【完結】婚活アドバイザーが異世界で結婚相談所を開いたらこじらせハイスペ王子たちがご来店されました〜絶対にご成婚していただきますっ!〜

たかつじ楓@書籍発売中

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第3章 婚活エグゼクティブパーティー

やっかいなこじらせ王子

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「とりあえず、お話を聞きますので。
 よろしければこちらの個室へどうぞ」


 まばらにしかいなかったギルドの客たちも、まさかの王子様のご来店に、身を乗り出してやりとりを見つめている。


 プライバシーが大切なのが結婚相談所だ。
 移動を促すと、納得したのかルビオとクレイは歩き出した。


「どういうことです王子! 
 私はてっきり僧侶コンの注意をしにきたのかと……」


「私は、相談所に行くと言っただけで、目的は告げていない。お前の早とちりだろう」


「だとしても、こんな城下町の庶民の紹介など、たかが知れておりますよ」


 クレイの不躾な言葉に、アリサはムッとする。

 確かに、たかが庶民だけど。前世では優秀だと入社してすぐに表彰されたこともあるし。僧侶コンだって成功だったし。


 心の中で文句を言いながら、拗ねて唇を尖らせる。


 個室のソファへ座るよう案内すると、ルビオは深々と座り、膝の上で手を組んだ。


「大臣や側近のお前たちが選ぶ女は、ろくな者がいないじゃないか」


「今まで会っていただいたのは、全員同盟国の王女や、貴族の出身の者ですぞ」


「だからだ。高飛車で気の強い女ばかりで性に合わん。
 そして、この私を政治の道具にするやり方も気に食わん」
 

 長い足を組み、憮然と言い放つルビオに、クレイは押し黙ってしまった。

 ガーネット王国の王子たるもの、見合い相手ももちろん皇族や貴族の血筋の良い女性が良いはずなので、クレイの意見は間違っていないと思うが。


「もう二十人も、見合いを断ってますもんね……」


「に、二十人?」


 クレイの嘆きに、アリサが思わず声を上げて聞き返してしまった。
 前世でも、紹介する女性を次々と却下する男性はいたが。
 二十人も突っぱねるのは、ベテランのスタッフでさえ早く退会していただきたいと願う、モンスター級の会員だ。


 どうやら目の前にいるルビオ王子は、かなり厄介な人物のようだ。


(ええと、確か二十三歳、独身。
 魔法も剣も使えるしスキルも有能なキャラだったな。
 少し俺様な性格だけどそこも素敵だと思ってた。
 恋愛の話はメインストーリーに絡まなかったから、知らなかった……)


 前世ならハリウッドスターかトップモデル並みの美形なルビオをこっそりと盗み見ながら、口論をしている二人を眺める。


「ええと、では結婚相談所への入会をご希望でよろしいですか」


「ああ構わん。金はいくらでも払う」


 一国の王子は当たり前のように告げる。


「わかりました。
 ではまず、お手数ですがこちらのプロフィールカードにご記入ください」


 マニュアル通り、新たな会員様にはプロフィールカードを書いてもらう。アリサは紙とペンを手渡した。


 ルビオは興味深そうに記入項目に目を落としていたが、しばらくしたら書かずに机の上に置いた。


「記入欄が小さくて書ききれない場合は、どうすればい良い」


「口頭で伝えていただければ、私の方で記入いたしますよ」


 そう伝えるとルビオは、ふむ、と相槌を打ち、一つの項目を指差した。
 『好きな異性のタイプ』の項目だ。


「私が求める理想の妻はこうだ」


 ルビオは人差し指を立てると、すらすらと語り出した。


「まず、彫刻のように美しいのが第一条件だ。
 馬鹿な者は論外だな、高等教育を受けており教養高いのも必須だ。
 会話が楽しいが、ペチャクチャとうるさすぎず、しとやかなのが良い。
 バイオリンやハープなど楽器が弾けると、演奏会も開けて良いな。
 私が趣味のボードゲームや乗馬を楽しんでいるときには、邪魔をしないのも重要だ。機嫌悪くされたら鬱陶しくて敵わん」


「え、ちょっとちょっと」


 メモを書く手が追いつかない。
 次から次へと、女性への要求が出てくる。


(た、大変なお客さまが来ちゃったわ……!)


 典型的な男尊女卑思考、かつ自己中心的な考え方に、アリサの表情は固まった。


 隣に座るクレイが頭を抱えていた。
 アリサも同じポーズでうなだれたかったのを、仕事中なので必死に耐える。


(こ、こんなにプライドが高くて、しかもそれを悪いと全く思っていないこじらせ男子は、流石に初めてだわ……! 
 ゲームではカッコよくて好きなキャラだったのに、こんな人だと思わなかった!)
 

 その辺の独身男性が言っていたら、どの口が言ってるの、と小突きたくなるところだが、相手が超美形かつ超優秀なガーネット王国第一王子、ルビオ様なのが始末に悪い。


「どうだ。この条件を満たす者はいるか?」


(いるわけがない!)


 アリサは喉まで出た言葉を飲み込み、一応会員の情報を束ねたファイルを読むふりをする。


 できて数日の相談所の会員に、彼を満足させるほどの女性など、そう簡単に来ないと頭を悩ませた。

 あなたの理想の相手などいません。
 成婚などできません、などと言ったら、王子の権力を使って相談所ごと潰されてしまいそうだ。


 しかし、ここは腕の見せ所だ。


 ベテランアドバイザーの先輩たちも匙を投げたような、モンスター級の会員だって、根気強く相談に乗り、成婚させた実績を持っている。


 新人の頃にはアドバイザー指名率&成婚率が関東一位で、表彰までされた、この私が。


(成婚できない人なんていない!)


 アリサは会員の名簿を閉じ、目の前の美形な青年の目をまっすぐ見つめた。
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