異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~

霞草

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第五章

101話

「霧が晴れて来たぞ!」

 神様の力が消え、ルーベンの声が聞こえた頃には他の皆の姿も現れていた。
 皆が緊張する中、俺だけが緊張の糸が切れてしまい、ホケ~としていた。

「いたぞ!戦闘じゅ……な、なんだ?狼の子供?」
「あれがダンジョンのボス?」

 あぁ~。これどうやって説明したらいいんだよ……。

「イレネ!!」

 フェンリルの説明に悩んでいると、いきなりフレディが大声を上げて駆けだした。
 その先には氷塊があり、氷の中にはイレネが閉じ込められていた。
 イレネは意識がないようで、目を瞑っていた。
 皆、フェンリルを気にしながらもフレディに続いて走り出した。
 俺も皆に続いてイレネの元へ向かうと、フェンリルが俺について来て足元に座った。
 フェンリルが直ぐ側にいても誰も気にしていない様子を見ると、すんなりと受け入れて貰えそうな気がしてきた。

 さてと、フェンリルの件は今の所何とかなりそうだけど、目の前の氷漬けになっているイレネはどうしたものか。
 氷を壊していけばイレネを救出できるのか?いやいや、もし氷を壊しているときにイレネの体まで……。それはヤバいな。なら焚き火で氷を溶かすか。
 ん?いやまてよ。本来ならここにいたはずのボスが何らかのキーとなるんじゃないのか?そのボスは神様がどうにかしちゃったんだよな?もしかしたらフェンリルが何か知っているのかも?

「ねぇ、フェンリル。あの人を助けたいんだけど、何か知らない?」

 俺は足元のフェンリルにだけ聞こえるように小声で話しかけた。

『ここのダンジョンボスを倒すと解放されるようになっております。本来いるはずのダンジョンボスは神様が消されました』
「やっぱりそのパターンか。でもダンジョンボスいないんだよね?」
『はい。新しいダンジョンボスが呼び出されるまでには数日かかるはずです』

 ……ダンジョンボスはリポップするんだ。

「じゃぁ……それまで助けられないって事?」
『いえ、ここにいたダンジョンボスは神様が消されましたので討伐したと同じです。なので、あの氷塊に触れれば助けられます』
「ホントに!?」
『はい。でもご主人様がご心配なさらなくても大丈夫そうですよ』

 そう言ってフェンリルは氷塊の方へ顔を向けた。
 俺もつられて氷塊のへ目を向けると、ちょうどフレディが氷塊に手を触れるところだった。
 フレディが腫れ物に触るかのようにゆっくりと氷塊へ手を添えると、氷塊に触れたところから蜘蛛の巣状に亀裂が入り、氷塊が砕けた。
 氷塊の中にいたイレネは床に投げ出された。
 フレディが慌てて掛けより倒れているイレネを抱きかかえた。

「イレネ!目を開けてくれ。イレネ……」

 フレディの問いかけに反応はない。他の皆も掛けよりイレネを氷から遠ざける。
 ルーベンがイレネの口に治療薬を入れている。どうやら生きているようだ。よかった。
 イレネにマントを掛けて冷えている体を温める。

 イレネの救出で気が付かなかったが、いつの間にか壁の一角に門が出現していた。
 状況的にあれがダンジョンの出口なんだろう。
 イレネの方は皆がいて俺の入る余地はなさそうなので、俺はあの門を調べよう。
 門に近づくとその先には月明かりに照らされた草原が見える。なんとなくダンジョンコアの欠片を持っていた狼を倒した草原のような気がする。
 となるとやはりこの門はダンジョンの出口のようだ。

「フェンリル、あの門は直ぐになくなる?」
『ダンジョンの出口となるあの門は、出現から一日経過すると消滅いたします。その後、新たなダンジョンボスが呼び出されるまではこの場所へ入ることは不可能となります』

 と言うことは、この部屋は安全地帯となってるのか。
 念の為、入口となった扉が開くかどうかやってみたがびくともしなかった。

「ルーベンさん。あそこに出現した門がダンジョンの出口のようです。そして入口の扉は開く気配がありません。外は暗くなっているので恐らく夜です。ここで一夜を過ごすか、それとも外に出るか……どうします?」

 ルーベンは出口という言葉に反応して門の方へ近付き、外の様子を窺っている。

「よし、直ぐにダンジョンから出るぞ。この門がいつまであるのか分からんからな」

 本当は一日は消えないんだけど、それを教えると何で知っているのかって事になる。
 フェンリルに聞きました!とは言えないよね。そもそもフェンリルではなく子狼と思われているしね。

 誰かが出したシーツを担架代わりにして、まだ意識が戻らないイレネを持ち上げる。
 俺とルーベンが先に門をくぐり安全確認をする。
 やはりダンジョンコアの欠片を持っていた狼を倒した草原だった。
 周囲は危険察知スキルに反応なし。かなり離れたところにはあるが問題ないだろう。
 神様が言っていた通り、赤いシルエットの距離が感覚的に分かるようになっている。
 ルーベンは俺が頷くと、ダンジョン内で待っている皆へ出て来るように合図を送った。

 全員がダンジョンから出ると門がすっと消えてなくなったが、代わりに燈籠が立っていた。
 恐らくこれはダンジョンへの入口なのだろうが、今は確かめる気にはならない。

 イレネのために火をおこして野営の準備に取りかかる。
 既に太陽は沈み真っ暗になっているから、今が何時くらいなのかわからない。
 イレネはフレディに任せ、俺達は見張りを順番にやりながら朝を待つことになった。



◆◇◆◇◆◇


 翌日。

 結果的にダンジョンから出てきたのは夜が更けたばかりだったようで、夜が明けるまで結構休めた。
 朝御飯を食べてテントなどを片付け、これからの移動について話しているときにイレネの意識が戻った。
 特に怪我をしている様子はないが、多少足下がふらつくようだ。
 それでも急がなければ歩けそうなので、俺達はヒュペリトへ向けて移動を開始した。
 まずは、ヒュペリトを出て野営した場所を目指す。イレネ様子を見ながらその場所で野営するかどうかを決める。

「それで、そいつはどうするんだ?」

 俺の後ろを歩いているルイスが、俺の横を歩いているフェンリルを見ながら聞いてきた。

「懐いているようですし、このまま連れて帰ろうかなって……。ダメですかね?」
「子供とはいえ狼だからなぁ。ダンジョンから出られるって事は魔物ではないだろうが……ペットとして認識してもらえるかどうか」

 ルイスの話を聞いたからか、フェンリルが俺をジッと見つめている。
 子犬ならぬ子狼の可愛らしさに思わず抱き上げてしまった。
 その姿を見たルイスは「何とかなるかな?」と言っていた。
 フェンリルの可愛らしさで、アビーを筆頭にギルド職員の女性陣を味方に付けてギルドから国に認めさせよう。

『私の力で認めさせればよろしいのでは?』

 と、フェンリルは恐ろしいことを言ってくるが、それはやめてねとお願いしておいた。

 野営地に着いたのはお昼をだいぶ回った頃だった。
イレネの足取りも元に戻りつつあるが、ここからヒュペリトまでを半日で歩くのは難しい。
 今日はここで野営して、明日ヒュペリトを目指すことになった。

 野営地でヴィクターにフェンリルの事を相談したところ、たぶん大丈夫だろうということになった。
 その理由は、魔物ではない子供の狼など脅威にはならないからだそうだ。
 うん、もうフェンリルの事はずっと狼で押し通そう。

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