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宿屋の部屋は俺とエルが相部屋、レティが一人部屋だった。
さっきの泣きそうな顔が引っ掛かるから様子見に行きたいけど、女の子一人の部屋に行くのはちょっと気が引ける。
クラスのチャラ男勢だったら軽く行ったんだろうな……いやでも俺は別にやましいことなんかない。なのに気にしすぎなんじゃないだろうか。
「でもなぁ……」
泣きそうな顔してた。何でか分からないけど、そのまま部屋で泣いてたら俺どうしたらいいんだ。いやでも泣いてるかもって思いながら放置するのも……。
風呂から出て髪を拭きつつベッドに座り込む。どうしようか唸ってると、エルが俺の居るベッドの端にゆっくりと腰を掛けた。
「レティの様子か」
俺はずーっと薬草呼ばわりのくせにレティは名前呼びなのかよ。
どういう違いだよとムッとして、思わずエルを睨むとタオルを持ってかれた。優しい手付きで髪をくしゃくしゃとかき混ぜてくる。
ムカつくけど、撫でられるのは嫌いじゃない。
優しい手付きで撫でられると落ち着く。丘の街で俺を散々小突いてきた馬が、大人しくエルに撫でられてたのも分からなくはない気がする。
……いや、そうじゃなくて。
「やっぱりエルも思ったよな。レティが何か変だって」
「無闇に踏み込むのは得策でない」
「でも」
「お前が気にしたところで、あの女は気取られないよう隠すだけだ」
「うぐ……」
冷静に言われて言葉につまる。
確かに俺が気にしたら、それを気にして全部隠してしまうかもしれない。泣いてる所に尋ねていったら無理に笑ってしまうかもしれない。
それを上手くほどいてあげられるような技術なんて、俺にはないんだ。
黙ってエルに髪を拭かれてると、流れるように次のフェーズに入ってしまった。コードのない筒型のドライヤーみたいなやつから出てくる温風が髪を乾かして、細かく動くブラシが髪を整えていく。
……もうこれ完全に子供かペットの犬みたいな扱いされてんじゃないだろうか。そこそこデカイ人間にやる行動じゃないだろ。
複雑な気持ちでブラッシングされてると、部屋のドアがコンコンとノックされた。
「はーい」
「こんばんはー……ぁ?」
返事をすると食堂で見かけた猪系女子がドアを開けて顔を出した。
一瞬俺達を見て固まった後、その顔が一気に緩んでブツブツと何か呟きだした。いや待て怖い。何か禍々しいオーラが出てるぞ。
どうつっこんだらいいのか分からなくて固まってると、呟きが収まったらしい猪系女子がガバッと顔を上げた。ニンマリした顔でこっちに歩いてくる。
「あっあの! エルドグラウン様ですか? ですよね!?」
あれ、その名前って。
確かエルが始まりの村で名乗ろうとして止めたやつに似てる。エルドグ、くらいまでしか聞き取れなかったから完全一致かは分からないけど。
沈黙は肯定と理解したらしい猪系女子は熱烈に興奮した瞳をギラギラさせながら、物凄い速度でエルに詰め寄っていく。流石にギョッとしたらしいエルはブラシを取り落としてその場から離れた。
もう普通に戻っちゃったけど、あんな慌てた顔は初めて見た。エルでもヒビったりするんだな。
「……何故その名をお前が」
警戒した様子で、エルは低く声を発する。結構怖かったのかもしれない。当事者じゃない俺もあの勢いはちょっと怖いと思ったし。
だけど、睨まれてるのに猪系女子は逆に顔を輝かせた。一層興奮した様子にエルの手が自分のベッドに置いてた剣を掴む。
「ちょ、エル!」
さすがに剣はやばいだろと慌ててその手を押さえると、きゃーっ!と来訪者は黄色い声を上げた。
「まって待ってまって! やっぱり、やっぱりだぁぁぁ!」
「あ、あの! ちょっと! 落ち着いて……」
まだエルとの距離を詰めようとするのを慌てて止める。後ろでチャキンと金属音がしてる。やばい。敵認定しつつある感じだ。
「やっぱりここはキミツナの世界なんだ!」
へ?と呟いて固まる。
耳に飛び込んできたのが聞き覚えのありすぎる言葉で、一瞬何が起きたか分からなかったんだ。
「最高最高ッ最の高! 眼福~!! ありがたやアリガタヤありがたや……」
感極まったのか、ちょっと目を潤ませながらエルを拝み始めた猪系女子。待って。何か既視感ある。妹が推しに興奮してる時にこんな奇行してたぞ。
そこまで考えて、一つの可能性が頭の隅を過っていった。
だったら説明がつく。パワーショベルとか二次災害とか、食堂でこの子が言ってた言葉に覚えがあるのも。
「あっあのっ! キミツナ、って。それはゲームの君と繋ぐ懸け橋のこと……?」
この子が元は俺と同じ世界の人間だったら、同じ言葉を知ってて当たり前なんだ。
「やっぱり知ってるんだ! コータって日本人ぽい名前だと思ってたんだよね!」
ぱあっと顔を輝かせた猪系女子は、俺の手を握り締めながらぶんぶんと上下に振る。相変わらず凄い力だ。痛ぇ……。
「じゃ、じゃあサナって」
「あたしも前世日本人だったよ! まさか推しゲーの世界で日本人に会えるなんてー!!」
きゃあきゃあと一人喜ぶサナは、言われてみれば女子高生のテンションにも見える。しかもアレだ、オタクの女子。ついでに賑やかな陽キャの方。
陽キャのオタクは妹のせいで苦手なイメージが強いけど、この状況でそんな事は言ってられない。唯一の日本仲間だ。しかも多分キミツナやってるオタクだろうし、存在が貴重すぎる。
「えと、俺キミツナよく知らないんだ。2やる前にここ来ちゃったし……どんな感じのゲームなの」
知りたいことをやっと知れる。
ほっと胸を撫で下ろしながら尋ねると、サナはにんまりと笑った。
「お、と、め、げ、ぇ、む☆」
めちゃくちゃ勿体ぶりながら言う猪系女子はにやにや笑っている。その口から出てきた単語は全然予想してなかったものだった。
「いやいや、2は戦闘がウリのRPGだったぞ」
「乙女ゲームの割に戦闘が評価高くて、RPGにジャンル替えして続編が出たやーつ!」
……あれぇ、何かだいぶ思ってたのと違う。
でもサナはキミツナもエルも知ってた。エルドグラウンって名前も、本人が何で知ってるんだって言ってたから合ってるんだと思う。
体験版と2のサイト見ただけだったから、前作のジャンルとか気にしてなかった。いやまさか違うジャンルだったなんて思わないじゃん普通は。
「えっと……じゃあサナは乙女ゲーマ―なのか」
「正確に言うとー、乙女ゲームでBL妄想する腐女子?」
「うっわ、めんっどくせ」
思わず声に出てしまった。やばい。属性まで一緒だ。
腐女子にはろくなもんじゃないのが居る。下手すると二次元だけでも飽き足らず、クラスメイトや兄貴でカップリング妄想までするやつが。
百歩譲って思想信条の自由はあるとしよう。だけど妹みたいに、本人に向かってカップリング妄想を垂れ流す害悪じゃないと信じたい……!
思わず天に祈る。だけどふと、嫌な予感がしてサナを見た。
エルを見て大興奮してたし、ちょっと泣きながら拝んでたし、これはまさか。
「……ちょっとまて、サナの推しって、まさか」
「もちろんエル様! 勇者と掛けても王様と掛けても堪らなくて」
「おどっわぁぁぁぁぁぁ! 本人の前で何言ってんだ!!」
慌ててサナの口を塞いだ。
やっぱりエルが推しで、妄想の的だったんだ。腐女子の妄想がどんなものかなんて想像に難くない。これは危険すぎる。
エルドグラウンは二次元のキャラかもしんないけど、今はエルと喋れるんだぞ! 非実在が二次元なら今ここに居るエルは三次元だぞ!
ゴメンゴメンともごもご喋りながら、サナは手を合わせる仕草をする。恐る恐る手を外すと本人はけらけらと笑っていた。
「いやぁ興奮のあまり。あっでも、コータとのカプもアリだと思う☆」
「変な妄想すんな!」
にっこり邪悪に笑うサナに内心頭を抱える。
ダメだコイツも妹と同じだ。妄想と自重のブレーキがバッキバキに壊れてるダメな方の腐女子だ。
あんなに元日本人が居るって知って嬉しかったのに、心強いと言って良いのか悪いのか分からなくなってしまった。何でエル推しのヤバ腐女子なんだよ……普通のオタク女子じゃダメだったのかよ……。
キミツナの知識方面は大丈夫そうだけど別方向の心配事が増えてしまった。俺はまだ妹に自分と友達のカップリング話食らわされてたから耐えられるけど、エルの耳には入れないようにしないといけない。
「……お前達は同郷なのか」
ちょっと離れてたエルが、何を思ったのか近付いてくる。間に割って入ってきたと思ったら俺を庇うみたいにして前に立った。
いや様になってるけど……頼りになるけど今はダメだ離れてて欲しかった。何か目の前の腐女子からまたブツブツと変な呟きが漏れ始めてる。絶対に頭の中は変な妄想まみれだろ。
「そうでーす、同じ日本から、異世界転生! してきたんでーす!」
「異世界……転生?」
意味深に笑うサナに、エルは大真面目に会話を返していた。
いやだからダメだって……エルが相手したらダメなんだって……!
そうは思うけど、目の前の奴がエルで色んな奴とのカップリング妄想してるなんて本人には言えない。聞かされた方が気の毒すぎるし何で知ってんだって言われたら答えに困る。
ちらっと盗み見た腐女子の顔は盛大に萌え散らかしていた。全顔にハァハァしてるって書いてるぞあれは。同じオタクとして、推しに出会えた歓喜は理解できる。分かるけど。
モロに出すぎ。顔に出しすぎ!
サナはキモオタの事、とやかく言えないからな!!
やけに熱烈な視線に若干後ずさりながら、エルは俺をじりじり後ろに下げる。
わざわざ異世界転生なんて単語使ったせいで、エルの警戒と興味は完全に目の前のサナに向いてる。そしてそれにハァハァしてるあのヤバ腐女子、絶対確信犯だ。
「そう、あたし達は異世界から来たの。でもエル様だって転生した元悪役令息……って言ってもアレか。元魔王様でしょ?」
サナの爆弾発言に、部屋の空気が一気に凍り付いた。
……丁度顔を出したレティを巻き込んで。
さっきの泣きそうな顔が引っ掛かるから様子見に行きたいけど、女の子一人の部屋に行くのはちょっと気が引ける。
クラスのチャラ男勢だったら軽く行ったんだろうな……いやでも俺は別にやましいことなんかない。なのに気にしすぎなんじゃないだろうか。
「でもなぁ……」
泣きそうな顔してた。何でか分からないけど、そのまま部屋で泣いてたら俺どうしたらいいんだ。いやでも泣いてるかもって思いながら放置するのも……。
風呂から出て髪を拭きつつベッドに座り込む。どうしようか唸ってると、エルが俺の居るベッドの端にゆっくりと腰を掛けた。
「レティの様子か」
俺はずーっと薬草呼ばわりのくせにレティは名前呼びなのかよ。
どういう違いだよとムッとして、思わずエルを睨むとタオルを持ってかれた。優しい手付きで髪をくしゃくしゃとかき混ぜてくる。
ムカつくけど、撫でられるのは嫌いじゃない。
優しい手付きで撫でられると落ち着く。丘の街で俺を散々小突いてきた馬が、大人しくエルに撫でられてたのも分からなくはない気がする。
……いや、そうじゃなくて。
「やっぱりエルも思ったよな。レティが何か変だって」
「無闇に踏み込むのは得策でない」
「でも」
「お前が気にしたところで、あの女は気取られないよう隠すだけだ」
「うぐ……」
冷静に言われて言葉につまる。
確かに俺が気にしたら、それを気にして全部隠してしまうかもしれない。泣いてる所に尋ねていったら無理に笑ってしまうかもしれない。
それを上手くほどいてあげられるような技術なんて、俺にはないんだ。
黙ってエルに髪を拭かれてると、流れるように次のフェーズに入ってしまった。コードのない筒型のドライヤーみたいなやつから出てくる温風が髪を乾かして、細かく動くブラシが髪を整えていく。
……もうこれ完全に子供かペットの犬みたいな扱いされてんじゃないだろうか。そこそこデカイ人間にやる行動じゃないだろ。
複雑な気持ちでブラッシングされてると、部屋のドアがコンコンとノックされた。
「はーい」
「こんばんはー……ぁ?」
返事をすると食堂で見かけた猪系女子がドアを開けて顔を出した。
一瞬俺達を見て固まった後、その顔が一気に緩んでブツブツと何か呟きだした。いや待て怖い。何か禍々しいオーラが出てるぞ。
どうつっこんだらいいのか分からなくて固まってると、呟きが収まったらしい猪系女子がガバッと顔を上げた。ニンマリした顔でこっちに歩いてくる。
「あっあの! エルドグラウン様ですか? ですよね!?」
あれ、その名前って。
確かエルが始まりの村で名乗ろうとして止めたやつに似てる。エルドグ、くらいまでしか聞き取れなかったから完全一致かは分からないけど。
沈黙は肯定と理解したらしい猪系女子は熱烈に興奮した瞳をギラギラさせながら、物凄い速度でエルに詰め寄っていく。流石にギョッとしたらしいエルはブラシを取り落としてその場から離れた。
もう普通に戻っちゃったけど、あんな慌てた顔は初めて見た。エルでもヒビったりするんだな。
「……何故その名をお前が」
警戒した様子で、エルは低く声を発する。結構怖かったのかもしれない。当事者じゃない俺もあの勢いはちょっと怖いと思ったし。
だけど、睨まれてるのに猪系女子は逆に顔を輝かせた。一層興奮した様子にエルの手が自分のベッドに置いてた剣を掴む。
「ちょ、エル!」
さすがに剣はやばいだろと慌ててその手を押さえると、きゃーっ!と来訪者は黄色い声を上げた。
「まって待ってまって! やっぱり、やっぱりだぁぁぁ!」
「あ、あの! ちょっと! 落ち着いて……」
まだエルとの距離を詰めようとするのを慌てて止める。後ろでチャキンと金属音がしてる。やばい。敵認定しつつある感じだ。
「やっぱりここはキミツナの世界なんだ!」
へ?と呟いて固まる。
耳に飛び込んできたのが聞き覚えのありすぎる言葉で、一瞬何が起きたか分からなかったんだ。
「最高最高ッ最の高! 眼福~!! ありがたやアリガタヤありがたや……」
感極まったのか、ちょっと目を潤ませながらエルを拝み始めた猪系女子。待って。何か既視感ある。妹が推しに興奮してる時にこんな奇行してたぞ。
そこまで考えて、一つの可能性が頭の隅を過っていった。
だったら説明がつく。パワーショベルとか二次災害とか、食堂でこの子が言ってた言葉に覚えがあるのも。
「あっあのっ! キミツナ、って。それはゲームの君と繋ぐ懸け橋のこと……?」
この子が元は俺と同じ世界の人間だったら、同じ言葉を知ってて当たり前なんだ。
「やっぱり知ってるんだ! コータって日本人ぽい名前だと思ってたんだよね!」
ぱあっと顔を輝かせた猪系女子は、俺の手を握り締めながらぶんぶんと上下に振る。相変わらず凄い力だ。痛ぇ……。
「じゃ、じゃあサナって」
「あたしも前世日本人だったよ! まさか推しゲーの世界で日本人に会えるなんてー!!」
きゃあきゃあと一人喜ぶサナは、言われてみれば女子高生のテンションにも見える。しかもアレだ、オタクの女子。ついでに賑やかな陽キャの方。
陽キャのオタクは妹のせいで苦手なイメージが強いけど、この状況でそんな事は言ってられない。唯一の日本仲間だ。しかも多分キミツナやってるオタクだろうし、存在が貴重すぎる。
「えと、俺キミツナよく知らないんだ。2やる前にここ来ちゃったし……どんな感じのゲームなの」
知りたいことをやっと知れる。
ほっと胸を撫で下ろしながら尋ねると、サナはにんまりと笑った。
「お、と、め、げ、ぇ、む☆」
めちゃくちゃ勿体ぶりながら言う猪系女子はにやにや笑っている。その口から出てきた単語は全然予想してなかったものだった。
「いやいや、2は戦闘がウリのRPGだったぞ」
「乙女ゲームの割に戦闘が評価高くて、RPGにジャンル替えして続編が出たやーつ!」
……あれぇ、何かだいぶ思ってたのと違う。
でもサナはキミツナもエルも知ってた。エルドグラウンって名前も、本人が何で知ってるんだって言ってたから合ってるんだと思う。
体験版と2のサイト見ただけだったから、前作のジャンルとか気にしてなかった。いやまさか違うジャンルだったなんて思わないじゃん普通は。
「えっと……じゃあサナは乙女ゲーマ―なのか」
「正確に言うとー、乙女ゲームでBL妄想する腐女子?」
「うっわ、めんっどくせ」
思わず声に出てしまった。やばい。属性まで一緒だ。
腐女子にはろくなもんじゃないのが居る。下手すると二次元だけでも飽き足らず、クラスメイトや兄貴でカップリング妄想までするやつが。
百歩譲って思想信条の自由はあるとしよう。だけど妹みたいに、本人に向かってカップリング妄想を垂れ流す害悪じゃないと信じたい……!
思わず天に祈る。だけどふと、嫌な予感がしてサナを見た。
エルを見て大興奮してたし、ちょっと泣きながら拝んでたし、これはまさか。
「……ちょっとまて、サナの推しって、まさか」
「もちろんエル様! 勇者と掛けても王様と掛けても堪らなくて」
「おどっわぁぁぁぁぁぁ! 本人の前で何言ってんだ!!」
慌ててサナの口を塞いだ。
やっぱりエルが推しで、妄想の的だったんだ。腐女子の妄想がどんなものかなんて想像に難くない。これは危険すぎる。
エルドグラウンは二次元のキャラかもしんないけど、今はエルと喋れるんだぞ! 非実在が二次元なら今ここに居るエルは三次元だぞ!
ゴメンゴメンともごもご喋りながら、サナは手を合わせる仕草をする。恐る恐る手を外すと本人はけらけらと笑っていた。
「いやぁ興奮のあまり。あっでも、コータとのカプもアリだと思う☆」
「変な妄想すんな!」
にっこり邪悪に笑うサナに内心頭を抱える。
ダメだコイツも妹と同じだ。妄想と自重のブレーキがバッキバキに壊れてるダメな方の腐女子だ。
あんなに元日本人が居るって知って嬉しかったのに、心強いと言って良いのか悪いのか分からなくなってしまった。何でエル推しのヤバ腐女子なんだよ……普通のオタク女子じゃダメだったのかよ……。
キミツナの知識方面は大丈夫そうだけど別方向の心配事が増えてしまった。俺はまだ妹に自分と友達のカップリング話食らわされてたから耐えられるけど、エルの耳には入れないようにしないといけない。
「……お前達は同郷なのか」
ちょっと離れてたエルが、何を思ったのか近付いてくる。間に割って入ってきたと思ったら俺を庇うみたいにして前に立った。
いや様になってるけど……頼りになるけど今はダメだ離れてて欲しかった。何か目の前の腐女子からまたブツブツと変な呟きが漏れ始めてる。絶対に頭の中は変な妄想まみれだろ。
「そうでーす、同じ日本から、異世界転生! してきたんでーす!」
「異世界……転生?」
意味深に笑うサナに、エルは大真面目に会話を返していた。
いやだからダメだって……エルが相手したらダメなんだって……!
そうは思うけど、目の前の奴がエルで色んな奴とのカップリング妄想してるなんて本人には言えない。聞かされた方が気の毒すぎるし何で知ってんだって言われたら答えに困る。
ちらっと盗み見た腐女子の顔は盛大に萌え散らかしていた。全顔にハァハァしてるって書いてるぞあれは。同じオタクとして、推しに出会えた歓喜は理解できる。分かるけど。
モロに出すぎ。顔に出しすぎ!
サナはキモオタの事、とやかく言えないからな!!
やけに熱烈な視線に若干後ずさりながら、エルは俺をじりじり後ろに下げる。
わざわざ異世界転生なんて単語使ったせいで、エルの警戒と興味は完全に目の前のサナに向いてる。そしてそれにハァハァしてるあのヤバ腐女子、絶対確信犯だ。
「そう、あたし達は異世界から来たの。でもエル様だって転生した元悪役令息……って言ってもアレか。元魔王様でしょ?」
サナの爆弾発言に、部屋の空気が一気に凍り付いた。
……丁度顔を出したレティを巻き込んで。
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