約束の未来~Re:set~

東 里胡

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第四章 許されないことだとしても

4-12

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「何やってんだよ」

 怒りを含むその声と腕の強さに、いつもの冷静な碧ではないことに振り向かなくても気づいてしまう。

「あー、もう、早すぎるよ、碧くんてば。本当、紅ちゃんのこととなると必死になりすぎ」

 クスクスと笑う宵。
 その瞬間、私の背中側にあった気配が消えた。

「次はない、二度と人間界こっちに来られないように特別に手配しようか?」

 碧が宵のシャツの首元を締め上げていた。
 宵の顔が苦悶に歪んでグッと苦しがった声に、ようやく碧は手を離した。

「宵、大丈夫?」

 咳き込む宵に近づこうとする私の腕を強く掴み引き留める。

「帰るよ、紅」
 
 碧が冷酷に私を見下ろしていた。
 しゃがみ込み苦しそうな宵と怒っている横顔の碧を見比べてから首を振る。

「ちょっとだけ、待って! 碧」
 
 近くの自販機の水のペットボトルが目に入って碧の手を振りほどき、それを一本購入し宵の元へと届けた。

「はい、……じゃあね」

 手渡した瞬間、悲しそうな目をした宵が捨て犬みたいに見えて、見ていられずに目を背け待っている碧の元に走り出す。
 ごめんね、今はこれ以上碧を怒らせたくない。

 早足で歩き出す碧の歩幅に合わせるのは、息が切れる。
 ほんの一年前まで変わらなかった私たちの身長差がこんな時に思い知らされるのだ。
 いい加減に怒るの止めてよ。
 確かに私が悪かったとは思うよ。
 隙を見せないように、ずっと碧が言っていたことを、何となく大丈夫だろうって油断して破ってしまったんだもの。
 だけど、自分が悪いと思ってはいるけれど、そんな風に冷たく突き放すような碧の背中をずっと見ているのが辛い。
 必死にそれを追いかけているのも何だか悲しくなって私は不意に足を止めた。
 碧はそれから二、三歩歩いてすぐに気づいたように私を振り返る。

「ズルイよ、紅は」

 私の元に戻って来た碧は、

「前はそんな風に泣いたりしなかったくせに」

 伸びて来た指が私の目尻をなぞっている。
 
「だって碧が」
「俺が?」
「置いてくから」

 何を、私ってば言ってるんだろう。
 子供みたいなこと言っている。
 こんなんで泣くなんて恥ずかしいのに、涙が止まらない……。

「……、置いてなんかいけないよ」

 行こうと私の手を握り歩き出す碧の手を、ふりほどけないまま、泣きじゃくって、とうとう子供のように泣きじゃくった。
 そんな私に碧は何も言わず、繋いだ手を時折力強く握りしめて歩いてくれた。
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