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翳り
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放課後、スマートフォンの電源をいれると、祖父からのメールが届いていた。
「たまには寺へ顔を出せ。話がある。」
普段はあまり優に関心を示さない祖父が、わざわざ連絡をしてくるのは珍しい。
「……何だろう」
『あの爺さん、霊力あるからな。なにかあったのかもな』
玲王と共に学校を後にし、久しぶりに裏の山の中腹にある実家の寺へ向かうことにした。
境内に足を踏み入れると、凛とした空気が漂っていた。静寂に包まれた寺の境内で、祖父は既に待っていた。
「久しぶりじゃな、優」
「なかなか帰れなくてごめんね、忙しくてあんまり顔出せなくて」
「別に気にしとらんよ。お前はお前の道があるだろうし。ただな――」
祖父はふと遠くを見つめながら、ゆっくりと続けた。
「最近、太陽に翳りが見える」
優はその言葉に、思わず息を呑んだ。影斗のことを言おうとしたが、口を開きかけて……言葉を飲み込む。
「……そう、なんだ」
祖父は優の表情をじっと見つめた。
「お前の背後には神が見える。だから、何があろうと大丈夫だと信じている」
「……」
「だが、それでも――胸騒ぎがするのだ」
優は祖父の言葉を受け止めながら、静かに頷いた。
「うん、気をつけるね」
寺を後にし、境内の階段を降りながら、玲王がぽつりと呟いた。
『言わなくていいのか?』
優は小さく息を吐き、微笑んでみせる。
「……巻き込みたくない。家族には特に……」
玲王は少し寂しそうに優を見つめたが、それ以上何も言わなかった。
吹き抜ける風が、どこか不吉な重さを帯びていた。
「たまには寺へ顔を出せ。話がある。」
普段はあまり優に関心を示さない祖父が、わざわざ連絡をしてくるのは珍しい。
「……何だろう」
『あの爺さん、霊力あるからな。なにかあったのかもな』
玲王と共に学校を後にし、久しぶりに裏の山の中腹にある実家の寺へ向かうことにした。
境内に足を踏み入れると、凛とした空気が漂っていた。静寂に包まれた寺の境内で、祖父は既に待っていた。
「久しぶりじゃな、優」
「なかなか帰れなくてごめんね、忙しくてあんまり顔出せなくて」
「別に気にしとらんよ。お前はお前の道があるだろうし。ただな――」
祖父はふと遠くを見つめながら、ゆっくりと続けた。
「最近、太陽に翳りが見える」
優はその言葉に、思わず息を呑んだ。影斗のことを言おうとしたが、口を開きかけて……言葉を飲み込む。
「……そう、なんだ」
祖父は優の表情をじっと見つめた。
「お前の背後には神が見える。だから、何があろうと大丈夫だと信じている」
「……」
「だが、それでも――胸騒ぎがするのだ」
優は祖父の言葉を受け止めながら、静かに頷いた。
「うん、気をつけるね」
寺を後にし、境内の階段を降りながら、玲王がぽつりと呟いた。
『言わなくていいのか?』
優は小さく息を吐き、微笑んでみせる。
「……巻き込みたくない。家族には特に……」
玲王は少し寂しそうに優を見つめたが、それ以上何も言わなかった。
吹き抜ける風が、どこか不吉な重さを帯びていた。
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