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第一章
≪第21話 途≫ 新月の夜
しおりを挟むイリスと手合わせした後、無事自分の部屋に戻り、服装を楽にしてベッドに座り込む。
「ふぃ…」
なんだか今日一日でどっと疲れた気がする。気がするだけで疲れてはないのもなんだか疲れる。こういう時にはぱぁーっとやるのが一番なんだけど、連絡がない以上その時ではないのだろう。
でも、気になっちゃうから呼んでみようかな?
「…い──」
「ここにいます」
ミツキいるか、そう聞く前に部屋の窓から静かに入ってきた子、ミツキ。僕の渡した僕お手製の制服をきっちり着て、金髪に赤い眼を持つ少女。会うたびに髪型を変える日があるが、どうやら今日は右に結ばれたサイドテール。
成り行きで知り合った彼女は行く当てもないとのことで僕の組織「(名前はまだ決めてない)」の初メンバー。ちなみに第二号はいないしミツキは僕がしっかりと、あったその場で名付けた。
さらに言うとこの僕お手製の制服はちょっとした仕掛けがある。そのため彼女の着ている一着と僕の持っている一着だけしかない。
「…久しいな」
「こうして、あなたから呼んでもらえるなんて、光栄です」
「そうか」
「ええ」
ミツキには以前にぱぁーっとできるよう調査をお願いをしていた。本当は向こうの連絡を待つべき状況だったんだけど、今日のことで少し急いてしまったため僕のわがままで来てもらった。
「……」
「……」
しかし彼女には情報はおろか連絡すべき事項があるわけもないのだろう、2人の男女が部屋で黙っているという珍妙な状況ができあがってしまった。形だけでもとりあえず確認してみるか。
「調査の方は?」
「───その前に一つ、確認したいことがあるんですが」
「うん?」
「イリス王女とはどういう関係?」
「……ん?」
近づいて、食いかかってくるように質問するミツキ、要領を得ない質問だった僕は眉を顰める。
「放課後に会っていたでしょう、あれはなんだったの?」
ミツキは基本敬語だが、たまにため口になることがある。
昔はため口で僕としゃべっていたのに、気づいたときには敬語だった。
悲しい。
「少し興味があってね。まぁおおむね予想通りだ」
「興味?それは人として、あるいは実力が?あるいは女として───」
「───確認はそれだけか?」
「ッ!」
そう言うとびくりと、身体を震わすミツキ。
「……ごめんなさい。あなたにはあなたの考えがあるのは知っていたのだけど、それでも…」
詰め寄らんばかりだった威勢はなりを潜め、見るからに肩を落とす。
ミツキが敬語で話すのなら、僕も『組織の長』として振舞うべきなんだろうけど、偉そうにするって意外と難しい。昔いたパワハラの真似だと失敗だったみたい。
一人称を『我』とか『私』二人称を『汝』『貴様』とか?…今度やってみようかな。
「…さっきの調査の件ですが、一つ面白い情報があります。すでに把握しているとは思いますけど……」
「へぇ面白い情報?なんだそれは?」
「少し良いですか?」
「ん?あぁ…」
ミツキはこそこそ話のポーズを示して、僕の耳に口を近づける。
ここに他の人はいないのに、そんなに重要な情報なのだろうか。
「実は──」
ミツキの抑揚のない声で囁く情報
「──たしかにそれは、面白い」
その情報に僕は部屋の窓から、久しぶりに夜空を眺めた。
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