蒼穹の魔剣士 ~異世界で生まれ変わったら、最強の魔剣士になった理由~

神無月

文字の大きさ
5 / 49
序曲

第4話 盗賊の荷物に少女が寝ていた話

しおりを挟む
 
 おじさんを倒した後、今夜の戦利品が眠るであろう荷馬車に向かっていく中で、僕は反省していた。

「途中までは良かったと思うんだけどなぁ。詰めが甘かった」

 長いこと狂乱に耽りすぎたから、まともな名前を出すのに時間がかかった。

 そういえば最後におじさん、なんか言ってたな?

「〈クロージャー〉と〈アストラル〉と〈アドミニストレーター〉……管理人ってどういうことだ?」

 まだ、この国のすべてをわかってないから、理解できなかったけど、そういう組織がすでにあるってことかな。将来的な僕の『組織』に邪魔ならつぶしておかないと。

「競合他社なんてろくなもんじゃない」

 偽装工作に情報改変、人材の引き抜きに、スパイ。悪いことしかない。

 まぁ、そんな未来の話より。

「『メビウス』、この名前は良かった」

 空を見上げれば星が輝いている。

 僕は星々が好きだ。宇宙が好きともいえる。

 現代の科学がその物理法則で世界の真理を解き明かしても、宇宙にだけは手が届かない。

 だから、いつまでも幻想的で無慈悲で、不変だ。

 僕の名前を色々変化させた特別な名前。今後は大事に使っていこう。

「同名がいたら、殺すか」

 同じ名前は不都合だから、ここは徹底しないと。

 それよりもだ。

「さてと、今日のお宝はー……ん?」

 焚火で7人を処理した後、金目の物がどこにあるのかを探していた、その時に見つけた荷馬車はよく見ると、暗幕が垂れていて中身がわからないようになっている。おまけに檻と錠がついていて、厳重だ。

「はい……あっ」

 剣というマスターキーでぶち開ける……と思ったんだけど。

 どごぉぉん、と猛烈な音を立て、扉はおろか屋根ごと吹き飛ばしてしまった。

 さっきの新技の影響だろうか、注意しないと中身まで吹き飛んでしまうところだ。

 ───中身が金目のものじゃないなら、特に。

「んぅ…」

 すると愉快な目覚まし音で目覚めたのか、少女は身体を起こすと星の明かりでその容姿が垣間見える。

 体つきからみて同年齢程度、四肢の筋肉は少なく魔力量も見逃してしまうほどに希薄。あとは…肩ほどまでの黒髪で瞳の色は蒼っぽい。

 しかし端麗な容姿に反して、奴隷が着るような服とはいえないボロ布を着ていた。見た目が小奇麗な分、そのボロい状態はなんだか、ちぐはぐな印象を与える。これならバスタオルを巻いている方がマシだ。

「大丈夫?」

 少女は周りを見渡し、最初は壊された檻の入口、次に切られた暗幕、そして僕をちらりと見た後、自然のプラネタリウムと言わんばかりに開いた天井を見つめていた。

「……開いてる」

「ここじゃなんだし家に行こうか」

 少女は裸足で恐る恐る地面に足をつけると、また、空を見上げ深く息を吐く。

 そんなに何度も空を見上げるもんだから僕もつられてしまう。

 そこにあるのは闇を照らす、星空だった。

「今日は、新月だ──」

「──え?」

 くりん、とした綺麗な目で見つめてくる。

「月の見えない日ってこと」

 それよりも、さっさと場所を移そう。

 ここは少し寒い。

「じゃあ行こうか」

「……まって」

 声で引きとめられ振り向くと、なぜか座り込んでいた。どうやら足がしびれているらしい。

 仕方ないから、彼女のそばでしゃがみ込んでおんぶの態勢を作り、彼女に促す。

「おんぶ、わかるかな?腕を僕の首に回して」

 彼女は素直に腕を巻き付け、僕は両脚を抱え込むようにして立ち上がる。

「平気?」

「うん」

 腕に伝わる脚の体温は冷え切っている。温めた方がいいだろうと思い、焚火に向かう。

「あ」

「?」

 そして目の前に広がる惨状。辺りは血が飛び散り、肉塊が散乱し、独特な死臭が充満している焚火であった。それはさながらスプラッタ映画、あるいはブッチャーの様相だ。

「みんな…死んでる。あなたが殺したの?」

「…そうだよ。僕が殺したんだ」

 正直言おうか迷った。だが今後のことを考えると真実を話した方が都合がいい。

「…そうなんだ」

 彼女は泣きわめくことも非難することもしなかった。ただ巻き付けられた腕が少し締まってる気がした。

「降りる?」

「もうすこし…このまま」

 彼女くらいの年齢なら恐怖のあまり堪らず逃げだしてしまうのが普通だと思うのだが、なぜだがより密着してきている…やっぱり首締まってるな?

「そう、ところで君の名前は?」

「なまえ…わたしに名前ない」

「そっかー名前ないのかー」

 孤児なのか?ないなんてそれは不便だ。一号だとか村人Aじゃ示しがつかない。名前はどんなものにもあるべきだ。わかりやすいからね。例え技名が暫定のアンノウンでも。

「じゃあ考えようか」

「…あなたにつけてもらいたい…ダメ?」

 唐突に名付け親になるなんて、これは責任重大だ。

 ここはいっちょ、盛大な名前をつけてあげよう。

「え。じゃあメビウス…は使ってるから」

 やっぱりギリシャ文字だとかフォネティックコードあたりが妥当か。統一性があっていいかもしれない。

 …でも24人も名前のない人間がいるか?

 僕は名前を付けるのはもっての外、はっきり言って名前を覚えるのが苦手だ。

 だから彼女につける名前は── 

「うーん」

 しばし考え込み、そして。

「──考えとくね」

 保留にした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~

夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する! 農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。 逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。 これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

処理中です...