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第8章 マッチングアプリ

エマの協力で

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「そっか、困ったなぁ……」


 相談して頭を悩ませているアリサを前に、優雅にカウンターで紅茶を飲んでいるルビオ。

 ポットにお湯があったのをいいことに、アリサの私物であるティーカップと茶葉を勝手に使って飲んでいる。

 そのくせ、茶葉が安っぽい、などと文句まで言っている。

 王子もちょっとは協力してくださいよ、といアリサが言おうとしたら、ギルドの扉が開く音がした。


 顔を出したのは、ラフな私服のクレイと、ピンク色の髪でワンピースを着たエマだ。

 先日魔物コンで知り合い、意気投合した二人が、どうやらデートをしているようだ。


「こんにちは、アリサさん」

「楽しそうな声が聞こえたから、寄っちゃいました」


 楽しげなエマに、リラックスした様子のクレイだったが、カウンターに座るルビオの姿を見て、一瞬で姿勢を正す。


「おや、ルビオ王子。
 ここにいらっしゃいましたか」


 私服だがすぐに胸に手を当て敬礼をするが、ルビオは紅茶を飲む手を止める。


「今日はクレイは久しぶりの休暇だろう。仰々しくしなくて良い」

「―――はっ」


 休日のプライベートな時間に、思わず上司に会ってしまった部下のような気まずさで、クレイは会釈をした。


「ふん、『デート』は楽しいか?」


 ケビンだけでなく、クレイにも先を越されたのが面白くないのだろう。
 ルビオが嫌味っぽくいうが、


「ふふ、今から二人でランチに行くの。
 クレイさんの時間を私にくれてありがとう、王子様」

 エマが実に上品にお礼を言う。

 そんな彼女に反論などできず、ルビオは肩をすくめると紅茶のカップに口をつけた。

 エマはクレイから、ルビオは実は王子で、自分は王子側近だと聞いたのだろう。

 普通ならば王子を前にして萎縮してしまいそうだが、伊達に魔法学園教師ではないと言ったところか。


「そうだ、エマさんは魔法学園の先生でしたよね。広範囲の魔法は使えますか?」

「ん? 使えるけど……どうして?」


 魔法学園の教師であるエマに、一からマッチングアプリの説明をする。

 この町一帯のマップを表示し、結婚相談所の会員のみを表示し、コールで連絡を取り合えるか、と。

 エマは魔法で一から作るシステムを考えている。


「そうね……フィルタウンを含めたガーネット王国一帯ぐらいなら、広範囲設置型魔法は使えるわ。
 この相談所で新たに婚活用のプロフィールを作った人だけが、表示されるようなマップにすればいいのね。やってみる」
 

 エマは嫌な顔せず、すぐに取り掛かってくれた。


「す、すごい……!助かります!」


「ふふ、私は回復魔法や、今回のようにサポート役の魔法の専門だからね」


 そう言うと、目の前の空間にマップを表示させる。


「結婚相談所の会員一覧とかはある?」

「はい!」


 アリサはすぐさま、会員のプロフィールが入ったファイルを取りに行き、エマに手渡した。

 青い光に包まれ、そのファイルが宙に浮かび、パラパラと自動的にページがめくられていく。

 どうやら、全員の情報と位置を読み込んでいるらしい。

 ブツブツと、エマは聞き取れないほど小さい声で魔法を詠唱している。

 固唾を飲んでアリサが見守っていたが、数分後、エマは息をついた。

 ファイルを包んでいた青い光が消え、エマはゆっくりと手に取る。
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