雪の華

おもち

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19.魔女の過去

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 薄暗い照明が灯る和室。
 室内はお焼香特有の香木の香りで満ちている。
 白や紫の花々に囲まれた遺影の中で、30代ぐらいの女性が柔和に微笑んでいた。
 そんな遺影を横目で見ながら喪服を着た親族らが各々立ち話をしている。
 「かわいそうに……、まだ若いのに……。」
 哀れみの目を向けながらそんなようなことを口々に言っていた。
 
 そんな室内とは打って変わって、まだ寒さの際立つ真冬の廊下には1人の少女の嗚咽が響いていた。
 廊下に置いてあるパイプ椅子に体育座りをした年端もいかないその少女は、泣き腫らした目を擦りながら、何度も母親の名を呼んでいる。
 
 そんな彼女の耳に、室内のひときわ大きな声が飛び込んできた。
 「あなたが引き取りなさいよ。ほら、ちょうど子供も就職した頃合いだし……。」
 「嫌よ。こんなどっちつかずな子、養子になんかしたくないわよ。」

 親族等のそんな会話が、彼女を更に絶望の縁へと追い込んでいくのだった。
 
 少女の名は、冬実雪。
 魔法使いである父親を早くに亡くした彼女は、雪女である母親と慎ましやかに暮らしていた。
 雪の7歳の誕生日が目前に迫った12月のある日。
 その日は特に寒さが厳しかった。
 母親は朝から人間界へと出向いていて、雪は家で1人、母の帰りを待っていた。
 ――プルルル……。
 時計の針が7時を越した頃、静かな家に鳴り響いたその電話で、雪は母の訃報を聞いた。

 交通事故だった。
 吹雪で視界を奪われた車が母親の歩いていた歩道に突っ込み、彼女は息を引き取った。

 「え……。」
 思わず手から滑り落ちる受話器。
 物理法則に従ってヒュルヒュルと落ちた受話器は、電話コードに引っ張られてゆらゆらと揺れていた。

 「もしもし……。聞こえますか?」
 受話器から放たれるその音は、彼女の耳には最早届いてはいなかった。
 世界に1人だけ取り残されたような、得体のしれない虚無感と虚しさは、雪の心をどんどん蝕んでいくのだった。

 魔法使いは、混血を尽く毛嫌いする。
 他の種族後が混ざることで、魔力が弱まるとされていたからだ。
 それは雪の親族も同様で、 雪女と魔法使いの混血である雪は、親族間をたらい回しにされた。
 母方の親族らがすでに亡くなっていた雪は、結局父方の叔母に引き取られたのだった。
 
 ――※――
 
 「雪、お茶。」
 「雪、風呂。」
 「おい雪、飯はまだできないのか!」
 「これだから混血は……。」
 
 雪を引き取った叔母の家で、雪は苦役を課されていた。
 何かミスをすれば、混血だからと罵られる、そんな生活の中で雪は、亡き父のような退魔師になることを志すようになっていった。

 今の境遇を覆すために、そして親族を見返すために……。
 
 
 
 
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