転生もふもふ九尾、使い魔になる

美雨音ハル

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第13話 交換条件

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「おかしいんだ。黒い靄が……!」

 外が騒がしくて、目が覚めた。
 ……なんだ、殺すって言ったから、殺されると思ったのに。
 全然まだ生きてる。
 それどころか、時間を置いたおかげで体もだいぶマシになってるわよ。

 少し楽になったからだを起こせば、外ではドタバタと人々が走り回っているようだった。
 空は曇っている。
 雨は降り止んだようだが、いい天気とは言えなかった。

「おい、誰か来てくれ! 妻がおかしいんだ!」

「うちの子が、うちの子が……!」

 ぼやっとしていた意識が、それらの声で覚醒した。

「おい、灰を吸うな! 森の灰を、吸うな!」

 私は慌てて飛び起きると、そう叫んだ。
 本当ならここを出て行きたかったが、拘束具のせいでそうもいかない。
 がしゃがしゃと鎖が揺れ、暴れるたびに拘束がきつくなっていった。
 外で何が起こっているのかは、だいたい想像がついた。

 ──この土地は、ひどい瘴気を生み出す。

「ちくしょう、はずれないわ、なんなのよこれ!」

 せいいっぱいもがいてみても、ダメだった。
 その間にもあちこちから悲鳴が聞こえて来る。
 くそう、と顔を歪めていると、ふと、小屋の入り口に誰かが立った。
 小さな男の子だった。
 ひどく見覚えがある──。

「あんた、一体……」

 男の子はふらふらと私の元へよってくると、鎖を繋いでいた楔を引っこ抜こうとし始めた。

「ちょ、ちょっとなんなのよアンタ!」

 焦って声を荒げれば、男の子はぼんやりと顔を上げた。
 瘴気に体を侵されているのか、びっしりと冷や汗をかいている。
 ふと、どこかで見たことのある顔だと思った。

「……ひいじいちゃんが言ってたんだ、森は九尾の狐様が守っているって」

「……?」

「昔、助けてもらったからって……」

 私ははっと思い出した。
 百年前、私は幼い少年を森で助けたことがある。
 助けたというか、邪魔だったから森から追い出しただけだけれど。
 もしかして、この子供は、その子孫なのだろうか。

「狐様……まもらなきゃ……」

 子どもはぐらりと傾くと、地面に倒れ伏した。

「ちょ、ちょっと! ばかっ! 今すぐここを離れなさい!」

「きつね、さ、ま……」

 少年は鎖から手を離さそうとしなかった。
 私は焦って、暴れまくった。
 この鎖が、私から全ての力を奪い去っている。
 この鎖さえなければ、この少年くらいなら救うことができるのに。

「この……っ」

 必死で暴れまわっていると、小屋に再び人影が現れた。
 シリウスだった。

「ねえ、この鎖を外して!」

「……」

 シリウスは私のそばに倒れている少年を、なんの感情もなく見つめていた。

「早くしないと……!」

「早くしないと、なんだ?」

 なんだって……。
 私は口をつぐんだ。

 人間なんて大っ嫌い。
 私の森を焼いて、こんな風に見世物にして。

 だけど、だけど……。

「みんな、このままじゃ、死んじゃう」

 気がつくと、私は震える声でそう言っていた。
 
「お願い、早くといて……」

 そしてそう懇願していた。
 すると、男は初めて、ふ、と笑った。


「それならば、交換条件だ」

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