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第4章 魔王様は脱力系?

消えたショコラ

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 ひどい吹雪だった。
 暴力的な風が、びゅうびゅうと鋭い音をたてて吹いている。
 まるで大男が、窓をどんどんと叩いているようだ。
 心なしか、館の中にも冷たい風が侵入しているような気がする。
 リリィはそんな吹雪の音を遮るように、受話器を耳に押し付け、大きな声でハキハキとしゃべっていた。

「はい、そうです。獣人の子供です。十五歳で……」

「リリィ」

 真剣に話すリリィに、ふよふよと浮遊していたミルがトントンと肩を叩き、メルが声をかけた。

「しっ、今電話してるから。えーと、はい、あ、女の子です……」

「「リリィ!」」

 二人が声をそろえて、大きな声を出した。

「何?」

 さすがのリリィも、受話器から耳を離して、いぶかしげな顔をする。
 ミルが眉を寄せて言った。

「ショコラ、いなくなっちゃったよ」

「は?」

 メルも不安そうに言う。

「ベッドにも、館のどこにもいないの」

「何言って……」

 リリィが口を開いたところで、玄関の方から怒鳴り声が聞こえてきた。

「おい馬鹿っ!」

 どうやらヤマトが何かを怒っているらしい。

「誰だよ玄関の扉開けたやつは!」

 ──館の中にも、心なしか冷たい風が吹いているような気がする。

「っ」

 リリィは真っ青になって、受話器を置いた。
 そのままショコラの部屋へ駆け出して扉を開ければ、ものの抜け殻になったベッドが目に入る。

「ショコラさん!?」

 声をあげて部屋を見渡すが、誰もいない。
 びゅうう、と冷たい風が、頬を通り抜けた気がした。

「まさか……!」

 リリィは真っ青になって、玄関へ駆け出した。

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