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第8話 暴行
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兄王子の部屋に連れられて来た私。なんとなく嫌な感じがして部屋のドアを開けようとすると鍵がかかっていた。
「ほら、突っ立ってないでこっち来いって」
「きゃあっ」
兄のアフダルは私を荷物のように抱えるとベッドの上に落とした。
「お兄様! やめてください! 何をするのですか!」
「黙れ、静かにしろ」
兄は私の上に覆いかぶさってきた。籠の鳥のように育てられてきた私も何をされるか想像がついた。
「きゃあああー! いやああー!」
必死に兄を払いのけようとする。
「くそっ、お前、女のくせにやたら力強いな。この、おとなしく──」
「いやーっ! やめてーっ! ちょっと、やめてって言ってるでしょ!」
ドガッ! グシャ。
「はうっ!?」
乱暴者の兄を思いっきり膝で蹴り上げた。
「ハァハァ……」
危ないところだったー。親衛隊のシャジャルに教わって護身術を身に付けておいて良かったわ。まさか、異母兄とはいえ血が繋がった男で試すとは思わなかったが。
「うぐうううぅぅ……。ダリヤ、貴様
……。なんてことを……。殺してやる……。ぐうぅうぅ……」
死霊となりリミッターが外れた私のミラクルニーキックが急所に当たったのかベッドから転げ落ちて酷く苦しむ兄。
「王女殿下、どうされましたか!」
バキンッ!
私の悲鳴と兄の苦悶の声を聞いてか、シャジャルが扉を蹴破って部屋に入ってきた。
「王子殿下、いったいあなた様はダリヤ王女に何をされているのですか。純潔に関する罪は死罪に値することをまさかお忘れになりましたか。ましてやダリヤ王女はあなた様の妹君ではないですか」
廊下が騒がしい、兵士や侍女が様子を見に来たようだ。
「ジハール王子がダリヤ王女を部屋に連れ込んで手籠めに……?」
「まさかそんな……。血を分けたご兄妹であるのに……」
床で転げまわってた兄は慌てたように立ち上がった。
「ち、違うんだ。ダリヤに誘惑されたんだ。いてて……」
「嘘ばっかり。アフダルお兄様が私を襲おうとしたのよ」
聖典の法によれば『乙女を辱めた者には鞭を200回打て』とある。鞭を200回も打たれればたいてい死ぬため実質死刑となる。ただ、帝国の裁判ではめったにその処罰がされることはない。なぜなら、女性側の親が世間体を気にしてその男と結婚させるからだ。それどころか、着飾った女性に誘惑されたような言い訳も通って無罪になることばかりだ。この国の法は男と犯罪者に有利なことばかりである。
「すでに城の者も騒ぎに気がついております。このことは陛下にご報告しなければなりません」
しばらく経って私は玉座の間にいた。
「ダリヤあなた、アフダルを誘惑して襲おうとしたんですって? ああ、王家の娘がなんと淫らなことを」
「いいえ、ヤルガ王妃様。アフダルお兄様が私を襲ったのです」
「お黙りなさい。あなたが誘惑したとアフダル付きの衛兵や侍女たちが証言しているのです。言い訳を聞きたくありません。お父様、陛下は大変なお怒りですよ」
「はぁ……」
この性格がキツい女性は第三王妃のヤルガ様という。ライラとアフダルの実母だ。まあ、自分の息子が姦淫の罪に問われるとしたら必死に庇うわよね。異母兄妹なら結婚させて有耶無耶にもできないし。
「国王陛下、申し上げます。自分はダリヤ王女殿下の悲鳴を聞いて駆けつけたのです。男を誘惑する乙女が悲鳴などを上げましょうか」
さっすがシャジャルはイエイヌ族だから耳が良いわ。だてに親衛隊の中隊長やってないわね。
「お黙りなさい。シャジャル中隊長。あなたはダリヤ付きの衛兵だからといって嘘を並べて庇いたてすることはゆるしませんよ」
「ですが、ヤルガ王妃殿下……」
「くどいぞシャジャル、下がれ。余はわかっておる。隣国との婚約を解消するためにダリヤはこのような騒動を引き起こしたのだ。まったく嘆かわしい」
「陛下、そもそも婚約解消は……」
あっ、シャジャルよけいなこと言っちゃダメよ。私が死霊ってことバレたらめんどうだから。あの変態バカ兄貴達は後で呪ってやるつもりだし。
「シャジャル中隊長! 陛下は下がれと命じられたはず。戦奴の奴隷犬士の分際で王家の事柄に口を挟むのは明らかな越権行為。下がりなさい!」
「はっ……」
ふぅ、危なかった。叱責されたシャジャルは肩を落とした様子で部屋から出ていった。あとで慰めてあげないと。
「はぁ、ダリヤよ。まったくお前も、お前の母親もダメな女だった。死産を2度もして最期には盲目の子など産み残して死におって。結局お前も同じだ。帝国に名を連ねる娘としての役割は何も果たさなかったな」
……なんでお母様のことを悪く言うのだろう。
「お父様。私のことはいくら悪く言っても構いません。ですが、死んだお母様を侮辱するのだけは許せません」
「ダリヤ! あなたは女子のくせに陛下へなんて口の聞き方をするの! 本当にあなたは何て可愛げのない子なのかしら!」
「ああ、ヤルガの言うとおりだ。ダリヤ、お前をもう娘だとは思わん。今日からアル・イアブーユの名を名乗ることは許さん」
「陛下、いかがですか。もうダリヤは明日と言わず今日にでもどこか厳しい修行をしてくれる修道院に入れてあげましょう。あの、聖女だった第二王妃の子供ですもの。そちらの方が社会と帝国に貢献できることでしょう」
「ふむ。その方が良かろう。ダリヤ、お前は修道院から一生出ることを許さん」
こうして私は未練なく修道院で信仰のために生きることを決意したのだった。これも天が定めし運命……。
毒ヘビに噛まれて人間をやめてからどこか晴れやかな気分だ。私は心の中で念じた。
「イアブーユ王家よ、いつの日か水は枯れ、ヤシの木は実らず、ヤギは死に絶え、城は砂に埋もれて呪われろ……呪われろ……」
「ほら、突っ立ってないでこっち来いって」
「きゃあっ」
兄のアフダルは私を荷物のように抱えるとベッドの上に落とした。
「お兄様! やめてください! 何をするのですか!」
「黙れ、静かにしろ」
兄は私の上に覆いかぶさってきた。籠の鳥のように育てられてきた私も何をされるか想像がついた。
「きゃあああー! いやああー!」
必死に兄を払いのけようとする。
「くそっ、お前、女のくせにやたら力強いな。この、おとなしく──」
「いやーっ! やめてーっ! ちょっと、やめてって言ってるでしょ!」
ドガッ! グシャ。
「はうっ!?」
乱暴者の兄を思いっきり膝で蹴り上げた。
「ハァハァ……」
危ないところだったー。親衛隊のシャジャルに教わって護身術を身に付けておいて良かったわ。まさか、異母兄とはいえ血が繋がった男で試すとは思わなかったが。
「うぐうううぅぅ……。ダリヤ、貴様
……。なんてことを……。殺してやる……。ぐうぅうぅ……」
死霊となりリミッターが外れた私のミラクルニーキックが急所に当たったのかベッドから転げ落ちて酷く苦しむ兄。
「王女殿下、どうされましたか!」
バキンッ!
私の悲鳴と兄の苦悶の声を聞いてか、シャジャルが扉を蹴破って部屋に入ってきた。
「王子殿下、いったいあなた様はダリヤ王女に何をされているのですか。純潔に関する罪は死罪に値することをまさかお忘れになりましたか。ましてやダリヤ王女はあなた様の妹君ではないですか」
廊下が騒がしい、兵士や侍女が様子を見に来たようだ。
「ジハール王子がダリヤ王女を部屋に連れ込んで手籠めに……?」
「まさかそんな……。血を分けたご兄妹であるのに……」
床で転げまわってた兄は慌てたように立ち上がった。
「ち、違うんだ。ダリヤに誘惑されたんだ。いてて……」
「嘘ばっかり。アフダルお兄様が私を襲おうとしたのよ」
聖典の法によれば『乙女を辱めた者には鞭を200回打て』とある。鞭を200回も打たれればたいてい死ぬため実質死刑となる。ただ、帝国の裁判ではめったにその処罰がされることはない。なぜなら、女性側の親が世間体を気にしてその男と結婚させるからだ。それどころか、着飾った女性に誘惑されたような言い訳も通って無罪になることばかりだ。この国の法は男と犯罪者に有利なことばかりである。
「すでに城の者も騒ぎに気がついております。このことは陛下にご報告しなければなりません」
しばらく経って私は玉座の間にいた。
「ダリヤあなた、アフダルを誘惑して襲おうとしたんですって? ああ、王家の娘がなんと淫らなことを」
「いいえ、ヤルガ王妃様。アフダルお兄様が私を襲ったのです」
「お黙りなさい。あなたが誘惑したとアフダル付きの衛兵や侍女たちが証言しているのです。言い訳を聞きたくありません。お父様、陛下は大変なお怒りですよ」
「はぁ……」
この性格がキツい女性は第三王妃のヤルガ様という。ライラとアフダルの実母だ。まあ、自分の息子が姦淫の罪に問われるとしたら必死に庇うわよね。異母兄妹なら結婚させて有耶無耶にもできないし。
「国王陛下、申し上げます。自分はダリヤ王女殿下の悲鳴を聞いて駆けつけたのです。男を誘惑する乙女が悲鳴などを上げましょうか」
さっすがシャジャルはイエイヌ族だから耳が良いわ。だてに親衛隊の中隊長やってないわね。
「お黙りなさい。シャジャル中隊長。あなたはダリヤ付きの衛兵だからといって嘘を並べて庇いたてすることはゆるしませんよ」
「ですが、ヤルガ王妃殿下……」
「くどいぞシャジャル、下がれ。余はわかっておる。隣国との婚約を解消するためにダリヤはこのような騒動を引き起こしたのだ。まったく嘆かわしい」
「陛下、そもそも婚約解消は……」
あっ、シャジャルよけいなこと言っちゃダメよ。私が死霊ってことバレたらめんどうだから。あの変態バカ兄貴達は後で呪ってやるつもりだし。
「シャジャル中隊長! 陛下は下がれと命じられたはず。戦奴の奴隷犬士の分際で王家の事柄に口を挟むのは明らかな越権行為。下がりなさい!」
「はっ……」
ふぅ、危なかった。叱責されたシャジャルは肩を落とした様子で部屋から出ていった。あとで慰めてあげないと。
「はぁ、ダリヤよ。まったくお前も、お前の母親もダメな女だった。死産を2度もして最期には盲目の子など産み残して死におって。結局お前も同じだ。帝国に名を連ねる娘としての役割は何も果たさなかったな」
……なんでお母様のことを悪く言うのだろう。
「お父様。私のことはいくら悪く言っても構いません。ですが、死んだお母様を侮辱するのだけは許せません」
「ダリヤ! あなたは女子のくせに陛下へなんて口の聞き方をするの! 本当にあなたは何て可愛げのない子なのかしら!」
「ああ、ヤルガの言うとおりだ。ダリヤ、お前をもう娘だとは思わん。今日からアル・イアブーユの名を名乗ることは許さん」
「陛下、いかがですか。もうダリヤは明日と言わず今日にでもどこか厳しい修行をしてくれる修道院に入れてあげましょう。あの、聖女だった第二王妃の子供ですもの。そちらの方が社会と帝国に貢献できることでしょう」
「ふむ。その方が良かろう。ダリヤ、お前は修道院から一生出ることを許さん」
こうして私は未練なく修道院で信仰のために生きることを決意したのだった。これも天が定めし運命……。
毒ヘビに噛まれて人間をやめてからどこか晴れやかな気分だ。私は心の中で念じた。
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