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第11章 成婚?

おとぎ話のように

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(ルビオ王子とのデートはこれで二度目。
 でも、私は彼の気持ちがいまだに信じられない)


 外観も綺麗な高級レストランの、VIPルーム。
 広い部屋、豪華なインテリア、テーブルにはフルコースの料理が並べられている。

 業務後ルビオに連れ出され、二人でディナーをすることになったが、フォークとナイフで肉を切りながら、アリサは浮かない顔だ。

 城でボードゲームをした時や、公園で話していた時と違い、表情の暗いアリサに気がつくルビオ。



「どうした、口に合わなかったか」



 ワインを飲みながら、ルビオは問いかける。



「いえ……なんだか、頭が追いつかなくて……」

「二回目のデートに、このレストランはふさわしくなかったか?」



 顎に手を置き悩むルビオに、アリサは首を振る。



「いえ、とても素敵な場所だし、ご飯も美味しいです。
 一般的な二回目のデートとしては素晴らしいチョイスだと思います。ただ……」



 アドバイザーとして、彼の行動は問題ないと伝えた後、アリサは口ごもる。



「今日は、私との二度目のデートということですか?」

「そうだ。一度目はこの前、公園でアイスクリームを食べただろう」



 ルビオは強く頷く。


(確かに、ルビオ王子は『今日一日、そなたの時間を私にくれないか』と言ったわ。
 デートに誘っていたのね。勘違いしていた)


 肉を咀嚼しながら、アリサは視線を泳がす。
 その様子に、ワイングラスを置いたルビオが単刀直入に問う。



「私のことが嫌いか」



 その真っ直ぐな言葉に、喉が詰まる。


「いえ。ルビオ王子はとても素敵な男性だと思います。
 ただ、私は結婚相談所の婚活アドバイザーとして、王子の長所や短所を分析し、似合うお相手をずっと探していました。
 私の恋愛対象として見たことがなかったので、その、戸惑っているというか……」


 しどろもどろに、しかし素直に気持ちを伝える。


(冷静に考えても、エグゼクティブパーティでも、マッチングアプリでも、その見目麗しさと王族の地位ゆえに大人気だったルビオ王子が、私のことを本気で好きになるなんて、信じられるわけないよ……)


 相談所の運営側が会員に手を出してはいけないというのもあるが、そもそもルビオが自分に本気になるなど考えられなかった。


「私の気持ちが信じられないということだな」


 心外そうにため息をつくルビオ。

 諦めてくれるかな? と顔を上げると、ルビオは名案を思いついたと手を打った。



「ふむ、ではこれから毎日、愛を伝えて薔薇を渡そう。
 そなたの気持ちが決まった時に、三度目のデートに誘うとしよう!」

「……ええ?」



 突飛なルビオの提案に、情けない声をあげる。

 ルビオはアリサに持ってきた花束の中から、真っ赤な薔薇を一輪取り出すと、キスをしてアリサに渡した。



「私の気持ちだ。受け取ってくれ」



 テーブル越しに渡された薔薇を、ゆっくりと手に取るアリサ。


「なぜ、薔薇を?」


 花びらを撫でながら問うと、


「おとぎ話の王子とは、そういうものだろう?」

 いつも通り、ルビオは不敵に笑うのだった。
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