雪の華

おもち

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16.地下

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 雪の言葉をよく咀嚼できないまま、涼太は7階を後にした。
 雪に連れられて、つい先ほど乗ってきたエレベーターに再び乗り込み、今度は1階へと下っていく。
 
 「雪。尋問って一体どういうことだ。」

 尋問というと、裁判などで検察官やら弁護士やらに根掘り葉掘り質問される状況がイメージされる。
 俺は、裁判をする予定もされる予定もなかったはずだが……。

 「それについては尋問室に着いてから説明するので、今は黙ってついて来てください。」

 何ともひどい言いようだ。
 雪は何というか、俺に対する当たりが強いような……。

 ――ポーン。

 本日4度目の音がエレベータ内に響く。

 雪の後に続いてエレベーターを後にした涼太は、そのままエントランスへと向かった。

 そこで受付の職員らしき魔法使いと二言三言言葉を交わした雪は、キーカードのようなものを受け取ると涼太に、こっちです、と言って受付の中へと入っていった。
 
 なんで受付の中に……?
 
 そんな疑問を浮かべながら、涼太は受付の中へと足を進めた。
 
 受付のデスクの中、ちょうど外からは死角になる床部分に、地下へと続く階段があった。
 雪は臆することなく階段を下りて行く。

 なんでこんなところに階段が……。
 明らかに隠すように造られた階段。
 一体どこにつながっているのだろうか。
 
 一抹の不安を抱えながら、涼太は階段へと足を伸ばした。

 石造りの階段。
 下っていくにつれてどんどん暗くなっていく照明。
 
 どこか不気味な雰囲気に、思わず身震いする。

 2人の靴音が、暗闇の奥へと溶けていく。

 階段を下りた2人はそのまま通路を進んでいく。
 まっすぐな通路の左右には複数の部屋がついていた。

 階段を下りていた時の不気味さとは打って変わって、地下の空間は近未来的な雰囲気を醸し出す黒で統一されたデザインだった。

 雪は奥から2か、3番目くらいの部屋の扉を開き、中へと入った。

 部屋の中央には、一人用のオフィスデスクと椅子が1つ、奥の壁側には数脚の椅子が並べられており、椅子が並べられている壁の近くにはもう1つの扉があった。

 「奥の椅子に適当にかけて待っていてください。5分くらいで戻ります。」

 そう言い残して雪は部屋を後にし、残された涼太は部屋を見回しながら椅子へと腰を掛けた。

 ――これから何が行われるかも知らずに……。
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