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俺達も、王様も王妃様も、勇者と聖女でさえ誰も言葉を発しなかった。沈黙する部屋の中で俺が鼻をすする音だけが響いてて、自分だけが部屋の中に居るみたいだ。
夢なのかな。夢だったらいいな。起きたらエルが隣にいて、ギルドに行って、何か変な依頼を受けて。また冒険して。
……だけど、なんで、ってサナの声がした。
小刻みに震えてて、今すぐにでも泣きそうな声。
「こんなの、ないよ……やっと……やっと救済ルートに入ったと思ったのに……」
「サナ……」
レティに背中をさすられながら立ち尽くす姿に、俺の現実逃避は失敗してしまった。目の前の人形みたいに動かなくなったエルが現実なんだって、何とか目の前の光景から逃げようとする俺に突きつけてくる。
「やれやれ……約束の為に死ねと言った覚えはないのだがな」
突然上の方から声が降ってきて、部屋の中の空気が固まった。
「誰だ!!」
勇者がいち早く反応して剣を抜いて空中を睨む。
するとふわふわ浮かぶ金色の光が人の顔を作って、体を作って、空中で手足を組んでふんぞり返ってる人間の姿になった。相変わらず金色だけど。
「我はオルムニフェート。この世の守護神に剣を向けるとは無礼極まりないのぅ、人間よ」
「オルムニフェート神……! お許しください、よもや御前に参じることが叶うとは思わず」
見た目だけじゃなくて、喋り方もめちゃくちゃふんぞり返ってる感じだった。
ポカンとしてる勇者を地面に引きずり下ろしながら、聖女もその隣に跪く。それを横目にゆっくり地面に降り立つと、偉そうな神様らしき金色はごほんとひとつ咳払いをした。
「まぁ良い。その反応の早さはさすが勇者、己の役割に忠実よの」
深く頭を下げる勇者と聖女の前から、ゆっくりとこっちに近付いてくる。エルのそばにしゃがみ込むと、はぁ、と金色の神様は小さくため息をついた。
「それに引き換え……上手く生まれ変われたというのに。異世界の神に睨まれながら死人まで引き寄せたのだぞ。だのに逝き急ぎよって大馬鹿者め」
べしべしとエルの頭を叩きながら、神様は子供みたいに拗ねた顔をする。その口振りからすると俺達をここに呼んだのはこの神様なんだろう。しかもエルのために。
だけど、本人はその期待と違う行動を取ってしまった。
「俺のせい、なんだ……エルはわるくない……っ」
ひたすらベシベシしてる金色の手を押し退けて、エルの頭を抱え込んだ。それが面白くなかったのか、はーっと長いため息をつきながら、今度は俺の頭をベシベシ叩いてくる。
「番うに良きかと元の生活に未練の無さそうな女子を二人も探し回って揃えたというのに。よりによって未練タラタラの男を選ぶとは。何たる番狂わせ。まったく飛ばす先を間違えたわ」
ぐりぐりと人の頭を拳で圧迫しながら、金色の顔がこっちを睨んでくる。
どうにもサナかレティとくっつけるつもりだったらしい。一応神様とか言ってるのに、サナと逆方向だけど同じオタクのニオイがする。乙女ゲームの神様だからなんだろうか。
頭を下げたままだった勇者が、急に肩を押さえる聖女を振り切って顔を上げた。
「何故……何故神が魔王復活の手引きなど!」
確かにそうだ。大体のゲームで勇者は神様かそのお使いに世界を救ってくれって頼まれる。魔王を倒せと言う側のはずなのに、魔王だったエルを生き返らせる意味が分からない。
だけど、混乱する勇者を神様はふっと鼻先で笑った。
「我はこの世の神。人間だけを気にかけておる訳ではない」
勝手にエルと女子とのカップリング目論んでたくせに、何か急にまともな事言い出した。温度差が酷いのもサナっぽい。ジャンルが一緒なら意気投合してそう。それはちょっと怖いけど。
視線を俺達に戻した神様は、大きくはーっとわざとらしい溜息をついた。
「影に狂わず魔王と成りうる器だったのだ。魔物の言語を理解し、意思疎通の術を生まれながらにして知る、稀有な存在だったというのに」
神様の言葉にずっと黙って俯いてた王様が顔を上げる。
悲しむような、怯えるような、何とも言えない顔で。
「エルドグラウンは生まれながらに魔王だったと……?」
そういえば王様は最後までエルドグラウンを魔王じゃないって信じてた、ってサナが言ってた気がする。
はいはい妄想乙って話半分で流してたけど、意外と公式情報に沿ってるタイプの腐女子だったのかもしれない。
「ぬしにはそう見えたのか」
「……いえ」
「魔物の言語を理解する人間は一定数おる。人間の言語を理解する魔物がおるようにな。まぁ、凡そ生活する内にその才は潰れゆくが」
ということは俺の口から出まかせも外れてなかったんだ。エル以外にも魔物と話せる人は居る。周りに言い出せないまま、使わなくなって話せなくなるだけで。
「こやつの才は潰れる事なく開花した。良くも悪くも人間に合わせる必要はなかったからのぅ」
抱きしめてたエルの顔をじっと見る。相変わらず眠ったままの、穏やかな顔。
確かに他の人より囲まれてた人間の数は少なかったかもしれないけど。エルは気にしてた。気味が悪いか、怖いかって聞いてきてた。一人何も気にせず居た訳じゃない。
俯いた王様が黙ってしまって、また部屋に沈黙が落ちた。
「魔王の影が剥がれ、前世の孤独を埋めた魔物達の導き手になるかと期待しておったのだ。しかしこの世界がかくも人間の惚れた腫れたで回るとは思わなんだ」
……いや、それは多分あんたのせいだよ。
実際エルと女子二人をカップルにさせようとしてたし。無意識かもしんないけど人間に惚れた腫れたさせたがってる気がする。乙女ゲームの神様が居る世界はそうなる運命なんだ、きっと。
「まぁ、仕方あるまい。約束してしまった以上は阿呆の願いを叶えてやるとする」
よっこらせと急にオッサンみたいな声を出しながら、神様はふわりと浮いて向きを変えた。
サナの前に降り立つと、その後ろ姿はゆっくりと腕を組んだみたいだった。
「選ぶとすればぬしかと思ったが、とんだ邪心の女を呼んだものよ。ほれ、帰る先を告げるが良い」
しれっとスゲェ言われ方してる。
ハァハァしまくってるエル推し激ヤバ腐女子な姿を思えば、そこまで間違ってはない気はするけど。
「ちょっと失礼過ぎない? あと帰る気無いからお願いは違うのがいい」
「ほんに欲深いな。望郷よりも重き願いとは何ぞや」
呆れたような声。顔は見えないけどどんな表情してるかは何となく分かる。神様としては、期待通りにいかなかった俺達にはあんま興味ないのかもしれない。
だけどそんな声音を気にする様子もなく、サナは言ったなって顔を一瞬した。すぐに両手を腰に当てて仁王立ちの姿勢をとって。
「エル様を生き返らせて。あたしはエル様の幸せが見たいの。自己犠牲は解釈違い」
「元の世界の肉親を捨てる気か、薄情者」
「もう電車飛び込んだ時点で捨てちゃってるみたいなもんだし。だから連れて来たんでしょ」
どこまでも真っ直ぐエル推しだ。清々しいくらいに。うっかり神様が期待してしまうのも分かる気がする。
しばらく二人は睨みあってたけど、それに、とサナがぽつりとこぼした。
「この世界にも親代わりになってくれた人が居るの。やりかけた事も沢山ある。だから、あたしは帰らない」
「……まあ良かろう。しかし蘇生は時間がかかるぞ」
「! うん、ありがとう神様!」
会話を見守ってた面々は息をのんだ。サナみたいに嬉しそうな顔をしたり、勇者みたいに何で!?って顔をしたり。思う所は皆それぞれだ。
でも、エルが生き返る。本人はどんな顔するか分からないけど、今度こそ王様とちゃんと話せる。きっと。
いつの間にかサナに手をギリギリと握りつぶされてたっぽい神様は、勢いよく逃がした手を痛そうにさすりつつレティに視線を向けた。
「さてと、ぬしは」
「わたくしも戻る気はありません。元の世界での役割は、斬首をもって果たしたと考えております」
真っ直ぐ神様を見て答えるレティに、金色の後ろ姿をがくっとうなだれさせた。
「……そう言うと思うたわ。それで? 望みは何ぞ」
神様の声は何かもうヤケクソな感じだ。どうにでもしやがれと言いたげな。
レティは少し視線を宙に向けた後、ちらりとこっちに視線を向けてきた。じっと俺達を見ながら考えるような仕草をした後、少し頷いて神様へ視線を戻す。
「コータを元の世界へ帰して下さい」
また部屋が静まり返る。俺達以外は転生者の集まりだって事すらよく分かってないだろうから、完全に意味不明って顔で固まっていた。
とはいえ俺も、ちょっと何言ってるか分からなかった。
俺を元の世界へ帰せって、言った? 何でレティがそんなことを言い出すんだろう。
そう思ったのは俺だけじゃなかったらしい。神様の金色の頭がゆっくりと傾いてって、完全に首を傾げた状態で止まった。
「合点がゆかぬ。他者の去就を何故ぬしが願うか」
「それがエルの願いですから。……その後はコータが決めなさいな」
「えっ」
「元通り生活を送るのも、いっそ忘れてしまうのも、先の幸福を願うのも良いでしょう。エルもサナのお陰で無事生き返るようですし、何も気にしなくて良いのです」
困惑する俺に青い目が優しく微笑んだ。
レティはあの日泣いた俺の帰りたいって言葉を、エルの願いを叶えようとしてくれてる。きっと今の俺が迷ってる事に気が付いてるんだ。
「レ、ティ……」
「どうしたいのか、しっかり考えてお決めになって」
家族に会いたい。
エルと王様を見てたら余計にそう思うようになった。
友達とも会って遊びたい。
大学だってあんまり深く考えてないとはいえ、何校も見に行って選んだ学校だった。
好きなゲームシリーズの新作だって発表されて楽しみにしてた。
帰れるのは嬉しい。
でも。
「して、ぬしの願いは何とする。仲間の言うとおり、この世界の記憶は消してやらんでもない」
「おれ……は……」
心の中に何かが引っ掛かって、サナとレティみたいにすぐ答えられなかった。
夢なのかな。夢だったらいいな。起きたらエルが隣にいて、ギルドに行って、何か変な依頼を受けて。また冒険して。
……だけど、なんで、ってサナの声がした。
小刻みに震えてて、今すぐにでも泣きそうな声。
「こんなの、ないよ……やっと……やっと救済ルートに入ったと思ったのに……」
「サナ……」
レティに背中をさすられながら立ち尽くす姿に、俺の現実逃避は失敗してしまった。目の前の人形みたいに動かなくなったエルが現実なんだって、何とか目の前の光景から逃げようとする俺に突きつけてくる。
「やれやれ……約束の為に死ねと言った覚えはないのだがな」
突然上の方から声が降ってきて、部屋の中の空気が固まった。
「誰だ!!」
勇者がいち早く反応して剣を抜いて空中を睨む。
するとふわふわ浮かぶ金色の光が人の顔を作って、体を作って、空中で手足を組んでふんぞり返ってる人間の姿になった。相変わらず金色だけど。
「我はオルムニフェート。この世の守護神に剣を向けるとは無礼極まりないのぅ、人間よ」
「オルムニフェート神……! お許しください、よもや御前に参じることが叶うとは思わず」
見た目だけじゃなくて、喋り方もめちゃくちゃふんぞり返ってる感じだった。
ポカンとしてる勇者を地面に引きずり下ろしながら、聖女もその隣に跪く。それを横目にゆっくり地面に降り立つと、偉そうな神様らしき金色はごほんとひとつ咳払いをした。
「まぁ良い。その反応の早さはさすが勇者、己の役割に忠実よの」
深く頭を下げる勇者と聖女の前から、ゆっくりとこっちに近付いてくる。エルのそばにしゃがみ込むと、はぁ、と金色の神様は小さくため息をついた。
「それに引き換え……上手く生まれ変われたというのに。異世界の神に睨まれながら死人まで引き寄せたのだぞ。だのに逝き急ぎよって大馬鹿者め」
べしべしとエルの頭を叩きながら、神様は子供みたいに拗ねた顔をする。その口振りからすると俺達をここに呼んだのはこの神様なんだろう。しかもエルのために。
だけど、本人はその期待と違う行動を取ってしまった。
「俺のせい、なんだ……エルはわるくない……っ」
ひたすらベシベシしてる金色の手を押し退けて、エルの頭を抱え込んだ。それが面白くなかったのか、はーっと長いため息をつきながら、今度は俺の頭をベシベシ叩いてくる。
「番うに良きかと元の生活に未練の無さそうな女子を二人も探し回って揃えたというのに。よりによって未練タラタラの男を選ぶとは。何たる番狂わせ。まったく飛ばす先を間違えたわ」
ぐりぐりと人の頭を拳で圧迫しながら、金色の顔がこっちを睨んでくる。
どうにもサナかレティとくっつけるつもりだったらしい。一応神様とか言ってるのに、サナと逆方向だけど同じオタクのニオイがする。乙女ゲームの神様だからなんだろうか。
頭を下げたままだった勇者が、急に肩を押さえる聖女を振り切って顔を上げた。
「何故……何故神が魔王復活の手引きなど!」
確かにそうだ。大体のゲームで勇者は神様かそのお使いに世界を救ってくれって頼まれる。魔王を倒せと言う側のはずなのに、魔王だったエルを生き返らせる意味が分からない。
だけど、混乱する勇者を神様はふっと鼻先で笑った。
「我はこの世の神。人間だけを気にかけておる訳ではない」
勝手にエルと女子とのカップリング目論んでたくせに、何か急にまともな事言い出した。温度差が酷いのもサナっぽい。ジャンルが一緒なら意気投合してそう。それはちょっと怖いけど。
視線を俺達に戻した神様は、大きくはーっとわざとらしい溜息をついた。
「影に狂わず魔王と成りうる器だったのだ。魔物の言語を理解し、意思疎通の術を生まれながらにして知る、稀有な存在だったというのに」
神様の言葉にずっと黙って俯いてた王様が顔を上げる。
悲しむような、怯えるような、何とも言えない顔で。
「エルドグラウンは生まれながらに魔王だったと……?」
そういえば王様は最後までエルドグラウンを魔王じゃないって信じてた、ってサナが言ってた気がする。
はいはい妄想乙って話半分で流してたけど、意外と公式情報に沿ってるタイプの腐女子だったのかもしれない。
「ぬしにはそう見えたのか」
「……いえ」
「魔物の言語を理解する人間は一定数おる。人間の言語を理解する魔物がおるようにな。まぁ、凡そ生活する内にその才は潰れゆくが」
ということは俺の口から出まかせも外れてなかったんだ。エル以外にも魔物と話せる人は居る。周りに言い出せないまま、使わなくなって話せなくなるだけで。
「こやつの才は潰れる事なく開花した。良くも悪くも人間に合わせる必要はなかったからのぅ」
抱きしめてたエルの顔をじっと見る。相変わらず眠ったままの、穏やかな顔。
確かに他の人より囲まれてた人間の数は少なかったかもしれないけど。エルは気にしてた。気味が悪いか、怖いかって聞いてきてた。一人何も気にせず居た訳じゃない。
俯いた王様が黙ってしまって、また部屋に沈黙が落ちた。
「魔王の影が剥がれ、前世の孤独を埋めた魔物達の導き手になるかと期待しておったのだ。しかしこの世界がかくも人間の惚れた腫れたで回るとは思わなんだ」
……いや、それは多分あんたのせいだよ。
実際エルと女子二人をカップルにさせようとしてたし。無意識かもしんないけど人間に惚れた腫れたさせたがってる気がする。乙女ゲームの神様が居る世界はそうなる運命なんだ、きっと。
「まぁ、仕方あるまい。約束してしまった以上は阿呆の願いを叶えてやるとする」
よっこらせと急にオッサンみたいな声を出しながら、神様はふわりと浮いて向きを変えた。
サナの前に降り立つと、その後ろ姿はゆっくりと腕を組んだみたいだった。
「選ぶとすればぬしかと思ったが、とんだ邪心の女を呼んだものよ。ほれ、帰る先を告げるが良い」
しれっとスゲェ言われ方してる。
ハァハァしまくってるエル推し激ヤバ腐女子な姿を思えば、そこまで間違ってはない気はするけど。
「ちょっと失礼過ぎない? あと帰る気無いからお願いは違うのがいい」
「ほんに欲深いな。望郷よりも重き願いとは何ぞや」
呆れたような声。顔は見えないけどどんな表情してるかは何となく分かる。神様としては、期待通りにいかなかった俺達にはあんま興味ないのかもしれない。
だけどそんな声音を気にする様子もなく、サナは言ったなって顔を一瞬した。すぐに両手を腰に当てて仁王立ちの姿勢をとって。
「エル様を生き返らせて。あたしはエル様の幸せが見たいの。自己犠牲は解釈違い」
「元の世界の肉親を捨てる気か、薄情者」
「もう電車飛び込んだ時点で捨てちゃってるみたいなもんだし。だから連れて来たんでしょ」
どこまでも真っ直ぐエル推しだ。清々しいくらいに。うっかり神様が期待してしまうのも分かる気がする。
しばらく二人は睨みあってたけど、それに、とサナがぽつりとこぼした。
「この世界にも親代わりになってくれた人が居るの。やりかけた事も沢山ある。だから、あたしは帰らない」
「……まあ良かろう。しかし蘇生は時間がかかるぞ」
「! うん、ありがとう神様!」
会話を見守ってた面々は息をのんだ。サナみたいに嬉しそうな顔をしたり、勇者みたいに何で!?って顔をしたり。思う所は皆それぞれだ。
でも、エルが生き返る。本人はどんな顔するか分からないけど、今度こそ王様とちゃんと話せる。きっと。
いつの間にかサナに手をギリギリと握りつぶされてたっぽい神様は、勢いよく逃がした手を痛そうにさすりつつレティに視線を向けた。
「さてと、ぬしは」
「わたくしも戻る気はありません。元の世界での役割は、斬首をもって果たしたと考えております」
真っ直ぐ神様を見て答えるレティに、金色の後ろ姿をがくっとうなだれさせた。
「……そう言うと思うたわ。それで? 望みは何ぞ」
神様の声は何かもうヤケクソな感じだ。どうにでもしやがれと言いたげな。
レティは少し視線を宙に向けた後、ちらりとこっちに視線を向けてきた。じっと俺達を見ながら考えるような仕草をした後、少し頷いて神様へ視線を戻す。
「コータを元の世界へ帰して下さい」
また部屋が静まり返る。俺達以外は転生者の集まりだって事すらよく分かってないだろうから、完全に意味不明って顔で固まっていた。
とはいえ俺も、ちょっと何言ってるか分からなかった。
俺を元の世界へ帰せって、言った? 何でレティがそんなことを言い出すんだろう。
そう思ったのは俺だけじゃなかったらしい。神様の金色の頭がゆっくりと傾いてって、完全に首を傾げた状態で止まった。
「合点がゆかぬ。他者の去就を何故ぬしが願うか」
「それがエルの願いですから。……その後はコータが決めなさいな」
「えっ」
「元通り生活を送るのも、いっそ忘れてしまうのも、先の幸福を願うのも良いでしょう。エルもサナのお陰で無事生き返るようですし、何も気にしなくて良いのです」
困惑する俺に青い目が優しく微笑んだ。
レティはあの日泣いた俺の帰りたいって言葉を、エルの願いを叶えようとしてくれてる。きっと今の俺が迷ってる事に気が付いてるんだ。
「レ、ティ……」
「どうしたいのか、しっかり考えてお決めになって」
家族に会いたい。
エルと王様を見てたら余計にそう思うようになった。
友達とも会って遊びたい。
大学だってあんまり深く考えてないとはいえ、何校も見に行って選んだ学校だった。
好きなゲームシリーズの新作だって発表されて楽しみにしてた。
帰れるのは嬉しい。
でも。
「して、ぬしの願いは何とする。仲間の言うとおり、この世界の記憶は消してやらんでもない」
「おれ……は……」
心の中に何かが引っ掛かって、サナとレティみたいにすぐ答えられなかった。
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