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第四章
86話
巨木をバックに陣を張った俺達に、まず攻撃を仕掛けてきたのは先頭の普通種だった。
その後ろから魔物達は普通種に対してガウッ!と何かしらの指示を出しながら自分達も突っ込んできていた。
俺はルーベンの指示通り、魔物に向けて照準を合わせて引き金を引いた。
ー ダダダダ ダダダダダダ ダダダ ー
魔物もやっと学習したようで、無闇矢鱈に突撃して来る訳ではなかった。
FN SCAR-Hの射線から逃れるかのように左右へ別れたり、近づくと見せかけて距離を取ったかと思えば反対側から別の魔物が一気に距離を詰めてくる。
それでもポニーサイズは的として狙いやすく、着実に数を減らしていく。
俺だけでなく皆の方にも魔物達は襲いかかっているが、こちらは俺に対しての動きとはまた違っていた。
武器の届く範囲が俺とは違うから狼も近づきやすいんだろう。
「うりゃ!」
「せい!」
「ガァウ!」
ルーベンの言ったように、盾持ちが狼の攻撃を上手く受け流してその後に槍で攻撃をして狼を倒している。
魔物は流石に一撃で倒すとはいかないようだが、少しずつダメージを蓄積させており、動きが悪くなっている奴もいる。
が、何分にも数が多すぎる。
時間はかかるが、このままいけば何とか凌げるか?
それとも皆の体力が尽きる方が早いか……。
狼達に奇襲を受けてからずっと戦い続けている。
皆の顔には疲労感が伺えるようになっていた。そろそろ体力の限界が近いかも知れない。
俺も攻撃の手は緩めず魔物に向けて引き金を引き続けた。
射線から距離を開けるためか、魔物達が少しずつ俺の前から遠退いていき、次第にスペースが開けてきた。
魔物の群れが左右に別れて2つの群れになった。
別れた群れへ対処するため、俺達も陣形を2つに分けることとなった。
「レオ、ルイス、ヴィクター、ドルテナはこっちだ!他の奴は向こうの群れを!」
ルーベンがすかさず指示を飛ばす。
俺は数の多い右の群れに加わればいいようだ。
最初の指示で魔物の対処をって言われていたんだからそうなるかな。
もう一つの群れは普通種が2匹と魔物が6頭だった。
あの数なら8人いれば何とか持ち堪えられそうだな。
さてと、こっちの数の多い方を頑張って倒しますかな。
俺は魔物を積極的に倒していく。
当初70匹程いた普通種は5匹まで数を減らしている。一方、魔物は少し数を減らしたが30数頭がまだ生き残っている。
狼達には焦りが出始めたようで、俺から距離を取ることを止めて接近してくることが多くなった。
そのお陰で魔物への銃弾を当てやすくなり、倒すスピードが上がっていく。
ー ダダダ ダダダダダダ ダダダダダダ ── ー
マガジンの弾を撃ち尽くすと、弾を装填するためにアイテムボックスへの出し入れをする。
幾度となくその行程を行っているうち、魔物達はその2~3秒のタイミングを見計らって飛びかかってくるようになり、何度となく詰め寄られた。
今も1m近くまで近づいた魔物へ、狙いもそこそこに引き金を引いたところだ。
「ハァハァ、ったく狼のくせに補給のタイミングを合わせるとか、止めてほしいわ……」
愚痴っていると、俺達とは別の群れと対峙していた方から悲鳴が上がった。
「きぁぁ!」
「グハッ!」
慌ててそちらへ振り向くと、皆がいたはずの場所に2頭の魔物がこっちを向いて立っていた。
その魔物の足元にはイレネとマイクが倒れていた。
マイクは魔物の足で体を押さえつけられており、イレネの方はマイクを押さえつけていない魔物の前で、気絶をしているのか動く気配がない。
「ッ!イレネ!」
フレディが妻のイレネを庇うように、倒れたイレネを凝視している魔物へ槍を向けて突っ込んでいく。
俺はマイクを踏みつけている魔物へ銃口を向けて、マガジンに残っていた全弾を叩き込む。
ー ダダダダダダ ー
銃口が自分に向けられたとわかった魔物は飛び退こうとしたが、至近距離から発砲された銃弾を避けることは出来ず、その体にFN SCAR-Hの弾を浴びて倒れた。
「フレディ!!」
誰かの叫び声を聞いてもう1頭の魔物へ視線を移すと、イレネだけでなくフレディまで倒れていた。
しかしフレディは直ぐに起き上がり、まだ倒れたままのイレネへ駆け寄って魔物に向けて槍を構えた。
それを鋭い眼差しで睨み付けている魔物だが、特に槍を気にした様子はなく、どこか余裕がある感じがする。
……なんだ?
魔物の様子に違和感を感じていたが、その余裕の訳を直ぐに知ることとなった。
マイクとイレネを助けようとホスエやベンハミン達も動き出そうとしたとき、残りの4頭の魔物が一斉に飛びかかってきて、他の皆は退かざるを得なくなった。
フレディを睨み付けていた魔物は、仲間が来ることがわかっていたから余裕だったようだ。
そして俺達は、自分達が戦っている立ち位置を見て動きを止めた。
巨木を背にして戦っていたはずが、いつの間にか巨木から離れた位置で戦っていたのだ。
どうやら魔物との戦闘に集中してしまい、少しずつ巨木から離れたようだ。
いや、もしかしたら魔物達に離されたのではないだろうか。
魔物が二手に分かれた事で、こちらが少し攻撃的になるようにして、タイミングを合わせて少しずつ引いていく。
それに俺達が引きづられて……。
ルーベンはランクCだ。ついつい前に出てしまったなんて初歩的なミスはしないだろうからな。
さてと、どうする?
360度どこからでも襲われる可能性が出てきたぞ。
こっちはまだ纏まっているからいいが、あっちはバラバラだ。
マイク、イレネ、フレディが、飛びかかってきた4頭の魔物のせいで取り残される形となっており、万事休すだ。
俺はFN SCAR-Hの弾を装填するために急いでアイテムボックスへ入れたその時、唯一立っているフレディに向かって2頭の魔物が左右から飛びかかった。
ルイスが残り僅かとなっている矢を連続で叩き込み、ハコボが槍を投げたお陰で1頭は退けたが、左から飛びかかった魔物はフレディへとその鋭い牙をむいた。
「左だ!避けろ!」
あの声はサイラスか?
だがフレディは避けずに槍を突き出した。
フレディは避けられなかったのだ。自分が魔物の攻撃を避ければ、後ろにいるイレネが殺される。あの鋭い牙の餌食となるのは確実だ。
「うおぉぉお!」
ー グサッ! ブシャ! ー
フレディの槍は、口をガッツリと開けて襲ってきた魔物の口内奥深くに突き刺さった。
そして狼のスピードとフレディの突きの早さの相乗効果により、口内に突き刺さった槍はそのまま脳髄を吹き飛ばしながら貫通した。
しかし魔物は頭から槍を生やしながらも襲ってきた勢いのまま口を閉じ、刺さった槍毎フレディの腕を食い千切った。
ー ブチッ! ー
「がぁぁぁああ!」
「フレディィィ!!」
アイテムボックスから取り出したFN SCAR-Hのレバーを引き、魔物へ照準を合わせて直ぐさま発砲。
ー ダダダダダダ ー
フレディの槍に脳を破壊され、俺の銃弾をしこたま受けた魔物は、フレディの左腕を食い千切ったまま、その場で息絶えた。
腕をなくしたフレディは、予備の武器として腰に差していた剣を抜き、ふらつきながらもイレネを守る位置に立ち、残った右腕1本で剣を構えた。
魔物がフレディ達に飛びかかってきた事により陣形が崩れ、バラバラに行動し始めた俺達を魔物達が見逃すわけがなく、生き残っている全ての魔物が今が勝機と言わんばかりに全頭が一斉に飛びかかってきた。
ー ガギィン! ー
「っぐ!」
「うぉりゃぁ!」
ー ダダダダ ダダダダダダ ── ー
「グゥオォォ!」
「ハコボ!」
「ぐがぁあ!!」
ルーベンの叫び声でハコボを見ると、足にガッツリと齧りつかれて引き倒されていた。
使い慣れた槍をフレディ援護のために手放したため、予備として持ってきていた剣で戦っていたハコボだが、槍使いの剣技など推して知るべしだ。
引き倒されたハコボへ別の魔物が口を開けて近づいていく。
俺もルーベンも何とかハコボの救援に回ろうとしたが、自分達の周りにいる魔物がそれを阻止してくる。
必死に周りの魔物を突破しようと引き金を引くがハコボまでの道が開けない。
ー ダダダダダダ ── ー
「ッ!!」
「ハコボォォ!!」
俺とルーベンが周りの魔物に苦戦している向こうで、足に噛みつかれて立ち上がれないハコボは必死に剣を振っていた。
しかし寝そべった状態で剣を振ったところで魔物達に当たるわけもなく、ハコボの首や胴体に魔物達は次々と鋭い牙を立てていった。
ハコボが次々と襲われている中、何とか纏わり付いている魔物を倒し終えた俺は、直ぐにハコボへ群がっている魔物へ銃口を向けて引き金を引く。
ー ダダダダダダ ── ー
群がっていた魔物のうち、2匹は倒したが後は避けられた。
大して狙いを付けずに撃ったから致し方ないか。
魔物達がいなくなった場所にはハコボが無残な姿で横たわっていた。
ハコボは金属製のハーフプレートアーマーを着ていたが、魔物と化した狼の牙にとって金属でもお構いなしのようだ。
他の皆も魔物の一斉攻撃に何とか耐えてはいるが、周りと連携が取れず各個撃破されようとしていた。
「バラバラに戦うな!フレディの周りに集まれ!ドルテナは周りの奴をフォローしろ!」
「はい!」
まず近くにいたルイス、その後にヴィクターをフォローする。
ー ダダダダダダダダダダ ダダダダダダ ー
「キャン!」
「悪い!助かった!」
「すまん!」
2人に追撃してくる魔物がいないことを確認して、最後にルーベンの周りにいる魔物を退ける。
ー ダダダダダダ ダダダダダダ ー
「ありがとよ!」
「はい」
ルーベンの後を追ってフレディの所まで移動しながら、他の仲間に付きまとっている魔物を倒していく。
ー ダダダダダダ ー
「フレディ。治療薬で止血しておけ」
「ごめん、兄さん」
ー ダダダ ー
「やられたのはマイクとイレネ、フレディとハコボと……サイラスか……」
俺は背中にルーベン達を庇いながら引き金を引き続けた。
生き残っているのは魔物8頭のみ。普通種は既に全滅している。
サイラスは少し離れた場所で倒れており、首から上は存在していなかった。
「ベンハミンさん!伏せて!」
ー ダダダダダダ ー
前足の一振りをベンハミンの盾に防がれ一瞬動きが止まったところへ銃弾を浴びせる。
……残り7頭。
「イレネは気を失っているだけか……」
アイテムボックス持ちの人が死ぬとアイテムボックス内の物は外へ出される。
だから死んでいるかどうかは周りに荷物が現れているかどうかで判断できる。
イレネの周りには何もなく、マイクとハコボ、サイラスの周りには荷物が現れている。
ルイスの放った矢を避けようと大きく飛んだ魔物の着地を狙って引き金を引く。
ー ダダダダダダダダダ ー
……残り6頭。
ホスエが魔物の前足を切り落とし、バランスを崩したところへヴィクターが剣を横凪にして後ろ足も切り落とした。
賺さずホスエが頭へ剣を突き刺そうとしたところへ、別の魔物が近づこうとしたが、FN SCAR-Hの銃弾を浴びて沈黙。
その間にホスエの剣が頭に突き刺さりその魔物もまた沈黙した。
……残り4頭。
倒れたままのイレネの側でフレディとルーベンが話しているのを狙った魔物は、ルーベンの盾で攻撃をあしらわれた。
「犬っころのくせにしつけぇんだよ!」
そう言って繰り出された剣は魔物の喉元深く突き刺さった。
ルーベンはその剣を両手で持ち、倒れた仲間の無念を晴らすかのように力一杯横振り抜き、魔物の首の半分を切り裂いた。
……残り3頭。
仲間が次々と倒され自分達だけとなった魔物は、踵を返して森の方へ一目散に駆けだした。
俺達の勝ちだ。
だが俺は逃がすつもりはなかった。
全速力で翔り遠退いていく魔物へ片膝立ちで銃を構えて照準を合わせ、引き金を引いた。
ー ダダダダ ダダダダ ダダダダダダ ー
一刻も早く森へ逃げるつもりだった魔物達は、回避行動を取る素振りも見せなかった。
そのお陰で狙いを外すことなく、森へ入る手前で仕留められた。
「……逃がす訳ねぇだろ」
逃亡を図った3頭の危険察知が消えたのを確かめて立ち上がった。
辺りには赤いシルエットはなく、ヒュペリト周辺で目撃されていた魔物の討伐が終了した事を示していた。
大きな犠牲を払うことになったが。
「……終わったのか?」
「そのようだな」
「はは、あははは」
魔物と普通種合わせて約100匹を相手にするという、信じられない状況から生き残った俺達は全員その場にへたり込んだ。
太陽はほぼ真上でギラギラと俺達を照らしていた。
その後ろから魔物達は普通種に対してガウッ!と何かしらの指示を出しながら自分達も突っ込んできていた。
俺はルーベンの指示通り、魔物に向けて照準を合わせて引き金を引いた。
ー ダダダダ ダダダダダダ ダダダ ー
魔物もやっと学習したようで、無闇矢鱈に突撃して来る訳ではなかった。
FN SCAR-Hの射線から逃れるかのように左右へ別れたり、近づくと見せかけて距離を取ったかと思えば反対側から別の魔物が一気に距離を詰めてくる。
それでもポニーサイズは的として狙いやすく、着実に数を減らしていく。
俺だけでなく皆の方にも魔物達は襲いかかっているが、こちらは俺に対しての動きとはまた違っていた。
武器の届く範囲が俺とは違うから狼も近づきやすいんだろう。
「うりゃ!」
「せい!」
「ガァウ!」
ルーベンの言ったように、盾持ちが狼の攻撃を上手く受け流してその後に槍で攻撃をして狼を倒している。
魔物は流石に一撃で倒すとはいかないようだが、少しずつダメージを蓄積させており、動きが悪くなっている奴もいる。
が、何分にも数が多すぎる。
時間はかかるが、このままいけば何とか凌げるか?
それとも皆の体力が尽きる方が早いか……。
狼達に奇襲を受けてからずっと戦い続けている。
皆の顔には疲労感が伺えるようになっていた。そろそろ体力の限界が近いかも知れない。
俺も攻撃の手は緩めず魔物に向けて引き金を引き続けた。
射線から距離を開けるためか、魔物達が少しずつ俺の前から遠退いていき、次第にスペースが開けてきた。
魔物の群れが左右に別れて2つの群れになった。
別れた群れへ対処するため、俺達も陣形を2つに分けることとなった。
「レオ、ルイス、ヴィクター、ドルテナはこっちだ!他の奴は向こうの群れを!」
ルーベンがすかさず指示を飛ばす。
俺は数の多い右の群れに加わればいいようだ。
最初の指示で魔物の対処をって言われていたんだからそうなるかな。
もう一つの群れは普通種が2匹と魔物が6頭だった。
あの数なら8人いれば何とか持ち堪えられそうだな。
さてと、こっちの数の多い方を頑張って倒しますかな。
俺は魔物を積極的に倒していく。
当初70匹程いた普通種は5匹まで数を減らしている。一方、魔物は少し数を減らしたが30数頭がまだ生き残っている。
狼達には焦りが出始めたようで、俺から距離を取ることを止めて接近してくることが多くなった。
そのお陰で魔物への銃弾を当てやすくなり、倒すスピードが上がっていく。
ー ダダダ ダダダダダダ ダダダダダダ ── ー
マガジンの弾を撃ち尽くすと、弾を装填するためにアイテムボックスへの出し入れをする。
幾度となくその行程を行っているうち、魔物達はその2~3秒のタイミングを見計らって飛びかかってくるようになり、何度となく詰め寄られた。
今も1m近くまで近づいた魔物へ、狙いもそこそこに引き金を引いたところだ。
「ハァハァ、ったく狼のくせに補給のタイミングを合わせるとか、止めてほしいわ……」
愚痴っていると、俺達とは別の群れと対峙していた方から悲鳴が上がった。
「きぁぁ!」
「グハッ!」
慌ててそちらへ振り向くと、皆がいたはずの場所に2頭の魔物がこっちを向いて立っていた。
その魔物の足元にはイレネとマイクが倒れていた。
マイクは魔物の足で体を押さえつけられており、イレネの方はマイクを押さえつけていない魔物の前で、気絶をしているのか動く気配がない。
「ッ!イレネ!」
フレディが妻のイレネを庇うように、倒れたイレネを凝視している魔物へ槍を向けて突っ込んでいく。
俺はマイクを踏みつけている魔物へ銃口を向けて、マガジンに残っていた全弾を叩き込む。
ー ダダダダダダ ー
銃口が自分に向けられたとわかった魔物は飛び退こうとしたが、至近距離から発砲された銃弾を避けることは出来ず、その体にFN SCAR-Hの弾を浴びて倒れた。
「フレディ!!」
誰かの叫び声を聞いてもう1頭の魔物へ視線を移すと、イレネだけでなくフレディまで倒れていた。
しかしフレディは直ぐに起き上がり、まだ倒れたままのイレネへ駆け寄って魔物に向けて槍を構えた。
それを鋭い眼差しで睨み付けている魔物だが、特に槍を気にした様子はなく、どこか余裕がある感じがする。
……なんだ?
魔物の様子に違和感を感じていたが、その余裕の訳を直ぐに知ることとなった。
マイクとイレネを助けようとホスエやベンハミン達も動き出そうとしたとき、残りの4頭の魔物が一斉に飛びかかってきて、他の皆は退かざるを得なくなった。
フレディを睨み付けていた魔物は、仲間が来ることがわかっていたから余裕だったようだ。
そして俺達は、自分達が戦っている立ち位置を見て動きを止めた。
巨木を背にして戦っていたはずが、いつの間にか巨木から離れた位置で戦っていたのだ。
どうやら魔物との戦闘に集中してしまい、少しずつ巨木から離れたようだ。
いや、もしかしたら魔物達に離されたのではないだろうか。
魔物が二手に分かれた事で、こちらが少し攻撃的になるようにして、タイミングを合わせて少しずつ引いていく。
それに俺達が引きづられて……。
ルーベンはランクCだ。ついつい前に出てしまったなんて初歩的なミスはしないだろうからな。
さてと、どうする?
360度どこからでも襲われる可能性が出てきたぞ。
こっちはまだ纏まっているからいいが、あっちはバラバラだ。
マイク、イレネ、フレディが、飛びかかってきた4頭の魔物のせいで取り残される形となっており、万事休すだ。
俺はFN SCAR-Hの弾を装填するために急いでアイテムボックスへ入れたその時、唯一立っているフレディに向かって2頭の魔物が左右から飛びかかった。
ルイスが残り僅かとなっている矢を連続で叩き込み、ハコボが槍を投げたお陰で1頭は退けたが、左から飛びかかった魔物はフレディへとその鋭い牙をむいた。
「左だ!避けろ!」
あの声はサイラスか?
だがフレディは避けずに槍を突き出した。
フレディは避けられなかったのだ。自分が魔物の攻撃を避ければ、後ろにいるイレネが殺される。あの鋭い牙の餌食となるのは確実だ。
「うおぉぉお!」
ー グサッ! ブシャ! ー
フレディの槍は、口をガッツリと開けて襲ってきた魔物の口内奥深くに突き刺さった。
そして狼のスピードとフレディの突きの早さの相乗効果により、口内に突き刺さった槍はそのまま脳髄を吹き飛ばしながら貫通した。
しかし魔物は頭から槍を生やしながらも襲ってきた勢いのまま口を閉じ、刺さった槍毎フレディの腕を食い千切った。
ー ブチッ! ー
「がぁぁぁああ!」
「フレディィィ!!」
アイテムボックスから取り出したFN SCAR-Hのレバーを引き、魔物へ照準を合わせて直ぐさま発砲。
ー ダダダダダダ ー
フレディの槍に脳を破壊され、俺の銃弾をしこたま受けた魔物は、フレディの左腕を食い千切ったまま、その場で息絶えた。
腕をなくしたフレディは、予備の武器として腰に差していた剣を抜き、ふらつきながらもイレネを守る位置に立ち、残った右腕1本で剣を構えた。
魔物がフレディ達に飛びかかってきた事により陣形が崩れ、バラバラに行動し始めた俺達を魔物達が見逃すわけがなく、生き残っている全ての魔物が今が勝機と言わんばかりに全頭が一斉に飛びかかってきた。
ー ガギィン! ー
「っぐ!」
「うぉりゃぁ!」
ー ダダダダ ダダダダダダ ── ー
「グゥオォォ!」
「ハコボ!」
「ぐがぁあ!!」
ルーベンの叫び声でハコボを見ると、足にガッツリと齧りつかれて引き倒されていた。
使い慣れた槍をフレディ援護のために手放したため、予備として持ってきていた剣で戦っていたハコボだが、槍使いの剣技など推して知るべしだ。
引き倒されたハコボへ別の魔物が口を開けて近づいていく。
俺もルーベンも何とかハコボの救援に回ろうとしたが、自分達の周りにいる魔物がそれを阻止してくる。
必死に周りの魔物を突破しようと引き金を引くがハコボまでの道が開けない。
ー ダダダダダダ ── ー
「ッ!!」
「ハコボォォ!!」
俺とルーベンが周りの魔物に苦戦している向こうで、足に噛みつかれて立ち上がれないハコボは必死に剣を振っていた。
しかし寝そべった状態で剣を振ったところで魔物達に当たるわけもなく、ハコボの首や胴体に魔物達は次々と鋭い牙を立てていった。
ハコボが次々と襲われている中、何とか纏わり付いている魔物を倒し終えた俺は、直ぐにハコボへ群がっている魔物へ銃口を向けて引き金を引く。
ー ダダダダダダ ── ー
群がっていた魔物のうち、2匹は倒したが後は避けられた。
大して狙いを付けずに撃ったから致し方ないか。
魔物達がいなくなった場所にはハコボが無残な姿で横たわっていた。
ハコボは金属製のハーフプレートアーマーを着ていたが、魔物と化した狼の牙にとって金属でもお構いなしのようだ。
他の皆も魔物の一斉攻撃に何とか耐えてはいるが、周りと連携が取れず各個撃破されようとしていた。
「バラバラに戦うな!フレディの周りに集まれ!ドルテナは周りの奴をフォローしろ!」
「はい!」
まず近くにいたルイス、その後にヴィクターをフォローする。
ー ダダダダダダダダダダ ダダダダダダ ー
「キャン!」
「悪い!助かった!」
「すまん!」
2人に追撃してくる魔物がいないことを確認して、最後にルーベンの周りにいる魔物を退ける。
ー ダダダダダダ ダダダダダダ ー
「ありがとよ!」
「はい」
ルーベンの後を追ってフレディの所まで移動しながら、他の仲間に付きまとっている魔物を倒していく。
ー ダダダダダダ ー
「フレディ。治療薬で止血しておけ」
「ごめん、兄さん」
ー ダダダ ー
「やられたのはマイクとイレネ、フレディとハコボと……サイラスか……」
俺は背中にルーベン達を庇いながら引き金を引き続けた。
生き残っているのは魔物8頭のみ。普通種は既に全滅している。
サイラスは少し離れた場所で倒れており、首から上は存在していなかった。
「ベンハミンさん!伏せて!」
ー ダダダダダダ ー
前足の一振りをベンハミンの盾に防がれ一瞬動きが止まったところへ銃弾を浴びせる。
……残り7頭。
「イレネは気を失っているだけか……」
アイテムボックス持ちの人が死ぬとアイテムボックス内の物は外へ出される。
だから死んでいるかどうかは周りに荷物が現れているかどうかで判断できる。
イレネの周りには何もなく、マイクとハコボ、サイラスの周りには荷物が現れている。
ルイスの放った矢を避けようと大きく飛んだ魔物の着地を狙って引き金を引く。
ー ダダダダダダダダダ ー
……残り6頭。
ホスエが魔物の前足を切り落とし、バランスを崩したところへヴィクターが剣を横凪にして後ろ足も切り落とした。
賺さずホスエが頭へ剣を突き刺そうとしたところへ、別の魔物が近づこうとしたが、FN SCAR-Hの銃弾を浴びて沈黙。
その間にホスエの剣が頭に突き刺さりその魔物もまた沈黙した。
……残り4頭。
倒れたままのイレネの側でフレディとルーベンが話しているのを狙った魔物は、ルーベンの盾で攻撃をあしらわれた。
「犬っころのくせにしつけぇんだよ!」
そう言って繰り出された剣は魔物の喉元深く突き刺さった。
ルーベンはその剣を両手で持ち、倒れた仲間の無念を晴らすかのように力一杯横振り抜き、魔物の首の半分を切り裂いた。
……残り3頭。
仲間が次々と倒され自分達だけとなった魔物は、踵を返して森の方へ一目散に駆けだした。
俺達の勝ちだ。
だが俺は逃がすつもりはなかった。
全速力で翔り遠退いていく魔物へ片膝立ちで銃を構えて照準を合わせ、引き金を引いた。
ー ダダダダ ダダダダ ダダダダダダ ー
一刻も早く森へ逃げるつもりだった魔物達は、回避行動を取る素振りも見せなかった。
そのお陰で狙いを外すことなく、森へ入る手前で仕留められた。
「……逃がす訳ねぇだろ」
逃亡を図った3頭の危険察知が消えたのを確かめて立ち上がった。
辺りには赤いシルエットはなく、ヒュペリト周辺で目撃されていた魔物の討伐が終了した事を示していた。
大きな犠牲を払うことになったが。
「……終わったのか?」
「そのようだな」
「はは、あははは」
魔物と普通種合わせて約100匹を相手にするという、信じられない状況から生き残った俺達は全員その場にへたり込んだ。
太陽はほぼ真上でギラギラと俺達を照らしていた。
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それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
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ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
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