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26_変化
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ふわふわする。宙に浮かんでるみたいな、でも少しずつ落ちてってるような、不思議な感じ。
あれ、俺何してたんだっけ。
必死だったのは覚えてるけど、何でだったのか思い出せない。何も覚えてない。眠すぎて目も開かないし。
「……まあいっか……」
受験は終わったんだし、少しくらいダラダラしてたっていいか。
そう思って寝直そうとすると、指先に湿った感触がした。ざらざらしてる。動物の舌みたいだ。ていうか舌かな、あったかいし。こんな舐めてくるのはじいちゃんちの甘え上手な柴犬だけだ。
……あれ、俺じいちゃんちに来てたんだっけ?
考え事に夢中で好きにさせてると、調子に乗ったらしい柴犬のモチは手の甲から顔からべろべろ舐め回し始めた。
ちょ、口はやめろ、ちゅっちゅすんな。ファーストキッスの相手がわんこになるだろうが。
うげっツバ入れんなバカッ! ていうか何食ったんだよ薬クサっ!!
剥がしたいけど腕が上がらないし寝返りも打てない。あんまりな薬臭さに気が遠くなりそうになってると、また顔をぺろぺろと舐め始めた。
必死に格闘して何とか上がった腕で、ようやくモチをべりっと剥がす。
「えっ?」
やっと見えたその顔はモチじゃなかった。ていうか柴犬ですらない。どちらかというと手足の長いダックスフントみたいな――
「あれ、この顔どっかで……」
こんな犬知らないのに見たことがある。何でだろう。じっとその顔を見てると、きゃうっと元気そうに鳴いた。
「え……天使!?」
鳴き声を聞いて、一気に何をしてたのか思い出した。
じいちゃんちじゃなくてキミツナ世界だ。
阿修羅像ロボットの爆発に巻き込まれて、瓦礫の下に埋まって、俺を助けてくれたらしいフェルドウルフの子供が死にかけて。やっとその傷が治ったと思ったら、気を失ったんだ。
だけど手元でじゃれついてくる小さな天使は元気そうだ。夢だったんだろうかと背中を撫でると、少しボコッとした感触がして。毛を掻き分けて皮膚を見ると盛り上った筋が背中を走っている。周りが少し赤くなってて、まるで治りかけの傷みたいに。
ということは、夢じゃない。ちゃんと治せてた。それで元気になったんだ。
「よかった……」
思わず力一杯抱き締めると、ぎゃうっと文句を言いたげな声がした。
「起きたか」
聞いたことのある声で我に返ると、周りは工具みたいなのでごちゃごちゃした部屋。その開いたドアからエルが顔を出していた。
……血まみれで。
「ちょっ!? 何でそんな血まみれなんだよ風呂入れ風呂!!」
簡単にガーゼついてるけど、肌にくっきり赤黒い血の跡がついたままだ。おまけにそのガーゼも血が滲んでるし。
一人だけホラー世界の住人みたいになってるぞ!
「風呂に入ると開くだろう」
「何が! いや傷か……何でそのまんまなんだよ、今はこの街に僧侶いっぱい居るだろ!?」
……あれ?
ちょっと待て。おかしいぞ。
「こ、ここどこ……?」
「職人の街だ」
「え、でも、じゃあ何で天使がここに」
俺が勝手に天使って呼んでるけど、実際はフェルドウルフっていう厳つい魔物の子供だ。会ったのも鉱山の中で。直前まで阿修羅像ロボと戦ってて。俺達も鉱山の中に居たはずで。
魔物が街に入れるんだろうか。人懐っこくて可愛いし、犬みたいだから誤魔化せたのかな。
「親についてきた」
「嘘つけ、あんな怖いのが街に入れる訳」
最後まで言う前に言葉が途切れた。
……何故かエルに抱きしめられたから。
「あ、あの……エル?」
「回復薬が切れた」
展開が斜め上でついていけずにいると、ぽつりと抱きついてる男は言葉をもらした。ぎゅっと力が入って少し苦しい。
「あの時、レティも精神力を切らしていた。にも関わらずお前は治癒の奇跡を使い続けた」
「……あ」
そっか、夢中になりすぎて分けて貰った力かどうか考えずに回復魔法使ってた。自分の精神力は使うなって言われてたのに。
レティからの力が来なくなったから自分の精神力が尽きて、ほとんど残ってなかった体力も使ったんだ。当然体力ゲージがゼロになって、倒れた。
「お前が死ぬところだった」
「そ、っか……ごめん、回復に必死で」
「愚か者。私の薬草だという自覚が足りない」
かけてくる声も頭撫でてくれる手もすげぇ優しいのに、何でそういう言葉を選ぶかなぁ。
だけどイマイチ怒る気にも否定する気にもなれなかった。俺を包む腕が少しだけ震えてて、心配してくれてたのかなって思ったから。
「普通に心配しろよな……ほら、治療するから。はなして」
「必要ない。じき治る」
「俺が気になんの! さっさと離れろ!」
血が止まってないくらいの傷なのに放っておける訳がない。しかもずっと盾になってくれてたからついた傷なのに。
「あっ、あっ、ああ――ッ!?」
でっけぇ声が聞こえたと思ったら、サナがそこに立っていた。ダンジョンだとちょっとカッコよかったのに、見えたのは激ヤバ腐女子の顔で残念すぎる。
……ちょっと待て、何でその顔なんだよ。仲間が目を覚まして喜んでる顔じゃないんだけど。
「起きた起きた起きたぁぁぁ! しかも何それ最高じゃん!?!?」
ハァッハァ言いながらにじり寄ってくる姿はプニンよりよっぽど魔物に見える。だけど俺達を見て興奮してるって考えて、自分達がどんな状態か考えて。
エルが抱きしめてるな。俺を。
やばい。腐女子のエサにしてくれって言ってるみたいなもんじゃないか、この状況。
サナの圧が強すぎるのか天使までぷるぷる震えながらぴったりくっついてくる。あわててエルから距離を取ると、わふっと低い鳴き声がした。
入ってきたのはデカくて厳つい方のフェルドウルフ。エルの言うとおり、本当に居たらしい。
どこか呆れたような顔をしながら、尻尾でぺしぺしとサナを押しのけて部屋に入ってきた。まっすぐこっちに向かってきて、親に甘える天使を適度にあやしながら俺を見る。
ちょっとだいぶ……目力が強い。睨まれてはいないって分かるのに無駄に緊張してしまう。
「な、なに……ひえっ」
でっかい口がこっちに向かってきて、固まる膝に触れた。ぐりぐりと顔を撫で付けてくる。天使がよくする可愛い仕草だけど、デッカイのがやると超威圧感ある。膝食われそうで。
助けを求めて元魔王の通訳者エルを見た。ドウイウコトデスカコレハ。
「子を助けた礼をしたいらしい」
「そ、そんなお気遣いなく――え?」
わふっともう一度フェルドウルフが鳴くと、頭の中に文字が浮かぶ。知らない文字。だけど誰かが低い声でその文字を読み上げた。
「大地の恩恵……?」
誰かの声について文字を読むと、ぶわっと目の前が光る。ふわふわと漂う光の玉が消えた時にはエルの傷が全部消えてなくなっていた。
「うわっすげぇ! ヒール何回分だろこれ」
一番最初の回復しか使えないからひたすら連呼するしかなかったのに、この魔法なら数回分をまとめて回復できる。最高じゃん。
「ひょっとして、これ教えてくれたのって」
フェルドウルフを見ると、わうっと自慢げに笑った。顔も何となくドヤってるように見える。
「コータ!!」
「あ、レてぅぐゎあっ!?」
レティの声がしたと思ったら、思いっきりタックルを食らってベッドへ逆戻りしてしまった。結果を見れば女子から押し倒されてるドキドキ展開のはずなのに、突進がクリティカル攻撃状態で喜ぶ余裕は少しもなかった。
体力ゲージしっかり減ったし……何で攻撃になるんだよ判定おかしいだろ。ドキドキハプニングを喜ばせてくれないキミツナ世界、ほんと意地悪すぎる。
「ごめんなさい、わたくしのせいで、ごめんなさい……!」
ぼろぼろ泣きながらごめんなさいを連呼するレティに、さすがに邪な気持ちも溶けて消えていった。自分が精神力の供給を滞らせてしまったこと、それはウルフに気を取られてしまって起きたってことを嗚咽混じりに話してくれる。
「気にしないで。俺だってもう誰の精神力使ってたのか全然分からなかったし。レティのおかげで恩人の怪我も治ったんだよ。力を貸してくれてありがとう」
違うそうじゃないってワーッとまくしたてそうになるのを必死に抑えながら話す。落ち着かせようと話してるのに、俺が喋るほどレティの目からぼろぼろ涙が落ちていく。気を利かせた天使が必殺甘える攻撃してくれてるけど全然効いてないし。
どうしたらいいのこれ。俺が泣きそうなんだけど。
解決策が見つからなくておろおろしてると、見かねたらしいサナがよしよーしって言いながらレティを剥がしてくれた。
……めっちゃくちゃニヤニヤしながら。サナは腐女子じゃないのかよ、今はその顔するとこじゃないだろ。
よくよく話を聞いてると結構な間寝てたらしい。
その間に何と街道の復旧作業も終わって、今度は土砂崩れで壊れた所を直すんだそうだ。防衛システムもダウンしてる上に街の外側に皆の気が向いてるから、街外れの工房に魔物が居ても気づかなかったらしい。
それはそれで大丈夫なんだろうか。
だけどそのお陰で無事鉱山へ帰るウルフの親子を見送って、街の入り口へ歩いていく。土で埋まった施設を掘り返していく人の大きさくらいのパワーショベルを眺めながら、王都行きの乗合い馬車乗り場へ向かっていた。
「パワーショベル、結構ちっちゃかったんだな」
「大きすぎると数作れないし小回りきかないって親方がこだわり発揮しちゃってさー効率下がるって言ったけど勝てなかったんだよねぇ」
何せ設計図作るの親方だし、とサナは苦笑した。サナの異世界知識を形にしてるのは親方なのか。そりゃ勝てないな。
「……貴方、本当に着いてくるつもりですの」
「うん! 王様に復旧工事の支援くださいって言わなきゃだし」
そう言って振り回すのは街の代表から預かった筒だ。中には王様への陳情書とかいうのが入ってるらしいけど、そんな大事なもん振り回して大丈夫なんだろうか。
「それに折角エル様と会えたしさぁ~ガッツリ観察したいじゃん?」
そう言いながら俺見るのやめて。俺達でよからぬ妄想してんだろうなってめちゃくちゃ伝わってくるから。そういうのはサナの頭の中で留めてくれよ。
ヤバ腐女子のうきうきした様子に、レティもげんなりしながらため息をついた。
あれ、俺何してたんだっけ。
必死だったのは覚えてるけど、何でだったのか思い出せない。何も覚えてない。眠すぎて目も開かないし。
「……まあいっか……」
受験は終わったんだし、少しくらいダラダラしてたっていいか。
そう思って寝直そうとすると、指先に湿った感触がした。ざらざらしてる。動物の舌みたいだ。ていうか舌かな、あったかいし。こんな舐めてくるのはじいちゃんちの甘え上手な柴犬だけだ。
……あれ、俺じいちゃんちに来てたんだっけ?
考え事に夢中で好きにさせてると、調子に乗ったらしい柴犬のモチは手の甲から顔からべろべろ舐め回し始めた。
ちょ、口はやめろ、ちゅっちゅすんな。ファーストキッスの相手がわんこになるだろうが。
うげっツバ入れんなバカッ! ていうか何食ったんだよ薬クサっ!!
剥がしたいけど腕が上がらないし寝返りも打てない。あんまりな薬臭さに気が遠くなりそうになってると、また顔をぺろぺろと舐め始めた。
必死に格闘して何とか上がった腕で、ようやくモチをべりっと剥がす。
「えっ?」
やっと見えたその顔はモチじゃなかった。ていうか柴犬ですらない。どちらかというと手足の長いダックスフントみたいな――
「あれ、この顔どっかで……」
こんな犬知らないのに見たことがある。何でだろう。じっとその顔を見てると、きゃうっと元気そうに鳴いた。
「え……天使!?」
鳴き声を聞いて、一気に何をしてたのか思い出した。
じいちゃんちじゃなくてキミツナ世界だ。
阿修羅像ロボットの爆発に巻き込まれて、瓦礫の下に埋まって、俺を助けてくれたらしいフェルドウルフの子供が死にかけて。やっとその傷が治ったと思ったら、気を失ったんだ。
だけど手元でじゃれついてくる小さな天使は元気そうだ。夢だったんだろうかと背中を撫でると、少しボコッとした感触がして。毛を掻き分けて皮膚を見ると盛り上った筋が背中を走っている。周りが少し赤くなってて、まるで治りかけの傷みたいに。
ということは、夢じゃない。ちゃんと治せてた。それで元気になったんだ。
「よかった……」
思わず力一杯抱き締めると、ぎゃうっと文句を言いたげな声がした。
「起きたか」
聞いたことのある声で我に返ると、周りは工具みたいなのでごちゃごちゃした部屋。その開いたドアからエルが顔を出していた。
……血まみれで。
「ちょっ!? 何でそんな血まみれなんだよ風呂入れ風呂!!」
簡単にガーゼついてるけど、肌にくっきり赤黒い血の跡がついたままだ。おまけにそのガーゼも血が滲んでるし。
一人だけホラー世界の住人みたいになってるぞ!
「風呂に入ると開くだろう」
「何が! いや傷か……何でそのまんまなんだよ、今はこの街に僧侶いっぱい居るだろ!?」
……あれ?
ちょっと待て。おかしいぞ。
「こ、ここどこ……?」
「職人の街だ」
「え、でも、じゃあ何で天使がここに」
俺が勝手に天使って呼んでるけど、実際はフェルドウルフっていう厳つい魔物の子供だ。会ったのも鉱山の中で。直前まで阿修羅像ロボと戦ってて。俺達も鉱山の中に居たはずで。
魔物が街に入れるんだろうか。人懐っこくて可愛いし、犬みたいだから誤魔化せたのかな。
「親についてきた」
「嘘つけ、あんな怖いのが街に入れる訳」
最後まで言う前に言葉が途切れた。
……何故かエルに抱きしめられたから。
「あ、あの……エル?」
「回復薬が切れた」
展開が斜め上でついていけずにいると、ぽつりと抱きついてる男は言葉をもらした。ぎゅっと力が入って少し苦しい。
「あの時、レティも精神力を切らしていた。にも関わらずお前は治癒の奇跡を使い続けた」
「……あ」
そっか、夢中になりすぎて分けて貰った力かどうか考えずに回復魔法使ってた。自分の精神力は使うなって言われてたのに。
レティからの力が来なくなったから自分の精神力が尽きて、ほとんど残ってなかった体力も使ったんだ。当然体力ゲージがゼロになって、倒れた。
「お前が死ぬところだった」
「そ、っか……ごめん、回復に必死で」
「愚か者。私の薬草だという自覚が足りない」
かけてくる声も頭撫でてくれる手もすげぇ優しいのに、何でそういう言葉を選ぶかなぁ。
だけどイマイチ怒る気にも否定する気にもなれなかった。俺を包む腕が少しだけ震えてて、心配してくれてたのかなって思ったから。
「普通に心配しろよな……ほら、治療するから。はなして」
「必要ない。じき治る」
「俺が気になんの! さっさと離れろ!」
血が止まってないくらいの傷なのに放っておける訳がない。しかもずっと盾になってくれてたからついた傷なのに。
「あっ、あっ、ああ――ッ!?」
でっけぇ声が聞こえたと思ったら、サナがそこに立っていた。ダンジョンだとちょっとカッコよかったのに、見えたのは激ヤバ腐女子の顔で残念すぎる。
……ちょっと待て、何でその顔なんだよ。仲間が目を覚まして喜んでる顔じゃないんだけど。
「起きた起きた起きたぁぁぁ! しかも何それ最高じゃん!?!?」
ハァッハァ言いながらにじり寄ってくる姿はプニンよりよっぽど魔物に見える。だけど俺達を見て興奮してるって考えて、自分達がどんな状態か考えて。
エルが抱きしめてるな。俺を。
やばい。腐女子のエサにしてくれって言ってるみたいなもんじゃないか、この状況。
サナの圧が強すぎるのか天使までぷるぷる震えながらぴったりくっついてくる。あわててエルから距離を取ると、わふっと低い鳴き声がした。
入ってきたのはデカくて厳つい方のフェルドウルフ。エルの言うとおり、本当に居たらしい。
どこか呆れたような顔をしながら、尻尾でぺしぺしとサナを押しのけて部屋に入ってきた。まっすぐこっちに向かってきて、親に甘える天使を適度にあやしながら俺を見る。
ちょっとだいぶ……目力が強い。睨まれてはいないって分かるのに無駄に緊張してしまう。
「な、なに……ひえっ」
でっかい口がこっちに向かってきて、固まる膝に触れた。ぐりぐりと顔を撫で付けてくる。天使がよくする可愛い仕草だけど、デッカイのがやると超威圧感ある。膝食われそうで。
助けを求めて元魔王の通訳者エルを見た。ドウイウコトデスカコレハ。
「子を助けた礼をしたいらしい」
「そ、そんなお気遣いなく――え?」
わふっともう一度フェルドウルフが鳴くと、頭の中に文字が浮かぶ。知らない文字。だけど誰かが低い声でその文字を読み上げた。
「大地の恩恵……?」
誰かの声について文字を読むと、ぶわっと目の前が光る。ふわふわと漂う光の玉が消えた時にはエルの傷が全部消えてなくなっていた。
「うわっすげぇ! ヒール何回分だろこれ」
一番最初の回復しか使えないからひたすら連呼するしかなかったのに、この魔法なら数回分をまとめて回復できる。最高じゃん。
「ひょっとして、これ教えてくれたのって」
フェルドウルフを見ると、わうっと自慢げに笑った。顔も何となくドヤってるように見える。
「コータ!!」
「あ、レてぅぐゎあっ!?」
レティの声がしたと思ったら、思いっきりタックルを食らってベッドへ逆戻りしてしまった。結果を見れば女子から押し倒されてるドキドキ展開のはずなのに、突進がクリティカル攻撃状態で喜ぶ余裕は少しもなかった。
体力ゲージしっかり減ったし……何で攻撃になるんだよ判定おかしいだろ。ドキドキハプニングを喜ばせてくれないキミツナ世界、ほんと意地悪すぎる。
「ごめんなさい、わたくしのせいで、ごめんなさい……!」
ぼろぼろ泣きながらごめんなさいを連呼するレティに、さすがに邪な気持ちも溶けて消えていった。自分が精神力の供給を滞らせてしまったこと、それはウルフに気を取られてしまって起きたってことを嗚咽混じりに話してくれる。
「気にしないで。俺だってもう誰の精神力使ってたのか全然分からなかったし。レティのおかげで恩人の怪我も治ったんだよ。力を貸してくれてありがとう」
違うそうじゃないってワーッとまくしたてそうになるのを必死に抑えながら話す。落ち着かせようと話してるのに、俺が喋るほどレティの目からぼろぼろ涙が落ちていく。気を利かせた天使が必殺甘える攻撃してくれてるけど全然効いてないし。
どうしたらいいのこれ。俺が泣きそうなんだけど。
解決策が見つからなくておろおろしてると、見かねたらしいサナがよしよーしって言いながらレティを剥がしてくれた。
……めっちゃくちゃニヤニヤしながら。サナは腐女子じゃないのかよ、今はその顔するとこじゃないだろ。
よくよく話を聞いてると結構な間寝てたらしい。
その間に何と街道の復旧作業も終わって、今度は土砂崩れで壊れた所を直すんだそうだ。防衛システムもダウンしてる上に街の外側に皆の気が向いてるから、街外れの工房に魔物が居ても気づかなかったらしい。
それはそれで大丈夫なんだろうか。
だけどそのお陰で無事鉱山へ帰るウルフの親子を見送って、街の入り口へ歩いていく。土で埋まった施設を掘り返していく人の大きさくらいのパワーショベルを眺めながら、王都行きの乗合い馬車乗り場へ向かっていた。
「パワーショベル、結構ちっちゃかったんだな」
「大きすぎると数作れないし小回りきかないって親方がこだわり発揮しちゃってさー効率下がるって言ったけど勝てなかったんだよねぇ」
何せ設計図作るの親方だし、とサナは苦笑した。サナの異世界知識を形にしてるのは親方なのか。そりゃ勝てないな。
「……貴方、本当に着いてくるつもりですの」
「うん! 王様に復旧工事の支援くださいって言わなきゃだし」
そう言って振り回すのは街の代表から預かった筒だ。中には王様への陳情書とかいうのが入ってるらしいけど、そんな大事なもん振り回して大丈夫なんだろうか。
「それに折角エル様と会えたしさぁ~ガッツリ観察したいじゃん?」
そう言いながら俺見るのやめて。俺達でよからぬ妄想してんだろうなってめちゃくちゃ伝わってくるから。そういうのはサナの頭の中で留めてくれよ。
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