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第4章 相席居酒屋
次こそは成功!
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アリサは悩んでいた。
僧侶コンの成功や、連続したカップリングの成功に喜んでいたのも束の間。
先日のエグゼクティブパーティでの大失敗は、一気に自信喪失につながった。
頭の中は、ルックスは良いが女性たちに自分から話に行けない男性三人のことでいっぱいだ。
「イベントでもデートでも、会話は一番の基本……。
女性の言葉を聞き、自分の話をして分かり合う……。
それができない人はどうすれば……」
アリサは独り言をぶつぶつと呟きながら、ギルドのカウンターの中でチラシを描いていた。
高嶺の花。天然。シャイで奥手。
そう言えば聞こえはいいが、いい歳をした青年男性たちには、もう少し主導権を持って女性と会話して欲しいものだ。
カウンターの横で呪文のように独り言を呟いているアリサを見て、少し自分の責任でもあるので気の毒そうに頭を掻くケビン。
前世、現代日本で婚活アドバイザーをしていた頃の記憶を呼び覚ます。
今回のエグゼクティブパーティのように、フリータイムで参加者にどう時間を作るか一任しているものではなく、ある程度強制的に話す場を設けるシステムならいいのではないか。
そして、シャイや奥手でも、初対面の人と話すことができるように、お酒も飲めるもの。
「……相席居酒屋だわ!」
名案が思いついたと、アリサは声を上げ立ち上がった。
食事やお酒を同じ卓で囲み、食べ飲みしながら初対面の異性と会話を楽しむ、相席居酒屋。
前世でもその画期的なシステムは流行し、大きな駅の周辺には、看板がよく掲げられていた。
男性が食事代を負担し、女性は無料で飲食を楽しめるので、結婚というよりはまず友達作りに適している、フランクな出会いの場である相席居酒屋。
前回は三人のハイスペックさに捉われていたが、恋愛スキルは高く無いのは十分わかったため、まずは結婚相手ではなく、異性の友人を作ることから始めよう。
(ロケーションはどこにしようかしら。
緊張せずに食事が楽しめる、親しみやすい大衆的なお店)
ホテルの一室のようなラグジュアリーな空間ではなく、仕事帰りや友人同士の飲み会によく利用する、価格設定も安めなお店が好ましい。
転生して来たばかりだが、街中の食事処はちょこちょこ利用していた。
しかし最近はお金がないので、自炊で簡単なものを作るとが多かったので、そんなにこの辺のお店は知らない。
(……そうだ、ケイトさんのお店!)
武闘家ジョンとカップルになった、ケイトのお店は、街の中心にあり価格帯も安く、昼はレストラン、夜は酒場として繁盛していて人気があった。
前世でいうと、昼は定食屋、夜は居酒屋になり、学生にもビジネスマンにも利用できる店、というところだろうか。
「ちょっと出かけてきます! ちなみにケビンさん、お酒の方は飲めますか?」
「ん? ああ、酒は好きだが」
「オッケーです! 次こそ絶対成婚させますからね!」
アリサはケビンに親指を突き出すと、『ただいま席を外しております』というプレートをカウンターの上に置き、ギルドの外へと飛び出した。
* * *
ケイトが料理人をしている店、「レストラン・マーガレット」までは、ギルドから徒歩五分程度だ。
ちょうど昼のランチのピーク時を過ぎ、客足が少なくなっていた時間だったので、休憩中のケイトに事情を説明した。
結婚相談所のプロデュースする出会いの場として、相席居酒屋を開きたい。
その店の雰囲気にぴったりなので、使わせて欲しいと頼みこむ。
聞き慣れない不思議な単語に、拒絶されることも覚悟していたが、意外にもケイトは肯定的だった。
「面白そうだね、うちの店を好きに使ってくれて良いよ。
それがきっかけで人気が出て繁盛するかもしれないしね」
「ありがとうございます!」
ケイトはそう言って笑い、ポニーテールに結った髪を揺らす。
お店には場所を利用する際の場所代を払い、お酒や料理代はいつもメニューで出しているものと同じだけ男性客に払ってもらうので、店側としては損はしない寸法だ。
店の半分を席を相席居酒屋として利用させてもらえるよう約束し、アリサは上機嫌でギルドへと戻った。
店の中に入ると、ギルドの来客対応をしていたケビンだったが、戻ってきたアリサを確認すると、そっとメモを渡してきた。
そこには、『個室に王子たちが来ている』と書かれている。
アリサはケビンに目で挨拶をすると、慌てて隣の個室へと入った。
扉を開けると、ソファに座った金髪の青年と、剣を差した側近が座っていた。
「遅いぞ、どこに行っていた」
出かけていると書かれたプレートを見たのだろう。ルビオは今日も不機嫌だ。
「アリサ殿、先日のパーティでは申し訳ございませんでした。
王子の軽率な発言により、イベントを混乱させてしまいまして」
クレイが立ち上がり、深々と頭を下げてきた。
「い、いえ、そんな……大丈夫です」
謝罪をしに来たのだろう。
王子側近のクレイの、謝り慣れた背中の角度に、いかに王子の相手が大変かがうかがい知れる。
「全く、側室にしてくれだの妃になりたいだの、地位と金目当ての女ばかりでうんざりだったな」
ルビオは肩をすくめて、謝る気はないらしい。
しかし厄介な会員の相手ぐらいではめげない。アリサは、早速次の案を考えたと二人に話す。
「次は相席居酒屋です!」
意味がわからず顔を見合わせているルビオとクレイに、優秀な婚活アドバイザーのアリサは、相席居酒屋とはなんぞや、というレクチャーから始めた。
僧侶コンの成功や、連続したカップリングの成功に喜んでいたのも束の間。
先日のエグゼクティブパーティでの大失敗は、一気に自信喪失につながった。
頭の中は、ルックスは良いが女性たちに自分から話に行けない男性三人のことでいっぱいだ。
「イベントでもデートでも、会話は一番の基本……。
女性の言葉を聞き、自分の話をして分かり合う……。
それができない人はどうすれば……」
アリサは独り言をぶつぶつと呟きながら、ギルドのカウンターの中でチラシを描いていた。
高嶺の花。天然。シャイで奥手。
そう言えば聞こえはいいが、いい歳をした青年男性たちには、もう少し主導権を持って女性と会話して欲しいものだ。
カウンターの横で呪文のように独り言を呟いているアリサを見て、少し自分の責任でもあるので気の毒そうに頭を掻くケビン。
前世、現代日本で婚活アドバイザーをしていた頃の記憶を呼び覚ます。
今回のエグゼクティブパーティのように、フリータイムで参加者にどう時間を作るか一任しているものではなく、ある程度強制的に話す場を設けるシステムならいいのではないか。
そして、シャイや奥手でも、初対面の人と話すことができるように、お酒も飲めるもの。
「……相席居酒屋だわ!」
名案が思いついたと、アリサは声を上げ立ち上がった。
食事やお酒を同じ卓で囲み、食べ飲みしながら初対面の異性と会話を楽しむ、相席居酒屋。
前世でもその画期的なシステムは流行し、大きな駅の周辺には、看板がよく掲げられていた。
男性が食事代を負担し、女性は無料で飲食を楽しめるので、結婚というよりはまず友達作りに適している、フランクな出会いの場である相席居酒屋。
前回は三人のハイスペックさに捉われていたが、恋愛スキルは高く無いのは十分わかったため、まずは結婚相手ではなく、異性の友人を作ることから始めよう。
(ロケーションはどこにしようかしら。
緊張せずに食事が楽しめる、親しみやすい大衆的なお店)
ホテルの一室のようなラグジュアリーな空間ではなく、仕事帰りや友人同士の飲み会によく利用する、価格設定も安めなお店が好ましい。
転生して来たばかりだが、街中の食事処はちょこちょこ利用していた。
しかし最近はお金がないので、自炊で簡単なものを作るとが多かったので、そんなにこの辺のお店は知らない。
(……そうだ、ケイトさんのお店!)
武闘家ジョンとカップルになった、ケイトのお店は、街の中心にあり価格帯も安く、昼はレストラン、夜は酒場として繁盛していて人気があった。
前世でいうと、昼は定食屋、夜は居酒屋になり、学生にもビジネスマンにも利用できる店、というところだろうか。
「ちょっと出かけてきます! ちなみにケビンさん、お酒の方は飲めますか?」
「ん? ああ、酒は好きだが」
「オッケーです! 次こそ絶対成婚させますからね!」
アリサはケビンに親指を突き出すと、『ただいま席を外しております』というプレートをカウンターの上に置き、ギルドの外へと飛び出した。
* * *
ケイトが料理人をしている店、「レストラン・マーガレット」までは、ギルドから徒歩五分程度だ。
ちょうど昼のランチのピーク時を過ぎ、客足が少なくなっていた時間だったので、休憩中のケイトに事情を説明した。
結婚相談所のプロデュースする出会いの場として、相席居酒屋を開きたい。
その店の雰囲気にぴったりなので、使わせて欲しいと頼みこむ。
聞き慣れない不思議な単語に、拒絶されることも覚悟していたが、意外にもケイトは肯定的だった。
「面白そうだね、うちの店を好きに使ってくれて良いよ。
それがきっかけで人気が出て繁盛するかもしれないしね」
「ありがとうございます!」
ケイトはそう言って笑い、ポニーテールに結った髪を揺らす。
お店には場所を利用する際の場所代を払い、お酒や料理代はいつもメニューで出しているものと同じだけ男性客に払ってもらうので、店側としては損はしない寸法だ。
店の半分を席を相席居酒屋として利用させてもらえるよう約束し、アリサは上機嫌でギルドへと戻った。
店の中に入ると、ギルドの来客対応をしていたケビンだったが、戻ってきたアリサを確認すると、そっとメモを渡してきた。
そこには、『個室に王子たちが来ている』と書かれている。
アリサはケビンに目で挨拶をすると、慌てて隣の個室へと入った。
扉を開けると、ソファに座った金髪の青年と、剣を差した側近が座っていた。
「遅いぞ、どこに行っていた」
出かけていると書かれたプレートを見たのだろう。ルビオは今日も不機嫌だ。
「アリサ殿、先日のパーティでは申し訳ございませんでした。
王子の軽率な発言により、イベントを混乱させてしまいまして」
クレイが立ち上がり、深々と頭を下げてきた。
「い、いえ、そんな……大丈夫です」
謝罪をしに来たのだろう。
王子側近のクレイの、謝り慣れた背中の角度に、いかに王子の相手が大変かがうかがい知れる。
「全く、側室にしてくれだの妃になりたいだの、地位と金目当ての女ばかりでうんざりだったな」
ルビオは肩をすくめて、謝る気はないらしい。
しかし厄介な会員の相手ぐらいではめげない。アリサは、早速次の案を考えたと二人に話す。
「次は相席居酒屋です!」
意味がわからず顔を見合わせているルビオとクレイに、優秀な婚活アドバイザーのアリサは、相席居酒屋とはなんぞや、というレクチャーから始めた。
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