13 / 84
第二章 お見合い
ルビオ王子ご来店
しおりを挟む
* * *
第一回僧侶コンは大盛況であった。
二十名ほどの僧侶の男性に対し、倍近い女性の申し込みがあり、まさに男性は選び放題の状況だったのだ。
最後のカップリングタイムでは、何組ものカップルが誕生し、仲睦まじい男女が増えた。
参加者の僧侶たちからは、仕事が忙しくて女性とは縁がなかった、適齢期過ぎて焦っていたので良い機会を与えてくれて本当にありがとう、と何人からも感謝された。
一対一でのデートの取り付けではなく、イベント形式は異世界にきて初めてだったが、大成功だと言っても過言ではないのではないか。
アリサの婚活アドバイスは評判を呼び、相談所は毎日予約が絶えないほどの人気となった。
次はどんなイベントをしよう。
あの人と会う異性は誰かしら。
色々考えているのが楽しくて仕方がない。
自分の天職だと、アリサは口元を緩ませた。
「ルビオ王子、一人で行かれないでください!」
店の表の通りから、男性の大声が響き渡った。
馬の鳴き声や、蹄で歩く音も聞こえる。
「? 外が騒々しいわね」
アリサが手元の書類を置き、カウンターから立ち上がり何事かと顔を出す。
すると、乱暴に扉が開いた。
そこに現れたのは、輝く美しい金髪に、青い目をした、スラリと背の高い美青年。
王族しか着ることを許されない真紅の服に大鷲の紋章が描かれた服に身を包んでいる。
しかし、その眉間には深い溝が刻まれており、美しい顔にはそぐわない。
ガーネット王国第一王子であるルビオ王子が、側近のクレイを引き連れ相談所に押しかけてきたのだ。
「結婚相談所というのはここか」
靴の音を鳴らし、ルビオはカウンターへと近づいてくる。
(ルビオ王子!? どうしてここに……。
そして、めちゃくちゃかっこいい!)
推しキャラの登場に驚き、そして実際その姿を目の前にして釘付けになるアリサ。
(でもおかしいわ。城に住む王子が、城下町のギルドに来るようなイベントはなかったはず。
どうしてここに……?)
ゲームを何周もやり込み、セーブデータを複数作りやりこんでいるアリサが、ルビオが街に来る姿は初めて見る。
青い瞳と目が合うと、心臓が跳ね上がった。
「あなたが結婚相談所の責任者ですか。
先日の僧侶コンたるもののせいで、城内の僧侶が全員休暇を取ったりと、迷惑をしているのです。王子もお怒りで」
隣に立つクレイがアリサに注意をする。
(この人は確か、王子の側近のクレイさんだったかしら。
ゲームではちょっとしか登場しなかったから印象にあまりなかったけれど、育ちが良さそうで品のある人ね)
栗色の髪をオールバックにし、騎士の格好に身を包んだクレイ。
腰には剣の鞘を差しており、背筋が伸び姿勢が良い。凛とした印象を受ける大人の男性だった。
どうやら、僧侶コンに物申しにきたらしい。
確かに、昨日のイベントには宮廷僧侶の方も多数参加していた。
休日だと言っていたが、無理やり休みを取ったのか。
町の僧侶より、ガーネット城に常駐する宮廷僧侶の方がハイスペだと、女性参加者からは人気だった。
クレームを行っているクレイを押し退け、ルビオはアリサのいるカウンターへと近づくと、傲慢な態度で机に手をついた。
「お前が責任者だな?」
「は、はい……アリサと申します」
この国の最高権力者に目をつけられてしまった。
もしかしたら罪人として捕まってしまうのか、店は畳まなきゃいけないのか、せっかく軌道に乗ってきたのに、などと不穏なことがアリサの頭をめぐる。
しかしルビオは、想像に反することを声高々に命令した。
「私の理想の妻を探してもらおうか!」
ギルド一帯に響き渡る。
「ええ?」
「は?」
ルビオの向かいに立つアリサと、横にいるクレイは同時に間抜けな声を上げた。
「言葉の通りだ。
アリサとやら、評判のその腕を発揮してもらおうじゃないか」
ルビオ王子は、虫だらけのボロボロの部屋に住む、何処の馬の骨とも知らない転生してきた結婚相談所のスタッフ相手に、不敵な笑みを浮かべた。
第一回僧侶コンは大盛況であった。
二十名ほどの僧侶の男性に対し、倍近い女性の申し込みがあり、まさに男性は選び放題の状況だったのだ。
最後のカップリングタイムでは、何組ものカップルが誕生し、仲睦まじい男女が増えた。
参加者の僧侶たちからは、仕事が忙しくて女性とは縁がなかった、適齢期過ぎて焦っていたので良い機会を与えてくれて本当にありがとう、と何人からも感謝された。
一対一でのデートの取り付けではなく、イベント形式は異世界にきて初めてだったが、大成功だと言っても過言ではないのではないか。
アリサの婚活アドバイスは評判を呼び、相談所は毎日予約が絶えないほどの人気となった。
次はどんなイベントをしよう。
あの人と会う異性は誰かしら。
色々考えているのが楽しくて仕方がない。
自分の天職だと、アリサは口元を緩ませた。
「ルビオ王子、一人で行かれないでください!」
店の表の通りから、男性の大声が響き渡った。
馬の鳴き声や、蹄で歩く音も聞こえる。
「? 外が騒々しいわね」
アリサが手元の書類を置き、カウンターから立ち上がり何事かと顔を出す。
すると、乱暴に扉が開いた。
そこに現れたのは、輝く美しい金髪に、青い目をした、スラリと背の高い美青年。
王族しか着ることを許されない真紅の服に大鷲の紋章が描かれた服に身を包んでいる。
しかし、その眉間には深い溝が刻まれており、美しい顔にはそぐわない。
ガーネット王国第一王子であるルビオ王子が、側近のクレイを引き連れ相談所に押しかけてきたのだ。
「結婚相談所というのはここか」
靴の音を鳴らし、ルビオはカウンターへと近づいてくる。
(ルビオ王子!? どうしてここに……。
そして、めちゃくちゃかっこいい!)
推しキャラの登場に驚き、そして実際その姿を目の前にして釘付けになるアリサ。
(でもおかしいわ。城に住む王子が、城下町のギルドに来るようなイベントはなかったはず。
どうしてここに……?)
ゲームを何周もやり込み、セーブデータを複数作りやりこんでいるアリサが、ルビオが街に来る姿は初めて見る。
青い瞳と目が合うと、心臓が跳ね上がった。
「あなたが結婚相談所の責任者ですか。
先日の僧侶コンたるもののせいで、城内の僧侶が全員休暇を取ったりと、迷惑をしているのです。王子もお怒りで」
隣に立つクレイがアリサに注意をする。
(この人は確か、王子の側近のクレイさんだったかしら。
ゲームではちょっとしか登場しなかったから印象にあまりなかったけれど、育ちが良さそうで品のある人ね)
栗色の髪をオールバックにし、騎士の格好に身を包んだクレイ。
腰には剣の鞘を差しており、背筋が伸び姿勢が良い。凛とした印象を受ける大人の男性だった。
どうやら、僧侶コンに物申しにきたらしい。
確かに、昨日のイベントには宮廷僧侶の方も多数参加していた。
休日だと言っていたが、無理やり休みを取ったのか。
町の僧侶より、ガーネット城に常駐する宮廷僧侶の方がハイスペだと、女性参加者からは人気だった。
クレームを行っているクレイを押し退け、ルビオはアリサのいるカウンターへと近づくと、傲慢な態度で机に手をついた。
「お前が責任者だな?」
「は、はい……アリサと申します」
この国の最高権力者に目をつけられてしまった。
もしかしたら罪人として捕まってしまうのか、店は畳まなきゃいけないのか、せっかく軌道に乗ってきたのに、などと不穏なことがアリサの頭をめぐる。
しかしルビオは、想像に反することを声高々に命令した。
「私の理想の妻を探してもらおうか!」
ギルド一帯に響き渡る。
「ええ?」
「は?」
ルビオの向かいに立つアリサと、横にいるクレイは同時に間抜けな声を上げた。
「言葉の通りだ。
アリサとやら、評判のその腕を発揮してもらおうじゃないか」
ルビオ王子は、虫だらけのボロボロの部屋に住む、何処の馬の骨とも知らない転生してきた結婚相談所のスタッフ相手に、不敵な笑みを浮かべた。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?
エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。
文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。
そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。
もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。
「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」
......って言われましても、ねぇ?
レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。
お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。
気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!
しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?
恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!?
※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!
宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。
静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。
……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか?
枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと
忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称)
これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、
――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。
辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~
深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる