【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清

文字の大きさ
114 / 129
第六章 社畜と女子高生と二人の選んだ道

4.社畜とJKお悩み相談

しおりを挟む


 何か考えておく、とは言ったものの。

 古川へ復讐する方法は、何も思いつかなかった。

 古川の足を引っ張るのは前田さん任せだった。その前田さんと連絡がつかなくなって、俺の切れるカードはなくなった。

 前田さんと最後に会った時、古川をゆすれるネタを掴んだことに随分興奮していたから、前田さんはもしかして週刊誌の記者か何かなのかもしれない、と思った。しかし週刊誌記者が俺みたいな何もない社畜に付きまとうのもおかしな話なので、やはり伏見の言った通り、古川のスパイだという説の方がピンとくる。

 いずれにせよ、前田さんの力はもうあてにできない。

 作戦が何もないまま、一週間の入院生活を送った。脳梗塞のせいか、以前より判断力が落ちているらしく、スマホゲームをしても単純なミスで失敗してしまい、テンションが下がることが多かった。

 以前よりもはっきりしない頭で、作戦を練り直すのは無理があった。

 そんなことを考えながら過ごしていた時、江連エレンからLINEがあった。


『理瀬、最近どんな感じだった』

「すまん、実はちょっと入院してる」


 俺が正直に答えると、『えっ、じゃあお見舞い行きます』と返信があり、その日の夕方に病院へ来てくれた。


「おじさん、ほんとに入院してたんですね。大丈夫なんですか?」

「ああ。だいぶ回復したよ。まだちょっと頭の回転が遅いけど」

「理瀬はこの事、知ってるんですか?」


 俺は答えに困った。理瀬が俺のことをどこまで知っているかは、もはやわからない。照子が逮捕された事へのショックで、俺に何らかの異常が起こっている、と想像はするかもしれないが、それを古川から伝えられているかどうかはわからないのだ。

 

「わからん。直接伝えてはいない。というか、理瀬とはしばらく会えそうにない。お前に教えてもらって、夜中にふらついてる理瀬をつかまえて定期的に話してたんだが、そこを理瀬の父親に見られて、当分会えそうにないんだ」

「えっ、そうだったんですか。まさかそのショックで倒れたんですか」


 そう言えば、エレンは俺と照子の関係をまだ知らない。YAKUOHJI逮捕のニュースは知っているだろうが、ニュースと俺が倒れたことは紐付いていない。


「いや……倒れた理由は、もっと別のことだ」

「お仕事しすぎたとか?」

「それもあるが……その、何だ、昔付き合ってた女の子にいろいろあってな。詳しくは言えないが」

「えっ、それって篠田さんの事ですか?」

「いや、違う。高校時代の彼女のことだ」

「高校時代の彼女……」


 エレンは急にもじもじしはじめた。見覚えがある態度だった。


「あの……宮本さん、つかぬことをお聞きするんですけど」

「何だ?」

「別れた彼女のことって、今でもやっぱり、諦めなかったりするものですか?」

「いや、恋愛対象としては全くない。友達として気にはなるが」

「そ、そうですか……」


 エレンが肩を落とす。


「お前、例の彼氏と別れたのか?」

「えっ! な、なんでわかったんですか」

「顔にそう書いてある」

「えっ、ど、どこにですか」

「そういう意味じゃないよ」


 慌てて手鏡を出すエレン。俺は思わず笑ってしまった。久しぶりに、シンプルにおかしくて笑った気がした。

 もしかして、お見舞いに来てくれたのは、理瀬のことよりエレン自身の問題を相談したかったから、なのだろうか。そう思わせるくらいエレンは真剣だった。


「俺みたいなおっさんの過去なんて別に興味ないだろ。このタイミングで俺に何か聞くとしたら、自分の恋愛に関わることしかないと思ってな」

「そ、そうなんですけど……」

「悩みがあるなら聞くぞ。聞くだけで解決できるかはわからないが、気持ちが楽になるかもしれん」

「うーん……ちょっと言うの恥ずかしいんですけど……実は私、ついにリンツと、その、一線を超えてしまいまして」


 そういう話か。

 この手の話をオープンにしてくれる、ということは、俺はエレンを性的な目で見ていない、とエレンは感じている、という事なので、いい傾向ではある。


「最初はよかったんですけど、なんか、どんどんリンツが求めてくるようになって……私の体が目的なのかと思って、ちょっと怒っちゃったんですよね」

「よくある話だな」

「リンツが私のこと、好きじゃなくなった訳じゃないと思うんです。実際、すごく優しいですし。でも、どうしても受け入れられないというか、受け入れきれなくて」

「ふーん」


 俺も、照子とそういう理由で険悪になった事はある。高校生カップルなら誰もが通る道なのかもしれない。


「まあ、男子高校生なんて九割が性欲で出来てるようなもんだし、女の子がうんざりするのは仕方ないよ。別にリンツ君が異常な訳ではないと思うな、俺は」

「そ、そういうものなんですか。やっぱり、私がいけないんですね」

「いや、そうじゃない。そういうことは、二人で合意してするものだろ。俺にできるアドバイスがあるとすれば、嫌なことは嫌だってちゃんと伝えないと、一生伝わらないってことだな。一回断ったくらいで、リンツ君はお前のことを嫌いにならないと思うぞ」

「そ、そうですか……?」

「ああ。お前、まだリンツ君のことが好きなんだろ?」

「……はい」

「だったら、ちょっと時間を置いて、もう一度話し合ってみな。向こうもそれで反省するだろう」

「……はい! そうしてみます!」


 エレンはとても満足していた。だいたいこういう時、本人の気持ちが決まっていても、誰かに背中を押してもらわなければ、動き出せないものだ。


「お尻ばっかり触るのはやめてって、リンツにちゃんと言おう!」


 言ってから、エレンは真っ赤な顔になった。リンツ君の性癖を突然披露してしまったエレンは、「あっ今のなし! 今のなんでもないです!」とあわてて否定した。


「み、宮本さんは、理瀬の代わりに新しい彼女とか作らないんですか」

「……そんなことを考える余裕はないな」

「篠田さんは?」

「もう俺のことなんか大嫌いになってるだろ。女の恋は上書き保存、男の恋は名前を付けて保存、っていう名言があってだな」

「なんですかそれ? どう違うんですか?」


 そう言えば今どきの若い子はいきなりスマホを手にするから、パソコンの事がわからないんだった。思わぬ形でジェネレーションギャップを感じ、俺は軽くへこむ。


「じゃあ、高校時代の彼女さんは?」

「だから、ないって言ってるだろ」

「何があったかは聞かないですけど、女の子が弱ってる時はチャンスですよ。ちょっとずるい気もしますけどね」

「知ってる」

「うわ、なんですかその余裕っぽい顔。おじさん、なんかキャラ違いますよ。病気で頭のネジ外れちゃったんですか?」

「そうかもなあ」

「とにかく、おじさんは理瀬と距離を置くんですよね。そのことを理瀬と納得させるためには、別の人のことを好きになっちゃった、っていうのが一番だと思います。理瀬、頑固なのでいきなり別れる、って言われても諦めなさそうだし」


 図星だった俺は、必死で平静を装った。

 理瀬を諦めさせるために、他の女の子と付き合う。それも一つの手段かもしれない、と俺は妙に納得してしまった。もっとも、こんな俺と付き合ってくれる女がいればの話だが……
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

処理中です...