【完結】婚活アドバイザーが異世界で結婚相談所を開いたらこじらせハイスペ王子たちがご来店されました〜絶対にご成婚していただきますっ!〜

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第5章 婚活セミナー

ウィルの実演

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アリサはペンを置き、

「そして今日は、わかりやすいお手本としてゲストの方をお招きしました。
 ウィルさん、どうぞお入りください!」


 アリサの声にうながされて、部屋の外から一人の男性が入ってきた。
 すらっとした背に、ジャケット姿が似合っている、清潔感のある若い男性だ。


「こんにちは、ウィルと申します」

「ウィルさんは、先日のエグゼクティブパーティで一番人気で、女性との会話がとてもお上手でした。
 わざわざ来ていただきありがとうございます」

「いやあ、お恥ずかしい。
 一度ならず二度までも、ルビオ王子にお目通りできて光栄です」


 ウィルは恐縮しながら頭を下げるが、ルビオのせいで女性陣が殺到し、パーティは大失敗に終わったため、ある意味嫌味とも取れてしまう。

 ふん、と鼻を鳴らしてルビオは首を傾げる。

 武器商人をしているという彼は、客商売で培ったのか、身のこなしや会話術がとてもスマートだった。
 パーティ序盤は、彼一人に何人もの女性が取り囲んでいたのだ。

 王族の血筋で顔面チートなルビオに比べると、顔立ちは取り立ててイケメンではないが。
 清潔感とセンスの良さ、スマートな身のこなしで、こういう人が結局一番モテるんだよね、とアリサは前世の経験で思った。


「では、婚活パーティという設定で、私とウィルさんが初対面の男女を演じますね」


 並んで座っているこじらせ男子三人の前に立ち、簡単な演劇が始まった。


「初めまして、よろしくお願いします。
 今日初めて参加したので、緊張しちゃいますね」


 立っているアリサに近寄り、会釈をするウィル。


「爽やかに挨拶しましょう! 
 何回参加してても、初めてと言ってOKです」


 アリサが、ウィルの一挙一動に婚活アドバイザーとしてコメントを挟んでいく。

 何度も婚活の場に来ていたとしても、わざわざ連敗をいう必要はない。初々しさを出すため多少の嘘も方便である。


「へえ、川沿いの街にお住まいなんですね。
 あのあたりの自然は綺麗ですよね」

「出身地を聞き、褒めましょう。
 特産品とか、気候とか。
 旅行で行ったことあるとか、良いですね」


 会話のとっかかりとして、出身地は嫌味にもならず広がりやすい。
 同郷なら一番良いが、そうでなくても話題は広げれる。

 出張の多いサラリーマンの会員が、47都道府県の名産品を暗記して、常套句に使っていたのを思い出す。


「お仕事は何をされているんですか? 
 僕は自分の店で武器商人をしています。大変ですが、やりがいはありますね」


「自分の仕事はサラッと紹介しましょう。
 間違っても、仕事の自慢や愚痴を言ってはいけまん!」


 職種により、収入などの判断もされやすいが、社会人かつ結婚相手には必要な情報なので必ず言うこと。

 その際に、忙しい自慢や寝てない自慢、上司や部下の愚痴を言ってはいけない。
 出会ったばかりの初対面の女性にとって、地球の反対側の天気よりも興味が無いものだ。

 相席居酒屋で酔ってやらかしたクレイは、口を真一文字にして手元のメモにペンを走らせている。


「お休みの日は何をされているんですか? 
 読書ですか、おすすめの本があったら教えてください。
 僕が最近面白かった本は、『龍と魔法使い』ですね」


「趣味を聞き、共感を示しましょう。
 全く知らなかったら、教えてくださいというスタンスで。少し知っていたら、そのジャンルで有名なものを。
 全く同じ趣味だったら、ラッキーだと思って盛り上がってください」


 趣味は大切だ。
 人生という長い時間を一緒に過ごすのに、趣味が同じなのはかなりアドバンテージとなる。

 前世では、男性には興味のないネイルやメイク、流行りのドラマや韓国旅行などと言われても、教えてください、と共感を示すように伝えていた。

 映画や読書など、一般的な趣味なら、誰もが知っている作品を出して様子を伺うように。
 『龍と魔法使い』は、この異世界では万人が知っている有名な本らしい。 


「おや、もう時間だ……。
 楽しいと過ぎるのが早いですね。よかったら今度ゆっくり話しましょう」


 ウィルが腕時計に視線を落とし、そっと名刺を手渡す。
 そこには、彼の経営している武器屋の住所が載っている。


「名残惜しそうに、でもさっぱりと別れましょう。
 もう少し話したかったな、と後ろ髪を引かせるのが大事です。二人きりのデートに誘いやすくなるでしょう」


 自分の話をそこまでせず、聞き役に徹し、共感を示す。

 女性は楽しい時間を過ごせた思いが残るが、男性側のことはあまり聞けなかったことに気がつき、また会いたいと思わせるテクニックである。


「……以上になります。
 ウィルさん、ありがとうございました!」


 アリサが拍手をすると、ウィルは恥ずかしそうに頭を下げた。

 クレイは最後まで真面目にメモを取っていて、ケビンはつられて拍手をしている。
 ルビオは、始終つまらなそうに腕を組んでいる。

 仕事の合間にご厚意で来てくれたウィルに何度もお礼を言い、協力に感謝をして送り出した。


「このような感じで初対面の女性と話せば、好印象を持たれるはずです。
 そしてデートの回数を重ね、3回目のデートで告白し正式にお付き合いを申し込むのが良いと思います。私も、しっかりサポートします」


 実演はわかりやすかったのであろう、自分との違いにケビンは頭を抱えていたし、クレイは勉強になった、と喜んでいる。

 休憩終了の時間を告げる鐘の音が鳴った。
 ケビンはギルドの仕事へ、クレイとルビオは王宮に戻らねばならない。


「では、今日はここまで! 
 明日は、御三方に個人的に指導させていただきます。今日の復習をして、何なら近しい女性と会話して実践してみてください」

「やれやれ、こんなことを明日もするのか」


 ルビオが面倒そうにため息をつくが、アリサがすぐさま止める。


「何ですか王子その態度は。
 今日覚えた大事な言葉を忘れないでくださいね!」

「大事な言葉?」


 首を傾げたルビオに、アリサは前に貼ってあった紙に書いたキーワードを手で隠す。


「一番最初に言いましたよ。
 ここに書いた言葉です!」

 真面目に授業を聞いていなかった生徒を怒るように、アリサが突っ込むと、


「王子、『きょ』から始まる言葉です!」


 クレイが横からヒントを出す。


「きょ、きょ……? 『共感力』、だったか?」


「そうです! 
 早速今日から共感力を使ってくださいね!」


「ああ、わかったわかった。
 良い婚活セミナーだったぞ。これでいいか」


「全然ダメです、やり直し!」


 熱血婚活アドバイザーアリサの指導に、三人のこじらせ男子は翻弄されるのであった。
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