《完結》僕は棄てたのだ。

皇子(みこ)

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キラキラ

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抱かれて来た先は、キラキラ光る……何だろう、銀色に輝く星の様な世界に来たみたい。


「隼人さん凄いですね、今迄の部屋とは全然違います」

「此処はね。私のアイデアなんだよ。キラキラ輝く彗星の様な世界をイメージして貰ったんだよ。

 他の部屋は黒や白や赤ばっかりのくっらいイメージでさ。此処は洞窟の中なのか? って思ってね。

 キッチンダイニングだけは手付かずだったから、私が内緒で企画しました。ご飯は、明るい場所がいいからね。

 美味しく見えないでしょ! 楓君、一つ聞いていい?」


「はい」

「此処に出入りしてる人間は皆、料理が不得意なんだよ。楓君はできる?」

「小学生の頃から、自分の分は作ってきました。けど、人に食べさせた事が無いので、美味しいのかは判りません。ごめんなさい」

「謝らなくて良いからね。因みに何処で料理習ったの?」

「図書館の中にある料理の本を見て、色々勉強しました。

 早く帰ると家族と会うので、図書館で色々本を読んでました。他に時間潰す所が無くて……

 当時は、部屋に居ると家族の笑い声とか聞こえちゃうと辛くて、今は大丈夫ですよ。小学生の時は少し悲しかったので、出来るだけ図書館に居ました」


僕が笑顔で話すと。


「そっか。あー 美味しそうなご馳走が私達を呼んでるよ。食べよう! さあ、楓君此処に座って。おい、橘いつまでお姫様抱っこしてるの、降ろして食べるよ」


隼人さんが、ゆっくり僕を椅子に降ろしてくれた。

 目の前のは豪華な世界が。何という料理だろう? 普段僕が作る料理は、家庭的な物が多い。

 材料にもお金をかけれないから、節約飯本とか、家庭のお助けメニュー本とかばかり見て作ってたから、こんな豪華な鳥の丸焼きや、カタツムリやメロンとハムを一緒に出すなんて僕には信じられない。どんな味なんだろう。


「さあ! いっただきまぁす」

「食えよ楓、遠慮すんな」

「はい! いただきます」


皆さん。流石は男性だ。一口が大きくて、大皿の料理がどんどん消えていく。

 僕も負けじと頑張って食べていたら、2人の視線を感じ?

    口にお肉を入れていたので、声が出せなくて、頭を傾げてみた……もぐもぐもぐもぐ……食べてると、隼人さんが立ち上がり何処かに消えた。

 僕はお肉の塊なんて久しぶりなので、なかなか飲み込めなくて未だもぐもぐしてたら、隼人さんが帰ってきた。

 手にはテッシュケースが。数枚引き抜き僕の目元へ優しく当ててくれた? やっと口の中の物を飲み込めたので。


「隼人さん? 何ですか?」

「泣いてるぞ」

「えっ?」

慌ててティシュを外し目元を触るとポロポロ水滴が落ちてきた? 指先がどんどん濡れていく? 慌てて外していたティシュを押し当てた。

「何故でしょうか? 僕、別に悲しくなんて無いです……」

「それはな、嬉しいんじゃないか。俺の想像だが楓は、今迄1人で飯作って1人で食ってただろ。今は俺達と食ってる、だからじゃないか。流れるなら流しながら飯食え。俺が横で吸い取ってやるよ」


隼人さんは、目のティシュを外し僕に顔を近づけ、目元の涙を舐めとった。


「は、は、は、はやとさん、それは恥ずかしいから……」

「嫌なのか?」

「嫌ではないですが……恥ずかしい」

「気にすんな、所詮透だ。置物と思っとけ」

「置物! この醸し出す色気を眼鏡で押さえ付けている。この、私を置物だと!眼鏡を外しても良いのか。楓君が私に惚れたらどうする? 橘」

「すまん……置物ではない。気にすんな、眼鏡は絶対取るなよ。眼鏡無しのお前は、変なフェロモン垂れ流しで、俺達が今迄どれだけ大変だったか!」

「そうだったけ? 忘れたよ」

「はぁー 変態に追い回されたり、男女両方にストーカーされたり、俺達は大分苦労させられたぞ。楓、コイツの素顔は絶対見るなよ!」

「は、はい」

僕は判らず頷いた。早瀬さんは、素顔は凄いフェロモン垂れ流す人? 良く判らないけど、隼人さんが飯飯言うので、三人で楽しくご飯を食べた。


「では、私は帰りますが、くれぐれも手は出さないように! 弁護士の私からの注意事項です。

    後、進展があれば、随時連絡入れますので、これで失礼致します」


早瀬さんは爽やかに去って行った。
扉が閉まり。


「今日は色々疲れたから風呂入って寝るぞ。楓」


呼ばれて振り返ると、先程と同じ様な体勢で、抱き上げられた……

 お姫様抱っこと言っていたアレです。この体勢は僕は好きかも。僕も両手を隼人さんの首に巻きつけると、密着度が上がって隼人さんの心臓の音も良く聴こえて安心できる。

 目を閉じて心臓音を聴き適度に揺れるのに身を任せていたら、いつのまにか寝ていたようで。

    次に眼が覚めるとそこは、暖かいお湯の中でした。


「おはよう。楓起きてくれて良かった、髪洗うぞ。あっちに座ろう」


僕はいつの間にか、服を脱がされお風呂の中に浸かっていたようです。改めてお風呂場を見廻すと!


「凄いお風呂ですね! 浴槽が2人で入ってもまだまだ大きいです。それに洗い場も凄い広い。お風呂場ってこんなに広さいりますか?」

「俺は風呂が大好きなんだよ。だからあえて広く設定した。後、窓があるだろ開けてみな」


全裸では、すごく恥ずかしいけど、そこはあえて気にしないようにして、隼人さんへの視線も上半身だけに心掛けた……

      立ち上がって目の前にある大きな窓をあけると、湯気が外に飛び出して涼しい風が中に入ってきた。寒くて思わずお湯の中に、ポチャンっと首まで浸かると背後から隼人さんに抱き締められた。

「外見てみろ」

言われた通り見ると、先程みた満月が綺麗に輝いていた。その下にも満月が……プールが目の前に。


「お風呂の外がプールですか? 凄いですね」

「俺は、プールも好きだからな。殆ど毎日何かしら泳ぐ。雨の中でのプールも最高に楽しいぞ。今度二人で入ろうな、身体が冷えたら風呂に入りゃいいから。よし、髪洗うぞ」


髪と身体を隼人さんに洗われた。人に洗ってもらうなんて覚えてる中では産まれて初めての経験だった。 

 楽しくて恥ずかしくて気持ち良かったです。

   御返しに、隼人さんにも同じ事を返したら、僕は疲れ切ってしまって、お風呂から出ると、直ぐに眠くなってしまいました。

 隼人さんに包まれて、フカフカベッドで眠るなんて、なんてご褒美!



「おやすみなさい……隼人さん」

「ああ。おやすみ楓」
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