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1巻
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2.ただいま、世界
私の遺骨を抱えた父と、全てを終え魂が抜けてしまったような母を支えた春陽が、一台のタクシーに乗る。
その後ろにもう一台、祖父母を乗せたタクシーが連なって、自宅へと戻った。
私は最初に家に入った春陽に次いでリビングへと向かい、二人共同じように口を開けて、エアコンの送風口を見上げる。
エアコンは既についており、ゴオゴオと冷風を送っている。
一体、母は何日前からエアコンを付けっぱなしだったのだろう。
私のせいで気が動転し、エアコンを切ることも忘れていたのか。そう思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「夏月、どこに置いてあげようか」
父の問いかけに母は答えず、目は虚ろで肩を落としたままだ。
この家には仏壇がないため、私の遺骨をどこに置いたらいいのかと皆が困り果てていた。
本人は、どこでも構わない。むしろ、どこか綺麗な海にでも撒いてくれたらいいけど、そうもいかないだろうな。
「あゆみさん、なにか小さなテーブルはないかしら?」
「確か夏月の部屋に折り畳みのがあったよ。ちょっと待っててね、おばあちゃん」
祖母の声にすら反応できずにいる母の代わりに、二階にある私の部屋に春陽が向かう。
仕切りのない十二畳の洋室、その半分が私、もう半分が春陽の部屋だった。
成長したら仕切れるようになっている子供部屋は、今も繋がったままだ。
ベッドと机以外、ほぼなにも置かれていない春陽の部屋。
それと合わせ鏡のような配置の私の部屋の隅に、小さな折り畳みテーブルがあるのを春陽は覚えていたようだ。
『ごめんね、春陽に面倒かけちゃって』
折り畳みテーブルを手に、部屋を出ようとするその背中に声をかけると、なぜか春陽は立ち止まった。
ゆっくり部屋を見渡して、首を傾げてからまた階下へと歩き出す。
「ありがとう、はるちゃん。それじゃあ、ここに置いてちょうだい」
祖母の指示で、リビングの隣の和室に春陽がテーブルを広げた。
「お仏壇が来るまでは、ここでいいかね? なっちゃん」
父の手から受け取った骨箱を、祖母は大事にそうにギュッと抱きしめてから、祖父に手渡す。
「なっちゃん、なんでこんなに軽くなっちゃったかなあ」
じいちゃん、ごめんね。ばあちゃん、ごめんね。
祖父は、顔をくしゃくしゃにして骨箱を抱きしめて、まるで私の頭を撫でるようにしてから、そっとテーブルの上に置く。
ああ、私ってば、愛されていたんだね。今更ながら実感する目の前の光景に目頭が熱くなる。
私もじいちゃんとばあちゃんのことが、大好きだったよ。暖かくて一緒にいると安心できる大切な家族だから。
二人の涙を見ていたら、自分が死んだ事実を嫌というほど思い知らされたと同時に、目から流れ落ちるものに驚いた。
涙って死んでも出るものなんだ。
嫌だなあ、ボロボロ落ちてきたら全然止まらない。止めようがない。
誰にも見られないのをいいことに、鼻水を垂らしながらグズグズと泣いた。
どこからか父が花瓶を見つけてきて、斎場からいただいてきた仏花を供え、私の好きそうなお菓子を遺影の前に置いてくれる。
その間、母はリビングのソファーに埋もれるように腰かけているだけ。その様子を見て、どうしていいやらと皆が困惑していた。
「春陽、ちょっといいかな?」
父が立ち上がり、春陽についてくるように廊下へと促す。思わず私も一緒にくっついて話を聞きに行く。
廊下に出るとドアを閉め、母に聞こえないような小さな声で父は春陽に言った。
「お父さんね、じいちゃんや、ばあちゃんを送りがてら、今日の夜の新幹線で長野に帰ろうと思っているんだ」
「え?」
『はあ?』
ちょっと待ってよ、お父さん! それはあまりに、ひどくない?
いくらとっくの昔に離婚しているからって、あんなに弱ってるお母さんを見捨てて帰るの?
わかるけどね? じいちゃんやばあちゃんは花農家だから、長い間家を空けておくことができないのは仕方がないもの。
ましてや、二人はもうお母さんとは他人となってしまっているし。
でも、お父さんまでだなんて!
いくら離婚して私の親権がお母さんにあったとしてもよ? 私だって春陽と同じお父さんの娘であることに変わりはないのに。
葬儀を終わらせました、だから帰りますだなんて……。
父の話がなんだか呆気なさ過ぎて、スッと涙が引っ込んでしまった。
違う意味で悲しみに打ちひしがれそうになった私の耳に、ハッキリと春陽の声が届く。
「お父さんだけ帰ればいいじゃない。私は、東京に残る。あんなに弱っているお母さんを一人にはしておけない」
春陽が怒っていた。
私と全く同じ感情だというのが伝わってくる。
それを見て、違う、違うと父は焦ったように首を横に振った。
「明日の朝一の新幹線で、お父さんもすぐに東京に戻って来るつもりだよ。しばらくお母さんについていようって思っているんだ。ばあちゃんたちも、それがいいだろうと。そのためには仕事の道具や、着替えも必要だから一度取りに帰らないといけない。だから今晩一晩だけでも、春陽にはお母さんの側に残っていてほしい、そう思って相談しようとしていたんだ。今のお母さんを一人にしてはおけないからね」
……だよね、そうだよね、さすがは、私のお父さん! 春陽もありがとう!
「お父さん……私も夏休みの間だけでもいいから、お母さんの側にいたい。いい?」
「うん、そうだね。そうしよう、春陽」
春陽の目からまた新たな涙が流れ出す。
いつの間にかじいちゃんたちも廊下に出てきて、泣いている春陽を交互に抱きしめている。
たった一人しかいなくなってしまった孫を大切に想っているのだ。
「お母さんのこと、よろしく頼むね」
「はるちゃん、近い内、必ずまた来るね。お母さんのこと見ていてあげて」
三人とも、春陽に繰り返し母のことを託して一度長野へと戻って行った。
じいちゃんとばあちゃんの顔を見るのは、もしかしたらこれが最後なのかな?
もっといっぱい話したかったな。
こんな風に、死んだら後悔することがいっぱいあるってこと。
それがこの先にたくさん待っているなんて、この時の私はまだ甘く考えていたと思う。
人間、死んだら後悔することだらけだった。
「お母さん、お茶でも淹れようか? お風呂は、入れる?」
気遣った春陽が声をかけると、ぼんやりとしていた母が視線だけを上げた。
その顔はまるで病人みたいに青白い。私のせいで、たった数日で老け込んでしまった母は、春陽の言葉に首を横に振った。
「大丈夫、少し疲れたから先に休むわ」
母は一人でよろよろと立ち上がり、壁伝いに寝室に向かっていく。
支えようとして、後を追おうとした春陽に向かい、母は背中を向けたまま、つぶやいた。
「おやすみ、夏月も疲れたでしょ。早く休みなさいよ」
春陽はその言葉に立ちすくみ、母がリビングから出ていくのを見守って、そっと目尻を擦り上げている。
さっきの言葉は、完璧に母の失言だった。
いくら普段は私と二人暮らしだったからって、春陽の名前を呼び間違うなんて。
春陽は相当ショックを受けているようだった。
お風呂に入って湯船の中でも、膝を丸めてしばらく泣いていた春陽に、なにも声をかけてあげられない。もどかしい。
たとえ、私が生きていたとしても、今かけるべき言葉は、なかなか見つからない。
ドライヤーで髪を乾かした春陽は、音を立てて母を起こさないように静かに二階へ上がる。
十二畳の部屋に二つあるドア。春陽は、自分の部屋側のドアから入ると、壁にかかるリモコンで真っ暗な部屋の左半分に明かりを灯した。
小さなため息をついた春陽は、窓辺に向かって歩き出す。
部屋左側のレースカーテンが引かれたベランダに繋がる窓。隙間から外を覗いた後、春陽はすぐに厚手のカーテンを閉じる。
同様に、対になっている右の私の部屋の窓にも厚手のカーテンも引いてから、二つの部屋の真ん中にセットされている大きなエアコンのスイッチを入れた。
ブオンと無機質な音を立て、エアコンの送風口が開き、冷たい風が部屋の中に広がっていく。
八月五日の朝、この二つの窓の厚手のカーテンを開けたのも、エアコンをオフにしたのも私だ。
四日間、レースのカーテンのままだったのだろうこの部屋。次に厚手のカーテンを引くことになったのも、エアコンをつけることになったのも、春陽になるなんて思わなかったよね。
春陽は自分のベッドに腰かけながら、スマホを手にしていた。
中一の時に父に買ってもらった私とお揃いのスマホ。春陽のは白で、私が選んだのは黒だった。
一体、なにを見ているの?
少しの申し訳なさより興味が勝り、画面に浮かぶ春陽宛てのメッセージを覗いてしまった。
長野に住んでいるのだろう春陽の友達からのお悔やみの言葉や、父からの【もうすぐ長野駅に着くよ、お母さんはどう?】というメッセージが上の方にあった。
春陽はそれらに返事をせずに、画面を上にスクロールしながら、夏休みはじめに届いたメッセージを押した。
それは私とのやり取りだった。
【春陽、元気? お盆になったら、長野に行くね】
行ってもいい? じゃないのは、私にとって長野が第二の故郷だからだ。
春陽にとって、東京は第二の故郷で、ここにも部屋があるように、長野には私の個室がちゃんとあった。
春休みと秋の連休は春陽が東京に来て、夏休みと正月は私が長野に行っていた。
それは私たち家族が離れて暮らすようになった八年前、小学校二年生の頃からの変わらぬルーティーンだった。
だけど、そのルーティーンは昨年春、春陽が東京に来たのを最後に途切れる。
去年の夏、いつものように長野に行くはずだった私は、『忙しくて』とドタキャンをした。
受験生だった春陽は、秋の連休中、塾の模擬試験があって東京に来られなかった。
そして今年の正月休みも、『春陽の勉強の邪魔したくないから』と、私は長野に行かず、春休みは高校入学のための準備で春陽は東京に来なかった。
色々と理由をつけて、私たちはお互いを避けていたのだと思う。
「一体、なにがあったの? 夏月……」
春陽の部屋の灯りで、薄ぼんやりと照らされた私の部屋。手がかりを探すように足を踏み入れてくる春陽。
鏡像になるように置かれた机とベッド以外は、私の所有物で溢れており、好きな小説や漫画が、無造作にカラーボックスに並べられていた。
掃除をしたのは四日前、いやそれ以上前かもしれない。
恥ずかしながら、いつ脱ぎ散らかしたのかわからない服やパジャマがベッドの足元に落ちている。
ゴミ箱には、お菓子の袋や空のペットボトルが半分ほど溜まっていた。
春陽はそれを眺めて困ったような顔をしている。
『明日、片づけてあげよう』、きっとそう思っているのだろう。
双子だというのに私はいつも大雑把で、春陽は几帳面だから、東京に来る度に部屋を片付けてくれていた。
部屋中を見渡していた春陽が、小さく「あっ」とつぶやき、目を留めたもの。
隣同士並べて置かれている私と春陽の机。
私の机の上には、小さなノートパソコンと両端には先日買ったばかりの録音機材。
更に横に並んだ春陽の机の上には、電子ピアノを置いていた。
春陽と会っていない間に始めた私の趣味、見たことのない機材に驚いているみたい。
春陽はピアノのキーボードにそっと触れて首を傾げている。
鍵盤を叩いても音がしないことを不思議に思っているのだろうけれど、電源が入ってないから鳴るわけなどない。
その内、春陽はなにを思ったのか、あちこち触り始める。
待って、春陽! 触らないで、お願い!
音量ボタンを長押ししたり、そうかと思えば全然関係ないボタンを乱打したり、春陽の行動にザワザワと心が騒ぐ。
止めて、本当に止めて! だって春陽ってば!!
『春陽ってば、機械音痴なんだから、勝手に触らないでよ』
その瞬間、春陽はピタリと動きを止めて、まるでカラクリ人形みたいにギギギッと硬い動きでこちらを振り返った。
「夏月……?」
不安げに私の名前を呼ぶ春陽と目が合う。
まさか、もしかして、私のこと、見えてる? そんなわけ……。
「うそ、夏月……? なんで……?」
振り絞るように出した春陽の声は、掠れており震えていた。
それから力なくペタリと床に座り込むと、口元を押さえて震えながら確実に私を見上げている。
春陽には、私が見えているの?
驚きで叫んでしまわぬように必死に堪えている春陽は、本当に怖がりなのだ。
本当ならば悲鳴をあげて逃げ出したいだろうに、相手が私だから我慢しているのだろう。
いくら双子だって、死んだ人間が目の前にいることに、驚かないわけがない。
さて、こういう時はどうしたらこの凍り付いた雰囲気を脱出できるだろうか。
うらめしやー、なんてふざけてみせたら、春陽は気絶しかねない。
ンンッと一つ咳払いしてから、
『そんなに驚かれたら、傷つくんですけど?』
と、極力明るく声をかけた。
震えていた春陽の目が、驚きで丸くなる。
『春陽、元気だった?』
生前となんら変わらない、久々に会った時の春陽への挨拶。
すると泣き出しそうに眉間に皺をよせ、下唇を突き出した春陽が私を睨み上げた。
「……元気なわけない! 夏月、これってなんの冗談なの?」
『冗談って?』
「どこかに隠れてホログラムで写しているの? ねえ、ちゃんと出てきてよ。私が怖いの苦手だって知っているでしょ」
『いや、出るって? あ、ホラ、こうして化けて出てみたり?』
「ふざけないで! 本当は死んだなんて嘘なんでしょ? どこかに隠れてるんでしょ?」
『そんなわけないでしょ! 春陽だって見たはずだよ? 私の実体が燃えちゃったのも! お骨も拾ってくれてたし』
笑わせようと思った私の気遣いは、春陽の逆鱗に触れたようで、更に怒りだした。
「そんなブラックジョーク、絶対笑えないから! なにも面白くなんかない! 燃えちゃったとか、お骨とか軽く言わないでくれる? お母さんもお父さんも、おばあちゃんやおじいちゃんだって、夏月が死んでどれだけ悲しいかわかってるの?」
春陽の泣き顔に、胸が痛んだ。
わかってる、わかってるよ。
皆、泣いてくれていた。私の死を悲しんでいたのも、この目でずっと見ていたよ、でもさ……?
『でも仕方なくない? 死んじゃったんでしょ、私』
私の言葉に頭を抱えた春陽の前に、座り込む。
春陽は半透明になった私の身体を上から下まで眺めて、ため息をついた。
「夏月……なんで死んだの?」
『階段から、落ちたみたい』
まあ、警察に聞いた話によるとだけど。
「だから、どうして落ちたのかって聞いてるの」
『それって、どうしても話さなきゃいけない?』
「言いたくないってこと……、もしかして夏月は」
『私は?』
春陽の視線がじいっと私を捉えている。その目は、私の心の中をしっかりと見つめようとしていた。
なんともいえぬ居心地の悪さに苦笑し、それでも答えは一つだけだから、勿体ぶってみた。
『残念だけど、なにも覚えてないの』
小さく舌を出しおどけてみせたら、春陽の怒りに更に火をつけてしまったようだ。
「覚えてないって、おかしいでしょ? 自分のことなのに」
『多分、頭を打ったからじゃないかな? 強く打って頭が割れた拍子にショックで全部忘れちゃった、とか』
そんな都合のいい話があるのか、と睨んでくるけど、私だってわからない。
なぜあの場所にいたのか、どうして階段から落ちたのか。
「じゃあ、スマホは? どこにあるの?」
『さあ?』
「え?」
『十九時頃に、時間を確認したのよ。電池残量がほぼなくて、後数分で落ちるだろうなって、そこまでは覚えてるの。その後、傘を買った時にスマホで決済したし』
「どこで確認したの?」
『高校の近くのコンビニ。私のスマホのGPS状況を辿ればわかるだろうし、そこまでは警察だって調べてるんじゃない? だって不審死って言うんでしょ? 私みたいな、よくわからない死に方したら』
湿っぽくならないように、努めて明るく笑ってみせたら、春陽の目から大粒の涙が溢れ出す。
「……そんな自虐めいた言い方しないでよ、なっちゃんってば……。悲しくなる」
『やだなあ、もう。泣かないでよ、はるちゃん。私まで悲しくなっちゃうし』
「だって、なっちゃんがバカみたいな冗談言うから」
『バカみたいは余計だよ、本当のことだし。私は、死んだの』
「そんなの認めない」
しゃくりあげて泣き始めた春陽の姿がボヤけるのは、私も泣いているからだろう。
お互いのことを『ちゃん』付けで呼び合うのは、何年ぶりだろう。
なんだか、小さい頃に戻った気分だ。
しばらく泣きじゃくっていた春陽のお腹から、突然グウという音が聞こえた。
このシリアスなシーンに不釣り合いな音に、私がクスクス笑ったら、
「仕方ないでしょ、誰かさんのせいで食欲わかなかったんだし」
と、春陽は口を尖らせている。
『春陽、私の机の引き出し、三段目開けてみて』
「ここ?」
最下段の大きな引き出しを開けたら、中にはオヤツがいっぱい詰まっている。
私の夜中のお供たちだ。
『好きなの食べてもいいよ。あ、お腹を満たすなら、ナッツバーがいいかも……って、春陽はナッツも駄目だっけ?』
「大丈夫、ナッツは平気」
アレルギー多め体質の春陽だからと心配したけれど、よかった。
春陽はナッツバーにかじりつくと、ようやく少しだけ笑った。
「おいしい……」
『でしょ。夜中お腹が減った時は、いつもこれで満たしてたの。集中力も高まる栄養素が入っているし』
「集中力?」
『あ、うん、定期テストの』
しらじらしいウソは、春陽に見抜かれている気がした。
ふうん? と、私の目の奥を食い入るように見つめた春陽は、
「ねえ、最近の夏月のこと、色々教えて? 聞きたい」
と、真剣な顔で尋ねてくる。
『えー? 聞いてもつまんないよ、きっと』
「つまらなくなんかない。……、ごめんね、夏月」
『なにが?』
「だって、私のせいでしょ? 夏月がずっと長野に来なかったのって」
――夏月はいいよね――
あの日の春陽の悲しそうな笑顔を思い出すと、チクリと胸が痛む。
私の遺骨を抱えた父と、全てを終え魂が抜けてしまったような母を支えた春陽が、一台のタクシーに乗る。
その後ろにもう一台、祖父母を乗せたタクシーが連なって、自宅へと戻った。
私は最初に家に入った春陽に次いでリビングへと向かい、二人共同じように口を開けて、エアコンの送風口を見上げる。
エアコンは既についており、ゴオゴオと冷風を送っている。
一体、母は何日前からエアコンを付けっぱなしだったのだろう。
私のせいで気が動転し、エアコンを切ることも忘れていたのか。そう思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「夏月、どこに置いてあげようか」
父の問いかけに母は答えず、目は虚ろで肩を落としたままだ。
この家には仏壇がないため、私の遺骨をどこに置いたらいいのかと皆が困り果てていた。
本人は、どこでも構わない。むしろ、どこか綺麗な海にでも撒いてくれたらいいけど、そうもいかないだろうな。
「あゆみさん、なにか小さなテーブルはないかしら?」
「確か夏月の部屋に折り畳みのがあったよ。ちょっと待っててね、おばあちゃん」
祖母の声にすら反応できずにいる母の代わりに、二階にある私の部屋に春陽が向かう。
仕切りのない十二畳の洋室、その半分が私、もう半分が春陽の部屋だった。
成長したら仕切れるようになっている子供部屋は、今も繋がったままだ。
ベッドと机以外、ほぼなにも置かれていない春陽の部屋。
それと合わせ鏡のような配置の私の部屋の隅に、小さな折り畳みテーブルがあるのを春陽は覚えていたようだ。
『ごめんね、春陽に面倒かけちゃって』
折り畳みテーブルを手に、部屋を出ようとするその背中に声をかけると、なぜか春陽は立ち止まった。
ゆっくり部屋を見渡して、首を傾げてからまた階下へと歩き出す。
「ありがとう、はるちゃん。それじゃあ、ここに置いてちょうだい」
祖母の指示で、リビングの隣の和室に春陽がテーブルを広げた。
「お仏壇が来るまでは、ここでいいかね? なっちゃん」
父の手から受け取った骨箱を、祖母は大事にそうにギュッと抱きしめてから、祖父に手渡す。
「なっちゃん、なんでこんなに軽くなっちゃったかなあ」
じいちゃん、ごめんね。ばあちゃん、ごめんね。
祖父は、顔をくしゃくしゃにして骨箱を抱きしめて、まるで私の頭を撫でるようにしてから、そっとテーブルの上に置く。
ああ、私ってば、愛されていたんだね。今更ながら実感する目の前の光景に目頭が熱くなる。
私もじいちゃんとばあちゃんのことが、大好きだったよ。暖かくて一緒にいると安心できる大切な家族だから。
二人の涙を見ていたら、自分が死んだ事実を嫌というほど思い知らされたと同時に、目から流れ落ちるものに驚いた。
涙って死んでも出るものなんだ。
嫌だなあ、ボロボロ落ちてきたら全然止まらない。止めようがない。
誰にも見られないのをいいことに、鼻水を垂らしながらグズグズと泣いた。
どこからか父が花瓶を見つけてきて、斎場からいただいてきた仏花を供え、私の好きそうなお菓子を遺影の前に置いてくれる。
その間、母はリビングのソファーに埋もれるように腰かけているだけ。その様子を見て、どうしていいやらと皆が困惑していた。
「春陽、ちょっといいかな?」
父が立ち上がり、春陽についてくるように廊下へと促す。思わず私も一緒にくっついて話を聞きに行く。
廊下に出るとドアを閉め、母に聞こえないような小さな声で父は春陽に言った。
「お父さんね、じいちゃんや、ばあちゃんを送りがてら、今日の夜の新幹線で長野に帰ろうと思っているんだ」
「え?」
『はあ?』
ちょっと待ってよ、お父さん! それはあまりに、ひどくない?
いくらとっくの昔に離婚しているからって、あんなに弱ってるお母さんを見捨てて帰るの?
わかるけどね? じいちゃんやばあちゃんは花農家だから、長い間家を空けておくことができないのは仕方がないもの。
ましてや、二人はもうお母さんとは他人となってしまっているし。
でも、お父さんまでだなんて!
いくら離婚して私の親権がお母さんにあったとしてもよ? 私だって春陽と同じお父さんの娘であることに変わりはないのに。
葬儀を終わらせました、だから帰りますだなんて……。
父の話がなんだか呆気なさ過ぎて、スッと涙が引っ込んでしまった。
違う意味で悲しみに打ちひしがれそうになった私の耳に、ハッキリと春陽の声が届く。
「お父さんだけ帰ればいいじゃない。私は、東京に残る。あんなに弱っているお母さんを一人にはしておけない」
春陽が怒っていた。
私と全く同じ感情だというのが伝わってくる。
それを見て、違う、違うと父は焦ったように首を横に振った。
「明日の朝一の新幹線で、お父さんもすぐに東京に戻って来るつもりだよ。しばらくお母さんについていようって思っているんだ。ばあちゃんたちも、それがいいだろうと。そのためには仕事の道具や、着替えも必要だから一度取りに帰らないといけない。だから今晩一晩だけでも、春陽にはお母さんの側に残っていてほしい、そう思って相談しようとしていたんだ。今のお母さんを一人にしてはおけないからね」
……だよね、そうだよね、さすがは、私のお父さん! 春陽もありがとう!
「お父さん……私も夏休みの間だけでもいいから、お母さんの側にいたい。いい?」
「うん、そうだね。そうしよう、春陽」
春陽の目からまた新たな涙が流れ出す。
いつの間にかじいちゃんたちも廊下に出てきて、泣いている春陽を交互に抱きしめている。
たった一人しかいなくなってしまった孫を大切に想っているのだ。
「お母さんのこと、よろしく頼むね」
「はるちゃん、近い内、必ずまた来るね。お母さんのこと見ていてあげて」
三人とも、春陽に繰り返し母のことを託して一度長野へと戻って行った。
じいちゃんとばあちゃんの顔を見るのは、もしかしたらこれが最後なのかな?
もっといっぱい話したかったな。
こんな風に、死んだら後悔することがいっぱいあるってこと。
それがこの先にたくさん待っているなんて、この時の私はまだ甘く考えていたと思う。
人間、死んだら後悔することだらけだった。
「お母さん、お茶でも淹れようか? お風呂は、入れる?」
気遣った春陽が声をかけると、ぼんやりとしていた母が視線だけを上げた。
その顔はまるで病人みたいに青白い。私のせいで、たった数日で老け込んでしまった母は、春陽の言葉に首を横に振った。
「大丈夫、少し疲れたから先に休むわ」
母は一人でよろよろと立ち上がり、壁伝いに寝室に向かっていく。
支えようとして、後を追おうとした春陽に向かい、母は背中を向けたまま、つぶやいた。
「おやすみ、夏月も疲れたでしょ。早く休みなさいよ」
春陽はその言葉に立ちすくみ、母がリビングから出ていくのを見守って、そっと目尻を擦り上げている。
さっきの言葉は、完璧に母の失言だった。
いくら普段は私と二人暮らしだったからって、春陽の名前を呼び間違うなんて。
春陽は相当ショックを受けているようだった。
お風呂に入って湯船の中でも、膝を丸めてしばらく泣いていた春陽に、なにも声をかけてあげられない。もどかしい。
たとえ、私が生きていたとしても、今かけるべき言葉は、なかなか見つからない。
ドライヤーで髪を乾かした春陽は、音を立てて母を起こさないように静かに二階へ上がる。
十二畳の部屋に二つあるドア。春陽は、自分の部屋側のドアから入ると、壁にかかるリモコンで真っ暗な部屋の左半分に明かりを灯した。
小さなため息をついた春陽は、窓辺に向かって歩き出す。
部屋左側のレースカーテンが引かれたベランダに繋がる窓。隙間から外を覗いた後、春陽はすぐに厚手のカーテンを閉じる。
同様に、対になっている右の私の部屋の窓にも厚手のカーテンも引いてから、二つの部屋の真ん中にセットされている大きなエアコンのスイッチを入れた。
ブオンと無機質な音を立て、エアコンの送風口が開き、冷たい風が部屋の中に広がっていく。
八月五日の朝、この二つの窓の厚手のカーテンを開けたのも、エアコンをオフにしたのも私だ。
四日間、レースのカーテンのままだったのだろうこの部屋。次に厚手のカーテンを引くことになったのも、エアコンをつけることになったのも、春陽になるなんて思わなかったよね。
春陽は自分のベッドに腰かけながら、スマホを手にしていた。
中一の時に父に買ってもらった私とお揃いのスマホ。春陽のは白で、私が選んだのは黒だった。
一体、なにを見ているの?
少しの申し訳なさより興味が勝り、画面に浮かぶ春陽宛てのメッセージを覗いてしまった。
長野に住んでいるのだろう春陽の友達からのお悔やみの言葉や、父からの【もうすぐ長野駅に着くよ、お母さんはどう?】というメッセージが上の方にあった。
春陽はそれらに返事をせずに、画面を上にスクロールしながら、夏休みはじめに届いたメッセージを押した。
それは私とのやり取りだった。
【春陽、元気? お盆になったら、長野に行くね】
行ってもいい? じゃないのは、私にとって長野が第二の故郷だからだ。
春陽にとって、東京は第二の故郷で、ここにも部屋があるように、長野には私の個室がちゃんとあった。
春休みと秋の連休は春陽が東京に来て、夏休みと正月は私が長野に行っていた。
それは私たち家族が離れて暮らすようになった八年前、小学校二年生の頃からの変わらぬルーティーンだった。
だけど、そのルーティーンは昨年春、春陽が東京に来たのを最後に途切れる。
去年の夏、いつものように長野に行くはずだった私は、『忙しくて』とドタキャンをした。
受験生だった春陽は、秋の連休中、塾の模擬試験があって東京に来られなかった。
そして今年の正月休みも、『春陽の勉強の邪魔したくないから』と、私は長野に行かず、春休みは高校入学のための準備で春陽は東京に来なかった。
色々と理由をつけて、私たちはお互いを避けていたのだと思う。
「一体、なにがあったの? 夏月……」
春陽の部屋の灯りで、薄ぼんやりと照らされた私の部屋。手がかりを探すように足を踏み入れてくる春陽。
鏡像になるように置かれた机とベッド以外は、私の所有物で溢れており、好きな小説や漫画が、無造作にカラーボックスに並べられていた。
掃除をしたのは四日前、いやそれ以上前かもしれない。
恥ずかしながら、いつ脱ぎ散らかしたのかわからない服やパジャマがベッドの足元に落ちている。
ゴミ箱には、お菓子の袋や空のペットボトルが半分ほど溜まっていた。
春陽はそれを眺めて困ったような顔をしている。
『明日、片づけてあげよう』、きっとそう思っているのだろう。
双子だというのに私はいつも大雑把で、春陽は几帳面だから、東京に来る度に部屋を片付けてくれていた。
部屋中を見渡していた春陽が、小さく「あっ」とつぶやき、目を留めたもの。
隣同士並べて置かれている私と春陽の机。
私の机の上には、小さなノートパソコンと両端には先日買ったばかりの録音機材。
更に横に並んだ春陽の机の上には、電子ピアノを置いていた。
春陽と会っていない間に始めた私の趣味、見たことのない機材に驚いているみたい。
春陽はピアノのキーボードにそっと触れて首を傾げている。
鍵盤を叩いても音がしないことを不思議に思っているのだろうけれど、電源が入ってないから鳴るわけなどない。
その内、春陽はなにを思ったのか、あちこち触り始める。
待って、春陽! 触らないで、お願い!
音量ボタンを長押ししたり、そうかと思えば全然関係ないボタンを乱打したり、春陽の行動にザワザワと心が騒ぐ。
止めて、本当に止めて! だって春陽ってば!!
『春陽ってば、機械音痴なんだから、勝手に触らないでよ』
その瞬間、春陽はピタリと動きを止めて、まるでカラクリ人形みたいにギギギッと硬い動きでこちらを振り返った。
「夏月……?」
不安げに私の名前を呼ぶ春陽と目が合う。
まさか、もしかして、私のこと、見えてる? そんなわけ……。
「うそ、夏月……? なんで……?」
振り絞るように出した春陽の声は、掠れており震えていた。
それから力なくペタリと床に座り込むと、口元を押さえて震えながら確実に私を見上げている。
春陽には、私が見えているの?
驚きで叫んでしまわぬように必死に堪えている春陽は、本当に怖がりなのだ。
本当ならば悲鳴をあげて逃げ出したいだろうに、相手が私だから我慢しているのだろう。
いくら双子だって、死んだ人間が目の前にいることに、驚かないわけがない。
さて、こういう時はどうしたらこの凍り付いた雰囲気を脱出できるだろうか。
うらめしやー、なんてふざけてみせたら、春陽は気絶しかねない。
ンンッと一つ咳払いしてから、
『そんなに驚かれたら、傷つくんですけど?』
と、極力明るく声をかけた。
震えていた春陽の目が、驚きで丸くなる。
『春陽、元気だった?』
生前となんら変わらない、久々に会った時の春陽への挨拶。
すると泣き出しそうに眉間に皺をよせ、下唇を突き出した春陽が私を睨み上げた。
「……元気なわけない! 夏月、これってなんの冗談なの?」
『冗談って?』
「どこかに隠れてホログラムで写しているの? ねえ、ちゃんと出てきてよ。私が怖いの苦手だって知っているでしょ」
『いや、出るって? あ、ホラ、こうして化けて出てみたり?』
「ふざけないで! 本当は死んだなんて嘘なんでしょ? どこかに隠れてるんでしょ?」
『そんなわけないでしょ! 春陽だって見たはずだよ? 私の実体が燃えちゃったのも! お骨も拾ってくれてたし』
笑わせようと思った私の気遣いは、春陽の逆鱗に触れたようで、更に怒りだした。
「そんなブラックジョーク、絶対笑えないから! なにも面白くなんかない! 燃えちゃったとか、お骨とか軽く言わないでくれる? お母さんもお父さんも、おばあちゃんやおじいちゃんだって、夏月が死んでどれだけ悲しいかわかってるの?」
春陽の泣き顔に、胸が痛んだ。
わかってる、わかってるよ。
皆、泣いてくれていた。私の死を悲しんでいたのも、この目でずっと見ていたよ、でもさ……?
『でも仕方なくない? 死んじゃったんでしょ、私』
私の言葉に頭を抱えた春陽の前に、座り込む。
春陽は半透明になった私の身体を上から下まで眺めて、ため息をついた。
「夏月……なんで死んだの?」
『階段から、落ちたみたい』
まあ、警察に聞いた話によるとだけど。
「だから、どうして落ちたのかって聞いてるの」
『それって、どうしても話さなきゃいけない?』
「言いたくないってこと……、もしかして夏月は」
『私は?』
春陽の視線がじいっと私を捉えている。その目は、私の心の中をしっかりと見つめようとしていた。
なんともいえぬ居心地の悪さに苦笑し、それでも答えは一つだけだから、勿体ぶってみた。
『残念だけど、なにも覚えてないの』
小さく舌を出しおどけてみせたら、春陽の怒りに更に火をつけてしまったようだ。
「覚えてないって、おかしいでしょ? 自分のことなのに」
『多分、頭を打ったからじゃないかな? 強く打って頭が割れた拍子にショックで全部忘れちゃった、とか』
そんな都合のいい話があるのか、と睨んでくるけど、私だってわからない。
なぜあの場所にいたのか、どうして階段から落ちたのか。
「じゃあ、スマホは? どこにあるの?」
『さあ?』
「え?」
『十九時頃に、時間を確認したのよ。電池残量がほぼなくて、後数分で落ちるだろうなって、そこまでは覚えてるの。その後、傘を買った時にスマホで決済したし』
「どこで確認したの?」
『高校の近くのコンビニ。私のスマホのGPS状況を辿ればわかるだろうし、そこまでは警察だって調べてるんじゃない? だって不審死って言うんでしょ? 私みたいな、よくわからない死に方したら』
湿っぽくならないように、努めて明るく笑ってみせたら、春陽の目から大粒の涙が溢れ出す。
「……そんな自虐めいた言い方しないでよ、なっちゃんってば……。悲しくなる」
『やだなあ、もう。泣かないでよ、はるちゃん。私まで悲しくなっちゃうし』
「だって、なっちゃんがバカみたいな冗談言うから」
『バカみたいは余計だよ、本当のことだし。私は、死んだの』
「そんなの認めない」
しゃくりあげて泣き始めた春陽の姿がボヤけるのは、私も泣いているからだろう。
お互いのことを『ちゃん』付けで呼び合うのは、何年ぶりだろう。
なんだか、小さい頃に戻った気分だ。
しばらく泣きじゃくっていた春陽のお腹から、突然グウという音が聞こえた。
このシリアスなシーンに不釣り合いな音に、私がクスクス笑ったら、
「仕方ないでしょ、誰かさんのせいで食欲わかなかったんだし」
と、春陽は口を尖らせている。
『春陽、私の机の引き出し、三段目開けてみて』
「ここ?」
最下段の大きな引き出しを開けたら、中にはオヤツがいっぱい詰まっている。
私の夜中のお供たちだ。
『好きなの食べてもいいよ。あ、お腹を満たすなら、ナッツバーがいいかも……って、春陽はナッツも駄目だっけ?』
「大丈夫、ナッツは平気」
アレルギー多め体質の春陽だからと心配したけれど、よかった。
春陽はナッツバーにかじりつくと、ようやく少しだけ笑った。
「おいしい……」
『でしょ。夜中お腹が減った時は、いつもこれで満たしてたの。集中力も高まる栄養素が入っているし』
「集中力?」
『あ、うん、定期テストの』
しらじらしいウソは、春陽に見抜かれている気がした。
ふうん? と、私の目の奥を食い入るように見つめた春陽は、
「ねえ、最近の夏月のこと、色々教えて? 聞きたい」
と、真剣な顔で尋ねてくる。
『えー? 聞いてもつまんないよ、きっと』
「つまらなくなんかない。……、ごめんね、夏月」
『なにが?』
「だって、私のせいでしょ? 夏月がずっと長野に来なかったのって」
――夏月はいいよね――
あの日の春陽の悲しそうな笑顔を思い出すと、チクリと胸が痛む。
20
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