんな彼女の前に、一人の男が静かに歩み寄る。
その人物は、戦場では『鬼神』、政務では『氷帝』と国内外に恐れられる、隣国の若き最強皇帝――ゼオンハルト・フォン・アドラーだった。
誰もがアリアンナの終わりを確信し、固唾をのんで見守る中、絶対君主であるはずの皇帝が、おもむろに彼女の前に跪いた。
「――ようやくお会いできました、私の愛しい人。どうか、この私と結婚していただけませんか?」
「…………え?」
予想外すぎる言葉に、アリアンナは思考が停止する。
なぜ、落ちぶれた私を?
そもそも、お会いしたこともないはずでは……?
戸惑うアリアンナを意にも介さず、皇帝陛下の猛烈な求愛が始まる。
冷酷非情な仮面の下に隠された素顔は、アリアンナにだけは蜂蜜のように甘く、とろけるような眼差しを向けてくる独占欲の塊だった。
彼から与えられたのは、豊かな自然に囲まれた美しい辺境の領地。
美味しいものを食べ、可愛いもふもふに癒やされ、温かい領民たちと心を通わせる――。
そんな穏やかな日々の中で、アリアンナは凍てついていた心を少しずつ溶かしていく。
しかし、彼がひた隠す〝重大な秘密〟と、時折見せる切なげな表情の理由とは……?
これは、どん底から這い上がる令嬢が、最強皇帝の重すぎるほどの愛に包まれながら、自分だけの居場所を見つけ、幸せなスローライフを築き上げていく、逆転シンデレラストーリー。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる