【完結】悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?

たかつじ楓@書籍発売中

文字の大きさ
62 / 72
第7章 忘れられぬ結婚式を

62、休暇明け

しおりを挟む
 長期連休が終わり、久しぶりに学園の教室へと向かうと、クラスメイト達はレベッカの顔を見るや否や駆け寄ってきた。

 突如3番街に現れた、ファッションレンタル&販売&メイクアップ店の噂は、友人達に広まっていたらしい。

 そして、その共同経営者としてクロードがいることも、女子達の間では話題になっているようだ。

 あの冷徹公爵様にパートナーが!?と持ちきりだったらしい。


「あ、あはは……。お店は授業がない日には開くので、よかったら皆さんも来てくださいまし」


 レベッカはクラスメイト達からの矢継ぎ早の質問に辟易して、当たり障りのない宣伝をした。
 
 そこに、高い少女の声が響く。


「レベッカ様!」


  名前を呼ばれて振り返ると、そこにはピンクの髪で大きな目の正ヒロインが立っていた。


「リリア様、久しぶりですわね」


 レベッカは友人達に礼を言い、リリアの元へと近づくと、彼女は鼻息荒く話しかけてきた。


「聞きましたよ! クロード様とついにご婚約して親御さんにご挨拶ですってね」


 他の者に聞こえないように小声で、しかし目は爛々としているリリア。


「ええ、よくご存知で……」

「クロード様がユリウス様に、結婚式への参加は、レベッカ様とペアで来るっておっしゃってたので」


 どうやら、クロードが親友のユリウスへ結婚式の参加を表明したことを、婚約者のリリアは知っていたようだ。

 先日、クロードの両親に紹介していいか聞かれた時に、もちろんとレベッカは首を縦に振った。

 彼の悩みや葛藤も、ともに乗り越えたいと思ったからだ。


「良かったですね、やっぱりあのダークネイビーのタキシードをプレゼントして、舞踏会で踊ったのが効いたんでしょうか」


 どこの世界でも、女子は恋バナが一番楽しいらしい。

リリアは当時から、クロードは脈アリだと言っていたのを思い出す。


「わ、私の話はいいんですよ。リリア様こそおめでとうございます! 皇太子夫人なんて、名誉ですわね」

 レベッカが拍手をしてお祝いすると、リリアは照れたように舌を出した。


「ありがとうございます。それで、レベッカ様にお願いがあるんですが…」

「なにかしら?」

「結婚式の私のドレスを、一緒に選んでくれませんか」


 この国の皇太子でもあるユリウスの結婚式ともなれば、全国の人が集まるそれは盛大なものになるだろう。


「そんな大事な役、わたくしでいいんですか…?」

「もちろん! ユリウス様もそれがいいと喜んでくださってましたよ」


 以前レベッカが転ばないようにとリリアに渡したパンプスも、舞踏会で着たラベンダー色のドレスも、気に入っていた。

 リリアは、大切な結婚式のドレスもレベッカに選んで欲しいという。


「私、背が低いのも、胸が小さいのもずっとコンプレックスだったんです。
 それを隠すような服ばかり着てました。
 でも、レベッカ様の選んでくださる服や靴を身につけると、自然と自分に自信が持てたんです」
 

 リリアの言葉は、アパレル店員が一番もらって嬉しいものだった。

 レベッカは感動して胸が震えた。


「嬉しいです。もちろん、わたくしでよければ……! 一生に一度の、最高の思い出にしましょう!」
 

 そう言って、二人は笑い合う。



 授業の合間の休憩時間。

 学園の中でも、公然のカップルとなったクロードとレベッカを、周りの友人達は羨ましそうに見つめていた。
 
 クラスの窓際で、銀髪を揺らし立つ背の高いクロードと、その側でくすくすと笑うレベッカは、他愛のない話をしているだけなのに絵になる、と。


「ほんと美男美女ですよね」

「あのクールなクロード様が、レベッカ様の前でだけ表情が明るくなるの、微笑ましいわ」

「レベッカ様も、昔よりとても穏やかになられたし」


 二人をお似合いのカップルだと、クラスメイトは羨ましそうに噂をする。

 木漏れ日が差し込む教室で、ゲームの中では結ばれるはずがない二人が会話している。


「先ほどユリウス様と何を話していたんですか?」


 レベッカが、ユリウスと秘密話をしていたクロードに問いかける。


「ああ、『お前もすみに置けないな』と言われた」


 おそらくレベッカとの関係を言ったのだろう。ユリウスが無邪気ににんまり笑う顔も想像できる。


「あ、あはは……王子ったら…」


 皇太子にまで周知の事実となったのが、恥ずかしくてくすぐったい。


「楽しみだな、ユリウスとリリアの結婚式」


 クロードの言葉に、レベッカは頷く。


「ええ、もうすぐですもの」

「俺は君のドレス姿が一番楽しみだ」


 表情も変えず、さらりと言うクロードには、いつまでたっても慣れない。


「……もう、他の人に聞かれますわよ」


 夕焼けが、レベッカの頬を紅く染める。

 5度目のループに苦しめられたクロードは、二人だけの甘い言葉の交わし合いさえ、夢のようだと言わんばかりに笑っていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。  絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。  今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。  オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、  婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。 ※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。 ※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。 ※途中からダブルヒロインになります。 イラストはMasquer様に描いて頂きました。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

処理中です...