【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清

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第五章 社畜と本当に大切なもの

14.社畜と禁断の愛

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 前田さんが古川の「弱点」を見つけてから、俺はもうゆっくりしていられなくなった。

 俺は、古川を社会的に陥れたい訳ではない。理瀬がもとの生活を取り戻せば、それでいい。他人の弱みを握って、それをネタに脅すなんてことは、最終手段だ。

 しかし、前田さんが掴んできた古川の「弱点」は、衝撃的なものだった。はたから見れば、キャリア官僚である古川は真人間の象徴のような人物。そんな古川に、裏の顔があるとは思えなかった。今は足を洗っているのだろうが、昔の事とはいえ、それを認める気にはなれなかった。

 だから俺は、伏見を懐柔し、理瀬に会う作戦を加速することにした。俺と伏見は、幸いにも相性が悪い訳ではない。普通に出会っていたら、それなりの友人になれたと思う。たぶん。きっと。

 より早く伏見を懐柔するための俺の作戦は、そのために伏見を傷つける恐れがあった。しかし、俺の最優先目標は理瀬の救出であり、伏見には申し訳ないが、手段は選べなかった。

 雑居ビルで古川の「弱点」を見せてもらった数日後、前田さんから電話があった。


『いやあ、宮本さんにあの時聞いた通り、伏見京子には学生時代、何人も交際相手がおったようですわ。同棲みたいな事もしとったみたいです』

「ああ、そこまでわかればいいです」

『しかし、この情報、一体何に使うつもりですか』

「伏見さんに俺のことを信じてもらうためです」

『はあ。ま、詳しいことは若い二人に任せますわ』


 前田さんによる裏取りが完了した後、俺は照子に電話した。


「なあ照子、お前、女もいけるクチだったよな?」

『はあ?』


** *


 週末。

 この日は伏見の予定が一日中空いている、ということで、昼過ぎに新宿で会うことになっていた。

 俺は、先に作戦会議をしていた照子と一緒に、待ち合わせ場所へ向かった。

 照子はエスニック風の衣装を身にまとっていて、伊達メガネもしている。はたから見れば、有名人のYAKUOHJIだとはわからない。

 しかし、伏見は遠目に照子の姿を確認した瞬間から、それがYAKUOHJIだと気づいたようだ。


「えっ、ちょっと、なんで、聞いてませんよ」

「こんにちわー、この前わたしの家に勝手に止まってた上級国民さん!」

「い、いや、その説は大変申し訳ありませんでした!」


 俺と会う時とは全く違い、素で驚いた表情を見せる伏見。


「すまん。こいつが暇だからついていく、って聞かなくて」

「一緒にあそぼー!」


 照子は、伏見と手をつないだ。こいつはもともと人懐っこいので、俺が信頼しているという相手ならば、初対面でも簡単に仲良くなれる。


「ひっ」


 手を触られた瞬間、伏見は体中をびくり、と震わせた。

 俺に近づいてきた時には、一度も見せなかった反応だ。


「カラオケいこ!」

「えっ、えっ、えええっ」


 まだ落ち着かない伏見を、俺達はやや強引にカラオケ店へ連れ込んだ。


「わ、私、カラオケだとYAKUOHJIの歌しか歌わないんですけど、まさか本物の前で歌うなんて、できないですよ」

「別に下手くそでもええじょ! わたし、普通の人が自分の歌うたってるところ、見てみたかったんよ」

「ええー……」


 それからも、照子の盛り上げ方がうまいので、二人は難なく女友達どうしのカラオケ大会に突入した。

 俺は一曲も歌わなかった。二人が盛り上がり始めたのを見て、「いい雰囲気だからもう帰るわ」と言い、涙目の伏見を残して、近くの喫茶店で時間を潰した。

 その後、照子から電話があったのは、午後十時を過ぎてのことだった。俺は喫茶店で待つのに飽きて、パチンコで時間を潰していた。


「京子ちゃん、帰ったじょ」


 もう名前で呼び合う中になっている。照子のコミュニケーション力、半端ない。


「どうだった?」

『すごい良かった。剛にしてもらうより気持ちよかった』

「いきなりそんな生々しい話はするな。やっぱり伏見はレズビアンで間違いないんだな」

『ほうやな。めちゃくちゃ手慣れとったもん。こんなにうちの知らん世界もあるんやな~。楽しかったけん今度、また二人で会ってもいい?』

「勝手にしろ。あいつ、忙しいからあんまり無理させるなよ」

『はいはい』


 俺が伏見にうっすら抱いていた疑念は、こういう事だった。

 伏見は、何度も俺を誘惑しようとしていたが、俺は彼女から色気のようなものを感じ取れなかった。むしろ、やらされ感を覚えていた。

 古川が強要しているからだ、とはじめは思ったが、そうではないらしい。今どき、官僚が部下にそんな指示をしたら、セクハラで訴えられるリスクの方が大きい。

 違和感を覚えたのは、照子の部屋に泊めた時だった。

 俺と二人で話している時よりも、伏見は素の顔を見せていた。それは、単に焦っている事もあったが、恋をする女の顔に見えた。俺の直感だったが、それは当たっていた。

 伏見は、ただのYAKUOHJIのファンではなく、ある種の恋愛対象として照子を見ているのかもしれない。

 そう考えた俺は、まず前田さんに伏見の過去を調べてもらった。案の定、伏見は女性どうしで何度も交際していた。伏見は過去の交際を否定していたが、恋愛自体にはどこか慣れている、大人の雰囲気があった。これはいい年のおっさんにしかわからないだろう。デートは普通にこなすし、何より処女っぽくなかったのだ、伏見は。

 次に、照子に頼んで、伏見を誘惑してもらった。まさか照子にそんな芸ができるとは思っていなかったのだが、作戦を聞いた照子は「あの子綺麗やし、なんかおもしろそう」と前向きな返事をして、本当にやり遂げてしまった。正直、俺も上手くいくと思っていなかった。あいつのカリスマ性は本当にすごい。照子をダシに使ったのは申し訳ない気がするが、普通に楽しんでいたようなので、まあ良しとしよう。

 さて、これで伏見は、自らがレズビアンであると、俺に知られたわけだ。

 ここからが勝負だった。これは無茶苦茶だし、一つでも間違えたら俺が非難される可能性もある、リスクの大きな作戦だ。しかし理瀬と会うためなのだ。もう手段は選ばない。

 俺は、とあるラブホテルのロビーで照子と会い、鍵を受け取り、伏見の待つ部屋へ向かった。
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