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どうしてこうなった……?

どうしてこうなった……? 第一話

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「これ、着せたままの方が良いんだろ?」
 
 俺の着ているワンピースの下から瞬ちゃんが手を突っ込んで俺の身体を弄る。
 女装の状態でするという事と普通の状態でするという事の差が、どういう事かはよくわからない。
 でも今、脱がされるのは滅茶苦茶怖い気がしている。
 
「………うん………このままで………出来たら………」
 
 もう今俺は既に限界だしいっぱいいっぱいだ。
 心の許容量は既に限界値を振り切っている。
 恥ずかしい。どうにもならない位に恥ずかしい!!だからこれで更に脱がされるってのは勘弁してください!
 すると瞬ちゃんは俺のワンピースを捲り上げて、俺の身体を晒しあげた。
 ……待って!これはこれで目茶苦茶恥ずかしい!
 
「う………!!!まって!!!これ恥ずかしいから………!!!」
 
 全裸にされた方が正直マシだったと思い思わず大きな声を出す。
 瞬ちゃんは少しだけ得意げにそんな俺を見降ろしていた。
 今日の俺はブラジャーもショーツも全部、女のものを揃えている。
 この日選んだ下着類は薄いピンク色に白いレースとリボンが施されているものである。
 
「下着まで徹底してんのな」
 
 瞬ちゃんはそれに気付いて慣れた手付きでブラジャーのホックを外して見せた。
 手慣れてる。瞬ちゃん脱がすの早すぎない?俺これ着るのにも脱ぐのにも苦戦してるのに?
 今外すの一瞬だったよね?
 そう思った瞬間に瞬ちゃんが俺の太ももを撫でた。
 俺の太ももを片手で抱くようにしながら唇を寄せる。
 瞬ちゃんのシャープな横顔が自棄に絵になって、俺は小さく息を漏らした。
 
「………ん、瞬ちゃん、手慣れてる………」
 
 そう溢した瞬間に瞬ちゃんが俺の目をじっと見つめる。
 そして表情は全く変えないままで、俺のショーツに指を引っ掛けながらこう言った。
 
「……誰と比べてんの?」
 
 ……誰とも比べてないけれどそう思われても仕方ない。
 瞬ちゃんは俺の下着越しに俺のものに指を這わせる。
 今俺の中にあるものは完全に良くない好奇心。
 こうなりたいって思ってた理想の人が、どんな性癖か知りたいなんて悪い気持ち。
 それが俺の事を異常なまでに昂らせていて、どうしようのなく興奮してることが解る。
 だけど俺は今本当に瞬ちゃんにこれだけは伝えなきゃいけない。
 此処まで流されてしてるけど俺まだこれでも清いままです……!
 俺の履いているショーツを下ろしながら、瞬ちゃんがわざと耳元で囁く。
 
「下着濡れてた。もうそんなに興奮しちゃった?」
 
 女の子を弄るようにそう囁きながら瞬ちゃんが俺のものに触れる。
 正直人にそんなところを触られるなんて初めての経験だった。
 
「まって………それ、触られなれてないから………」
 
 そう囁いて手を押えようとすれば、瞬ちゃんが意地悪に答える。
 
「………へぇ、じゃあ違うとこ可愛がられてた?」
 
 この時俺は正直、今このタイミングじゃないと駄目だと感じていた。
 これを逃してしまえばもう本当の事が言えなくなってしまう。
 でも瞬ちゃんの手が俺のものを撫でて、ゆっくりと上下に手を動かし始めた。
 
「あ………!!!」
 
 人に触られることと自分で触る事は全然違う。気持ちが良い。
 勝手に身体から声が漏れて止める方法が解らない。
 
「あっ……あっあ…………!!こえ……でちゃ………!!!」
 
 女の子みたいな声が身体から自然と出てくるのが不思議で、恥ずかしく手口元を押さえる。
 すると瞬ちゃんが俺の隣に寝転がり耳元で囁くように煽った。
 
「女の身体にさ、チンコ付いてるみたいでなんかやらしいな。性癖変になりそう」
 
 瞬ちゃんは多分、こういう時に物凄い意地悪になるタイプの人だ。
 俺の事を弄るのに今本当に夢中になっている。
 
「だめ………しゅんちゃんそういうこと………いわないでおねがい……」
 
 瞬ちゃんが意地悪な事を云う姿が正直絵になって思わず身体が熱くなる。
 正直俺の身体はもう限界に達していた。
 まるで本当に女になってるみたいな気がしてきて、されていること全てが恥ずかしい。
 頭がぼうっとなって思考が冷静ではない瞬間に、瞬ちゃんが俺のものから手を離す。
 すると瞬ちゃんがまた俺の耳元で囁いた。
 
「だめ、簡単にいかせない」
 
 瞬ちゃんは俺の身体を焦らしながら、お仕置きだと言わんばかりな表情を浮かべる。
 でも俺はどうしてもイキたくて瞬ちゃんの腕にしがみ付く。
 
「しゅんちゃ……おねが………もうだめ………」
 
 俺がそう囁いた瞬間に瞬ちゃんは悩まし気に眉を顰める。
 それからほんの少しだけ意地悪そうな表情を浮かべた。
 
「……イカせてって、可愛くおねだりしたらしてあげる」
 
 この人は本当に意地悪な人だ。
 そう言いながら焦らす様にまた俺のものを触り俺の身体を舐める様に見る。
 瞬ちゃんに見られていると思うと、恥ずかしくなって気持ちよくなってしまう。
 
「ん………あぁっ!!!いく………!!!」
 
 身体中に電流が流れるような感覚がして、思わずびくりと跳ねあがる。
 乱れ切った呼吸を整えながら瞬ちゃんの掌を見る。
 瞬ちゃんの掌は俺が出した白濁で濡れていてその光景が異様にいやらしく感じた。
 俺が出したものをティッシュペーパーで拭いて、身体を起こして俺の脚と脚の隙間に座る。
 そう言いながら俺の脚を肩にかけてベッドの下あたりから何かを取り出す。
 其処にあったものは世の中でローションと呼ばれているものだった。
 
「しゅんちゃんそんなの………もってるの……?」
 
 俺が思わずそう囁けば、瞬ちゃんが少しだけムッとした表情を浮かべる。
 昔瞬ちゃんの部屋を家探ししたけれど、その時はいやらしいものの類は無かったはずだ。
 何だか普段から良く知っている瞬ちゃんの少し恥ずかしいところを、今垣間見ている気がしてならない。
 
「……持ってるよ一応。ローション持ってる位は男ならまだ普通の部類だろ。
パパ活してるような祐希にはそれで退かれたくない」
 
 あっ、はい!正論です!全くその通りです!
 男相手にパパ活までしてさっき殴られてきたのとローションを部屋に置いてある位なら、ローションを部屋に置いてある男の方が普通です!
 あの瞬ちゃんがローションで自分の手を濡らす。
 正直今までの瞬ちゃんからは全く想像の出来ない事を、さっきから瞬ちゃんは俺にしている。
 すると瞬ちゃんは俺の入り口にローション塗れの指を這わせた。
 
「ん………!!!」
 
 思わず身体を仰け反らせれば瞬ちゃんが俺の耳を淡く噛む。
 そして瞬ちゃんの指が俺の中に一本するりと飲まれた時、俺の身体に強烈な違和感が襲い掛かってきた。
 ……………何これ。滅茶苦茶変な感じがする。
 というか今正直滅茶苦茶痛い。
 
「っ……あ………!!い……た………!!」
 
 俺がそう声を漏らした瞬間に瞬ちゃんが動きを止める。
 そして少しだけ固まって、お互いに顔を見合わせた。
 この時に瞬ちゃんは多分、自分が思っている事に何か間違いがある事を察し、俺は俺でいよいよ本当の事を言わねばならないと感じていた。
 本当に微妙な空気の中で瞬ちゃんから口を開いた。
 
「………あのさ、お前此処って……………」
 
 瞬ちゃんは俺の中に指を入れたままで俺の顔色を伺っている。
 この時に俺はもっと早い段階に正直に話していれば良かったと後悔さえ覚えていた。
 
「…………瞬ちゃん、本当にごめん。此処までの事は流石にパパ活でもしたことない」
 
 俺がそういって手で自分の顔を覆う。
 正直後ろの穴がこんなに痛いとは、俺も夢にも思っていなかった。
 もっと早めに本当の事が言えるのか、最後まで誤魔化しきれると正直思っていた。
 すると瞬ちゃんが俺にこんなことを聞いてくる。
 
「………此処までの事って、何処から?」
 
 珍しくこの時の瞬ちゃんの声はほんの少しだけビビっている気がした。
 
「………俺キス位しかパパ活ではしてない………」
 
 俺がそう言った瞬間に瞬ちゃんは俺の後ろの穴から指を抜く。
 さっき迄あんなに盛り上がっていた熱気が消えて、冗談みたいに氷点下まで下がった気がする。
 ローションで汚れた手の儘の瞬ちゃんとショーツをずり降ろした儘の俺。
 物凄い気まずい空気感のままで俺と瞬ちゃんは朝を迎えた。
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