約束の未来~Re:set~

東 里胡

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第一章 リセットされた世界

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「何でこんなことになってるのよ」

 、そう私にとっては、十年後の未来ではなくのことだったはずなのだ。
 二十五歳、史上最年少で地方裁判官裁判長デビューには思ったよりも多くのマスコミが駆けつけていて、私が裁判所に入るまでを何社ものカメラが密着していた。
 カメラ取材など初めてではないけれど、何度味わっても気分がいい。
 抱負を聞かれてただ一言「ごきげんよう」と口角を上げ、品よく微笑みを向けて裁判所の中に入った。
 抱負? そんなもの、あるわけがない。
 だって、私が欲しかったのは地位と名声とお金だけだ。
 自分で言ったわけじゃないけれど『美人裁判官』だ、『天才』だと、もて囃《はや》されて、私にはこの先まだまだ華々しい世界が広がっているのだと思っていた。
 もっと上に、誰よりも上に昇りつめてやる。
 なのに、何が悪かった?
 どうして世界は狂ってしまった?
 ここまでのし上がったのは運じゃない。
 この特殊能力《チカラ》のおかげだ。
 失敗したらやり直せばいい、ただそれだけのことだった。
 だから史上最年少などとうたわれたところで、実際は他の人の何倍も時間はかかった、私だってしたんだ。
 高校受験は五回受けなおした。
 だって四回目までは碧がトップだったから。
 私が一番にならなければ何の意味もない。五回目でようやく一位になれた時は胸がスッとした。
 高三の時に受けた司法試験予備試験、あれなんか十回は受けなおした。
 だって、トップじゃなきゃ意味がなかったんだもの。
 誰よりも早く出世して、そして私を嫌ってた同級生や同僚やそれ等全部を見下すために。
 
「紅、右の耳たぶ、真っ赤だよ?」
 
 碧の言葉にハッとして、私は耳たぶを引っ張っていた指を止めた。

「限度さ」
「は?」

 碧の言葉の意味を組めずにその顔を見ると、微笑みすら浮かべて私を見つめ返してくる。
 このポーカーフェイスから思考をくみ取ろうなんて無駄だってことは、十年以上、同じ月日を重ねていればわかっていた。
 早く答えをつむがない碧に苛立つ私に、焦らすようにしてようやく帰って来た答え。

「紅の場合は限度を超えた、ただそれだけ」
「……、何の? まさか何度も時間を戻したから、って言うんじゃ」
「そのまさかだよ」

 そうに決まってるとでも言うようにクックと含み笑いをする碧。

「じゃあなぜ今まで止めなかったのよ、わかっていたならもっと早く」
「忠告はしてきたはずだ」

 瞬間フラッシュバックのように甦る、碧からの言葉たち。

 自分でちゃんと勉強しなよ。
 誰だって寝坊ぐらいするだろ。
 怪我なんかいつか治る。
 本当にそれは紅の実力?

 確かまだまだ何か言われた、時間を巻き戻す度に。
 見透かしたように嫌なことばかり言う碧《おとこ》だって、ずっと思ってた。
 言われるたびに私は責められているような気分で碧を睨んだ。
 そうしてまた碧が何も言わなくなる世界へと時間を巻き戻す。
 ……言わなかったんじゃない。
 碧は私の言動に呆れて言わなくなったのだ。

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