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第一章 リセットされた世界
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「最初から碧は私のこと気付いてたってこと?」
「そうだよ」
「じゃあ、もっとわかりやすく止めてたら良かったじゃないの! だったら私は特殊能力なんか使わなかったかもしれない」
「……そうかな? こうなるって、わかってたら自分で止められた? 本当に?」
私を見据える深い深い碧みがかった瞳が、憐れむように微笑んだ。
「物には限度があるんだよ、紅。君の処分が決まったのは『ひと月ほど前』、何か心当たりはない?」
ひと月と聞いて、グサリと心に突き刺さるものがある。
言い返せなかった。
私の人生の中で一番の汚点だと思う、それを思い出してしまったから。
ひと月ほど前、私の昇進を決める人事評価の面接があった。
何度戻しただろうか、十回? 二十回?
何度戻してもダメだったんだ。
結果はいつも私よりも二十歳年上の上司が裁判長昇進に決まってしまう。
だから、幾度目かの巻き戻しの時に、私は正真正銘の不正をした。
大金をはたき、彼にハニートラップを仕掛けたのだ。
真面目で妻子一筋で二十年近く勤勉に、裁判官として尽くしてきたはずの人を、罠にかけたのだ。
ごく普通のOLを装った美人局の誘惑、最初は拒んでいた彼も、欲望に逆らえずに最終的には堕ちていった。
手に入れた証拠写真を、面接に合わせて上司へと送った。
そうして私は「史上最年少で地方裁判官裁判長」という人生の成功者へのプラチナチケットを手に入れたのだ。
「思い出した?」
苦渋に歪む私の顔を見て、碧は小さなため息をついた。
「事情を話して君を止めることは許されていなかった、今まではね。俺はただの監視役だったから。でもね今後はそれを許された、あの裁判によって」
時間が凍り付いたあの空に浮くような法廷内で、見も知らぬ裁判長がそんなこと言ってた気もする。
「紅が今後時間を巻き戻せるのは一度のみ、俺が許可した時だけ。自分のために使うか他人のために使うかは自由だ」
なんで、と言いかけた瞬間。
「その一回で君は失うんだよ、もう一つの世界を」
碧の言葉に頭痛が酷くなってきた。
どうやら私の脳内のキャパが悲鳴をあげている。
お願いだから、もっとゆっくりと説明してくれないだろうか。
頭を抱え蹲った私を、抱き抱える碧に抵抗ができない。
気を失う一瞬前に見えたのは、碧の湖。
水をたくさん湛えたそれが揺れている。
「間違ったことは今まで一度だってしてこなかった? 違うよね? 紅自身、法を学んできたからわかるはずでしょ、君は裁かれて当然の行いをしてしまったんだ」
深いため息と共にポタリと落ちた雫は私の頬をつたっていった。
「そうだよ」
「じゃあ、もっとわかりやすく止めてたら良かったじゃないの! だったら私は特殊能力なんか使わなかったかもしれない」
「……そうかな? こうなるって、わかってたら自分で止められた? 本当に?」
私を見据える深い深い碧みがかった瞳が、憐れむように微笑んだ。
「物には限度があるんだよ、紅。君の処分が決まったのは『ひと月ほど前』、何か心当たりはない?」
ひと月と聞いて、グサリと心に突き刺さるものがある。
言い返せなかった。
私の人生の中で一番の汚点だと思う、それを思い出してしまったから。
ひと月ほど前、私の昇進を決める人事評価の面接があった。
何度戻しただろうか、十回? 二十回?
何度戻してもダメだったんだ。
結果はいつも私よりも二十歳年上の上司が裁判長昇進に決まってしまう。
だから、幾度目かの巻き戻しの時に、私は正真正銘の不正をした。
大金をはたき、彼にハニートラップを仕掛けたのだ。
真面目で妻子一筋で二十年近く勤勉に、裁判官として尽くしてきたはずの人を、罠にかけたのだ。
ごく普通のOLを装った美人局の誘惑、最初は拒んでいた彼も、欲望に逆らえずに最終的には堕ちていった。
手に入れた証拠写真を、面接に合わせて上司へと送った。
そうして私は「史上最年少で地方裁判官裁判長」という人生の成功者へのプラチナチケットを手に入れたのだ。
「思い出した?」
苦渋に歪む私の顔を見て、碧は小さなため息をついた。
「事情を話して君を止めることは許されていなかった、今まではね。俺はただの監視役だったから。でもね今後はそれを許された、あの裁判によって」
時間が凍り付いたあの空に浮くような法廷内で、見も知らぬ裁判長がそんなこと言ってた気もする。
「紅が今後時間を巻き戻せるのは一度のみ、俺が許可した時だけ。自分のために使うか他人のために使うかは自由だ」
なんで、と言いかけた瞬間。
「その一回で君は失うんだよ、もう一つの世界を」
碧の言葉に頭痛が酷くなってきた。
どうやら私の脳内のキャパが悲鳴をあげている。
お願いだから、もっとゆっくりと説明してくれないだろうか。
頭を抱え蹲った私を、抱き抱える碧に抵抗ができない。
気を失う一瞬前に見えたのは、碧の湖。
水をたくさん湛えたそれが揺れている。
「間違ったことは今まで一度だってしてこなかった? 違うよね? 紅自身、法を学んできたからわかるはずでしょ、君は裁かれて当然の行いをしてしまったんだ」
深いため息と共にポタリと落ちた雫は私の頬をつたっていった。
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