30 / 62
番外 《恋バナ》
しおりを挟む[このお話は三人称視点で進みます]
(ルラック暇ー ルラック暇ー ルラック暇ー ルラック暇ー ルラック暇ー)
「煩いわよ。ルラック!頭の上で叫ばないでくれる」
(ラティラ~ いつ辺境行くの? 早く行きたいよ。お店の中ウロウロ回ってるの嫌だ~~)
「うーん……ごめんねルラック。忙しくてね。
多分もうしばらくは、王都から出られないかな……
まだね。運動の仕方等の細かな説明できる人が少ないのよ。特に運動は、本を見るだけで無く実践して教えて欲しいって声が多くてね。身振り手振りでは限界があるのよね。だから私がナチュラルの片隅で一人一人に教えてるのよ」
先程迄ナチュラルは、人で賑わっていた。今は少し人並みもまばらになり、この間に交代で各自休憩を取ったり、在庫の補充をしたりと、皆忙しくしている。
ラティラは。ルラックの不満も良く判っている。ラティラ自身も、騎士団との合同演習の話も本格的に進んでいるので、詳しい日時を決めたいのだが、それなのにラティラがお店を離れられない為に決められないのだ。
「早く演習したい~ 走り回りたい~ 剣を振り回したい~」
「年頃の淑女の発言と行動ではありませんね」
ラティラは休憩を貰い、奥の休憩室で椅子に座り、上半身の身体をベッタリ机の上に貼り付けて叫んでいた。
「お兄様! どうして此処に? お仕事忙しいのでは? 宰相様の補佐に抜擢されてから、お屋敷に帰って来ないので心配していたんですよ」
「心配してくれてありがとう。ラティラ私は大丈夫だから。王宮に部屋を戴いてあるんだよ。落ち着くまでは、色々後始末があるから王宮で寝泊まりしてるんだよ。けど、そろそろ私も屋敷でゆっくりしたいよ」
「そんなにお忙しいのに、どうして此方に」
ラティラの椅子の隣に、アルベルトは座り、机の上に居たルラックを撫でまくりはじめた。相変わらずルラックはなすがままだ。
(アルベルトのナデナデ最高~)
「今日はね。頑張っているラティラに、ご褒美をあげようと思ってね。欲しいかい?」
「欲しいです! 何ですか? ご褒美、お兄様のご褒美、久しぶりです~ 昔から私が、本当に欲しい物を時々贈ってくれますよね! 何だろうと、毎回楽しみなんですよ」
「それは嬉しいね。私も幼い頃から頑張り屋のラティラへ、ささやかなプレゼントを考えるのが、楽しいんだよ」
「お兄様」
ラティラは最近顔を合わせていなかったアルベルトに会えて嬉しいのと、昔から自分の事を見守ってくれた兄への、感謝の気持ちで溢れそうになっていた。
そんなラティラの頭を、アルベルトは優しく撫でてあげながら話出した。
「ラティラは今困ってるだろう。さっきも色々口に出していたね。その事の解決策を持ってきたんだ。
向かいに小さな雑貨屋があっただろう。その雑貨屋の主人は高齢でね。後継も居ないから店を処分して、何処か空気の良い場所で余生を過ごしたいと、言っていたんだよ。
そこで、私が辺境の地にお誘いしたんだ。お店も私が譲り受けてね。
と、いう事で。あの店舗は、ナチュラルの改装の後、続けて改装に入って貰ってたんだよ。昨日完成してね、ラティラ一緒に見に行かないかい?」
「見たい、見たいです! お兄様。でも、どうしてそんな事してるんです? ナチュラルがあるから、もう1店舗なんていりませんよね?」
「まあ、現物を確認しながらラティラに説明するよ。私も未だ完成した後、見ていないんだよ。さあ! 行ってみようか」
アルベルトが手を差し出し、ラティラはその手を掴んだ。二人は楽しそうに歩きだす。
2
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる