雪の華

おもち

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18.目覚め

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 ――ゴォーゴォー。
 換気扇の回る乾いた音。
 おぼろげだった意識が引き戻されていく。

 うっすらと目を開けると、蛍光灯のまばゆい光が目に飛び込んできた。
 
 「あ、気が付きましたか。」
 柔らかい声が涼太の意識を鮮明にしていく。
 涼太はその声のする方向に顔を向けた。

 「美鈴……さん?」

 なぜ彼女がここに……。
 そもそもここはどこなんだ。
 
 涼太は首を動かして周囲を確認した。
 
 どうやら昨晩泊まった訓練室のベッドに寝かされているようだ。
 
 いや、でも、俺は確か7階で幹部の人たちと話していたじゃないか。
 そしてそのあと……。

 そこまで記憶を遡ってから、涼太は違和感を覚えた。
 そのあと、どうしたんだ……。
 記憶を辿ろうと試みるが、7階からどのようにしてこの場所へ戻って来たのか、皆目検討もつかない。

 「あの、俺、どうやってここに戻ってきたんですか……。すみません。思い出せなくて……。」
 
 「涼太さん、幹部の人たちとの話し合いが終わった後に、いきなり意識を失ってしまったんです。なのでここまで運んできたんですよ。」

 美鈴は、ご気分はいかがですか、と心配そうに涼太を覗き込んだ。

 ――そうだったのか……。
 自覚はなかったが、疲れが溜まっていたのだろう。
 それもそうだ。
 昨日の今日で色々ありすぎた。
 そして……。
 魔法界という新たな世界に触れ、状況が二転三転する中で、ついに子どもの頃から憧れていた「魔法」を学べることになったのだ。

 そこまで考えを巡らせてから、涼太ははたと思い当たる。

 ――本当に、俺が魔法を……。
 美鈴の話だと俺は失神していたようだし、もしかしたら魔法学校で魔法を学ぶのは記憶違いなのでは……。
 あまりにも自分の思う通りにことが進みすぎているせいだろうか。
 もしかしたら思い違いなのではという不安がどんどん広がっていく。
 
 「迷惑かけてしまってすみません。ありがとうございました。」
 涼太はそう言って、上体を起こし、頭を下げた。
 そして、自分の記憶が間違いでないことの確証を得るために口を開く。

 「あの、ところで、俺、本当に魔法学校に入学できるんですか?」
 不安げに美鈴を見上げる。

 「はい。涼太さんには4月から入ってくる新入生たちと一緒に魔法を学んでいただきます。入学生の中には魔法を使えない者もいくらかいますが、人間として入学してくる生徒は涼太さんだけです。まぁ、見た目だけでは人間と魔法使いの区別は付きませんし、なんとか頑張ってください。」
 
 ひとまず、入学の話は記憶違いではなかった。
 そのことにホッと胸をなでおろす。
 しかし……。
 美鈴の言い方からして、入学してくる生徒はほとんど魔法が使えるようだ。魔法が使えない生徒も魔法使いであることに違いはない。新入生の中で自分だけ魔法が使えないまま周りに後れを取るなんてことが起こりうる。
 今、俺は魔法学校でどのようなことを学び、どのように評価されるのかもよく分かっていない。
 入学してくる生徒らに並ぶためには、4月までに少しでも魔法について理解しておく必要がある。

 涼太は決意を固めた眼差しで美鈴を見上げた。

 「美鈴さん、入学するまでの間に、俺に魔法を教えてくれませんか。俺、せめて他の新入生たちの足元に及ぶくらいには魔法についての知識をつけておきたいんです。」

 その言葉に、美鈴はハッとしたような表情かおをした。
 そして、少し間考え込むように押黙る。

 「分かりました。他のスタッフと相談したいので、少し時間をください。」
 そう言いながら、席を立つ。

 「魔法を使えるようになりたいんです。お願いします。」
 涼太は座った状態のままで頭を下げる。
 
 彼らとしても、俺がより強い魔法使いになったほうが都合が良いのではないだろうか。
 そうであれば、俺のこの要求を飲むはずだ……。
 
 「善処します。今日はお疲れでしょうし、ゆっくりお休みください。明日中には誰かスタッフを見繕っておきますね。」

 そう言って美鈴は部屋を出ていった。
 
 ――やった……!
 美鈴の返答からして誰かしらスタッフをあてがってくれるのは確実だ。

 涼太は小さくガッツポーズを作り、一人で嬉しさを噛み締めた。
 
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