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第4話 再会
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次の日。
「よお、森の精霊さん」
タバコを口の端にくわえ、ズボンのポケットに手を突っ込んだ変態男が、私の前に立っていた。
「……」
もう戻ってくんなと思ってたのに、戻って来た……。
「あに変な顔してんの?」
ヘラヘラ笑って私の前に立つ男を、睨みつける。
「なぜあなたはまたここへ来たのですか?」
「んー、また迷っちゃってよ」
「本音は?」
「あんたの体をさわりてェ」
こ、こんのすけべおやじ……!
さっさと出て行けばいいものを!
拳を握る私を見て、すけべ男は慌てて首を振った。
「冗談だよ、冗談。あんたバカ力だからな。首の骨おれっちまう」
「では首の骨が折れぬうちに帰った方がお前の身のためだと思いますが」
次はグーでいきますよ、と恐ろしい声を出すと、すけべ男はひらひらと手を振った。
「昨日助けてもらっただろ。だから礼をしようと思ってな」
「礼?」
どうやら昨日、この男は無事にキャンプについたらしい。流浪の民というのは、大概が様々な事情を抱えて、その地にいられなくなった人たちだ。だからこの男のことも受け入れてくれたのだという。さらにこの男は、その人たちの護衛をすることになったらしい。
「金はねぇけど、食いもんと酒とタバコもらえるみたいだからさ」
そう言ってポケットからりんごを出す。
「食う?」
「そんなもの……」
いりません、といおうとしたものの、くそ、食べ物なんか何年ぶりだろう。
もらってやってもいいかもしれない。
どうしようかと思ってチラチラりんごとすけべ男の顔を見ていたら、すけべ男は笑ってりんごを放り投げてきた。
「……っ」
「りんご、好きなんだな」
「……もらってやるだけです」
聖剣も食事をするのかと問われれば、する。味を楽しむ。食べた分は聖剣のエネルギーにもなる。
お礼としてもらってやるだけなんだから、とすけべ男を警戒しながらしゃくしゃくしゃくしゃく食べる。
……おいしい。久しぶりに甘いものを食べた。
りんごはグランドストーム様が好きだったから、私も好きだ。
台座に腰をかけて食べていると、ずいっとすけべ男が近づいてきた。
「なあ、触ってもいい?」
「触るな、変態!」
「えー、いいだろ、おじさんにちょっとくらい触らせてよ」
こいつに昨日胸を触れたことはわすれん。剣の意思といえど、不快だ。
彼は私をじっと見てから、後ろの聖剣本体に目を移す。
「なんでだめなんだ?」
「不快です。あなたになんか触られたくありません」
「そうか。嫌か。俺はどんなやつでも扱わせてもらってんだけどな」
な、なんてふしだらな!
やっぱりこいつとは関わらない方がいい。
腐っても私は聖剣だ。こいつと一緒にいたら汚れる。
私はりんごを食べきると、ビシッとすけべ男に指をつきつけた。
「金輪際、あなたとは会いません。早く森を出なさい」
「あ、俺しばらくはこっちにいるんだわ」
「!? さっさと出て行きなさい!」
「仕方ねぇだろ。あいつらがまだしばらくここにいるっつーんだから」
それならそれで、私は剣の中にとどまるのみ。しばらくはこの男と合わないように、剣に中でじっとしていよう。最近、外に出すぎな気もするからそれでいい。
「なあー、触っちゃだめか? 触りたいんだよ。こんなの、滅多にねぇよ」
「さっさと帰りなさい」
ぷいっと顔をそらすと、彼はため息をついて髪をくしゃりとかきあげた。
無駄に顔だけはいいな、と思った。
「まあいいや。また明日くるから」
「来てももう、私はいませんよ」
「は? なんで?」
「なんでって、私は森の精霊だからです」
そういうと、彼は驚いたように目を丸めた。それから何がおかしいのか、笑いをこらせるように、くつくつと肩を揺らす。
「そう、そうだった、森の精霊さん」
「?」
「まあいいや、また明日」
そう言って、何がおかしいのか、彼は笑いながら礼拝堂を出て行く。
しかしその途中で、はた、と立ち止まった。
「そーいや、俺の名前、まだ言ってなかった」
「知りたくもないです」
「まあまあ、そう言わずに」
彼は振り返って、ニッと笑った。
「ジョット。俺の名前は、ジョットだ」
……どうしてだろう。その名前に、どこか聞き覚えがあると思った。
どこで聞いたんだろう。
私が何かを聞き返す前に、ジョットは森の中へ消えていった。
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