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第9話 異世界転生
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修道院への追放とイアブーユ家からの除名を国王から宣告された私が部屋へ戻ろうとすると城の廊下でうなだれている様子のシャジャルを見かけた。魂の色に元気がない。お父様……、いえ、アル・イアブーユ王に叱責されて落ち込んでいるのだろうか。励ましてあげよう。
「シャジャルさっきは庇ってくれてありがとうね。でも私なら大丈夫。修道院でイアブーユ王家の滅亡を呪い続けておくから。さいわい寿命の概念はもう無くなったからそのうち天使様へ呪いの祈りが届いて天罰が下るわ」
「なかなか長期の計画になりそうですね。王女殿下は困難によく耐えられてきました。自分はあなた様に敬意を表します。きっと、あなた様を苦しめた者たちには天罰が下ることでしょう」
「そう? ありがとう。でも別に私の境遇を困難だとは思わないで。今や私は天使様から祝福されし死霊だから人間やめてせいせいするわ」
「お強い方だ。王女殿下、一つお話しておきたいことがあります。今回のアフダル王子による鬼畜の所業はライラ王女が絡んでいます」
「またあの子? 私を消すのに失敗したから兄に汚された娘とでも悪評を広めるつもりだったのかしら」
「よくおわかりになりましたね」
シャジャルは愚かな兄と妹が隠れて会話しているのを先ほど聞いたらしい。私に話してくれた。
「お兄様、ありがとうね。もうこれでダリヤはお嫁にいけないわ」
「危うく俺が婿に行けなくなるとこだったぞ。あーあ、せっかくならもう少し楽しめばよかったぜ。クソ生意気で出来損ないの妹だが顔と体だけは王族の女だからな。奴隷戦士の奴が邪魔しやがって」
「ちょっとお兄様! ダリヤの方が私より可愛いってこと!? あいつは聖女の力と美しさまで持って生まれて憎らしい」
「そ、そうは言ってない。俺の本当の妹はお前だけだから」
「それにしても毒ヘビに噛まれたのにピンピンしてるのがムカつくわね。これも聖女の力なのかしら」
「なんだ毒ヘビって?」
「何でもない、こっちの話」
はあ、まったく救いようの無い人たち。
「おおかたこんなことかと思ってたわ」
「王女殿下、もしご命令とあらば自分は……」
「はいはい、報復なんて早まっちゃダメ。あなたのキャリアが終わっちゃうわよ? まあ、ひとまず私は今日にでも修道院へ行くから。シャジャルとはしばらくお別れね」
「そんな急すぎる。どうかお待ちください。自分は王女殿下を主人ではなく女性として愛しているのです。どこか遠い地まで自分と逃げてはくれませんか」
「ふあ!?」
シャジャルに手を掴まれた。
ええっ!? シャジャルって私のこと好きだったの!?
「ま、また冗談ばかり言って。ち、ちょっと手を離してって、これから旅の支度しないといけないから。もう! 離してったら!」
「うわっ!?」
ガラーン! ガラーン! ドサッ!
思わずリミッター外れた腕に力を込めて突き飛ばしてしまった。階段下にシャジャルの魂が見える。
「やだ、階段から突き飛ばしちゃった。ちょっとシャジャル、しっかりして。あなたが急に変な冗談言うからいけないのよ」
「うーん……」
「頭を打ったのかしら? 死霊教会奇跡『回復』」
私はシャジャルのそばにかけよると回復の奇跡を使った。
「ここはどこだ……。俺はなぜここに……」
「ん? まだ治ってないようね。もう一回かけてあげる。死霊教会奇跡『回復』。あなたはサラシン帝国北領国親衛隊中隊長のシャジャル・マルムーズ、男性、年齢不詳でしょ。しっかりして」
私は回復の奇跡を重ねがけした。
「そうだ。思い出した。全て思い出したぞ」
「良かったー。まったく、驚かせないでよ」
「俺は横田基地駐屯のアメリカ空軍第135戦闘航空団に所属していたんだ。飛行中隊長だった」
「はい? ちょっとシャジャル、ふざけるのもいい加減にしなさい。頭でもおかしくなったの」
少し心配になってバシンっと頬を打った。特に奇跡というわけではないが記憶喪失という病に対しては時にはショックが有効と聞く。
「ああ、王女殿下……。介抱してくれたのですね……。自分のような戦奴に慈悲をかけていただき……」
「はぁ、いつものシャジャルだわ。良かったー」
「自分は何か言っておりましたか……?」
「メリケンがどうとか言ってたわ。ジパングという国と何か関係あるのかしら」
「メリケン……。ジパング……」
「ちょっと誰かー。シャジャル中隊長を部屋まで連れていってあげてー」
回復したようだけど彼はどこか上の空だった。私は城の者を呼んだ。
「ダリヤ王女殿下と中隊長、いったい何があったのですか」
シャジャルの弟子である見習い奴隷犬士の子が駆けてきてくれた。
「ああ、良いところに。あなたのドジっ子お師匠様が階段を踏み外して頭を打ったみたいなの。幸いたまたま通りがかった私の奇跡で全回復したようだけど部屋で安静にさせておいて」
「なるほど、そんなことが。『奴隷犬士も戦場に行けば矢に当たる』とは言いますが中隊長も不運な方ですね。中隊長、しっかりしてください。僕の肩につかまって。王女殿下、自分が中隊長を部屋まで連れていきます。介抱感謝します」
「お願いねー」
見習い奴隷犬士の子が言ったのは、帝国に仕えるエリート軍人である奴隷犬士も戦場では不運な流れ矢に当たってあえなく討ち死にするという意味の格言。今のシャジャルにぴったりの言葉だ。
「私みたいな女にシャジャル中隊長様はもったいないわ。誰か良い女の子を見つけてね」
信仰に生きることを決意した私には彼の甘言に心を動かされることは全くなかった。本当に動かされてないからね。本当よ。
「シャジャルさっきは庇ってくれてありがとうね。でも私なら大丈夫。修道院でイアブーユ王家の滅亡を呪い続けておくから。さいわい寿命の概念はもう無くなったからそのうち天使様へ呪いの祈りが届いて天罰が下るわ」
「なかなか長期の計画になりそうですね。王女殿下は困難によく耐えられてきました。自分はあなた様に敬意を表します。きっと、あなた様を苦しめた者たちには天罰が下ることでしょう」
「そう? ありがとう。でも別に私の境遇を困難だとは思わないで。今や私は天使様から祝福されし死霊だから人間やめてせいせいするわ」
「お強い方だ。王女殿下、一つお話しておきたいことがあります。今回のアフダル王子による鬼畜の所業はライラ王女が絡んでいます」
「またあの子? 私を消すのに失敗したから兄に汚された娘とでも悪評を広めるつもりだったのかしら」
「よくおわかりになりましたね」
シャジャルは愚かな兄と妹が隠れて会話しているのを先ほど聞いたらしい。私に話してくれた。
「お兄様、ありがとうね。もうこれでダリヤはお嫁にいけないわ」
「危うく俺が婿に行けなくなるとこだったぞ。あーあ、せっかくならもう少し楽しめばよかったぜ。クソ生意気で出来損ないの妹だが顔と体だけは王族の女だからな。奴隷戦士の奴が邪魔しやがって」
「ちょっとお兄様! ダリヤの方が私より可愛いってこと!? あいつは聖女の力と美しさまで持って生まれて憎らしい」
「そ、そうは言ってない。俺の本当の妹はお前だけだから」
「それにしても毒ヘビに噛まれたのにピンピンしてるのがムカつくわね。これも聖女の力なのかしら」
「なんだ毒ヘビって?」
「何でもない、こっちの話」
はあ、まったく救いようの無い人たち。
「おおかたこんなことかと思ってたわ」
「王女殿下、もしご命令とあらば自分は……」
「はいはい、報復なんて早まっちゃダメ。あなたのキャリアが終わっちゃうわよ? まあ、ひとまず私は今日にでも修道院へ行くから。シャジャルとはしばらくお別れね」
「そんな急すぎる。どうかお待ちください。自分は王女殿下を主人ではなく女性として愛しているのです。どこか遠い地まで自分と逃げてはくれませんか」
「ふあ!?」
シャジャルに手を掴まれた。
ええっ!? シャジャルって私のこと好きだったの!?
「ま、また冗談ばかり言って。ち、ちょっと手を離してって、これから旅の支度しないといけないから。もう! 離してったら!」
「うわっ!?」
ガラーン! ガラーン! ドサッ!
思わずリミッター外れた腕に力を込めて突き飛ばしてしまった。階段下にシャジャルの魂が見える。
「やだ、階段から突き飛ばしちゃった。ちょっとシャジャル、しっかりして。あなたが急に変な冗談言うからいけないのよ」
「うーん……」
「頭を打ったのかしら? 死霊教会奇跡『回復』」
私はシャジャルのそばにかけよると回復の奇跡を使った。
「ここはどこだ……。俺はなぜここに……」
「ん? まだ治ってないようね。もう一回かけてあげる。死霊教会奇跡『回復』。あなたはサラシン帝国北領国親衛隊中隊長のシャジャル・マルムーズ、男性、年齢不詳でしょ。しっかりして」
私は回復の奇跡を重ねがけした。
「そうだ。思い出した。全て思い出したぞ」
「良かったー。まったく、驚かせないでよ」
「俺は横田基地駐屯のアメリカ空軍第135戦闘航空団に所属していたんだ。飛行中隊長だった」
「はい? ちょっとシャジャル、ふざけるのもいい加減にしなさい。頭でもおかしくなったの」
少し心配になってバシンっと頬を打った。特に奇跡というわけではないが記憶喪失という病に対しては時にはショックが有効と聞く。
「ああ、王女殿下……。介抱してくれたのですね……。自分のような戦奴に慈悲をかけていただき……」
「はぁ、いつものシャジャルだわ。良かったー」
「自分は何か言っておりましたか……?」
「メリケンがどうとか言ってたわ。ジパングという国と何か関係あるのかしら」
「メリケン……。ジパング……」
「ちょっと誰かー。シャジャル中隊長を部屋まで連れていってあげてー」
回復したようだけど彼はどこか上の空だった。私は城の者を呼んだ。
「ダリヤ王女殿下と中隊長、いったい何があったのですか」
シャジャルの弟子である見習い奴隷犬士の子が駆けてきてくれた。
「ああ、良いところに。あなたのドジっ子お師匠様が階段を踏み外して頭を打ったみたいなの。幸いたまたま通りがかった私の奇跡で全回復したようだけど部屋で安静にさせておいて」
「なるほど、そんなことが。『奴隷犬士も戦場に行けば矢に当たる』とは言いますが中隊長も不運な方ですね。中隊長、しっかりしてください。僕の肩につかまって。王女殿下、自分が中隊長を部屋まで連れていきます。介抱感謝します」
「お願いねー」
見習い奴隷犬士の子が言ったのは、帝国に仕えるエリート軍人である奴隷犬士も戦場では不運な流れ矢に当たってあえなく討ち死にするという意味の格言。今のシャジャルにぴったりの言葉だ。
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