異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~

霞草

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第五章

102話

 朝早く野営地を立った俺達は、夕方までにヒュペリトに着くことができた。
 ヒュペリトに着いた頃にはイレネの体調も元に戻ったようだ。

 門では俺達が姿を見せたことでかなりビックリしていた。どうやら俺達は行方不明扱いとなり、冒険者ギルドから捜索隊も出たそうだ。
 でも捜索隊も俺達を見つけることができず、死亡したと思っているらしい。
 ギルド職員のヴィクターは、手紙をマホンの冒険者ギルドへ届けてもらうように、ヒュペリトの冒険者へ依頼していた。
 これで俺達がマホンへ着くより先に、冒険者ギルドへ生存していることを伝えられるだろう。
 今夜の宿は以前と同じ所になった。そしてイレネとフレディを宿へ残し、他の者達は例のお店へと向かう。
 フェンリルは宿でお留守番をしてもらう。帰ってきたら何か話があると言われたので、朝になるかも知れないと伝えた。
 今夜は今回の討伐依頼、というよりダンジョン攻略?脱出?の慰労会だ。実際にはマホンまで帰らないと依頼達成とはならないが、俺達も心のメンテナンスをそろそろしなければやってられないんだ。

 と言うことでやってまいりました。
 この店は2度目なので特に緊張もしないだろうと思っていたが、着飾って露出度の高い服を着ているバニーちゃんを見てしまうと無理なようだ。

 店員が好みを聞いてくるのでリアナをお願いしますというと、困った表情になった。
 既に別の客が?と思っているとそうではなく、もうこの店を辞めたというのだ。
 リアナがこの店で働かざるを得なくなったの知っていたので、その理由から考えても辞められるとは思えない。
 何かあったのか?と店員に聞くと一人の女性が声をかけてきた。

「あら?あなたリアナの相手をしてくれたお客様よね?」

 その女性はリアナを指導したと言っていた人だ。名前は忘れたけど……。

「はい!よくわかりましたね」
「若いお客様は多いけど、あなたほどではないから珍しかったのよ。それにリアナの唯一のお客様だったから特に覚えてたのよ」
「ん?唯一の客?えっと、どういうことですか?」

 リアナと出会ったのはもう何日も前の話だ。その間に1人も客を取らないと言うことはないだろう。
 リアナの見た目は十分可愛い。そんな女性に客が付かないとは思えない。
 俺が不思議がっていると、その女性がソファーに座りながら教えてくれた。
 この女性が俺に付くようだ。だがなぜルイスがニヤニヤしながらこっちを見てるんだ?あ、サムズアップなんかしてるぞ。
 そうだ、この前来たときはこの女性がルイスに付いてたんだった。
 ったく。ルイスの事をアビーにチクろうかな。

 そんなルイスは無視して話を聞いた。
 リアナと朝まで過ごした日。この店で働かざるを得なくなった理由の伯父は、リアナに支給された支度金を手に夜の街に繰り出していた。
 数軒の店をはしごした後に入った店で他の客とトラブルになり、更に店員も巻き込んでの喧嘩に発展した。
 伯父は丸腰の客と店員に向かって、持っていたナイフを取り出し斬りかかった。
 ちょうどその時、騒ぎを聞きつけてきた警備兵が店内に入ってきたが、ナイフを持った伯父はその警備兵にも斬りかかったところで、取り押さえられた。
 伯父が事情聴取を受けている間に警備兵が自宅を捜査しに行くと、顔に殴られたアザがある女の子を発見した。
 話を聞くと伯父に殴られたと。
 その女の子はリアナの妹で、姉の支度金で飲みに出かようとした伯父を止めようとした際に殴られたと警備兵に話た。
 姪への暴行、武器を取り出しての喧嘩、警備兵への攻撃の容疑で逮捕され、全てにおいて犯罪行為と認定された。
 これにより伯父は犯罪奴隷となり、強制労働に尽かされることとなった。
 伯父がいなくなったことでリアナがこの店で働く理由がなくなり辞めた。
 今は妹と一緒にドライフルーツを作っている。
 亡くなった父親もドライフルーツを作っており評判もよかった。
 その娘であるリアナも父親の手伝いをしていたこともあり、腕の心配はないようだ。
 しかし話をしてくれた女性からは、こういう店で働いていたリアナは周りから冷たい目で見られやすい。
 幸い?俺以外に抱かれてはいないが、そんなことは他人は考慮はしない。
 もし可能なら俺にもらってやって欲しいと……。
 なんだが予想していない方向に話しが行っているが、本人にその気がないのに俺がどうこうできるわけがない。
 一通り話を聞き終えたところで俺は店を出た。というか出された。話をしてくれた女性だけでなく、話しが聞こえていた皆からもリアナを訪ねに行けと言われた。

 教えてもらった場所は住宅街の一角にあった。
 ドアをノックすると家の中から返事が聞こえた。

「は~い、どちら様ですか?」
「あの、冒険者をやっているドルテナといいます。こちらにリアナさんがおられると聞いてき ── 」

 言い終わる前にドアがバン!と開き、立っているリアナと目が合った。
 するといきなりリアナが俺の胸に飛び込んできた。
 急展開についていけず、なされるがままの状態が、俺の胸に顔を埋めているリアナから嗚咽が聞こえてきた。

「リアナ?どうしたの?近所の人にいじめられたのか?」

 リアナは首を横に振る。

「何かあった?」
「っうくっ。……あなたが、行方不明だって。……捜索隊が探したけど見つからなかったって聞いて、私……もう会えないって思ってたから」

 そう言って顔を上げたリアナは、目を真っ赤にして泣いていた。
 そこまで心配してくれていたことに嬉しさを感じたが、可愛い顔が鼻水で台無しだよ、リアナ。
 いつまでもこのままって訳にはいかないので、リアナの両肩に手を置きゆっくりと引き離す。

「心配してくれてありがとう。そろそろ落ち着こうね。後ろにいるの妹さんでしょ?」

 家の中には妹さんがこちらの様子をじっと見ていた。
 
「それと、そちらの方々はどちらさんなのかな?」

 室内にはリアナの妹と思う女の子の他に、男が3人いた。
 1人は妹と向かい合うようにしてテーブルに座っているが、後の2人は座っている男の後ろに立っていた。
 見た感じ、1人は腕の立ちそうな男なので護衛だろうか。もう1人はあまり荒事には向いてなさそうだ。執事でもなさそうだけど。
 そんな3人と向かい合って座っている女の子は、よく見ると目を真っ赤にしており、先程まで泣いていたことを示している。
 そして気になるのは、テーブルの上には小さな麻袋が置いてあることだ。
 この部屋に漂う嫌な空気の事もあり、あの麻袋の中身が好意的な物ではない気がする。

「彼女は妹のラモーナよ。それから、彼は、えっと、その~」

 リアナが言いにくそうにしていると、その男は立ち上がり自分で自己紹介を始めた。

「私はマホンで奴隷商を営んでおりますコンスタンスと申します。以後お見知りおきを」

 男は子供である俺に対して頭を下げた。その姿勢に少し驚いたが、頭を下げられては俺も挨拶をしないわけにはいかない。

「マホンで活動しています、見習い冒険者のドルテナです。どうして奴隷商の方がここに?」
「それについては、彼女も話しにくいでしょうから私からお話ししましょう。取りあえずお座りください」

 奴隷商コンスタンスに向かい合うように座った。俺の横にリアナ、リアナの横に妹のラモーナが座っている。

「私が聞いている話をお話しします。先ずは現状をお伝えします。そちらのリアナさんは奴隷となり、私の商会がその権利を所有しております」

 なん…だと?

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