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Part.4 Doctor -1
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生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。
それは、変化に最もよく適応したものである。
チャールズ・ダーウィン
不適当な人間とは、何であらう。
力、知恵、Communication。はたまた、人間の生み出す言語の扱いか。目に見えず、耳に届かず、触れることも出来なければ、感じることも敵わぬ淘汰の基準とは、果たして在ると呼べるであらうか。
知らぬところで、偶然のやうな必然さを以て、無慈悲に確立されていく。
たとゐ少数とならうとも、誰かが生きる限りを‘適応’と呼ぶ。
故に人間は、貪欲に生きて逝く。本能と変わらぬ理性を糧に、自身の生命を食い潰し、未来が一筋の光となるその時まで、彼らは生きて、逝くのであらう。
騒めく会場を沈めたのは、ハウリングの音だった。
「本国、そして世界の皆様におかれましては、今日の発表を今か今かとお待ちいただいたことでしょう」
老齢にして朗々たる声が、暗闇に蝋燭を灯すように、スピーカーから流れる。
観客が息を呑むその瞬間、青紫色の光が、ステージを浮かび上がらせた。
「私はジョセフ・バーナビー、ドクターをしています。光栄な事に、ここで貴方がたの望む一言を告げる役目を仰せつかりました」
スポットライトを浴びて佇むのは、白衣の男性だ。上着のボタンも締められない腹部は、足取りに合わせて上下し、両腕を広げると一層外に張り出る。
プラチナブロンドに赤味の透き通って見える白い肌。典型的なコーカソイドの人類は、医者として、或いは使命とも呼べる希望を胸に、両手を天へ掲げた。
「結論から申し上げます。花眠病は、既に我々人類の敵ではありません。
──それではお話しましょう、我が国の誇るべき研究結果を」
はあ。溜息をつく口が、あるいは画面の向こう側で開いた口が閉ざされないうちに、親指のタップで動画を止める。
十五分とは思えない簡潔さで発表されたプレゼンは、動画サイトにSNS、お茶の間のニュースにまで放映され、発表から二日経った今ではとうに億を超えるプレビュー数を叩き出している。
Dr.Joseph Burnaby。たった数時間、数日で世界中に知れ渡った彼の名は、何度も名を呼ばれるヒーローのように平凡で、分かりやすい。
人類の天敵を仕留めようとする研究者の微笑みを、水野瑤子は複雑な思いで見逃した。親指の右スライドで履歴に飛ばし、端末の電源をカチリと落とす。遺伝子の配列結果をデータ化したファイルを眺めて、ふうの一息を吐き出した。
「水野さん」
「っへい!」
喧しい音を立てて、端末が実験台に飛び降りる。
「……ごめん。驚かす気はなかった」
「いやいやいや、こっちこそすみません」
古めかしい降参のポーズで謝ると、高槻光太郎が空いた左手で端末を拾い上げた。
毎日、ピペットを持つか、つまみを捻るだけ。購入した機材を搬入する程度にしか使われない高槻の手は、骨張って、肌理がしっとりしていて、黄色い。一時期テニスをしていた瑤子とは、肌の焼け方が違う。メラニンの多い手で端末を受け取り、瑤子は眼鏡の奥に苦笑いを浮かべた。
毒性や寄生の経歴を持つ高山植物は、生息地の都合で採取が難しい。大抵は、誰かが行った遺伝子解析結果が各国のデータベースに保管されているので、研究者達はそこからIDを用いてダウンロードすることができた。
できたのだが、候補と思っていた植物全ては軒並み無関係であり、瑤子は正に、現実逃避の真っ最中だったのだ。
知ってか知らずか、高槻は紙束を丸めて、瑤子の肩を叩く。
「なんでしょうか。高槻先生」
「ドクタージョセフの論文、読むかなと思って」
「っ公開されたんですか!」
折角持ち上げた端末を、やはり実験台に落とすようにして瑤子は立ち上がった。
丸めていた論文を開き、ぱら、ぱらり、と高槻はページを捲って、瑤子の足音に音を重ねる。
「当たり前のように有料でね。昔より安くなったとはいえ、今の時代で五十ドル(およそ五七◯◯円)は高いなと。細かい情報を得るにも使えると思うから、使っていいよ」
指先で弾いたマウスがくるりと一回転する間に、出来立てほやほやの論文がその手に収まっている。
「うーわー印刷って。今時ふっる」
「少し前までは、これが普通ですよ……」
彼のいう少しとは、瑤子の知る限り五十年以上前の話になるが、今は構っている場合ではない。要旨と巻末の結果に目を通す。論文マイスター瑤子の名は伊達ではなく、途中で高槻は目で追うのを諦めて、彼女の背後から退いた。
プレゼンで大凡の内容、結果は知っている。重要なのは、どのように考え、何を使ったか。結果から何を読み解き、治験に踏み切ったのか、だ。
ドクタージョセフが発表した、花眠病への対抗薬は二種──気管支拡張薬とスラミンは、それぞれ既存の薬剤だ。前者は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に、後者はアフリカ睡眠病などに用いられる薬剤であり、煙草が廃れた現代では何れにしても入手は難しい。
これを、指定の条件を乗り越えた健康な人々へ少量投与、経過観察。次に、軽度罹患者及び罹患者の家族へ投与して、どちらにも影響が出なかったことから、正式な治験へと舵を切った。
完治した者のいない時点で結果が発表され、対抗薬として世界に放送された事情を考えると、この二種の薬は対処療法的な手段でしかないのだろうと読み取れる。
それでも、ドクターは発表に踏み切った。動機とも呼べるその理由を、瑤子は知りたかった。
「……何か気になることでもあるかい?」
「いえ。特に変なことは書いていないと思います」
ぎくりと慌てた心と裏腹に、声は調子を変えず発された。
「実験開始も二年前、アメリカ食医薬品管理局の方針に則っているのは間違いないかと」
高槻も、無論、同じ考えなのだろう。疎い瑤子と違って、放射線学は医学に近く、高槻の専門範囲は守備が広い。読み取れる情報は瑤子よりも多く深いはずだが、彼は尋ねる。
「分かった、聞き方を変えよう。……君は、この論文を読んで、納得ができる?」
今度こそ、瑤子は高槻の顔を見た。聞き方は優しいのに、何を考えているかわからない無表情が瑤子の目に移り、鋭い眼差しだけが印象に残る。
きっと、香椎は高槻のこのような一面を買って推薦したのだろう。
開きかけた唇を湿らせる瑤子の背後、窓の向こう側で、青々とした枝葉が風に揺れた。
花眠病──Flowering Asphixiaと呼ばれる、永遠の生と引き換えに眠りを強いる病が人類を侵し始めたのは、およそ七年前になる。
植物由来とされるこの病は、日本でこそ数週間前に発見されたものの、世界に目を向ければ、少なくない罹患者数を有する。肺胞に花を咲かせ、宿主に意識混濁、あるいは過眠や目眩の症状を与えることが特徴だ。
この病は、数日前に治療法が発表されるまで、不治の病とされてきた。
人体に影響がある以上、高山植物や植物の遺伝子を研究する瑤子には、新聞の大見出し程度の遠い話題になる。瑤子もその時まではそう思っていた。
──友人の伊崎日和が、目の前で眠りに落ちるまでは。
ドラマなんかじゃない。唯一無二の親友とまではいかないけれど、彼女は瑤子を大切にしてくれて、瑤子は彼女と一緒に研究を続けるつもりだった。
日依は、聡明だった。病状や経過をノートに記録して、荷物を片付けるであろう母親を経由させ、瑤子の元へ、自身の希望を託した。
そうして、瑤子が花眠病へと導かれて間も無く、共通の友人・福永啓太もつい数日前に花眠病を発症し、隣の病室で眠っている。
次は、自分かもしれない。考えるのは容易く、否定するには難しいその推測と託された希望に挟まれながら、瑤子は花眠病を研究する道を選んだ。
高槻は、瑤子と異なる視点で花眠病を研究する一人だ。事情を知る瑤子の指導教授・香椎惠子の伝手で知り合った者で、教授も然る事ながら、彼も瑤子に優しくはない。
「花眠病の話、つまり眠りと肺胞の花靄はこれまでの情報と変わらない。引用されているのも、最初に公表した医師の論文だから間違いないだろう。けれど、花靄の正体を明らかにしないまま、気道閉塞を解消するのは妙だ、と僕は思う。一般的に、植物は酸素を求めるものだ」
警戒こそすれど、瑤子とて一端の研究者。下手な駆け引きは打たないに限るし、使えるものはどんなものでも使う。そういった潔さが必要だと考え直して、彼の研究室に転がり込んで、もう一週間。
「そうですね」
瑤子の所属は、京都国立総合大学大学院、生命科学研究科、応用生物科学専攻。一方高槻は、医学研究科の放射線遺伝学専攻といって、瑤子が植物遺伝学を研究していなければ、かすりもしない研究分野だ。
しかし、腐っても研究者、根本的な論理ベースは似通っているはず。
「納得できなくは、ないです。昏睡に陥る病状で検索したら、アフリカ睡眠病が出てきましたから……ただ、本当にこの二つでどうにかできるものなのか、という疑問は拭えません。気管支を広げて、意識覚醒があった、だけでは治療薬として弱い」
「うん、そうだね。じゃあ、もう一つ──ここなんだけど」
指先を軽く曲げて瑤子を呼び、手の中の論文に指先を落とす。手法が書かれた欄のうち、高槻が指したのは軽度罹患者の既往歴や症状が纏められた部分だ。
「肺炎病者を採用しているから、咳や痰はまだ分かる。でも、obnubilation──意識混濁が見られる患者まで、軽度罹患者として数えるのはおかしい。これは?」
「……FDAの審査、通ってますよ」
「だから、この論文の内容には納得できない。僕はね」
論文を頭から読み返す。一目で全てを理解するには瑤子の語彙力が足りないが、図表は万国共通、読み解ける。
ドクタージョセフの論文では、軽度罹患者の十人と健康な被験者の二十一人の結果を、最終的な根拠として用いている。罹患者は肺胞に花の靄が観察された三人と、過眠や目眩の症状が見られる七人から成る。
今回の実験は、薬剤投与後の彼らの起床時間ないし意識鮮明時間を数字に表し、自覚症状との関連を調べたものだった。
「……花眠病だから、意識混濁も起きてることになるんですかね」
「まさか。有名どころだと、脳血管障害や認知症にも見られる。並みの医者なら判断がつくはず。何か、意図があるはずだ」
彼にしてはやや強く断言するな、と瑤子は感じた。会話の無意味さを察して、根本的なところの確認に回る。
「ところで、あの、意識混濁って、文字通りの想像でいいんでしょうか」
遺伝子配列ならまだしも、医学用語に疎い瑤子が高槻の想定するイメージを悟れるわけもない。彼も同じ結論に至ったか、待ってて、と踵を返した。
おまけと言わんばかりに記載された肺胞の写真を眺めて、暫しの休息を得る。
(やっぱり、高山植物じゃないと難しいのかな。私にゃ患者の症状すら、検討つかないんだもん)
休むと気が緩んで、どうしても弱気が顔を出してくる。写真の見方こそ知っているが、瑤子はこれらの写真がどのように撮影されたものか、検討もつかないのだ。
動画で見かけた骨や皮膚が白く写る写真の中で、ぽっかりと空いた黒い空間に花は咲いている。想定したよりも大きく、本当に、そこに咲いた花の影のような気さえして、気味の悪さに鳥肌が立った。
(……ん?)
肺の上方を目指して咲く花の靄は、酸素を求める手にも見える。根となる部分は肺胞と聞くが、これではただ肺を器にしただけのようで──
「高槻先生!」
「あった、あったよ。今持って、」
「肺胞に花が咲く症状って、本当に、症状、ですか?」
よたよたと埃を被って戻ってきた高槻は、推測通り重くて分厚い専門書を持っていた。負けないくらい弱々しい瑤子の疑問に、首を傾げながら彼は近くの実験台に書物を置く。
「知られているのは、それは肺胞に寄生するように根を張ること。……何か気づいたかい?」
「私、勘違いしていました」
瑤子の冷静さを意識した声音が、静寂を引き寄せた。
「肺胞に咲くって言うから、てっきり一つ一つに花が咲いてるのかと。でも、それだと花の影なんて一目で分からない」
静けさが余白を生み、高槻の脳裏にも同じ疑問が過ったか、嚥下の音が瑤子の耳に届く。は、と息を吐いたか気付きを得たか、彼は思考を零すように呟いた。
「何故、そのような表現が出回っているのか」
「はい。臓器のことなんてこれっぽっちもわかりませんけど、なんか、変だなって」
頁をめくっていた手を止めて、高槻は専門書を瑤子に差し出した。
肺の写真と簡単な図、各部位の名称が記載されている。肺胞とは、気道から気管支、分岐を繰り返した先、最小単位のことをいう。左右一対から成り、左肺は心臓があるためにやや上に位置することが多く、そのためかサイズは右肺の方が大きい。基本的に無菌になるような仕組みが肺胞にはできている。
一文一文を流し目で飛ばし読み、狭く作られたコラムに目が行った。
昔から──嘘か本当か──肺で植物が育つことはあったらしい。戸惑いこそあれど、当時のその人たちは取り除きさえすれば、無事に生き延びることができたのだ。
植物が、無害であれば。
花眠病との違いは何だろう。取り除いても体内に留まる物質は、いつ、どのタイミングで人体に影響するのか。
「……肺胞に花が咲いていた、のは最初の発症者でしたっけ……。以降の患者がこの写真の通りであって、肺胞に花が咲いていない状態なら、これは」
「症状に段階があるということ」
高槻と二人目を合わせ、思い至った結論に驚く。
「なるほど、そうか。過眠が目立つから釣られていたけど、肺胞に花が咲くまでと考えれば話が変わる」
「そうですね……」
成体になるまでの間、宿主に激痛を与える寄生虫だっている世界だ。開花までの間、宿主を苗床代わりに使う植物だって、一つくらいはあるはず。
瑤子の知る中にも、似たことをする植物はあった。花眠病との違いは、嘔吐が見られること。この植物なら誤食で昏睡を引き起こすこともあるし、毒性は百年単位で不明のままだ。分類が同じか、あるいは進化したものか。可能性は否定できない。
さっきまで睨めっこをしていた遺伝子配列を思い浮かべる。日和の血液から取った遺伝子のデータは、母親や父親の特徴を素直に発現しただけの、何ら普通のものだった。
宿主側に問題がないのなら、攻めるべきは侵食側だ。
棒立ちのまま熟考する瑤子の額が、軽くない衝撃で押された。
「……なん、ですか」
「ごめん。何度呼びかけても反応がなくて。……君も大概、研究者だね」
大きく溜息を吐いてから、高槻は瑤子から専門書を引き取る。
自分から渡しておいたくせに、と瑤子は思ったが、数行しか目を通さなかったのを見かねたことくらいは、容易に想像できる。心の隙間に申し訳なさを隠して、恨めしそうに見上げると、高槻はもう一度、肩を落とすように息を吐いた。
「考えは頭の中に残さず、書くように。僕は寄生虫や真菌類の線も考慮しようと思う。放射線はそれからだ」
「真菌類? キノコって菌糸で痰を絡ませるくらいしか症状がないって聞いたことが」
「細胞の遺伝子をいじるやつがいるんだ。過去の実例にね。それに、真菌類が一番毒が多いこと、忘れてないかい?」
反論の余地もなく、う、と唸る以上のことができない。
そんな瑤子にあまり多く語ることなく、高槻は実験室から出て行こうとする。そういうところは卑怯な大人で、気に食わないなと思う。
このまま彼を見送るのは惜しい気がして、瑤子は空になった手を僅かに挙げた。
「話、逸れましたけど」
作業を忘れ去られたパソコンがスクリーンセーバーに移り変わって、気紛れに、暗い画面に瑤子の横顔を写す。置いてきぼりにされたような、一瞬で悲しい気持ちになったような子供じみた表情が、無自覚にも、過去と今を言葉で切り離す。
「私たちが考えていることって、ドクター・バーナビーが提案していることと、噛み合いませんよね」
まさしく、疑いを持ったこのときから、彼の診る患者や被験者は、誤った治療を受けている可能性が付き纏うようになる。誤っていると証明することが出来ない現状では、放っておく以外の手段はないが、分かっていても、瑤子は日和が近しい故に、顔も知らぬ誰かのための不安を、敏感に拾った。
「──いいんだよ」
白衣の裾が靡いて、入り口の向こうに消える。瑤子を助けるでも放っておくわけでもなく、スリッパの音を廊下に響かせながら、高槻は応えた。
「こちらで薬を作り終える頃には、眠ってるだろうから」
それは、変化に最もよく適応したものである。
チャールズ・ダーウィン
不適当な人間とは、何であらう。
力、知恵、Communication。はたまた、人間の生み出す言語の扱いか。目に見えず、耳に届かず、触れることも出来なければ、感じることも敵わぬ淘汰の基準とは、果たして在ると呼べるであらうか。
知らぬところで、偶然のやうな必然さを以て、無慈悲に確立されていく。
たとゐ少数とならうとも、誰かが生きる限りを‘適応’と呼ぶ。
故に人間は、貪欲に生きて逝く。本能と変わらぬ理性を糧に、自身の生命を食い潰し、未来が一筋の光となるその時まで、彼らは生きて、逝くのであらう。
騒めく会場を沈めたのは、ハウリングの音だった。
「本国、そして世界の皆様におかれましては、今日の発表を今か今かとお待ちいただいたことでしょう」
老齢にして朗々たる声が、暗闇に蝋燭を灯すように、スピーカーから流れる。
観客が息を呑むその瞬間、青紫色の光が、ステージを浮かび上がらせた。
「私はジョセフ・バーナビー、ドクターをしています。光栄な事に、ここで貴方がたの望む一言を告げる役目を仰せつかりました」
スポットライトを浴びて佇むのは、白衣の男性だ。上着のボタンも締められない腹部は、足取りに合わせて上下し、両腕を広げると一層外に張り出る。
プラチナブロンドに赤味の透き通って見える白い肌。典型的なコーカソイドの人類は、医者として、或いは使命とも呼べる希望を胸に、両手を天へ掲げた。
「結論から申し上げます。花眠病は、既に我々人類の敵ではありません。
──それではお話しましょう、我が国の誇るべき研究結果を」
はあ。溜息をつく口が、あるいは画面の向こう側で開いた口が閉ざされないうちに、親指のタップで動画を止める。
十五分とは思えない簡潔さで発表されたプレゼンは、動画サイトにSNS、お茶の間のニュースにまで放映され、発表から二日経った今ではとうに億を超えるプレビュー数を叩き出している。
Dr.Joseph Burnaby。たった数時間、数日で世界中に知れ渡った彼の名は、何度も名を呼ばれるヒーローのように平凡で、分かりやすい。
人類の天敵を仕留めようとする研究者の微笑みを、水野瑤子は複雑な思いで見逃した。親指の右スライドで履歴に飛ばし、端末の電源をカチリと落とす。遺伝子の配列結果をデータ化したファイルを眺めて、ふうの一息を吐き出した。
「水野さん」
「っへい!」
喧しい音を立てて、端末が実験台に飛び降りる。
「……ごめん。驚かす気はなかった」
「いやいやいや、こっちこそすみません」
古めかしい降参のポーズで謝ると、高槻光太郎が空いた左手で端末を拾い上げた。
毎日、ピペットを持つか、つまみを捻るだけ。購入した機材を搬入する程度にしか使われない高槻の手は、骨張って、肌理がしっとりしていて、黄色い。一時期テニスをしていた瑤子とは、肌の焼け方が違う。メラニンの多い手で端末を受け取り、瑤子は眼鏡の奥に苦笑いを浮かべた。
毒性や寄生の経歴を持つ高山植物は、生息地の都合で採取が難しい。大抵は、誰かが行った遺伝子解析結果が各国のデータベースに保管されているので、研究者達はそこからIDを用いてダウンロードすることができた。
できたのだが、候補と思っていた植物全ては軒並み無関係であり、瑤子は正に、現実逃避の真っ最中だったのだ。
知ってか知らずか、高槻は紙束を丸めて、瑤子の肩を叩く。
「なんでしょうか。高槻先生」
「ドクタージョセフの論文、読むかなと思って」
「っ公開されたんですか!」
折角持ち上げた端末を、やはり実験台に落とすようにして瑤子は立ち上がった。
丸めていた論文を開き、ぱら、ぱらり、と高槻はページを捲って、瑤子の足音に音を重ねる。
「当たり前のように有料でね。昔より安くなったとはいえ、今の時代で五十ドル(およそ五七◯◯円)は高いなと。細かい情報を得るにも使えると思うから、使っていいよ」
指先で弾いたマウスがくるりと一回転する間に、出来立てほやほやの論文がその手に収まっている。
「うーわー印刷って。今時ふっる」
「少し前までは、これが普通ですよ……」
彼のいう少しとは、瑤子の知る限り五十年以上前の話になるが、今は構っている場合ではない。要旨と巻末の結果に目を通す。論文マイスター瑤子の名は伊達ではなく、途中で高槻は目で追うのを諦めて、彼女の背後から退いた。
プレゼンで大凡の内容、結果は知っている。重要なのは、どのように考え、何を使ったか。結果から何を読み解き、治験に踏み切ったのか、だ。
ドクタージョセフが発表した、花眠病への対抗薬は二種──気管支拡張薬とスラミンは、それぞれ既存の薬剤だ。前者は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に、後者はアフリカ睡眠病などに用いられる薬剤であり、煙草が廃れた現代では何れにしても入手は難しい。
これを、指定の条件を乗り越えた健康な人々へ少量投与、経過観察。次に、軽度罹患者及び罹患者の家族へ投与して、どちらにも影響が出なかったことから、正式な治験へと舵を切った。
完治した者のいない時点で結果が発表され、対抗薬として世界に放送された事情を考えると、この二種の薬は対処療法的な手段でしかないのだろうと読み取れる。
それでも、ドクターは発表に踏み切った。動機とも呼べるその理由を、瑤子は知りたかった。
「……何か気になることでもあるかい?」
「いえ。特に変なことは書いていないと思います」
ぎくりと慌てた心と裏腹に、声は調子を変えず発された。
「実験開始も二年前、アメリカ食医薬品管理局の方針に則っているのは間違いないかと」
高槻も、無論、同じ考えなのだろう。疎い瑤子と違って、放射線学は医学に近く、高槻の専門範囲は守備が広い。読み取れる情報は瑤子よりも多く深いはずだが、彼は尋ねる。
「分かった、聞き方を変えよう。……君は、この論文を読んで、納得ができる?」
今度こそ、瑤子は高槻の顔を見た。聞き方は優しいのに、何を考えているかわからない無表情が瑤子の目に移り、鋭い眼差しだけが印象に残る。
きっと、香椎は高槻のこのような一面を買って推薦したのだろう。
開きかけた唇を湿らせる瑤子の背後、窓の向こう側で、青々とした枝葉が風に揺れた。
花眠病──Flowering Asphixiaと呼ばれる、永遠の生と引き換えに眠りを強いる病が人類を侵し始めたのは、およそ七年前になる。
植物由来とされるこの病は、日本でこそ数週間前に発見されたものの、世界に目を向ければ、少なくない罹患者数を有する。肺胞に花を咲かせ、宿主に意識混濁、あるいは過眠や目眩の症状を与えることが特徴だ。
この病は、数日前に治療法が発表されるまで、不治の病とされてきた。
人体に影響がある以上、高山植物や植物の遺伝子を研究する瑤子には、新聞の大見出し程度の遠い話題になる。瑤子もその時まではそう思っていた。
──友人の伊崎日和が、目の前で眠りに落ちるまでは。
ドラマなんかじゃない。唯一無二の親友とまではいかないけれど、彼女は瑤子を大切にしてくれて、瑤子は彼女と一緒に研究を続けるつもりだった。
日依は、聡明だった。病状や経過をノートに記録して、荷物を片付けるであろう母親を経由させ、瑤子の元へ、自身の希望を託した。
そうして、瑤子が花眠病へと導かれて間も無く、共通の友人・福永啓太もつい数日前に花眠病を発症し、隣の病室で眠っている。
次は、自分かもしれない。考えるのは容易く、否定するには難しいその推測と託された希望に挟まれながら、瑤子は花眠病を研究する道を選んだ。
高槻は、瑤子と異なる視点で花眠病を研究する一人だ。事情を知る瑤子の指導教授・香椎惠子の伝手で知り合った者で、教授も然る事ながら、彼も瑤子に優しくはない。
「花眠病の話、つまり眠りと肺胞の花靄はこれまでの情報と変わらない。引用されているのも、最初に公表した医師の論文だから間違いないだろう。けれど、花靄の正体を明らかにしないまま、気道閉塞を解消するのは妙だ、と僕は思う。一般的に、植物は酸素を求めるものだ」
警戒こそすれど、瑤子とて一端の研究者。下手な駆け引きは打たないに限るし、使えるものはどんなものでも使う。そういった潔さが必要だと考え直して、彼の研究室に転がり込んで、もう一週間。
「そうですね」
瑤子の所属は、京都国立総合大学大学院、生命科学研究科、応用生物科学専攻。一方高槻は、医学研究科の放射線遺伝学専攻といって、瑤子が植物遺伝学を研究していなければ、かすりもしない研究分野だ。
しかし、腐っても研究者、根本的な論理ベースは似通っているはず。
「納得できなくは、ないです。昏睡に陥る病状で検索したら、アフリカ睡眠病が出てきましたから……ただ、本当にこの二つでどうにかできるものなのか、という疑問は拭えません。気管支を広げて、意識覚醒があった、だけでは治療薬として弱い」
「うん、そうだね。じゃあ、もう一つ──ここなんだけど」
指先を軽く曲げて瑤子を呼び、手の中の論文に指先を落とす。手法が書かれた欄のうち、高槻が指したのは軽度罹患者の既往歴や症状が纏められた部分だ。
「肺炎病者を採用しているから、咳や痰はまだ分かる。でも、obnubilation──意識混濁が見られる患者まで、軽度罹患者として数えるのはおかしい。これは?」
「……FDAの審査、通ってますよ」
「だから、この論文の内容には納得できない。僕はね」
論文を頭から読み返す。一目で全てを理解するには瑤子の語彙力が足りないが、図表は万国共通、読み解ける。
ドクタージョセフの論文では、軽度罹患者の十人と健康な被験者の二十一人の結果を、最終的な根拠として用いている。罹患者は肺胞に花の靄が観察された三人と、過眠や目眩の症状が見られる七人から成る。
今回の実験は、薬剤投与後の彼らの起床時間ないし意識鮮明時間を数字に表し、自覚症状との関連を調べたものだった。
「……花眠病だから、意識混濁も起きてることになるんですかね」
「まさか。有名どころだと、脳血管障害や認知症にも見られる。並みの医者なら判断がつくはず。何か、意図があるはずだ」
彼にしてはやや強く断言するな、と瑤子は感じた。会話の無意味さを察して、根本的なところの確認に回る。
「ところで、あの、意識混濁って、文字通りの想像でいいんでしょうか」
遺伝子配列ならまだしも、医学用語に疎い瑤子が高槻の想定するイメージを悟れるわけもない。彼も同じ結論に至ったか、待ってて、と踵を返した。
おまけと言わんばかりに記載された肺胞の写真を眺めて、暫しの休息を得る。
(やっぱり、高山植物じゃないと難しいのかな。私にゃ患者の症状すら、検討つかないんだもん)
休むと気が緩んで、どうしても弱気が顔を出してくる。写真の見方こそ知っているが、瑤子はこれらの写真がどのように撮影されたものか、検討もつかないのだ。
動画で見かけた骨や皮膚が白く写る写真の中で、ぽっかりと空いた黒い空間に花は咲いている。想定したよりも大きく、本当に、そこに咲いた花の影のような気さえして、気味の悪さに鳥肌が立った。
(……ん?)
肺の上方を目指して咲く花の靄は、酸素を求める手にも見える。根となる部分は肺胞と聞くが、これではただ肺を器にしただけのようで──
「高槻先生!」
「あった、あったよ。今持って、」
「肺胞に花が咲く症状って、本当に、症状、ですか?」
よたよたと埃を被って戻ってきた高槻は、推測通り重くて分厚い専門書を持っていた。負けないくらい弱々しい瑤子の疑問に、首を傾げながら彼は近くの実験台に書物を置く。
「知られているのは、それは肺胞に寄生するように根を張ること。……何か気づいたかい?」
「私、勘違いしていました」
瑤子の冷静さを意識した声音が、静寂を引き寄せた。
「肺胞に咲くって言うから、てっきり一つ一つに花が咲いてるのかと。でも、それだと花の影なんて一目で分からない」
静けさが余白を生み、高槻の脳裏にも同じ疑問が過ったか、嚥下の音が瑤子の耳に届く。は、と息を吐いたか気付きを得たか、彼は思考を零すように呟いた。
「何故、そのような表現が出回っているのか」
「はい。臓器のことなんてこれっぽっちもわかりませんけど、なんか、変だなって」
頁をめくっていた手を止めて、高槻は専門書を瑤子に差し出した。
肺の写真と簡単な図、各部位の名称が記載されている。肺胞とは、気道から気管支、分岐を繰り返した先、最小単位のことをいう。左右一対から成り、左肺は心臓があるためにやや上に位置することが多く、そのためかサイズは右肺の方が大きい。基本的に無菌になるような仕組みが肺胞にはできている。
一文一文を流し目で飛ばし読み、狭く作られたコラムに目が行った。
昔から──嘘か本当か──肺で植物が育つことはあったらしい。戸惑いこそあれど、当時のその人たちは取り除きさえすれば、無事に生き延びることができたのだ。
植物が、無害であれば。
花眠病との違いは何だろう。取り除いても体内に留まる物質は、いつ、どのタイミングで人体に影響するのか。
「……肺胞に花が咲いていた、のは最初の発症者でしたっけ……。以降の患者がこの写真の通りであって、肺胞に花が咲いていない状態なら、これは」
「症状に段階があるということ」
高槻と二人目を合わせ、思い至った結論に驚く。
「なるほど、そうか。過眠が目立つから釣られていたけど、肺胞に花が咲くまでと考えれば話が変わる」
「そうですね……」
成体になるまでの間、宿主に激痛を与える寄生虫だっている世界だ。開花までの間、宿主を苗床代わりに使う植物だって、一つくらいはあるはず。
瑤子の知る中にも、似たことをする植物はあった。花眠病との違いは、嘔吐が見られること。この植物なら誤食で昏睡を引き起こすこともあるし、毒性は百年単位で不明のままだ。分類が同じか、あるいは進化したものか。可能性は否定できない。
さっきまで睨めっこをしていた遺伝子配列を思い浮かべる。日和の血液から取った遺伝子のデータは、母親や父親の特徴を素直に発現しただけの、何ら普通のものだった。
宿主側に問題がないのなら、攻めるべきは侵食側だ。
棒立ちのまま熟考する瑤子の額が、軽くない衝撃で押された。
「……なん、ですか」
「ごめん。何度呼びかけても反応がなくて。……君も大概、研究者だね」
大きく溜息を吐いてから、高槻は瑤子から専門書を引き取る。
自分から渡しておいたくせに、と瑤子は思ったが、数行しか目を通さなかったのを見かねたことくらいは、容易に想像できる。心の隙間に申し訳なさを隠して、恨めしそうに見上げると、高槻はもう一度、肩を落とすように息を吐いた。
「考えは頭の中に残さず、書くように。僕は寄生虫や真菌類の線も考慮しようと思う。放射線はそれからだ」
「真菌類? キノコって菌糸で痰を絡ませるくらいしか症状がないって聞いたことが」
「細胞の遺伝子をいじるやつがいるんだ。過去の実例にね。それに、真菌類が一番毒が多いこと、忘れてないかい?」
反論の余地もなく、う、と唸る以上のことができない。
そんな瑤子にあまり多く語ることなく、高槻は実験室から出て行こうとする。そういうところは卑怯な大人で、気に食わないなと思う。
このまま彼を見送るのは惜しい気がして、瑤子は空になった手を僅かに挙げた。
「話、逸れましたけど」
作業を忘れ去られたパソコンがスクリーンセーバーに移り変わって、気紛れに、暗い画面に瑤子の横顔を写す。置いてきぼりにされたような、一瞬で悲しい気持ちになったような子供じみた表情が、無自覚にも、過去と今を言葉で切り離す。
「私たちが考えていることって、ドクター・バーナビーが提案していることと、噛み合いませんよね」
まさしく、疑いを持ったこのときから、彼の診る患者や被験者は、誤った治療を受けている可能性が付き纏うようになる。誤っていると証明することが出来ない現状では、放っておく以外の手段はないが、分かっていても、瑤子は日和が近しい故に、顔も知らぬ誰かのための不安を、敏感に拾った。
「──いいんだよ」
白衣の裾が靡いて、入り口の向こうに消える。瑤子を助けるでも放っておくわけでもなく、スリッパの音を廊下に響かせながら、高槻は応えた。
「こちらで薬を作り終える頃には、眠ってるだろうから」
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