【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清

文字の大きさ
15 / 129
第一章 社畜と女子高生と湾岸タワマンルームシェア

15.女子高生と停電

しおりを挟む


 停電。

 電力事情が異常によい日本では、なかなか遭遇しない一大イベント。

 ここのリビングは窓がない構造のため、外からの明かりもなく本当に真っ暗だった。

 

「えっ、ちょっと、ちょっと宮本さん!返事してください!」


 俺が黙っていろいろ考えていると、じたばたしていた理瀬が手探りで俺の身体をつかみ、最後は俺にがっしりと抱きついてきた。

 ……柔らかい。


「返事してくださいよ!」

「お、おう」

「なんですかこれ……すごく怖いんですけど……」

「停電だろうなあ。ブレーカー飛んだ音とかしなかったから、マンションか電力会社のトラブルだと思うけど、一応ブレーカー見てみるか」

「ちょっと、行かないでくださいよ!」


 俺が立とうとすると、理瀬がいっそう強く抱きしめて制止する。


「……お前、暗いところ怖いの?」

「怖いというか、こんなに暗いの初めてですよ……夜も電気つけて寝てますし」

「要するに怖いんだな」

「怖いかどうかは別として、離れないでくださいよ」

「わかったわかった、まあまず落ち着け。ちょっと停電したところで死ぬ訳じゃない。とりあえず、スマホのライトでもつけるか」


 俺はスマホを取り出すが、画面が反応しない。


「あー、充電してなかったからバッテリ切れてるわ。懐中電灯とかないよな」

「あるわけないですよ。こんなことになるってわかってたら準備してましたよ」

「常磐さんのスマホは?」

「部屋の中ですよ」

「俺、手探りでそこまで進んでみるから、今だけ部屋の中入ってもいい?

「……いいですよ。そのかわり離れないでくださいよ」


 理瀬はかつてないほどに焦っている。軽い口癖の『~よ』がほぼ全ての言葉についているのは、偶然ではないだろう。

 俺は理瀬にしがみつかれながら、明るかったときの記憶を頼りに理瀬の部屋の前まで進み、扉を開けた。するとカーテンの隙間からわずかに外の光が入り、視界にある程度の情報が入る。

 理瀬のスマホは、パソコン机の上にあった。


「常磐さん、ほら、ロック解除して懐中電灯つけて」


 ひどく怯えていた理瀬だが、見慣れたスマホの画面を見ると少し落ち着いたらしく、俺と離れてスマホを操作した。でもまだシャツの袖を掴まれている。

 ライトが点く。


「……ちょっとベランダ出ていいか?」

「どうしてですか?」

「どこが停電しているのか確認したい」


 なぜか、とても嫌な予感がする。

 周りを見てみると、街頭や近くのタワーマンションは明かりがついていた。

 どうやら、このマンションだけ停電しているらしい。


「真っ暗ですよ……何があったんでしょうか?」

「悪い、ちょっと俺にライト貸してくれ」

「えっ?」


 俺は理瀬からスマホを奪い、自分の部屋に直行した。


「えっちょっとまって!ちょっとまってくださいよ!」


 まだ怖がっている理瀬をかまう余裕がないほど、俺は焦っていた。

 鞄から仕事用の手帳を取り出し、自分の仕事同様に記録してある篠田の案件リストを確認する。


『クレセント豊洲 受電設備更新』


 予感が的中した。

 ここのマンションの電気設備、篠田の案件じゃないか。

 俺は鞄からモバイルバッテリーを取り出し、自分のスマホに接続する。急速充電モードだが、スマホはすぐ復活しない。


「何かわかったんですか?」

「……この停電、うちの会社の仕事のせいかもしれない」

「宮本さんの仕事……あっ!」


 理瀬のスマホのライトが切れた。

 こちらも充電していなかったらしく、もう反応しない。

 俺が持っているモバイルバッテリーの小さなLEDだけが頼りになってしまった。

 俺はベッドに座り、理瀬はまたしがみついてくる。


「いつ直るんですか、これ」

「わからん。三十分くらいで復旧できるかもしれないが、そうでなければ何時間もかかる」

「なんでそんなに停電に詳しいんですか」

「そういう仕事してるからだよ」

「……ずるいです、宮本さん。いつもパッとしない社畜さんなのに、こんなときだけかっこいいのずるいですよ」

「いつもはぱっとしないんだな……」

「私、今ここで宮本さんに変な気起こされたら、抵抗できませんよ」


 さっきから理瀬はずっと俺に抱きついていて、当然ながら胸(よく見ないようにしていたが、細身の割に大きめで柔らかい)がずっと当たっている。

 だが俺は、そんな理瀬の身体に全く反応しないほど焦っていた。

 この大停電、うちの会社のせいだとしたら――

 そう考えていると、復活した俺のスマホが起動と共に激しく震える。

 篠田からだった。


『宮本さん!お、遅くにすみません!』

「わかってるよ。停電のことだろ?」

『えっ?宮本さん千葉にいるのになんで豊洲のマンションの停電知ってるんですか?』

「あ、いや、今なんか他のやつから聞いた」

『今、タワーマンションのクレセント豊洲の主任技術者から電話かかってきて、よくわからないけど受電がトリップして全停してるって話なんです。会社と課長には電話しましたけど、誰もでなくて』

「わかった。俺が今から歩き……いや、車で会社行くから。篠田は女子寮だろ?主技からの情報全部俺と課長にメールで送れ。そのあと、朝一までは待機でいい」

『わ、私もすぐ行ったほうが――』

「俺のことは心配するな。この時間に何人も出たって仕方ない。大事件確定だから、お前はもう寝て体力を蓄えとけ。わかったか?」

『は、はい、明日朝一でお願いします!』


 最悪の事態が起こっていた。

 俺は頭をフル回転させ、これからの対応を考えながら立とうとする。

 

「か、会社行っちゃうんですか?」

「ああ、すまん。あとで説明はするから」

「ひ、一人にしないでくださいよ!」


 しかし、停電に怯えている理瀬はまだ解放してくれそうにない。


「理瀬。頼みがある」

「はい?」

「さっき、お前はもう料理を覚えたから俺はいらない、と言ったな。だがこの通り、俺の仕事が最悪な状況になった。悪いが、もう少しだけここに住ませてほしい」

「そ、それは別にかまいませんよ」

「これは俺のわがままだ。請求されれば、あとで家賃は払う」

「そんなの気にしないでいいですよ。でも私を置いていくのはやめてくださいよ」

「ああ……」


 よく考えたら、千葉にいるはずの俺が停電発生の数分後に会社へ出るのはおかしい。

 まだ酔いもあるし、一時間程度は待っている必要がある。

 くそ、会社に内緒で豊洲なんかに住んでるから、この焦っている時に待ち時間なんか発生するんだ。くそ。会社に言えないことを平気でやってたのがいけないんだ、くそ。

 久しぶりに頭が興奮していて、俺はまともではなかった。

 力を抜くため、俺はベッドで横になる。合わせて理瀬も。

 なんか、理瀬が俺を押し倒したような形になってしまった。


「……まだ離れないの?もうスマホのライトもつけてるけど」

「スマホのライトなんてすぐ消えますよ。変な気起こさないでくださいよ?」


 冷静になると、非常にまずい状況だと俺は気づく。

 アラサー社畜が女子高生に押し倒されている。胸をぎゅっと押し当てながら。

 俺は、自分から触るのは絶対にダメだとわかっていながら、理瀬の頭に手をあて、そのつやさらな髪をゆっくり撫でてやった。


「なんですかそれ」

「ちょっと落ち着いてきただろ?」

「……確かにちょっと気持ちいいですよ」


 気持ちいい。

 俺に触られて。

 理瀬にそんなことを言われると、今まで頑張っていた理性が息絶えそうになる。

 やばい。この状態で俺の息子が反応したら絶対バレる。かたいのがあたる。

 俺が必死にこらえていると、とつぜん明かりが点いた。停電発生から五分後くらいだろうか。

 理瀬もそれに気づき、身体を起こす。


「……私、今相当恥ずかしいことしたと思うんですけど」

「まあな」

「忘れてもらえます?」

「忘れるのは無理かもしれんが、誰にも言わないから安心しろ」

「……宮本さん、そういうところ意地悪ですよね」


 理瀬は俺の胸をぽんと叩き、離れていった。

 これから大仕事が待っているというのに、約五分間抱きついていた理瀬のぬくもりが消えると、俺は急に寂しくなった。

 ついさっきの新宿で、照子が俺の腕から離れていった時よりもだ。

 この気持は非常にまずいことだと頭の中でわかっていたが、俺は仕事のため、他のことは考えないように頭を切り替えた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

学校1のイケメン♀️から逃げ出した先には地獄しかありませんでした

山田空
ライト文芸
ハーレムを目指していた主人公は転校してきたイケメンによってその計画を壊される。 そして、イケメンが実は女の子でありヤンデレであったことを知り逃げる。 逃げた途中でむかし付き合った彼女たちとの過去を思い出していく。 それは忘れたくても忘れられない悲しき記憶 この物語はヒロインと出会いそして別れるを繰り返す出会いと別れの物語だ。 そして、旅の最後に見つける大切で当たり前なものとは

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...