《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》でブスですって!女の子は変われますか?変われました!!

皇子(みこ)

文字の大きさ
26 / 62

襲撃

しおりを挟む
舞踏会も終盤になった頃。ラティラは気疲れしてしまい、少し涼もうと多数有るベランダの1つから庭に出てみた。

 ラインハルトは、友人達と楽しそうに会談中だったので声を掛けるのを遠慮したラティラだった。


「此処も薔薇が綺麗なのね。皇后様の薔薇とはまた違って、可愛らしい薔薇が多く咲いているのね~ 匂いも甘いわ」


ラティラは、涼しい夜風と甘い香りに癒されていた。


「ラティラ」


振り返るとヴァント皇太子殿下もベランダから庭に出てきていた。


「殿下……ヴァント皇太子殿下とお呼びした方が宜しいですね。御即位おめでとうございます」


ラティラは一歩下がり丁寧にカーテシをした。


「やめてくれ。君とは友達になったではないか。できれば普通に接してくれないか」


ラティラは頭を上げて姿勢を普通にしてから、暫し考え。


「それでは人目のない場所でのみ、友人としての対応になる事で良いですか? 流石に、皆様の前では無理です」

「それで良い。今は二人だから普通でな」


ラティラはざっと周りを見渡し。


「今は誰も居ませんから大丈夫です」

「ラティラはもう辺境へ帰ってしまうのか?」

「王都で辺境の地の、特産品のお店を開店するんです。それが落ち着いてから、辺境に帰ろうと思っています」

「それなら、少しで良いから私と過ごす時間を貰えないか? 以前の私なら辺境迄気軽に行けたのだが、残念な事に王宮から身軽に出られなくなった。本当言うと皇帝になりたく無いんだ。権力欲など、私は無いのに、普通の幸せが1番難しい立場になってしまったんだと……君との」

「ヴァント皇太子殿下、中に入りましょう。囲まれます……」


ラティラが素早くヴァント皇太子殿下を後ろに庇いながら、ジリジリ下がっている。距離は多少有るが、扉から室内に入ろうとしているが、敵の気配が近づいて来ていて思うようには動けない。下手に動くと弓に狙われるのだ。


(おじょー 騎士団長とアル連れてくるね)

「良かったわ。じゃあ時間稼ぎですむわね」


ラティラはドレスのスカートの下に、手を入れて。隠していた愛用の特別製、折りたたみ式のレイピアを素早く取り出し、敵を迎え討つために構えた。 


「ラティラ……私も一緒に」

「駄目です。貴方は次期皇帝陛下ですから、護られてください。狙われてるのは貴方です。もうじきラインハルト様とお兄様が来ますから」


ラティラは話しながらも、敵がいつ攻めてきてもいいように集中していたのだが、なかなか攻めて来ない。不思議に思いながらも、警戒していると。


「あら? ヴァント皇太子殿下。女性の背後に隠れるなんて、情けないのね~ うふふふふ」

「貴女が仕組んだのか。側妃ミネルヴァ」 


暗闇から、近衛兵を連れてミネルヴァ妃が満面の笑みで、出てきた。


「近衛兵だと……」

「あら? 不思議でもなんでも無いわよ。お父様のお力よ。財力がモノを言うのよ。そしてわたくしの息子ミシェルが皇太子になり、皇帝になるの! なんて素晴らしいことなのでしょう~」

「兄上は……」

「陛下とレオン殿下は、お父様が今頃……おっほほほほほほは……笑いが止まらないわね! ヴァント皇太子殿下。皆様、次期陛下を殺して差し上げなさい」

「「「「「「「「「はっ」」」」」」」」」


ラティラは、切りかかってきた数名を素早く避け、振り下ろされた剣は、レイピアの鍔を使い絡め取った。
    
 取った剣を片手に持ち、両手で剣を構え素早く体勢を変えて、回り込み。背後から一瞬で一人二人三人と斬り倒して行く。
  
  その一瞬の速さにヴァント皇太子殿下は、動けずただ茫然と見ていた……

 そこにラインハルトがやって来て。ヴァント皇太子殿下に切りかかって来た敵を、攻撃できないようにブロックし、敵の剣を交え力で抑え込み、次々と斬りなぎ倒して行く様は圧巻だった。

     ヴァント皇太子殿下に、そっと近寄ったアルベルトは身振りで室内に導こうとする。


「ラティラは……」
 
「大丈夫です。あの2人は規格外ですから」


そちらに目を向けると、ラティラとラインハルトは自由自在に動き回り、敵を次々と斬り崩していっていた。それから、いつの間にかラティラのドレスから、大きな素晴らしい華が無くなり。足首まであったはずのふわふわした生地が、膝丈の短さに変化していた。


「此処は危険ですから、皇帝陛下の元へ行きましょう。私達が居ない方が二人は動きやすいでしょうし」


アルベルトは、ヴァント皇太子殿下を連れて室内に導いて行く。


「これは……兄上……」


皇帝陛下の横で、レオンが傷を負い手当されていた。 かなり深い様で、かなりの出血をしているみたいだ。顔色も良くない。ヴァント皇太子殿下は急いで近寄り、陛下に視線を向けた。


「我を庇ったのだ……レオンは誤解されやすい奴だ。
お前の事もな、能力を隠して生きているお前を心配していたんだ。レオンは、自分が皇帝としては劣る事に気付いていたんだよ。ヴァントの方が皇帝に向いていると、我に進言してきたのもレオンだぞ。お前は、お前らしく自信を持って国を導いて行け」

「父上……兄上……お任せ下さい。民の一人一人が幸せに暮らせる国にします」


ヴァント皇太子殿下は、皇帝陛下と辛うじて意識のあるレオンに向かい、深々と頭を下げた。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...