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Part.3
家族
しおりを挟む家に着くと、三人はいつもの机を囲って席に着いた。
夫が子供たちに気を遣って言う。
「本当に残念だった。おまえたちも、母さんのことについていろいろと思うことがあると思うが、
決してヘンな気は起こさないようにね」
どんよりとした空気が漂う中、涙一つ見せずに娘が口を開いた。
ー強い子だ。
「あたしたちは大丈夫。それより、家計のこととか、家事とかどうするの?
あたしにできることがあれば手伝うわよ。」
この歳にして家庭の心配をするなんて。
ああ、抱きしめてやりたい。
「そのことは大丈夫だ。父さんももう少し張り切ればなんとかなるし、とりあえず母さんの保険金があるからね。
本当に、保険に入っててくれて助かったよ。」
本当にその通りだ。
夫は保険なんか入らなくていい、とずっと意地を張っており、
私はこっそり加入しておいたのだ。
いつも些細なことで衝突していて、正直コイツだけは心配でもなんでもないが、
子供たちは、コイツに頼らざるを得ない。
なんともしゃくに障るが仕方ない。
すると突然、息子がばっと席を立ち上がり、そそくさと部屋に戻ってしまった。
ーこっちは相変わらずか。
もう少し、社交的になってほしいものである。
そう思いながらリビングの天井から見守っていると、
食卓の雰囲気が変わった。
「ははっ」
ははっ?
「笑うもんじゃないぞ。いくら嬉しいとは言え、縁起が悪い。罰が当たるぞ。」
「父さんこそ、長年の望みが叶って、喜んでるくせに。ニヤニヤが隠せてないんだよな~」
一体どういうことだ。
「そうそう、それより、保険金、いくらくれるの?」
「冗談のつもりだったんだけどな。まさか本当にいなくなってくれるとは思っていなかったからな。
少し計算してからな。」
「え~、早くしてよね。男に二言はないんでしょ。」
「ははっ」
おかしい。
そんなことありえない。
まさか。
その瞬間最悪のシナリオを考えたが、夫は確かに言っていた。
「本当にいなくなってくれるとは」と。
少なくとも、私は家族に殺された、ということはなさそうだが、
それでも血縁に裏切られたという悲しみと怒りが徐々に己を蝕み始めた。
今まで信じていたことが全て偽物だったかもしれない。
すこし観察が必要だ。
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